骨太の方針2007 成長重視路線の政策レベルが低い 財政改革では後退 国家財政の行く末は?

先日、「骨太の方針2007」が発表されました。

いろいろ問題点はありそうですが、最大の問題は、「(1)成長重視路線を言う割には、政策レベルが低い。かつ、(2)財政改革では後退している」ということになりそうです。

(1)成長重視路線の政策レベルが低い

「一人当たりの労働生産性の伸びを「五年間で五割増」との目標を掲げた」とありますが、需要が伸びないままに労働生産性を上げると、単位時間の労働コストが下がるか、失業が増えることは避けられません。この「五年間で生産性50%増」は、年間に換算すると、8~9%アップとなります。それだけの需要増加に見合ったものでないならば、大きなデフレ圧力となることは自明でしょう。それを言うなら、「生産性向上ではなく、付加価値アップ」が本筋でしょうね。

また、「最低賃金の引き上げ」は、格差緩和を狙ったものと推察しますが、それだけでは、格差社会の根本的な解決にはなりません。なぜならば、実物経済の裏づけがなく日本の人件費があがるなら、生産設備(機械)で代替するか、より安い人件費を求めて、海外へのアウトソーシング、外国進出・外国人労働者の活用にシフトするだろうからです。その結果、逆に最低賃金層の雇用が減少するかもしれません。

以前の記事「経団連・法人税と格差社会 グローバリズムとトリクルダウン効果 ホワイトカラー・エグゼンプション(3)」で、「格差社会のトップが富むことで、底辺がおこぼれにあずかることができるという『トリクルダウン効果』は、実際には否定されている」と述べました。日本でも同じです。富裕層がますます富んでも、格差の底辺にはまったく恩恵がないのです。

(2)財政改革では後退

今年は、「公共事業費の削減」は、見送られています。参院選を前にして、「地方経済への配慮=バラマキ」が必要だ、ということなのでしょう。公共事業費は、日本では、地方経済に円を還流させる、一種のヘリマネとして機能してきた面があります。それをまたやりたい、ということなのでしょう。このブログでは何度も指摘していますが(※)、「国の生産性への寄与が乏しい」公共投資を、「景気刺激のため」と称して続けてきたことが、どれほど国全体にとってマイナスになったことか、うかがい知れません。

なぜ歳出削減が必要なのでしょうか?一言で言うと、大きな政府のもとでは、国民は限りなく貧乏になっていくからです。国民の監視の行き届かない「大きな政府」が必ず腐敗することは、歴史が証明しています。そのツケは、国民が払うことになっているのです。

※過去のエントリーも参照ください。

「増税なき財政再建は可能か? 法人税・企業業績・経済成長・自然増徴? プライマリーバランス達成可能?」

なぜならば、税金・特別会計・その他公金へのタカリの存在(タックス・イーター、レント・シーカー)が、巨額の財政赤字を作った一因でもあるからです。これら、ムダ飯食らいを一掃処分しないことには、日本に未来はないのだと、厳しく指摘します。(中略)こういった「国の生産性への寄与が乏しい」公共投資を、「景気刺激のため」と称して続けてきたことが、どれほど国全体にとってマイナスになったことか、うかがい知れません。

「「ワイロ・カルテル・談合」はなぜ悪いのか? ~日本の「公共事業支出/GDP比」は他国の2倍~」

これまで、このブログでは、「国家予算(一般会計+特別会計+地方)がGDPの半分に到達しており、正常な財政運営とは言えない」「日本の公共投資は、投資に見合ったリターンが得られておらず、ムダが多すぎる」「予算を使い切ることが目的となっており、国民の税金を扱っているというモラールが崩壊している」などと指摘してきました。(中略)小職はこのブログにおいて、「単に穴を掘って埋めるだけでも、乗数効果がある」とするケインジアン的発想を、「もはやそのような時代ではない」と厳しく否定してきました。なぜならば、そのような「統制経済」の行き着く先は、国全体の終焉であるからです。そのことは、ソビエト連邦を含む共産圏諸国のたどってきた道、あるいは北朝鮮の現状を見ればわかるはずです。

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以下、関連したニュースを掲載します。

(開始)

骨太の方針2007 “百花繚乱”で改革路線後退

政府が19日決定した経済財政運営の基本方針「骨太の方針2007」。目前に迫った参院選を強く意識した結果、安倍晋三首相が掲げる政策理念や国民の耳に聞こえのよい項目を羅列した“百花繚乱”の内容になった。一方で、自民党などの抵抗勢力が暗躍し、“消えた年金”ならぬ“消えた項目”も多く、小泉純一郎政権が掲げた「構造改革路線」の後退を懸念する声が高まっている。(中山忠夫、那須慎一)
安倍首相が初めてまとめた骨太の方針は、A4判サイズで52ページ。最少で27ページに収まったこともある小泉政権時代に比べると2倍以上に膨れあがった。「安倍内閣で初めての骨太でもあり、ある程度広範にわたることはやむを得ない。(ページ数が増えたのは)項目ごとに見やすくするためで、余白も多くある」原案を決定した今月12日の会見で、大田弘子経済財政担当相は、「総花的」との批判に、苦しい弁明に終始した。

