株式売り出し1兆円 「銀行等保有株式取得機構」などが主体 株価下落圧力 意思決定は公正・独立か?

少し古いニュースですが、日本株式の需給バランスは、「売り」に圧力があるように思います。もちろん、株式の売買は、売り買いが同数となりますが、こういった圧力は、株価にとって、下げエネルギーとなります。

では、そもそも、政府の「銀行等保有株式取得機構」は、どれほどの株式を保有していたのでしょうか?ニュースからは、以下のように読み取れます。

簿価ベース 2兆円
含み益    1.8兆円
時価ベース 3.8兆円

さて、各国の株式市場の時価総額を見てみましょう。

日本 東証一部      564.8兆円(2007/4)
アメリカ NYSE      18.7兆ドル(2006/03)
中国 上海・深セン市場 1.78兆ドル(2007/4)
    香港市場      1.77兆ドル(2007/4)

「500兆円以上の時価総額にとって、1兆円の売り出しは、大した圧力とはいえないのではないか?」と思われるでしょうか。一言で言いますと、「1兆円の売りに買い向かうのは、大変だ」ということですが、タイミング、銘柄、売り方などに左右されますので、なんともいえないというところです。

さて、この「銀行等保有株式取得機構」は、設立の目的やいきさつに、いろいろ問題があったように思います。本日は、それも済んだこととして、深く追及しないこととします。

それ以上に問題なのは、「日銀は株式の売却にあたって、・・・野村証券に助言や調査を委託している」というくだりです。野村證券にとっては、「日銀に、どのタイミングで、どれくらい、株式を売らせるか」という意思決定に関与できそうな立場にあるとも、読み取れます。また、銀行等保有株式取得機構の、売却に関する意思決定が、どんな金融機関からも独立した、秘密の保たれた行為であったかどうかについても、ここからは読み取れません。逆に言いますと、こういった「大型の売り」を事前に知ることができれば、空売りで儲けることができるのです。それによって失われるのは国民の税金、つまり、損をかぶるのは国民なのです。

何度も指摘しているように、日本の株式市場には、何か公正ではない存在がいます。今後も注視が必要なニュースだと思います。

関連した過去の記事を転載します。

(転載開始)

「「日興コーディアル証券」東証上場維持の闇 ライブドアと比較 粉飾決算を推奨? あからさまな圧力とは」

それは、日本株式市場には、恣意的な判断でルールが捻じ曲げられるリスクがあるので、信用してはならないということです。もっと言うと、「恣意的な判断、何でもあり、俺がルールだ」というような株式市場に投資することは、政情が不安定な国や、法制度が未整備な国への投資と変わりありません。

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「日本株式投資の真実」

このように、日本株式は、「投資家への還元姿勢が弱い上に、投資家を損させる」のです。

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「会計監査のはらむリスク ~日本市場にひそむ悪」

「資本市場の取引は企業の経営内容の正しい開示が前提」なのです。この前提が裏切られている以上、「財務諸表を信じない」「日本株では長期株式投資をしない」というのが、適切な自己防衛です。

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「ライブドアショック ~すべての皆様に」
「「儲かる株の本」「儲かる外貨取引の本」にはご注意」
「「儲かる株の本」「儲かる外貨取引の本」にはご注意(2)」
「「儲かる株の本」「儲かる外貨取引の本」にはご注意(3)」
「投資本の9割はクズ~「儲かる株の本」「儲かる外貨取引の本」にはご注意(4)」

(転載終了)

関連したニュースを引用します。

(引用開始)

株式売り出し1兆円に迫る、取得機構が「主役」

株式市場での上場企業株の売り出し総額が、2006年度に9987億円となり、1兆円に迫った。前の年度に比べて4%増加、2年連続で増えた。政府の銀行等保有株式取得機構が06年度から売却を始めたことや、金融機関が保有株を売り出したことが主因。バブル崩壊後の株価下落で長年“凍結”されてきた持ち合い株式が、株高を背景に市場に放出されているようだ。
新興市場上場銘柄と金融株を除く全上場銘柄を対象に売り出された株式を集計、新規株式公開に伴うものは除いた。売り出しは発行済み株式数が変わらないが、市場に流通する株式数が増え、需給悪化要因となる。 (17:38)

日本経済新聞

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日銀 10月から保有株売却を本格化 含み益1兆8000億円

金融システム不安の回避や株式の持ち合い解消を目的に金融機関の保有株式を買い取ってきた日銀が、今年10月から株式売却を本格化させる。株価が低迷していた2002年から買い取りを始めており、その後の株価回復で含み益は約1兆8000億円に達しているとみられる。株式相場に悪影響が出ないよう市場動向を慎重に見極めながら、今後10年以内に売却を終える方針だ。
日銀の買い取りは、金融システム再生に一定の役割を果たす一方で、結果として、売却により多額の売却益をもたらす可能性が高い。売却益は大半が最終的に国庫に納付されるとみられる。02年11月から04年9月までに日銀が当時の市場価格で買い取った株式は、簿価ベースで2兆円に上る。買い取り当初の日経平均株価は1万円を割り込んでおり、その後の株価上昇で、多額の含み益が発生している。第一生命経済研究所の試算によると、平均株価が1万7287円となった今年3月末現在、時価から簿価を差し引いた含み益は、約1兆8000億円に達しているようだ。日銀は株式の売却にあたって、具体的な指針を近く詰める方針で、指針策定について、野村証券に助言や調査を委託している。日本の金融機関は当時、企業との株式持ち合いにより大量の株式を保有しており、株価下落による多額の含み損の発生が、金融システム危機につながることが、懸念されていた。また、さらなる損失拡大を避けるため、銀行が株式をこぞって売却し、一段の株価下落を招くという悪循環に陥っていた。株価下落のリスクを排除するため、日銀以外にも、政府が02年に、金融機関だけでなく一般企業の保有株の受け皿となる「銀行等保有株式取得機構」を設立。02年2月~06年4月に約1兆6000億円分を取得した。今年度から株式放出を本格化させたが、含み益は約1兆円弱とみられている。
株式市場では、日銀の買い取りについて、「中央銀行がリスクのある株式を買い取るのは異例の措置で、銀行救済との批判に加え、中央銀行としての信頼低下が懸念されたが、結果として日本発の金融危機を回避する上での緊急避難措置として一定の効果はあった」と評価する声が多い。

FujiSankei Business i.

(引用終了)
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by kanconsulting | 2007-05-27 22:36 | 経済状況
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