増税なき財政再建は可能か? 法人税・企業業績・経済成長・自然増徴? プライマリーバランス達成可能?

突然ですが、増税なき財政再建は可能なのでしょうか?

そのストーリーは、次のようになっています。

金融緩和・法人税率軽減
  ↓
企業業績向上
  ↓  ↓
賃上げ ↓
  ↓  ↓
(そのスパイラルとして)経済成長
  ↓
自然増徴
  ↓
財政改善

結論から言いますと、「無理だろう」ということになります。

その理由は、
・増税なき財政再建は、自然増徴によりプライマリバランス達成、としているが、その前提「経済成長3%」に無理がある
・しかも、これまでに述べているように、「プライマリバランス達成」だけでは問題解決にならない

もう少し詳しく見てみますと、

金融緩和、法人税率軽減
  ↓×
企業業績向上

・法人税率を軽減したところで、本質的には、企業の業績は改善しない
・本質は、法人税率ではなく、グローバル競争にある
・安価な人材の豊富な中国・インドと同じ産業を続ける限り、企業業績は向上しない

グローバル競争

企業業績向上
  ↓×
賃上げ

・企業業績が向上しても、全般的な賃上げは不可能
・やはり、中国・インドの賃金水準に収束していく
・法律で無理に賃上げをすれば、雇用が減り、景気はさらに悪くなる
・一方、代替の利かない人材の給与水準は上がっていく、二極化が進む

賃上げ
  ↓×
経済成長

・そもそも、経済成長は簡単ではない
・年金など先行き不安が大きく、賃上げは消費につながらない
・安価な輸入品があるため、消費しても国内供給への寄与が小さい

企業業績向上
  ↓×
経済成長

・そもそも、経済成長は簡単ではない
・トータルのパイが大きくならないなら、企業業績が向上しても経済成長はない
・人口が減少していく国で、経済成長を遂げるのは、高付加価値産業にシフトするしかないが、現状そうなっていない

ですが、
・大きな政府は、もう不要である
・思い切った歳出削減は必要
とも、指摘します。

なぜならば、税金・特別会計・その他公金へのタカリの存在(タックス・イーター、レント・シーカー)が、巨額の財政赤字を作った一因でもあるからです。

これら、ムダ飯食らいを一掃処分しないことには、日本に未来はないのだと、厳しく指摘します。

一例を挙げるなら、「過疎地の巨額のインフラ整備」でしょう。こういった「国の生産性への寄与が乏しい」公共投資を、「景気刺激のため」と称して続けてきたことが、どれほど国全体にとってマイナスになったことか、うかがい知れません。

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関連した過去のエントリーも参照ください。

(開始)

「増える国債 残高600兆円 それだけが長期公的債務ではない 経済成長率・インフレ率・名目金利の関係」

財務省試算による国債残高予想が発表されました。 簡単にまとめると、以下のような数字になります。

2007年度 国債残高 547兆円
2010年度 国債残高 605兆円
2016年度 国債残高 715兆円

名目で3%程度の経済成長を実現しても、国債残高は増え続けるとされています。

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「「10年後、3%の黒字目標」とは? ~国家財政の持続可能性」

これまで何回か指摘してきましたが、国家財政の持続可能性を考えたときに、「プライマリバランス黒字」は必要条件であり、十分条件ではありません。つまり、プライマリバランスが黒字化するだけでは、国家債務残高が減少に転じるとは言い切れないのです。

(中略)その根拠を簡単にまとめると

・国家財政の持続可能性の上では、金利が国内総生産(GDP)成長率を上回り続けると、どんどん債務残高比率は上昇してしまうため、避けなければならない
・債務の伸び率を、国の体力であるGDPの成長率以下に抑える必要がある
・加えて、債務残高比率上昇を考慮すると、利払い部分を相殺するだけのプライマリバランス黒字(利払いを除く)が必要

(終了)

関連したニュースを掲載します。

(引用開始)

