ユーロは消滅するのかしないのか 作られたユーロ安 またしてもイベントドリブン

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チャートはyahooで作成

最近の業界コメントとして、たとえば、

(引用開始)

「ユーロが消滅する日」

経済専門家の中には、「いずれ、ユーロが消滅する日が来るだろう」と指摘する悲観的な見方があります。(中略)・・・しかし、これらはいずれも緊急対策であり、中・長期的に、財政の悪化に苦しむ南欧諸国が抱える問題を根本的に解決するものではありません。(中略)そうなると、ユーロ問題が、世界経済に与えるマイナスの影響、さらには金融市場にもたらす懸念は、これからも続く可能性は高いと考えた方がよいと思います。最悪のケースでは、一部の経済専門家が指摘するように、ユーロが消滅する日がやって来るかもしれません。

「市場は金融危機直前の様相=スパークスAM・秋山氏」

スパークス・アセット・マネジメントのオルタナティブ投資戦略部ファンド・マネージャー、秋山史人氏は25日、「マネーマーケットは(2008年の)リーマンショック直前の様相を呈しており、市場が思っている以上に危ない所にいるのかもしれない」との見方を(中略)都内で開催されたヘッジファンド・インベストメントジャパン会議で語った。(略)当面はユーロ安・円高が一段と進むとの見方を示した。具体的な水準としては「ユーロ/円が100円を一瞬割れることがあってもおかしくない」と述べた。(中略)このため、同ファンドの運用としては「株をショートし、円をロングするなどリスク回避モードを見据えたポジションにしている」ことを明らかにした。

(引用終了)

のように、ユーロに対する懸念を、色濃く物語る内容となっています。

結論から言うと、今般のユーロ安は、イベントドリブンとして作られた相場であると思います。確かにユーロのファンダメンタルズは悪かったですが、こういった相場材料は循環的にハイライトが当たることはあっても、全てを勘案して合理的に相場が形成される訳ではありません。つまり、何を材料にして相場を動かして、リアルマネー(実需筋)のマクロトレンドを方向付けるかについては、相場形成力のあるビッグプレイヤーの胸先三寸、というところなのです。(仕手筋は、ファンダメンタルとはあまり関係なく、値動きが大きい銘柄(薄商い)を相場操縦しますので、イベントドリブンとは性質が違います)

これまでに書いてきたことを整理すると、

・ビッグプレイヤー(おそらく大手ヘッジファンド)は、以前からEUの悪いファンダメンタルと相場・金利のギャップに着目しており、いくつかの国の政権交代のタイミングを狙い、ユーロ弱小国の国債CDS買い※+ユーロ売りを仕込む
・CDS上昇により、リスクプレミアム上昇として、ギリシャ国債金利上昇として反映(債券価格は低下)
・PIIGSなどEUの財政赤字・脆弱性にハイライト
・その影響が無視できなくなり、実需筋により、債券売り・ヘッジによるユーロ安
・空売り規制により、空売りの代替としてさらなるユーロ売り
・信用懸念、株安・ユーロ安、さらに信用懸念を誘発、という疑心暗鬼のスパイラルに落ち込んだ

※国債売りの代替手段として。株式でも、実物マーケットではなく、先物やCFDでヘッジすることはよくありますが、そのようなものと思ってください

何度も書いていますが、相場の特性として、こういった「隠された損失額がどんどん拡大していく」「誰かのマネーで損失処理をする」というステージが十分に進むまでは、底は打たない、という理解が正しいと思います。

さて、ユーロの未来について、これまでに次のように述べてきました。

(転載開始)

「信用創造は神の御業か悪魔の仕業か ユーロ底値でオプション爆弾が起爆」

・ユーロは準基軸通貨として扱われていたが、ユーロ高は、過剰流動性による一種のブームであった
・今般のユーロ危機は、信用拡大期には見えなかった脆弱性が、信用縮小期に顕わになっただけ
・結論から言うと、ユーロは消滅しない。ユーロ圏内は運命共同体として、身内を守らざるを得ない
・しかしながら、その対価は高くつき、カネを持っているEU加盟国は、戦争コスト並みの損失負担を強いられる
ということになります。「本当に、EUはダメなのではないか?」というところまで売り込まれ、文字通り底値からの再出発ということになるかと思います。

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「大きすぎてつぶせない「国」はない ヘッジファンドのユーロ売り崩し」

このビッグイベントを、投機筋が見逃すはずがない、というところです。
これまでに何度も、ヘッジファンドの投機にイベントドリブンという手法があり、ある一定のシナリオに沿って金融イベントを演出し、そのイベントに加速度をつけて儲けに変換するということと、加えてマッチポンプ=自作自演の側面があることは否定できない、と何度も指摘しているところです。
今回も、ヘッジファンドが影の主役なのでしょう。そして、ドイツとしては、「彼らに意図を読まれては負けだ。救済するにしろしないにしろ、彼らに付け入られるスキを見せてはならない」として、意図的に情報をコントロールしているのではないでしょうか。
(中略)ヘッジファンドは、なによりも価値のある商品「情報」をカネに変える商売です。そのため、彼ら自身が呼び水となって、リアルマネーの流れを変えてしまうということも、また事実だと思います。

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「国際分散投資は信用比較 連鎖破綻はあり得るリスク 連鎖破綻を生き残るのは」

国家連鎖破綻のリスクが笑い事ではなく(中略)現実のものとなった今日、『連鎖破綻はあり得る。問題はその順番だけだ』という認識でいるほうが真っ当であると考えます。であるとするならば、世界的な債務(デフォルトリスク)の持ち合いとCDSというリスクの押し付け合いがどのようなグローバル構造になっているのか、把握することが急務でしょう。
一般には、ヨーロッパの金融機関は、新興国向け貸し出し全体の半分のシェアを負担していると言われており、ヨーロッパの債務構造は根深いものがありそうです。このあたり、不安心理が実際のリスクを高めるという負のスパイラルが働いているため、「誰かが投げる(全部損切りをして損失処理する)」までは、大底は来ないのだと思っています。
日本、アメリカ、ヨーロッパ、のうち、どの順番でクラッシュが来るのかについては、これまで何度も考察を重ねてきましたが(主に日本とアメリカのどちらが先かという話でしたが)、明確な結論は出ていません。しかしながら、『その順番をコントロールすることが出来たとしたら、巨万の富を得ることが出来る』ということだけは明らかです。

(転載終了)

しかしながら、ユーロが安くなることは、(金利はさておき)実質的に、ユーロ建て対外借金の減少と、輸出競争力の増加をもたらします。実際、ユーロ諸国からは「現状の為替水準は、妥当である」などのコメントが出ています。何にせよ、一方的な暴落は、「そうしなければならない実需筋」に、「この機に乗じた仮需筋」が拍車をかけるものであり、一般的には必ず反発します。

大きなくくりで言いますと、これまで何度も指摘しているように、「マネーの本質は信用創造」にあり、「振り返れば、通貨価値の減価こそが通貨の歴史」であり、過大な借金は「インフレ、金利、為替によって、ペーパーマネーの価値を減価することでしか、解決できない」のだと思います。
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by kanconsulting | 2010-06-06 15:52 | 経済状況
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