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戦争は最後の不況対策

この年表は、とある帝国の簡単な近代史です。

1941-45 第二次世界大戦
1950-53 朝鮮戦争
1960-75 ベトナム戦争
(1979-89 アフガニスタン危機)
1991- 湾岸戦争(イラク)
2001-03 同時多発テロ・イラク侵攻

このように、この帝国にとっては「だいたい10年に一度は戦争をしないと国が持たない」であるかのように、戦争をする(させる)ことが運命付けられているのが印象的です。

では、なぜ戦争をする(させる)ことがこの帝国にとって必須なのでしょうか?

それは、「戦争」は、「財政政策(減税、財政支出)」「金融政策(金融緩和、金利低下)」に続く、最後の不況対策だからです。戦争は、単なる消費で、生産的な設備投資を伴わないので、景気対策・デフレ対策にはもってこいだと指摘する意見もあります。

1991年、2001年と来て、帝国が次の戦争の舞台として選ぶのはどこでしょうか?そして、いつでしょうか?

よく、考えてみてください。思い当たるフシは、ありませんか?

ナチスのヒトラーは、最初は民主的な通常選挙で選ばれたのです。その支持が当初あまりに大きかったため、憲法を改正させ、そして結果的に独裁を許してしまったのです。それは昔の話かもしれません。でも、歴史は繰り返すという観点から見て、「カリスマ的な指導者が、民主的な選挙で圧倒的な支持を受けて、憲法を改正しようとする」、そんな国が、最近、世界のどこかにありませんでしたか?

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日本は、戦争をすべきではありません。なぜなら、戦場に行くのは、「これを読んでいるあなた」であり、「あなたの家族」であり、「あなたの大事な人」だからです。そして、前線の兵隊は、必ず、何割かは死にます。

大事なことなので、もう一度書きます。

戦争になれば、徴兵されます。徴兵されるのは、あなたであり、あなたの兄弟であり、あなたの子供です。そして、前線で命の危機にさらされるのは、「一番安い歩兵」と相場が決まっています。イラク戦争でも、最前線に送り込まれて、よく分からない方角から飛んできたロケット弾に被弾して死ぬのは、一番安い歩兵(州兵)なのです。この構造は、ベトナム戦争当時から変わっていません。

まだ理解されない方の為に、もう一度書きます。

もし、日本が戦争する(させられる)ことになれば、戦争に借り出されるのは、自衛隊だけでは済みません。必ず一般市民が徴兵されます。そして、あなたの財産はすべて召し上げられるだけではなく、命まで取られます。

そして、その戦争でトクをするのは、誰ですか?「あなた」でないことだけは、確かです。

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もう少し、歴史的な実例を挙げて説明しましょう。以前も紹介した論文「郵貯・簡保の自然縮小と国家財政基盤の崩壊」の一部を掲載します。

(引用開始)
★2 創設から「戦時財投」の破産まで ~ 戦前・戦中史(1875-1945) 

日清・日露戦争から第一次大戦そして第二次大戦に至る戦費の調達、つまり戦時国債の購入に郵貯・簡保の資金が総動員された。政府が全戦費を税金でまかなおうとしたら、いかに軍国主義的に教育された国民でも怒る。大戦争では、全所得を徴収しても足りないからである。戦費は、「借り倒し」を前提とした借金でまかなうしかない。

各戦争における総戦費と一般会計歳出(通常の政府予算)の比をとると、日清戦争で 3.74倍、日露戦争で 4.15倍、日中/太平洋戦争で 9.16倍であった。

今次大戦では、戦費を郵貯・簡保・年金、銀行・生保からの借り入れと国債の日銀引き受けでまかなった。

郵貯・簡保・年金基金はあげて戦時財投にまわされ、すべて消尽した。郵政資金で造った兵器は太平洋の藻屑となり、軍需工場は空襲で破壊された[『数字でみる日本の100年』国勢社、1991、10章]。

戦争継続の財政基盤は税金よりも郵貯・簡保に依存していた。そこを経由して、政府が国民に払った金がまた政府に戻るからである。たとえば、兵士の給与が「軍事郵便貯金」に入ると、戦時国債を経て、兵器生産や兵士給与(本人分を含む)に回った。

これでは兵士が自費で戦争していたようなものではないか。税金ではこのような二重三重の使い回しはできない。

敗戦で戦時財投は当然返済不能になり、郵貯・簡保も破産した。じつをいうと、この「破産」は開戦前、軍需投資にフル動員された時点(1930年頃)ですでに運命づけられていた。

政府・軍部は、「返せなくなった」と告白して国民に謝罪するか、戦争拡大というバクチに賭けるか、の二者択一に追い込まれていたといえる。前者なら、国民は預金損失を被るにせよ、命まで失うことはなかったはずである。

実際は、破産した債務者(政府・軍部)が、債権者(預金者・国民)に謝るかわりに、「国(政府・軍部)のために死ね」と命令したのである。
(引用終了)

国家財政の破綻であれば、まだ対策の打ちようもあります。ですが、戦争に対しては、どうしようもありません。「命あってのモノダネ」なのです。
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by kanconsulting | 2005-11-06 01:41 | 経済状況
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