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実感なき景気回復 個人所得伸び率はマイナス さらなる人件費カットがありうる

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(表のデータは産経新聞11/23から引用)

現在の景気回復は、平成14年2月から始まったとされていますので、現在で58ヶ月連続となっています。企業の業績は、確かに回復しています。バブルのピークである1991年度と比較しても遜色がありません。

         法人所得  法人税額  実効税率 純利益(所得-法人税)
1991年度  54兆円  18.6兆円  35%    37.2兆円
2005年度  50兆円  12.6兆円  25%    37.8兆円

その一方で、個人消費は落ち込み続けています。個人消費落ち込みの原因は、所得(賃金)の伸び悩みです。たとえば、勤労者1人あたりの現金給与(平均)は、以下のようになっています。(表の数字と元データが異なりますので、-1.4%にはなりません)

平成14年2月 34.3万円
平成18年9月 33.5万円

なぜでしょうか?

・企業は業績回復のために、総額人件費を抑制した
・派遣社員などのアウトソーシングの一般化
・根本的には、海外との人材競争により、一般社員の賃金は上方硬直的となる

このような事情から、企業付加価値率中の人件費割合が低下しており、企業部門の好調は、家計部門に波及しません。

参考までに、経済成長率を見ると株式収益率が予想できます。「長期で見ると、株式収益率は、経済成長率に連動する」と考えると、日本株式のパイの大きさは年2~3%しか大きくなりません。その中で個々の銘柄の騰落として配分されるに過ぎないことがわかります。逆に言うと、何度も書きますが、「将来の成長が期待される国・地域の市場全体に長期投資する」ことが有効なのです。

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そして、小職は「さらなる人件費カットがありうる」と指摘します。なぜでしょうか?その理由は、年金を含む社会保険料の企業負担です。

(引用開始)

自民税調会長インタビュー

――成長戦略を掲げる安倍内閣では、企業が国際的競争力を保てるよう法人税率を引き下げるべきだとの声が強い。

津島「法人税収が予定より増えたからといって、(税率を下げて)返せという議論は財政学のイロハに反する。(公共事業などで)不況時に拡大した財政赤字は、好況になった時に埋める必要がある。法人税率は、日本が厳しい国際競争、少子高齢化の中を生き抜くため、という見地から議論すべきだ。法人税は本年度、増収になっても18兆円くらいだろうが、企業は年金のために20兆円も払っている。この両方を議論しなければいけない」

東京新聞11/22

(引用終了)

過去の記事で何度か述べましたが、日本企業は、さらなる法人税引き下げを求めています。関連した過去の記事も参照ください。
「税収額の推移」
「経団連、法人税、日本版ホワイトカラーエグゼンプション(自律的労働時間制度)」
「日本版ホワイトカラーエグゼンプション(自律的労働時間制度)(2)」

小職は、ここからさらなる人件費カットがありうると予測します。

なぜならば、
・法人税が下がらないならば、その分、他のコストを減らすしかない
・人件費が最も手をつけやすいが、これまでの手法では、総額人件費の抑制はそろそろ限界
・2004年の年金保険料の引き上げにより、企業負担は重くなっている
・たとえば、正社員を減らして、派遣としたり、出向させたりすることで、年金保険料を含む社会保険料を簡単に減らすことが出来る

大きくバランスシートを考えると、国家、企業、家計、の中でマネーフローがあってバランスしているわけです。企業から家計へのマネーフローを絞ると、家計の二極分化が進み、納税額や社会保障も含めて考えると、国としてのトータルの経済規模は縮小します。累進所得課税から消費税増税へのシフトも同じ効果があります。

そして、まもなく、「働いても働いても、豊かになれない、『ワーキング・プアの時代』が来る」と、予測しています。冷酷なようですが、それを避けることは出来ません。世の中の本を見ると、「スキルを磨けば格差社会は怖くない」と書いていますが、冷静に考えると、気休めに過ぎません。トータルのパイが小さくなる中で、自分だけがいつまでも今のポジションをキープできると信じるほうがどうにかしています。

ワーキング・プアについては、参考文献も読まれてはいかがでしょうか。
「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す/ジョセフ・E.スティグリッツ」
「ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実/バーバラ・エーレンライク」
「実質ハイパーインフレが日本を襲う/村田雅志」

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海外銀行を使うテクニックは「国家破綻に勝つ資産保全 オフショア編」
海外ヘッジファンドへの投資は「国家破綻に勝つ資産保全 ヘッジファンド編」
海外証券会社を使った投資は「国家破綻に勝つ資産保全 ETF編」
外国為替取引(FX)を使った投資は「国家破綻に勝つ資産保全 FX編」
を参照ください。

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関連したニュースを転載します。

(引用開始)

9月の家計調査、実質の消費支出6%減

総務省が31日発表した9月の全世帯の家計調査によると、一世帯あたりの消費支出は27万3194円だった。物価変動の影響を除いた実質で前年同月比6%減。2001年12月(6.6%減)以来の大きな減少となった。
内訳をみると、自動車の購入など「交通・通信」への支出が前年同月比14.7%減、住宅のリフォーム費用など「住居」が16.6%減。パック旅行などの「教養娯楽」、食料などの支出も減少した。
一方、被服・履物は秋冬物衣料を購入した個人が多く、前年同月比5.9%増と4カ月ぶりのプラス。耐久財では電気冷蔵庫、電気掃除機などの家庭用耐久財が24.7%減となった半面、薄型テレビなどの教養娯楽用耐久財は12.9%増えた。
勤労者世帯(サラリーマン世帯)の実収入は実質で前年同月比0.5%減った。実質消費支出は6.6%減。可処分所得から消費支出に充てた比率を示す「消費性向」は81.7%と、9月としては調査開始以来の最低水準だった。 (10:14)

日本経済新聞10/31

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消費支出6%減 9月の家計調査

総務省が31日発表した9月の家計調査によると、全世帯(2人以上)の月平均消費支出は27万3194円となり、物価変動を除いた実質で前年同月より6.0%減った。9カ月連続の前年割れ。減少率が6%台となるのは、01年12月以来4年9カ月ぶりだ。8月も前年同月比で4.3%減少しており、2カ月連続で大幅な落ち込みとなった。
6%減の内訳をみると、マイナス2.05%分が自動車購入など交通・通信、同1.14%分がリフォームなどの住居となり、高額の購入品目で減少が目立った。一方、わずかながら消費を押し上げた品目は、秋物衣料など被服・履物のプラス0.2%、テレビなど教養娯楽用耐久財のプラス0.13%など。総務省は「購入頻度が月ごとにばらつく高額商品が低調だったため全体が落ち込んだが、消費動向そのものは底堅さが続いている」としている。
一方、勤労者世帯(2人以上)の実収入は42万9017円と実質の前年同月比で0.5%減った。減少は3カ月ぶり。世帯主の収入は3カ月続けて増えたが、配偶者らの収入の減少が響いた。可処分所得のうち消費に回した平均消費性向は81.7%で、統計の比較が可能な63年以来、9月としては過去最低となった。

アサヒ・コム2006年10月31日

(引用終了)
by kanconsulting | 2006-11-25 17:44 | 経済状況
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