皆様は、宮崎県の綾町(あやちょう)をご存知でしょうか?
『綾町(あやちょう)は、宮崎県の中西部に位置する町で、東諸県郡に属する。「有機農業の町」、「照葉樹林都市」などをスローガンとする町おこしの成功例として知られ、自然の中での人間らしい生活を求める全国各地からの移住者が後を絶たない。 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 『綾町は宮崎県の中央に位置し、町の面積の78%が山林、そのほとんどが国有林、公(県)有林だった。そのため、山の仕事を主な産業とすることは考えられなかった。また、農地は河原の状態で、野菜は全部宮崎市の市場から買ってくるような生活だった。 1960(昭和35)年に綾川総合開発事業が終わるとこれを境に、営林署の仕事の機械化とモータリゼーションが進み、町民自身が「夜逃げの町・人の住めない町・若者が出稼ぎに行く町」と呼ぶほど過疎化がすすんだ。ピーク時人口11,500人がついには7,300人を割ったこともある。 その町が県内外から人が押しかけ、徐々に活気をとりもどし、今では何と年間120万人もの観光客が訪れており、人口も昭和55年以降徐々に増加し、現在人口7,500人以(2003.11.1調べ)、過疎振興地域の指定を外れたという。これは、日本の中央に位置する愛知県は常滑市の観光スポット、「焼き物散歩道」に訪れる観光客が年間33万人というから、驚きの数字ではないでしょうか。「宮崎県 綾町(あやちょう)に学ぶ」』 『綾町は主要産業だった林業の衰退で、「夜逃げの町」と呼ばれていました。町内から診療所がなくなり、学校の身体検査も自前では出来ないほどでした。1966年に、国内最大規模の照葉樹林(国有林)の伐採計画に反対したことをきっかけに、澄んだ水と土壌を生かした有機農業に力を入れ、全国から注目されるようになりましたが、当初は国有林の伐採で一時的に雇用が増えることから、伐採賛成の空気が強かったそうです。当時の町長、郷田實氏(故人)が第二次大戦従軍中に生への執念をかきたてた故郷の山河への思い、木工を町おこしの核にしようとしていたのに肝心の山林を丸裸にされることへの反発などから、町内を説得。無農薬有機栽培の作物だけを対象にした「価格補償制度」などの施策で、有機農業を普及させました。今では人口約7500人の町に、年間120万人の観光客が訪れるそうです。「毎日新聞」』 ですが、このケースについても、「これも、ラッキーな小規模町村のケースであり、大多数の地方自治体には当てはまらないのでは?」という方もいるでしょう。 私は、「そうではない。地方自治のトップが地方自治の本旨を十分に理解して、レント・シーカー(税金へのタカリ、無駄飯食らい)、利権、ムダ、不要な慣行を排除して、住民の理解と協力を得ることができれば、基本的にはどの自治体も、緊張感ある自立した地方自治が可能である」と指摘します。 レント・シーカー たとえば、多すぎる公務員、準公務員が相当するでしょう 利権 たとえば、業者との癒着や、不必要な公共工事がどれほどあったでしょうか? ムダ たとえば、ムダな工事は、年度末には多く見られますね 不要な慣行 たとえば、なぜ税金を単年度ごとに使い切るのでしょうか? 以前も指摘しましたが、総務省の論理では、人口1人当たりの地方交付税・補助金の比重が大きい小規模な自治体を合併させることで、自治体の行財政能力を高め、国の財政赤字を減らすことができると考えているようです。つまり、「合併は日本を救う切り札」ということなのかも知れません。 しかし、これは、住民不在の、言わば机上の論理に過ぎません。考えますと、自治体の規模を大きくすれば、中心地以外では逆に過疎化が進み、生活環境・自然環境が劣化するというのが普通でしょう。そもそも、国には財政余力がない中で、起債によって合併の優遇措置をするということには違和感があるでしょう。 これまで見てきたように、自治体の行政サービスは、自治体の覚悟と努力により、自主財源の範囲内に納めることが十分可能なのです。それ以上に税金が必要なのだとするならば、それは、レント・シーカー(税金のタカリ、無駄飯食らい)、利権、ムダ、不要な慣行による、「消えていく税金」なのでしょう。 「日本を救う切り札」は、住民の足元から、地方自治のあり方を見直してアクションを起こしていくことなのでしょう。ですが、地方に比べても国の負債はあまりに大きく、その程度のアクションでは焼け石に水だというのが、普通の理解でしょう。 --- では、私は、なぜしつこく「交付税に頼らない、持続可能性のある地方自治」にこだわるのでしょうか?このブログのテーマである「国家破綻(国家財政破綻、日本国破産)」と、こういった地方自治はどのように関連するのでしょうか? 