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合併しない宣言 福島県矢祭町 小規模町村の維持可能性 行政コストと自主財源 国家破産と地方自治(1)

(引用開始)

総務省は国の財政赤字を考えて、人口1人当たりの地方交付税や補助金の比重が大きい小規模な自治体をなくしたい。合併が自治体の行財政能力を高める有効な方策であり、「合併は日本を救う切り札」と思っている。統計数字から弾き出した、いわば机上の論理だ。

一方、根本町長の発想は・・・自治体の規模を大きくすれば、中心地以外のほとんどの地域は過疎化が進み、やがて地域は生活環境も自然環境も劣化して崩壊して行く。小規模の方が自分たちの地域を支えようという愛着心が強い。・・・「そもそも国は1000兆円を超える借金を抱えてカネがないといっているのに、また膨大な借金をして合併の優遇措置につぎ込もうということがおかしいんだ。そんなカネをもらったって、たった10年間の夢まぼろし、手切れ金みたいなものですよ」「カネは窮屈な方が自立の気持ちが起こる。財政的には厳しくても、耐え忍んでも自立することが大事なんだ。自立の精神こそが日本の国力を伸ばす、日本の将来によほど大きな力になる」

「コラム・Samurai Mayors」

(引用終了)

合併しない宣言 福島県矢祭町 小規模町村の維持可能性 行政コストと自主財源 国家破産と地方自治(1)_a0037933_946362.jpg



皆様もご存知だと思いますが、「合併しない宣言」で知られる福島県矢祭町・根本町長が引退しました。根本町長は昭和58年に初当選、6期を務めました。平成13年に「合併しない宣言」を町議会が決議、町長は行財政改革の推進など自立した町づくりを進めたといいます。

「合併しない宣言」で全国の注目を浴び、それをきっかけに、職員の中にも「自立」の気概が生まれ、合併しないで町が自立するために、徹底した行政コスト削減を行ったのです。そして、町役場のリストラ、議員定数削減を進めて財政調整基金を大幅に増やしたにもかかわらず、年中無休で住民票・印鑑証明の発行を行うなどサービスも向上させました。簡単に言うと、自治体の住民にとって必要な自治体の役割を考えて、それが自主財源の範囲内に収めるようにマネジメントを行ったのです。その結果、人件費を税収の範囲内に抑えることに成功し、地方交付税に依存しない財政的自立を可能にしました。「やればできる」を実現して見せた好例となっています。

このケースが示しているのは、自治体の行政サービスは、自治体の覚悟と努力により、自主財源の範囲内に納めることが十分可能である、ということです。

日本経済新聞(3/26)から、町長の発言を転載したいと思います。

「(町役場のリストラ、議員定数削減について)当たり前のことをやっているだけ。みんな(他の自治体)のほうが異常だ。」
「ごみ焼却施設のために合併した自治体もあると聞く。何をねぼけたことを言っているのか。・・・合併特例債などで国がはやし立てると、日本の国づくりを危うくする」
「夕張の破綻は決まっていた。人口が12万人いたころと同じ数の職員がいたのだから。でも夕張は変わるよ。ふんぞり返っていた連中がガサッとやめたから」

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ポイントをまとめると、次のようになります。

・自治体が持続可能性を確保し、自立するためには、コスト削減が必須 
・その最重要ポイントは、人件費を税収の範囲内に抑て、地方交付税に依存しないこと
・財源を、住民にとって必要な分野(このケースでは子育て環境の整備)に集中する 
・自立した小規模町村は、住民の利益にもかなっている

ですが、「それは、ラッキーな小規模町村のケースであり、大多数の地方自治体には当てはまらないのではないか?」という考えもあるでしょう。私は、「そうではない。ぬるま湯を卒業し、レント・シーカー、利権、ムダ、不要な慣行を排除して、住民の理解と協力を得ることができれば、基本的にはどの自治体も、緊張感ある自立した地方自治が可能である」と指摘します。

「それぞれの自治体が、自治体は何のためにあるのかということをしっかりと認識する」という基本に立ち戻って、地方自治について考えていただければと思います。

(引用開始)

