債務残高なんて問題にならない? 経済状況の発展段階説(4)

先日、コメント欄にて

(引用開始)

大幅な円安になっても輸出力があり余剰生産能力もある
円高になっても利子所得が増え経常収支も黒字が増える
どっちにころんでも過度なインフレにはなりにくいし
これから生産性を挙げることも可能
いざとなれば人口を移民などで増やしてしまえばいい

・・・

金利の正常化さえ通過してしまえば
体力のない企業の再編が進んでデフレも完全に脱却して
しかも世界中の人口超大国および新興国が日本製品をほしがっている以上
空前の輸出好景気そして債権国としての利子所得をあわせれば
債務残高なんて問題にならないように感じます

(引用終了)

というご意見をいただきました。

そもそも、円安・円高は通貨の価値調整であり、それによって起こるであろう現象の一端だけを捉えて「だからインフレになりにくい」というのは、説得力の無い話なのです。ですが、それだけでは読者様も疑問に思うことでしょうから、数字で検証してみましょう。

(補足:国家財政危機と円高・円安の関係については、過去のエントリー「円高?円安?」も参照してください)

以前のエントリー「公的長期債務の原因」にて、

『日本の話をしましょう。
現在は、民間(家計+企業)貯蓄超過は、国内総生産(GDP)の10%とされています。これは、8~9%の財政赤字と、1~2%の経常収支黒字によってファイナンスされていると言えます。この財政赤字分が、国家によって、経済規模維持のために消費されている分です。』

と述べました。

また、「経済状況の発展段階説」にて、

『日本の統計数字(2003年)を当てはめると、
経常収支       +15.8兆円
貿易サービス収支  +8.5兆円(12.2-3.9)
所得収支       +8.3兆円
対外純資産残高   +172.8兆円(世界1位)
資本収支       +8.1兆円(30年ぶり黒字)』

と述べました。

つまり、
・キャッシュフローの話として、輸出による黒字があるから、国の財政赤字をいつまでもファイナンスできるというのは誤り
・ストックの話として、対外債権を切り崩せば、国の財政を帳消しにできるというのも誤り
となります。

そもそも、民間の所得である「輸出入差益」「海外に所有する債権の利子」と、国家債務残高は、基本的には打ち消すものではありません。税金とインフレによって、どの程度民間から国に移転するかを計算する必要がありそうです。

財政問題もそうですが、マネーの話は「ストック」と「フロー」を切り分けて、
・損益バランス(P/L)
・資本バランス(B/S)
・キャッシュフロー
の考え方からアプローチすることが有効です。
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by kanconsulting | 2006-04-24 01:52 | 経済状況
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