皆様もご存知だと思いますが、特殊法人の12兆円の欠損金を広義の税金で穴埋め(欠損金と出資金の相殺)していたことが、報道されました。この12兆円という金額は、ほぼ、1年間の消費税額に相当します。
私の知る限り、このニュースを報道したのは「日経」だけで、朝日・読売・毎日などの全国紙は全く報道していませんし、テレビニュースも確認していません(少なくとも、大きな扱いにはなっていません)。いったいなぜでしょうか? この54の特殊法人のトータルの損失総額は12兆円ですが、それは事業の失敗などで積み上げた損失とされています。独立行政法人に再編した時に、その累積損失を、「政府出資金」で穴埋めしたということです。このケースにおいては、穴埋めに使われたのは「政府出資金」ですが、その出資金には建設国債などをあてており、「広義の税金」と言えます。 一般的な会計の考え方からは、 ・当期純利益・・・次年度の資本金に繰り入れ ・当期純損失・・・次年度の資本金から持ち出し(繰越損失金) ですが、実際には、非日常的かつ多額の費用・損失は、特別損失として扱うケースも多いようです。 さて、この問題の本質は何でしょうか? それは、「主権者であり、納税者であり、最終責任負担者である『国民』が不在」だということではないでしょうか?真の民主主義とは、政府(国)が、正確で判断に足るデータを、都合の良いものも悪いものも含めて国民に開示・説明し、政策についての合意・納得を得ることではないのでしょうか? 「単なる会計上の処理であり、結局返ってこないカネを処理したまで。国民不在とまでは言えないのでは?」という方がおられるとしたら、私は次のように厳しく指摘します。 「過去に、国の税金を投入して救済した政府系機関、準公的機関、金融機関は多いが、そのうちどれだけのトップが、『国民の税金を食いつぶして申し訳ありませんでした。責任を取ります。』として、私財をなげうって責任を取ったのでしょうか?マシなところで引責辞任であり、その他多くのケースにおいては、トップの責任者は退職金を満額支給されているのではないのでしょうか?こういった個々のケースにおける責任・倫理観の不在が、つまるところ、1000兆円もの長期公的債務の一因なのではないのですか?一言で言うと、国民の税金を、あまりにもバカにしているのではないのですか?」 「結局返ってこないカネを処理したまで」というご意見に対しては、 「公的長期債務は返せません。仕方がありません。つきましては、皆様の税金で返済します。」と似たようなロジックであり、「仕方がないから許されるという考えは誤りだ」と指摘します。 このブログでは、一貫して次のように述べてきました。 (転載開始) 日本円の信認は、日本国債の信認と表裏一体です。日本国が「公的長期債務についての考え方」をしっかり主権者であり、かつ最終負担者である国民に説明して、信認を得る必要があるのですが、どうも本気で説明する気はなさそうです。(中略)政権が国民に国の財政状況について説明するのは、憲法に定められた事項です。もっと説明責任を果たしていただきたいと思います。 公的債務は、将来の国民の税金で返済することが予定されており、国民への潜在的負担と考えることができる。巨額の公的債務により国家財政の維持可能性を損なったこと、潜在的国民負担を増大させたことに対する、国から国民への「納得できる説明」がない。 本来の民主主義とは、国が国民にデータを開示し、その批判に耐えることです。つまり、国民一人一人が無駄遣いを許さないように監視の目を光らせることが、健全な民主主義には必要なのです。 (転載終了) 大事なことなので、繰り返します。 ・国の税金を投入して救済した(準)公的機関・金融機関において、筋論においては、トップは私財をなげうって責任を取るべきである ・こういった責任感・倫理観の不在が、税金の無駄遣いを生み出し、1000兆円もの長期公的債務の一因となった ・国(政府)は、主権者であり最終責任者である国民に対して、説明責任を果たすべきである (引用開始) 政府、欠損12兆円穴埋め・特殊法人の独立法人移行時 政府が2003年度以降、雇用・能力開発機構、宇宙開発事業団など54の特殊法人を49の独立行政法人に移行する過程で、総額12兆円の繰越欠損金などを政府出資金で穴埋めしていたことがわかった。新法人に移行する際、過去の損失を民間企業の資本金にあたる政府出資金で相殺し、減資した。明確な説明をしないまま巨額の政府出資金を消した形で、政府の説明責任が問われそうだ。 特殊法人や独立行政法人は貸借対照表の「資本の部」に政府出資金を計上しており、これが民間企業の資本金にあたる。損失は特殊法人の事業の失敗などで積み上がり、総額で12兆円あった。2003年度から2005年度にかけて特殊法人を独立行政法人に再編した際、政府は累積損失を出資金で相殺。その結果、38兆円あった政府出資金は26兆円に減った。(07:01) ニッケイネット --- お手盛り?!独立行政法人 【PJ 2007年04月26日】- 4月25日の日経新聞によると、政府は2003年度以降、雇用・能力開発機構など54の特殊法人を49の独立行政法人に移行する過程で、総額12兆円の繰越欠損金などを政府出資金で穴埋めしていたことがわかった。 そもそも“政府出資金”とは何か?これは民間企業でいえば、“資本金”にあたるものだ。民間の企業では会社を設立するときに株主から出資金をつのって“資本金”を確保する。それに対し“政府出資金”は建設国債の発行などで賄っているので、実質は国民が出資していることになる。特殊法人は事業の失敗などで損失を積み上げ、損失総額は12兆円にのぼった。その損失を、特殊法人を独立行政法人に再編した際、累積損失を“政府出資金”で相殺したというものだ。 このような損失補填を民間の会社でするには、いわゆる“減資”(資本金額を減らす)という処理をするが、それには大変複雑な手続きを必要とする。“減資”には“有償減資”(株主に財産を払い戻す)と“無償減資”(資本金の計上額を減らして剰余金の計上額を増やす会計上の操作にすぎない)がある。今回の穴埋めは、欠損金補填のための“無償減資”にあたる。しかもその金額は1990年代の金融危機で政府が大手銀行などに資本注入した公的資金とほぼ同額ということだ。 独立行政法人は実質上、国民が出資者であるから、国民の承諾を得た上でこの“減資”を行うべきであった。それをも行わず、政府機関内で勝手に処理してしまったのだから、これは“お手盛り”と言われてもしようがない。そもそも公共と民間の中間にある独立行政法人自体が、両方の甘い汁を吸って成り立っているのだから、不公平感が生じる。民間の企業と同等の厳しい法体制を築くべき時にきているのではないか?【了】 ライブドア・ニュース (引用終了)
by kanconsulting
| 2007-04-30 14:48
| 経済状況
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