この1週間(3月1日~7日)で16の新しい市町が誕生し、今日(3月8日)現在の市町村数は2688(726市、1561町、401村)になった。さらに、一区切りになる4月1日までに107の合併が予定されており、この時点での市町村数は2399(739市、1320町、340村)になる見込みだ。
さて、いったい、全国の市町村数はどのぐらいのところに落ちつくのだろうか。昨年5月の合併特例法改正で合併特例債などの優遇措置を受けられる期限が実質1年延長され「今年度中の申請、来年度末までの合併」となったため、まさに今月中が正念場。これまでに総務大臣協議を終えて確定している合併だけを加えて計算すると、06年3月31日の市町村数は2286(743市、1223町、320村)。いま法定協議会で協議中の市町村数が949、法定協議会の数は374。つまり、協議中の合併話がすべて破談になれば2286のまま、すべてがまとまれば2286-(949-374)=1711ということになる。いずれにしても、1711~2286の間の数になるわけで、麻生太郎・総務相は「2000前後か」という。
“平成の大合併”の起点になる99年度末の市町村数は3232(670市、1994町、568村)。政府・与党は目標を「1000」と定めた。つまり市町村数を3分の1にするというのが当初の目標だが、それからすると、期間を1年延ばして、ようやく半分に達するかどうか、といった状況にある。
そこで政府は昨年5月、現行合併特例法の優遇措置を1年延長する改正とともに、“強制合併”の色彩を一層濃くする合併新法を用意した。今年3月末までの申請が間に合わなかった市町村に対しては、この新法を適用して合併を迫る構えだ。
合併新法は、総務相が定める基本指針に基づいて、都道府県知事が市町村合併の構想を策定し、合併協議会の設置や協議の推進を勧告したり、市町村合併調整委員を任命してあっせん、調停することにしている。知事の勧告対象にするのはどの程度の小規模自治体なのか。その点は総務相の基本指針で示されることになるが、麻生総務相は国会審議のなかで、合併構想の対象となる町村として「おおむね1万人」を目安とすることを明らかにしており、「人口1万人未満」の町村が今後の合併の焦点になる。
合併特例債、地方交付税、議員の定数特例などの「アメ」と、地方交付税の削減などの「ムチ」で進めてきた“平成の大合併”は、今年4月からは「人口1万人未満」の町村をなくしたい国の意思を受けた知事による“勧告”という新段階に入る。従わない小規模町村に対しては、交付税の削減ばかりでなく、自治体としての権限を制約し、近隣市や都道府県が代行する制度導入まで匂わせている。恫喝的、強制的な合併がどこまで功を奏するか、新たな合併戦争が起こりかねない状況だ。
じつは最初の戦争は東北の一寒村から起こった。2001年10月31日、福島県矢祭町矢祭町議会が全会一致で採択した「市町村合併をしない矢祭町宣言」(次ページ参照)は当事者たちが想像もしていなかった大きな反響を全国に引き起こした。「国の目的は小規模自治体をなくし、国の財政再建に役立てようとする意図が明確」「矢祭町は今日まで『合併』を前提とした町づくりはしてきていない」「大領土主義は決して町民の幸福にはつながらない」――宣言文に盛り込まれた率直な文言は、国の強制的な合併政策に疑問を抱きながらも「アメとムチ」の前に意思表示を逡巡していた市町村長や議員たちの喝采を博することになった。
合併反対の波及を心配した総務省は職員(高島茂樹・自治行政局市町村課行政体制整備室長)を矢祭町役場に派遣した。根本良一町長や町議会の議員を前に「21世紀は住民の多様なニーズにこたえられる行財政能力が必要」と合併による自治体の規模拡大を訴えて翻意を促した。根本町長は「国の合併に反対するなんて言っていない。うちは『合併しない』といっているだけだ」と宣言の立場を説明したうえで、「財政の厳しさは認識しているが、なにからなにまで行政がやる時代ではない。自立することが必要だ。町議会が全会一致で可決した決議は住民の意見を反映したもので、撤回する意思は毛頭ない」と突っぱねた。
総務省と根本町長の間には基本的な考え方の違いがある。総務省は国の財政赤字を考えて、人口1人当たりの地方交付税や補助金の比重が大きい小規模な自治体をなくしたい。合併が自治体の行財政能力を高める有効な方策であり、「合併は日本を救う切り札」と思っている。統計数字から弾き出した、いわば机上の論理だ。
一方、根本町長の発想は地域に根ざしている。「昭和の大合併」の経験から見ても、自治体の規模を大きくすれば、中心地以外のほとんどの地域は過疎化が進み、やがて地域は生活環境も自然環境も劣化して崩壊して行く。小規模の方が自分たちの地域を支えようという愛着心が強い。「薄い水と薄い水を合わせても濃くはならない」が根本氏の持論だ。
根本町長はいう。「そもそも国は1000兆円を超える借金を抱えてカネがないといっているのに、また膨大な借金をして合併の優遇措置につぎ込もうということがおかしいんだ。そんなカネをもらったって、たった10年間の夢まぼろし、手切れ金みたいなものですよ」「カネは窮屈な方が自立の気持ちが起こる。財政的には厳しくても、耐え忍んでも自立することが大事なんだ。自立の精神こそが日本の国力を伸ばす、日本の将来によほど大きな力になる」
矢祭町の「町勢要覧」は表紙のタイトルに「小さいからこそ輝く町 Small is Beautiful」とある。根本町長らが呼び掛け人になって、小規模町村の存在意義を謳う「小さくても輝く自治体フォーラム」が長野県栄村(03年2月、全国から45町村長が参加)で開かれ、その後も同じ趣旨のフォーラム開催が各地に伝播した。政府・与党の目指した合併がまだ目標の半分に留まっている一因は、「小さくても輝く自治体」からの反乱にあったとみて間違いない。
これからはそんな「小さいからこその輝き」を確信している町村と、「1万人以下はシャーベットにしてしまえ」とスケールメリットに固執する国・都道府県の連合軍が対峙することになる。シャーベットになるのは「アメ」に飛びついた依存派か、「ムチ」を覚悟して自立の道を選んだ独立派か。

「コラム・Samurai Mayors」

(引用終了)
by kanconsulting | 2007-04-22 10:33 | 経済状況
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