「増税なき財政再建」TV発言を釈明…大田経財相

大田経済財政相は19日の閣議後記者会見で、前日夜の民放番組で「増税なき財政再建を目指していく」と発言した真意を聞かれ、「言葉足らずだった」と釈明した。
この発言に対しては、尾身財務相が19日の閣議後会見で「歳出、歳入両面の改革が必要だ」と反論するなど、政府内に波紋が広がっている。
大田経財相は発言の真意について、政府が財政再建目標に掲げる「2011年度の基礎的財政収支の黒字化」の達成に向け「歳出削減を最大限に行い、増税幅は可能な限り縮小させたいということを申し上げた」と説明した。
消費税引き上げについては「否定するものではない。基礎的財政収支の黒字化は財政再建の一里塚だ」と述べ、債務残高の縮小などさらに踏み込んだ財政健全化のため、引き上げる可能性があることを示唆した。

2007年1月19日14時19分 読売新聞

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経済財政方針 イメージの先行では困る

政府は経済財政諮問会議を開き、今後五年間の経済財政運営の中期方針「進路と戦略」を決定した。安倍政権として初めて掲げる数値目標である。
経済成長の底上げ、歳出削減などによって最終年度の二〇一一年度に消費税などの増税をしなくても政府の財政再建目標である国と地方の基礎的財政収支の黒字化を達成するとした。そう願いたいが、前提となる経済成長率などで極めて高いハードルが待ち構えている。行く手は不透明だと言わざるを得ない。
中期方針は構造改革をテコにした成長路線と、「骨太の方針二〇〇六」で決めた歳出削減額(十一兆四千億―十四兆三千億円)の上限と下限を組み合わせ四通りのシナリオを作成した。このうち安倍政権が目指すのは「基礎的財政収支の黒字化」だ。このシナリオに乗ると最終年度の名目経済成長率は3・9%に高まり、消費税の増税なしで国内総生産(GDP)比0・2%(約一兆二千億円)の黒字に転換できると試算する。
だが、本年度の名目成長率見通しは1・5%だ。どうやって倍以上に伸ばすのか。労働人口の減少で成長率が0・4%程度押し下げられる問題にしても、女性や高齢者を活用すればマイナスをゼロにできるとする。そんなに簡単にいくのか。このままでは参院選に向けた成長路線アピールのためのイメージ戦略と言われかねない。それでは困る。数字的根拠を示し、ていねいに説明する責務があろう。
与党内などに増税不要論が出つつある。楽観論には注意が必要だ。仮にシナリオ通り黒字化できても膨大な長期債務削減という課題は残る。新たな財源確保の論議は避けられない。楽観論で議論自体を封じ込めてはならない。

山陽新聞

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2007/01/23-14:34 「増税なし」は道険し=高成長・歳出削減が前提-「進路と戦略」、25日閣議決定

政府は25日、安倍政権の「上げ潮路線」を支える経済財政運営指針「進路と戦略」(2007-11年度)を閣議決定する。指針は最善のシナリオとして、国と地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標を増税なしで達成できるとの青写真を描くが、その実現には高い成長率と思い切った歳出削減が前提となっており、道筋はかなり険しい。

時事

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財務省試算 国債発行再び30兆円台も 09年度 社会保障費増加で

財務省が試算した2007年度以降の財政状況が22日、明らかになった。07年度に25・4兆円まで減った新規国債発行額は、高齢化に伴う社会保障関係費の伸びなどを背景に、09年度には27・6兆~30・3兆円まで増え、再び30兆円台に膨らむ可能性があるとしている。国の財政の厳しさを強調した内容で、財務省はこの試算を25日に始まる通常国会に資料として提出する。
試算は07年度予算案を前提に、名目経済成長率が3%程度と2・2%の2通りを想定した。
それによると、政策的経費である一般歳出は、07年度の47兆円から09年度には51・3兆~51・4兆円となり、当初予算ベースで初めて50兆円を超える。これに政府が06年7月に策定した歳出削減目標を達成したと仮定しても、09年度の一般歳出は50兆~50・8兆円と50兆円台は変わらない。
新規国債発行額は、09年度に基礎年金の国庫負担割合を約3分の1から2分の1に引き上げるための財源(約2・4兆円)を増税でまかなうかどうかで額が大きく異なる。増税すれば新規国債発行額は27・6兆~27・9兆円にとどまるが、増税しないと29・9兆~30・3兆円に膨らむとしている。

