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最近のコメント欄より(2) 日本国の財政維持可能性は 膨張したマネーで債務をカバーできるか

2.日本国の財政維持可能性(=国家財政破綻可能性)について

遅くなりましたが、続きということで、日本の財政について簡単に述べたいと思います。
まず、関連したコメントを転載します。

(転載開始)

Commented by kanconsulting at 2010-03-05 20:30 x
(日本国の財政維持可能性について)危機感ばかりが先行していますが、まだまだノラリクラリと持ちこたえそうな印象を受けています。ご指摘のように、国債のロールオーバーが出来ているうちは延命可能なのでしょう。それが、なにかのきっかけで前提条件が崩れると意外と脆いというのは、「磐石の自転車操業」が存在しないことと同じです。
(中略)日本の場合は売り崩しのタイミングではないと見ています。
ヘッジファンドから「売り崩し・空売りを含むショートポジション」を取り除けば、ほとんど身のある内容は残らないというほど、「売りで儲ける」ことが、過去の相場で生き残る必要条件となっていたのですが、「(皆が永遠に上がると信じている)資産の価値は、必ず減価する」ことを意味していると思います。
日本の場合については、あれこれと大義名分をつけられ、これからツケを払わされる番が回ってくるでしょう。

Commented by kanconsulting at 2010-03-14 23:58 x
(略)これまでは隠すことが出来ていたリスクが、少しずつ明らかになっていく現状は、まさに、バブル崩壊後のたとえば住専問題で損失額がどんどん膨らんでいった様子にも、また、リーマンショック後の各金融機関の損がどんどん膨らんでいった様子にも似ています。似ているのもそのはず、いずれもマネーの膨張と収縮にともなう現象であるからと理解できます。
日本の場合は、破綻の火付け役は、国内での国債消化未達ではなく、たとえば仕組み債権のようなデリバティブ爆弾が、最初の直撃弾となるでしょう。

(転載終了)

まず、政府の借金が巨額になった場合の対応について、大きな前提を確認しておきたいと思います。それは、何度も述べていますが、

・発行体の消滅を含む、債券のデフォルト
・通貨価値の減価による実質的踏み倒し

がほとんどで、

・まじめに長い時間をかけて返したという例もないではないが(たとえばイギリス)、珍しい

です。政府の借金(起債)そのものや、それのみを裏づけにした紙幣印刷が、広義の信用創造に含まれることも見落としてはなりません。

次に、政府の借金(起債)やマネープリントがどのような局面で必要かと言うと

・経済の成長に応じて、潤滑剤として
・景気後退局面で、再成長を喚起するため
・不況局面で、信用危機を防止するため

ということで、経済局面のどのステージであっても結論は同じです。昨今においては、信用危機ステージの深刻化を防止するために、異様とも言うべき巨額のマネーが注ぎ込まれたことは記憶に新しいところです。

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さて、この議論をする場合には、ストックとフローを分けることはもちろん、政府債務(いわゆる国の借金)と、マネー(円紙幣・信用創造された見掛けのマネー)の量を分けて考えなくてはなりません。

荒っぽい記述になりますが、公的債務としては

ストック 国と自治体の長期債務は総額▲約900兆円
フロー  ▲約40兆円/年(除く:借り換え分・特別会計分)

今年一年の、長期債務残高の増加幅を見ますと
21年度末 ▲825兆円
 国    ▲628兆円
 地方   ▲197兆円

22年度末 ▲862兆円(▲38兆円) (見込み)
 国    ▲663兆円(▲36兆円)
 地方   ▲199兆円(▲2兆円)

となっていることから、文字通り際限がない状態となっています。

最近、週刊誌では、これらの数字をあげて「日本経済は破綻する!」という特集記事をよく見ますが、警鐘としては理解できるものの、いずれも考察の底が浅く、読み物以上の文献的価値は見出せませんでした。

さて、この債務の膨張を上回る速度で(少なくとも同じ速度で)マネーを膨張させ、債務に注ぎ込むことが出来れば、資金ショートによる破綻は回避できるもくろみです。ところが、実際には、公的支出の抑制により公的信用も頭打ちになり、もちろん民間貸し出しは減少を続けています(貸し出しに回らなかった分が国債に向かうので結果オーライかも知れません)。

日本銀行発表 3月マネーストック(昔のマネーサプライ)
M2     766兆円 +2.6%(前年比、以下同じ)
広義流動性 1440兆円 +1.0%


ロイター発表(予想) 4月マネーストック(昔のマネーサプライ)
M2    +2.5%(前年比、以下同じ)
M3    +1.9%
広義流動性 +1.0%

マネーの膨張は、高々15~20兆円/年、というところですし、それも全て国債などの債券購入に使えるわけではありません。日銀が引き受けるしかないところまで、あともう少しです。
by kanconsulting | 2010-04-20 12:52 | 経済状況
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