以前のエントリーにて、次のように述べました。
(引用開始) 機関投資家によるジャパンマネーショートのキャリートレード(だぶついた日本円を使った裁定取引)が、めぐりめぐって世界の金融市場の乱高下をもたらしている可能性も指摘されています。(ただし、あくまで「可能性の指摘」ですので、日本の量的緩和が世界マーケットにどの程度影響があるかについては、よくわかりません。) (引用終了) キャリートレードについては、過去の記事も参照ください。 「購買力平価と為替レートの関係~キャリートレードのブームとバースト」 「量的緩和の解除 ゼロ金利からの脱出?」 「NZドルのリスク」 さて、円を使った裁定取引として有名な事件(?)に、ベアリングズ銀行のトレーダーであるニック・リーソンによる「ベアリングズ銀行破綻事件」がありました。「私がベアリングズ銀行をつぶした/ニック・リーソン」という本、「マネートレーダー・銀行崩壊」という映画にもなっています。 簡単にこの事件を述べると、以下のようになります。 (引用開始) ベアリングス銀行(Barings)は1796年にフランシス・ベアリングによって創業され、1995年に破綻した、英国の投資銀行である。シンガポール支店の一人のトレーダーによるデリバティブ取引の失敗が原因で破綻した。彼はシンガポール国際金融取引所(SIMEX)および大阪証券取引所に上場される日経225先物の取引を行っていたが、1995年に阪神大震災が起きたことなどから損失が拡大。損失を秘密裏に埋め合わせしようと、隠蔽工作と同時に更なる膨大なポジションを取ったため、結果的に銀行が破綻するほどの損失を抱えることになった。この結果、ベアリングスはオランダの金融グループ、INGに買収された。 (引用終了:ベアリングス銀行について...) その仕組みは、以下のとおりです。 ・日本から低金利で円を調達する ・シンガポール(SIMEX)と大阪証券取引所(OSE)で、同じ日経平均先物のトレードをする ・シンガポールから、安値で本命の日経平均先物カイ注文 ・同時に、大阪で、高値でウソの日経平均先物ウリ注文を出す(見せ板を作る) ・見せ板の多量のウリ注文のため、上値が重くなり、先物の値が下がってくる ・シンガポールの、本命の日経平均先物カイ注文が約定する ・同時に、大阪の日経平均先物ウリ注文を取り消す(見せ板を消す) ・上値が軽くなり、市場が反発したところで、日経平均先物カイを決済する この手法は、多量の資金を必要とします。そのためには、「日本から低金利で円を調達する」ことが必要なのです。証拠金としてシンガポールに流れ出た円は、日本国内に還流しない限り、インフレを起こすことはありません。まさしく、以前述べたように、『だぶついた日本円を使った裁定取引が、めぐりめぐって世界の金融市場の乱高下をもたらしている』のです。 このような手法は、「市場操縦行為」として、禁止されていますが、果たして、現在でも「見せ板による市場操縦はない」のでしょうか?関連した過去の記事もご覧ください。 「会計監査のはらむリスク ~日本市場にひそむ悪」 『日本の市場および株価の変動には、何かインチキくさい感じが付きまとっている・・・あるアメリカ人は、日本の市場を「西部劇のような無法者のいる市場」と言ったし、他のアメリカ人でも、日本の市場を少しでも知っている人たちのすべてが持っている日本の市場についての意見ではないか、と思う。』P85 (「自立のためにプロが教える株式投資/板垣浩」) --- では、金利が上がれば、ヘッジファンドの動きはどうなるのでしょうか?これについては、次の記事で述べたいと思います。 --- 海外銀行を使うテクニックは「国家破綻に勝つ資産保全 オフショア編」 海外ヘッジファンドへの投資は「国家破綻に勝つ資産保全 ヘッジファンド編」 海外証券会社を使った投資は「国家破綻に勝つ資産保全 ETF編」 外国為替取引(FX)を使った投資は「国家破綻に勝つ資産保全 FX編」 を参照ください。
by kanconsulting
| 2006-04-03 00:02
| ヘッジファンド
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