グローバルソブリンの注意点(1)

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ここ何年か、国際投信投資顧問の「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」が、高齢者を中心に人気のようです。このファンドは、通称グローバルソブリン、略してグロソブなどと言われています。人気を集めた理由は、
・信用力の高い国の国債に分散投資している、安定運用の投資信託
・以前のオープン型投資信託には珍しかった、毎月分配
とされています。

以前のエントリーで、「今ブームが来ているグローバルソブリンには要注意」と書きました。今回は、「なぜ要注意なのか、どう注意すればいいのか」について述べます。

まず、このファンドの特徴について述べます。

グラフは、「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」です。純資産残高は約4兆5,000億円と、日本ではトップの純資産残高ですので、人気のほどがうかがえます。

最近、このグローバルソブリンと同様の売られ方・分配金の仕組みを持っている、ニッセイアセットマネジメントの主力投資信託「ニッセイ・パトナム・インカムオープン」の純資産残高が1兆円台を達成しました。国内では、グローバルソブリンに次ぐ純資産残高です。

ソブリン(ソブリン債券)とは、「各国政府などが発行する債券」の総称で、一般的には「(外国)国債」です。このファンドの場合は、主要先進国の中で信用力の高い国です。信用力の高い国の国債に分散投資している投資信託ですので、安定運用の海外債券ファンドです。ただし、この商品は為替リスクのヘッジを行いませんので為替変動の影響を大きく受けます。そしてもちろん、金利変動の影響も受けます。

このファンドは、毎月分配が人気の秘密です。設定以来の毎月の分配金を欠かしたことがありませんし、最近は1万口に対して毎月40円で変動がありません。

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「それなら別にいいじゃないか。何の問題があるのか。」という指摘があるかと思います。実は、問題点は複数あります。

①運用手数料が高い

このファンドの運用手数料は、総資産額に対して年に1.25%と、株式投資信託並の高さです。それだけではなく、販売手数料として、購入時に購入価格の1.5%が必要です。これまでも「1兆円ファンド」の例などで検討してきたように、運用手数料の高いファンドは、それだけで運用成績の低下につながりかねません。

外国債券の利回り(既発債、残存期間10年未満)は、たとえば、
アメリカ国債(ドル) 3.6~4.1%
ドイツ国債(ユーロ) 2.5~4.5%
です。

流動性などを考えると、アメリカ国債を中心にすることになりますので、本来の利回りが4%といったところでしょう。株式に比べると低い期待利回りですが、そこから運用手数料を毎年1.25%取ると、実質利回りは1.75~2.75%といった状況になります。

アメリカ株式市場(NYSE、AMEX)にも、iSharesを中心として、債券ファンドがETFとして上場されています。これまで述べたように、ETFは、透明性・流動性に優れていることはもちろん、運用手数料が通常0.5%程度と格段に安く、多くの場合販売手数料が不要だということが大きな特長です。

残念ながら、このような債券ETFは日本ではまだ買えないようです。つくづく日本は金融後進国だと思うしだいです。

②それ以前の問題として、運用が稚拙

これだけの運用手数料を取っているのだから、さぞ素晴らしい運用をしているに違いないとお思いでしょうか。実際は、債券と言う比較的安全なもので運用しているにもかかわらず、基準価額は、基準の1万円を下回り続けており、利回りはマイナスになっているのが現状です。つまり、このファンドは、運用が下手なのです。

なぜ運用が下手なのでしょうか。外債市場は、株式に比べると比較的クローズな市場で、やり手の海外トレーダーに一杯も二杯も食わされている可能性があります。また、為替レートも不利なレートを使っている可能性があります。

手数料を抜いた後で利回りが3%を切るようなファンドが、なぜ年5%もの配当を確実に実施できるのでしょうか。また、配当は、原理的に「元本を取り崩して」行うのですが、にもかかわらずなぜ基準価額がそれほど下がらないのでしょうか。そのヒミツは、「このファンドの人気」にあります。

新規の投資資金流入により、これらの問題が基準価額に反映しない(3/23一部修正)新規の投資資金流入と、分配金の関係

国内預金の低金利を考えると魅力のある商品に思えますので、今は、新規の投資家のお金がたくさん流入している状態です。ですので、それに連れて基準価額は上がります。ですので、元本を取り崩して配当を支払っても、それほど基準価額には影響しません。

※(追記3/23)この種類の投資信託には、株式と異なり、ビッド/オファーがありませんので、流入フロー(新規の買い)が多くても、単純に基準価額が上がるということは事実上考えにくいです。普通で考えますと、投資先債券の種類(銘柄、年限など)といった内部要因、為替レート、各国の金利といった外的要因、信託報酬といった制約条件によって、ほぼ基準価額が決まると考えます。その意味では、タコ足配当というのは、言いすぎとなります。
ただし、フローの話としては、分配金のうち債券の利子を上回る分については、新規流入資金(+為替差益)を充てることになります。※

もし資金流入※(修正3/23)基準価額キープと高配当の両立を可能にしていた要因、たとえば円安傾向など※が止まると、元本を取り崩して分配金を支払うことにより、基準価額の下落は避けられません。

長くなりましたので、続きは明日。

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「グローバルソブリンの注意点(2)」
「金利上昇とグローバルソブリン ~グローバルソブリンの注意点(3)」
「グローバルソブリンの注意点(4) (グローバル・ソブリン・オープン、ソブリン債券ファンド)とは?」
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by kanconsulting | 2005-08-06 21:42 | 海外投資
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