郵政民営化の功罪と、国公債

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衆議院解散総選挙では、「郵政民営化」が争点となっていますね。今回のエントリーでは、「郵政民営化」の真の問題点を指摘します。

※小職は、自民党・民主党の公約の優劣などは、判断しません。また、小職は郵貯民営化に賛成でも反対でもありません、「そんなことよりも、もっと他にやることがあるだろう。」と思っております。

小職は、ほぼ1年前の2004年8月に、エントリー「最後の砦 郵便貯金」にて、次のように述べました。

(引用開始)
私は、民営化そのものには中立ですが、以下の問題があることを指摘します。
(郵貯の資金構造)
・国債消化機関である郵貯の解体の前に、長期公的債務の見通しをつけるのが先
・長期金利の上昇で、債券は含み損を抱えているはず
・過去の財政投融資においても、不良債権がかなりあるはず
・一度膿を出し切るのも悪くはないが、その体力があるのか?
(予想)
・これを隠したまま民営化するのは、長銀(いまの新生銀行)と似たことにならないか?
・いずれにせよ自己資本比率を高めるのには、資本注入は必須と思われる。
・つまり、郵貯を、国際金融資本に切り売りする意図があるのではないか?
・その場合、日本全体の利益となるべき資金が海外に流出することになる。
(民営化賛成者への意見)
・仮に400兆円の一部の資金が民間に流入したとして、銀行が運用できるのか?
・自己資本比率をキープするのに必死なので、また国債を買うのではないのか。
・一部が株式に流入したら確かに株価は上がるが、経済成長に見合ったものではないので、所詮はプチバブルに過ぎない。機関投資家が売り抜けて、個人は損をする。

リップルウッドが長銀を買収して今の新生銀行になったのですが、それは、「国民に隠したい、うしろめたいこと」が国にあったので、データをすべてオープンにすることができず、当然買い手がつきませんので、悪名高い「瑕疵担保特約」を付けて外資にお買い上げいただいたという経緯があります。長銀のケースでは、外資がどうこうというより、国がバカだったというべきでしょう。国が国民にデータを開示し、その批判に耐えるのが、本来の国民主権です。

ただし、資本主義の恐ろしい所は、文字通り「カネを出せばその会社の資産、経営、内部留保(ヘソクリ)、現在と将来の利益、などすべてを買えてしまう」ところにあります。ゆうちょを解体すれば、非常においしい投資対象となるでしょう。また、手数料の高い投資信託を売りつければ、かなりうまい商売が見込めます。
(引用終了:2004/8/16)

また、国の資本について考えたエントリー「国民金融資産の行方」も、参考にご覧ください。

このエントリーを投稿してから、すでに1年が経過しました。

さて、金融機関が国公債を多量に保有している問題(表)については、デフォルトリスクを除けば、金利上昇(債券価格下落)に対する備え=アセットライアビリティマネジメントができていれば特に問題ではありません。

ただし、郵貯はALMを行っていません。ですので、金利が上がれば、資産である「国債や財務省への預託金」の価値下落リスクの影響をきわめて強く受けるのです。加えて、財投債の内容がそれなりの割合で不良債権となっており、郵貯の資本は危うい状態となっている可能性が高いと指摘します。

郵貯のバランスシートは、だいたい次のように理解されています。
(資本の部)
公債・財投債:304兆円
財投のための預託金:20兆円?
自己資本:6兆円
(負債の部)
預金など:330兆円

郵政民営化賛成の方の意見として、たとえば次のような指摘があるでしょうね。

①郵貯制度の維持には、将来にわたって、膨大な税金の投入が必要だ。
②郵貯資金が市場に流れることは、景気刺激になるので良いことだ。
③したがって、郵貯民営化は国政上の最優先事項だ。

小職は、①に関しては、
・郵貯簡保の運用損の問題の解決策は、民営化というよりは、財政投融資などの特別会計の透明化にある
・一般会計と特別会計を、複式簿記にて国民に正しく開示説明することが出発点

②に関しては、
・景気刺激は、内需拡大策を取るほうがコントロールしやすい
・日本には300兆円を超える巨額の運用先は国公債以外にない(日本の株式の時価総額は200~300兆円で市場として未成熟)

③に関しては、
・国政上の最優先事項は、「国家財政の維持可能性」である
と指摘します。

また、この問題は「国際政治」と密接に関連しています。

つまり、アメリカ金融資本が郵貯の資金を狙っているということです。ご存知のように、日米の関係は、対等な同盟ではなく、帝国と属国の関係に近いものです。アメリカ国債を政府日銀で多量に保有してしまっているのがその一端でしょう。

もし、アメリカ金融資本が、郵貯などの資本に参入して経営権を得ることができれば、日本は「政治のみならず、経済においても、完全にアメリカの支配下に入る」のです。もし彼らが日本国債を投げ売れば、その破壊力は想像を絶するものになるでしょう。

このような意見に対して、一部の方は、金融を他国に押さえられてしまう事に対する恐怖感のようなものを感じると思います。その考えを突き詰めると、極端な話、「日本の金融資本には、外国資本の参入を許さない。日本は金融鎖国せよ」ということになるかと思います。小職は、「残念ながら、現代において金融鎖国は不可能。」と指摘します。

ですが、日本の国益を守るために、最小限の保護すべき分野については外国資本の参入を認めない、ということについては必要と思います。郵貯がそれに該当するのかどうかは、「郵貯は、保護すべき分野となる可能性がある」としか言えません。

小職は、そのような問題よりも、郵貯簡保の資本の健全化が必要と指摘します。それには「財投の不良債権の処理」と「長期的な国公債管理」が欠かせません。今後の郵政民営化法制度と国債管理政策を見守りたいと思います。
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by kanconsulting | 2005-08-29 21:50 | 経済状況
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