端的にいいますと、 ・国家財政破綻という緊急時においては、コミュニティの地域住民で助け合って生きていくしかない(アルゼンチンのケース) ・そこまで行かなくても、通貨や資産の価値が大きく失われる金融混乱を想定した場合には、否応なく「国の補助金・税金・年金に頼らない生活」を強いられることとなる(ロシアのケース) ・小規模の自治体のほうが自分たちのコミュニティを支えようという気持ちが強く、万が一の混乱にも力強く生きていくことができる ・国家財政破産がなくても、これからの増税・高負担社会を想定した場合に、負担が小さく生活しやすい地方自治には大きなプラスの価値がある 「俺たちは俺たちのやりたいように生きていく。税金を無駄遣いばかりするような政府には、大切な生活をジャマされたくない。」という方々にとっては、華美ではないコンパクトな生活は、魅力的に写るのではないでしょうか。 仮に今日、国家財政が破綻しても、現実問題として、私たちは、明日も明後日も食べて生きていかなくてはならないのです。仮にその時が来るとするならば、どのような生き方を選ばれますか? 以前の記事も参照ください。 (転載開始) 合併しない宣言 福島県矢祭町 小規模町村の維持可能性 行政コストと自主財源 国家破綻と地方自治(1) 【総務省】 国の財政赤字を考えて、人口1人当たりの地方交付税や補助金の比重が大きい小規模な自治体をなくしたい。合併が自治体の行財政能力を高める有効な方策であり、「合併は日本を救う切り札」と思っている。統計数字から弾き出した、いわば机上の論理だ。 【矢祭町】 自治体の規模を大きくすれば、中心地以外のほとんどの地域は過疎化が進み、やがて地域は生活環境も自然環境も劣化して崩壊して行く。小規模の方が自分たちの地域を支えようという愛着心が強い。「そもそも国は1000兆円を超える借金を抱えてカネがないといっているのに、また膨大な借金をして合併の優遇措置につぎ込もうということがおかしいんだ。そんなカネをもらったって、たった10年間の夢まぼろし、手切れ金みたいなものですよ」「カネは窮屈な方が自立の気持ちが起こる。財政的には厳しくても、耐え忍んでも自立することが大事なんだ。自立の精神こそが日本の国力を伸ばす、日本の将来によほど大きな力になる」 --- 「自治体の財政悪化指標 「夕張ショック」の後に」 「そもそも自治体自身が倒産することはありません」とは、倒産処理の法制が無いから倒産できないだけで、倒産しないという本質的理由が明示されていません。「地方自治体が破綻した場合、国が直接保証する」とは書かれておらず、あくまで間接的な表現なのです。 交付金・補助金が減額される中で、本当に「地方債の元利償還に必要な財源を国が保障」することができるのでしょうか?「自らの課税権に基づいて」とありますが、本当に「課税権」だけでまかなったら住民は逃げ出すのではないでしょうか?また、将来的には、誰が地方債を引き受けるのでしょうか?(中略) 平均的な「自治体の財源に占める自主財源収入の割合」は約38%で、残りは依存財源(中央政府から支出されるお金、市町村の場合には都道府県からのお金を含む)です。そもそも、経済成長が期待できない自治体が、身の丈に見合った財政運営をせずに、過度に借金(地方債)に依存してきたということ自体が間違っているのではないでしょうか。 --- 「財政再建~富田俊基と木村剛が語るイタリアの事例」 「強烈だったのは97年度予算でした。【歳出面】では ①地方自治体に課税自主権を付与する代わりに 国からの支援を大幅に削除し、 (中略) このような財政再建のためにさまざまな努力を毎年積み重ね、それが実を結んで、ようやくイタリアは財政危機を脱することができたのです。 --- 「地方財政・地方債の状況について」 ①(中略)本筋を言えば、 ・赤字債ではなく、支出の切り詰めと資産の売却 ・地方債の、債務カット・金利減免・リスケジュールの法制化 ・つまり、住民と債権投資家にもリスク負担を求める でしょうか。 ②全市町村の財政の健全性は国を上回るといいますが、これは表現が間違っています。 『全市町村の財政の健全性は悪いが、国の財政はさらに悪い。』が正しい表現です。 --- 「裏金を燃やす 地方自治の本質とは?」 『このような裏金作りは、中央官庁や地方公共団体といった公共機関でも、世間の目が厳しくなるまでは大々的にやられていたようです。警察や、法務省等でもやっていたようです。過去の中央官庁や地方公共団体の裏金事件では、関係者は殆ど刑事責任を問われないで、事件の幕引きがされました。岐阜県の裏金事件もそうなるのでしょうか。』 (中略)現状は次のようなのではないでしょうか。 ・国民の税金は、官公庁がムダ遣いしてもよく、万が一発覚しても、上層部は責任を取らなくても良い。 ・役所の仕事は、役所の決めた内部ルールが国民の利益に優先するので、国民に監視をさせてはならない。 ・そのためには、情報をできるだけ公開せず、やむなく公開する場合でも内容を制限してわかりにくい公開が前提。 岐阜県という、さして大きくない県で、17億円の裏金(現在までに発覚している分だけ)です。国では、どれほどの裏金、リベート、キャッシュバックがあったのでしょうか。 --- 「「大阪破産/吉富有治」と国家破綻(国家破産・日本破綻・日本破産・財政破綻・財政破産・国家倒産)」 「地方自治体は、結局は国が支えるから大丈夫」との意見もあるかと思います。ですが、なかなかそうは思えないというのが大阪の実情です。このように地方から徐々に財政崩壊が進行してくるのだと思うと、暗澹たる思いになります。(中略) 大阪市のような巨大な自治体を、果たして国が支えることができるのでしょうか。それは、困難といわざるを得ませんね。もはや国にも財政余力が残されていないためです。(中略) そして、国の財政破綻国家破綻(国家破産・日本破綻・日本破産・財政破綻・財政破産・国家倒産・日本国倒産)においては、国民にツケがまわるというのも、既定路線と考えます。 --- 「夕張市破綻 国は責任を負わない 地方債の債務は免除しない 次はどの自治体かそれとも日本国か」 (4)国はどうなるのか 「国の危機のほうが根深い中で、地方だけが財政規律について考えることはむなしい」というご意見があります。もちろん、地方の放漫経営は許されるべきことではないのですが、額的には、地方の債務よりも国の債務のほうがはるかに大きく、毒(国の債務)を食らわば皿(地方の債務)とも言えるでしょう。 また、地方が破綻したからとって必ずしも日本全体もそうなるとは言い切れないのですが、それは「地方の破綻を債権放棄で処理してもらう」か「日本全体として地方の負債を処理する体力がある」場合です。 「地方の破綻を債権放棄で処理できず」「日本全体として地方の負債を処理する体力もない」場合には、地方を引き金とした、国家的な危機があっても仕方ありません。 --- 「「貸付金」とは何か? 貸付金に関する記事 国の資産としての貸付金は不良債権か?」 さて、これまで見てきたように、地方自治体はおおむね財政状況が厳しく、昔から3割自治と言われるように、自主財源だけでは運営できない状況が続いています。その中で、地方自治体への貸付金は、実質的な補助金であり、ロールオーバー有りの無期限貸付と考えることができます。なぜならば、国と地方自治体は、日本国全体で見れば連結ベースで親会社と子会社のようなものであり、交付税と貸付金はその中でのキャッチボールのようなものでしかないためです。 夕張市のような事例を見るにつけ、「貸付金が不良債権となっている割合が大きいのではないか?」という疑問に、「夕張市は特殊事例であり、そのほかの地方自治体はすべて健全経営であり、貸付金の焦げ付きは100%存在しない」と答えられる人はいないのではないでしょうか? --- 「人口統計に基づいた未来予測~自治体破綻 経済状況の発展段階説(3)」 東京のベッドタウンである多摩市は、少子高齢化による労働人口と税収の減少、公務員の大量退職による多額の退職金の支払い、公的施設の老朽化など、複数の要因によって、近い将来の自治体財政破綻の可能性が極めて高いと予測されているとのことです。このうち、公務員退職金については、そのための特別債を起債するほか無いだろうとの識者のコメントが紹介されていました。 さて、人口統計に基づいた未来予測は、一般的な予測より精度が高いとされています。(中略)そこから予測される項目としては、これまでも紹介していますように、 ・現行制度のままでは所得税収・住民税収は減少する ・医療・福祉に関する支出は減らすことが困難 ・税負担や保険負担を増加し、高負担社会とせざるを得ない です。 --- 「増税なき財政再建は可能か? 法人税・企業業績・経済成長・自然増徴? プライマリーバランス達成可能?」 なぜならば、税金・特別会計・その他公金へのタカリの存在(タックス・イーター、レント・シーカー)が、巨額の財政赤字を作った一因でもあるからです。これら、ムダ飯食らいを一掃処分しないことには、日本に未来はないのだと、厳しく指摘します。 (中略)こういった「国の生産性への寄与が乏しい」公共投資を、「景気刺激のため」と称して続けてきたことが、どれほど国全体にとってマイナスになったことか、うかがい知れません。 (転載終了)
by kanconsulting
| 2007-05-08 23:16
| 経済状況
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