「10年後、3%の黒字目標」とは? ~国家財政の持続可能性

これまでの記事で、「インフレ率と、経済成長率の関係が重要だ」と指摘してきました。また、インフレ率と名目金利の関係が深いことも指摘したとおりです。

関連した過去のエントリーもご覧ください。
「量的緩和の解除(2) 経済成長率と物価上昇率で考える、インフレの足音」
「量的緩和の解除(3) 経済成長率と物価上昇率を振り返る」

これまで何回か指摘してきましたが、国家財政の持続可能性を考えたときに、「プライマリバランス黒字」は必要条件であり、十分条件ではありません。つまり、プライマリバランスが黒字化するだけでは、国家債務残高が減少に転じるとは言い切れないのです。

さて、「フィナンシャル i」にて、経済産業研究所の鶴光太郎は以下のように指摘しています。

・財政の持続可能性を担保するような基礎収支黒字比率目標は、(名目金利-名目成長率)×債務残高比率
・例えば、金利が成長率よりも2%上回るとすると、日本の債務残高はGDPの1.5倍程度なので、債務残高上昇をストップさせるためのプライマリバランス黒字比率は2×1.5=3%程度
・金利、成長率を中長期的に予測することは難しいが、日本の金利・成長率格差の予測は、1~2%の範囲が妥当。
・「金利=成長率」は楽観的なシナリオであり、金利が相対的に高まれば崩壊してしまうので、適当ではない

その根拠を簡単にまとめると、

・国家財政の持続可能性の上では、金利が国内総生産(GDP)成長率を上回り続けると、どんどん債務残高比率は上昇してしまうため、避けなければならない
・債務の伸び率を、国の体力であるGDPの成長率以下に抑える必要がある
・加えて、債務残高比率上昇を考慮すると、利払い部分を相殺するだけのプライマリバランス黒字(利払いを除く)が必要
・近年の各国のデータでは、金利>成長率であり、その格差はほぼ1~2%の範囲
・成長率>金利のケースが多かったのは、1970年代以前の話で、金融自由化の進んだ近年の先進国では無い

ということです。

「こんな状況で金利を上げるなんて!」という意見も聞かれると思います。実際問題として、金利を上げることは、国家財政の首を絞めることにもつながりかねません。ですが、少なくとも長期金利は、国の思惑とは別に、上がってしまう可能性もあるのです。

そして、われわれ一般国民は、「金利の動向に関しては、全く、関与できない」のです。少し経済をかじった方が「そんなの、○○政策で、解決出来るよ!」と言われたとしても、「あなた自身が、その政策を実行できるのですか?」と問いたいのです。
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by kanconsulting | 2006-03-27 22:23 | 経済状況
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