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先進各国、海外金融取引の課税強化へ 真の目的は?

皆様も、ここ何年かの「オフショア監視・課税強化」の流れはご存知と思います。特に、OECDは「オフショアは有害税制」として告発を進めており、いくつものオフショアは「口座の情報開示」「税率引き上げ」を検討しているとされています。

(引用開始)

先進各国がオフショア市場(海外)金融取引の課税強化に動き出した。外国為替取引規制の緩和やIT(情報技術)の発達で、富裕個人層の間でも高利回りなどを求めてオフショア口座の開設が急増しているためだ。英国は銀行に全顧客名簿の提出を義務付け、米国は罰金を2倍に引き上げた。企業や個人の投資資金の世界的な流れに影響を及ぼす可能性もある。

英国では、税法に関する仲裁機関が英バークレイズ銀行にオフショア口座の全顧客名簿を税務当局に提出するよう命じた。他行からも顧客名簿を集める方針だ。オフショアで得た利息などの所得も原則、自国の所得と合算申告する必要があるが、同行の場合、その8割が未申告だったという。当局は同行の課税漏れは累計15億ポンド(約3000億円)と推計している。

米税務当局の内国歳入庁(IRS)もオフショア口座による個人の課税逃れへの罰金を2倍に引き上げ、銀行検査も強化。アイルランドはオフショア預金の課税漏れ10億ユーロ(約1460億円)を徴収した。

日本からも主要なオフショア市場ケイマン諸島だけで昨年は6兆8000億円の資金が純流出しており、日本の財務省は各国間で税務情報を交換する仕組み作りを呼び掛けている。IMF推計でオフショアの資金額は世界全体で5兆-7兆ドルに上るという。

日本経済新聞

(引用終了)

オフショアに流入している資金は、世界の資金総額の3割とも6割とも言われています。あまりに巨大なマネーの流れのため、誰もその全貌を理解していないというのが実情なのでしょう。

「IMF推計でオフショアの資金額は世界全体で5兆-7兆ドルに上るという」とありますが、それでは少ないような気もします。「全世界のドル建てのフローの資金量60兆ドルのうちの36兆ドル分が、オフショア勘定扱いになっている※」との指摘もあります。

※「マッド・マネー/スーザン・ストレイチー」「カジノ資本主義/同」など

ですが、最もオフショアを活用して脱税したのは、アメリカを含む世界各国の大金持ちなのです。ですので、オフショアに便乗した小金持ちが振り落とされることはあっても、真の大金持ちは、自分たちに都合のいいルールを作り出し、今後も税金を払うことはないだろうと予測します。

また、現実問題として、アメリカはオフショアを厳しく批判していながら、他国からアメリカへの投資には優遇税制を設けるなど、「マネーフローを自分の国に向ける」ことに汲々としています。

つまり、
・貧乏人は、いやおうなく納税する
・小金持ちは、選択肢はあるものの、結局納税することになる
・大金持ちは、都合のいいルールを作り、巨額を納税しないで済む

ですが、大金持ちが正しく納税しないと、正規のマネーフローが細り、経済は疲弊することは直感的に理解していただけると思います。

結論から言うと、
・オフショア自体は、なくならない
・ただし、それを利用できるのは「真の大金持ち」だけになる
・そのことは、世界経済にとってマイナスとなる
と思います。
by kanconsulting | 2006-07-11 00:20 | 海外銀行
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