読売新聞

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「景気拡大」まる5年に 政府の1月経済報告

政府は22日の関係閣僚会議で「消費に弱さがみられるものの、回復している」とする1月の月例経済報告を了承し、02年2月からの景気拡大が足もとでも続いているとの景気認識を示した。昨年11月に「いざなぎ景気」(65年11月~70年7月)を抜き戦後最長になった目下の景気は、月例報告の政府判断の上では、ちょうど5年に達したことになる。
また、同会議に出席した日本銀行の福井俊彦総裁は「雇用はタイト(求人増)になってきており、(景気拡大の)家計への波及が進むのではないか」との見方を示した。しかし自民党の中川秀直幹事長は今後の財政・金融政策運営について「政府と日銀が(経済情勢の)認識を共有するべきだ」と強調。大田経済財政相も記者会見で、認識の共有化を図る議論を経済財政諮問会議で行う考えを示した。

2007年1月23日 読売新聞

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2007/01/23-15:32 基礎収支の赤字、7兆円に拡大=金利上昇で利払い増-10年度
までの財務省試算

財務省がまとめた2010年度までの国の財政状況に関する試算が23日、明らかになった。税収の大幅増で、07年度予算案で4.4兆円にまで縮小したプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字は、少子高齢化に伴う社会保障費の増加などにより、09年度には再び7兆円前後まで拡大。また、長期金利が1%上昇すると、国債の利払い費は08年度で1.4兆円増加するとみている。
大幅な税収増を背景に財政再建について楽観論が浮上する中、国が直面する厳しい状況を改めて強調する内容となった。同省は07年度予算案の資料として25日召集の通常国会に提出する。

時事

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【主張】財政再建 甘い試算では将来読めぬ

経済財政諮問会議が内閣府の財政試算を基にした中期指針「日本経済の進路と戦略」を決めた。試算は安倍政権の成長戦略効果で高い成長を確保する場合を想定し、国・地方の基礎的財政収支黒字化は増税なしでも可能とするなど、あまりに楽観的といえる。
試算は黒字化目標の2011年度に向け、成長戦略や歳出削減度合いに応じた4通りのシナリオを示した。その中で注目すべきは、昨年の「骨太の方針」が示した歳出削減を最大限実施し、かつ成長戦略で名目成長率3・9%を確保するケースだ。
これによると、2011年度の基礎的財政収支は国内総生産(GDP)比で0・2%の黒字となる。つまり、増税なしで政府目標は達成できるわけで、最悪のケースでも赤字は4・6兆円にとどまるとしている。
この試算に違和感を持たざるを得ないのは、3・9%という成長率の高さだ。民間調査機関はせいぜい2%台半ばの予測が多いし、政府見込みの今年度1・5%と比較しても高すぎる。
歳出削減面でも、来年度予算案の編成過程をみると、試算が示すような削減が実行できるか不安が残る。今年から団塊の世代が定年に入り、いよいよ少子高齢化が本格化する。急増する社会保障費の抑制は容易でない。
夏の参院選に向けて政府・与党の「上げ潮」論者は、税収増を背景に増税論議を封じようとしている。試算はこうした勢いに影響されてはいないか。景気には山も谷もある。一時的な要因に左右されてはならない。
国債残高はGDPを上回り、地方を合わせた債務残高はその150%近くに達している。試算は長期金利を名目成長率とほぼ同じと甘い水準に置いている。それでも最善のシナリオでさえ目に見えた改善を示していない。
本来の財政再建はGDP比で債務残高を圧縮することにある。歳入改革、つまり増税を組み合わさない限り、それは不可能であろう。仮に高い成長率が確保できたら、基礎的収支の黒字化を前倒しし、できるだけ早く債務残高の圧縮に入ることだ。
昨年の骨太方針はその長期シナリオを示し得なかった。諮問会議は今年こそ、日本の将来に向け責任ある再建プロセスを策定してほしい。

産経新聞 2007/01/21

(引用終了)
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http://www.soumu.go.jp/iken/pdf/chizai_19_gaiyou.pdf

平成19年度地方財政対策の概要
総務省自治財政局
平成1 8 年1 2 月

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参考文献

「日本は破産する―ある財政史家の告白/森木亮」
「最高支配層だけが知っている日本の真実/副島隆彦」
「富の未来(上)(下)/アルビン・トフラー、ハイジ・トフラー」
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by kanconsulting | 2007-03-22 02:17 | 経済状況
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