◆小泉改革「揺り戻し」
今回の方針の最大の特徴が成長力の強化。労働生産性の向上や地域経済の活性化を盛り込んだ「成長力加速プログラム」を目玉と位置づけている。国民に痛みを求めた小泉改革からの「揺り戻し」(自民党幹部)もあり、安倍政権は発足当初から、成長重視を掲げてきた。財政再建でも成長による税収増に軸足を置いており、その姿勢が方針にも反映された。国際競争力強化のための生産性向上では、5年間で伸び率を50%引き上げるという「数少ない明確な数値目標」(民間エコノミスト)が明記された。グローバルな市場間競争を勝ち抜くため、「金融・資本市場競争力強化プラン」を年内に策定し、証券や商品先物などを総合的に扱う取引所の検討や銀行と証券の垣根規制の緩和も打ち出した。小泉改革の「弊害」と指摘され、年金問題が浮上する以前は参院選の最大の争点になるはずだった「格差問題」にも力を入れた。人材や資金を集中的に投入し地域経済の再生を図る「地域力再生機構」の創設もその一つだ。
だが、一方で先送りされたり、消えていった政策も少なくない。一定の条件を満たした社員を労働時間規制の対象外とする「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」。経済財政諮問会議の民間議員は労働生産性の向上で国際競争力を高める“労働ビッグバン”政策の柱に位置付け、導入を迫った。ところが、「残業代ゼロ制度」との批判が各方面から噴出。安倍首相は参院選への影響に配慮し1月には早々と今国会への関連法案の提出見送りを決めた。国際線の便数や就航する航空会社の決定に政府が介入せず、民間の自由な判断に委ねる「オープンスカイ」構想。5月16日の最終報告では、海外から乗り入れ要望が多い羽田、成田の両空港について、「将来課題」と表現するにとどまった。「発着枠が満杯」というのが表向きの理由だが、航空交渉の権益を手放したくない国土交通省や運輸族議員が猛反発したことが影響した。焦点だった羽田の国際化、24時間化も「早朝・夜間の国際チャーター便拡大」と大幅に後退した。

◆「3%削減」見送る
極め付きが、歳出削減の象徴である「公共事業費」だ。小泉政権の5年間で約4分の3の水準にまで大幅削減され、昨年度の骨太の方針では、11年度まで「毎年1~3%減らす」との数値目標が決まっていた。今年も民間議員が素案に「3%削減」の明記を求めたが、結局、見送られた。参院選を前に「地方経済への配慮」を求める与党議員らの意向が強く働いたためだ。「昨年決めた方針を守っていくのは想像以上に難しい」大田経済財政相は12日の会見でこう本音を漏らした。骨太の方針を取りまとめる経済財政会議は小泉政権時代、首相官邸主導で郵政民営化などの構造改革を推進する原動力となった。だが、今回は、「役所が予算獲得のため、提案を競い、お墨付きをもらうための会議に成り下がった」(関係者)。かつての“ばらまき予算”への回帰も懸念されるなか、安倍首相の指導力が問われている。

≪エコノミストの採点≫
□BNPパリバ証券 河野龍太郎氏
■メリハリが重要だが
【50点】
労働力が減少するなかで、日本の労働生産性の伸び率を5年間で5割増にすることを、年限を決めて目標として掲げたことは評価できる。ただ、安倍内閣初の基本計画ということで、多くの項目が盛り込まれているのはやむを得ないといえるが、今年の諮問会議を見る限り、各省での審議会での決定事項を各大臣が読み上げる場になってしまったように思う。
すべての項目を実現するために、財政再建が滞る事態になるとは思わない。しかし、本来は、重点項目を決めて、必要な政策には十分の予算を配分し、メリハリをつけることが重要だが、結果的に一律で抑制されるということになりかねないと懸念している。

□第一生命経済研究所 熊野英生氏
■ぼやける格差是正策
【65点】
景気回復の恩恵を受けられずにいる若年フリーターや中小企業、地方などへの配慮を打ち出した。参院選対策との批判もあるが、経済成長の果実を弱者にも配分しなければ、国民の暮らしが本当に豊かになるとは言い難い。
ただ、「ジョブカード」や「ふるさと納税」などは耳に聞こえがいいだけで、構造的な問題の解決にどれだけインパクトがあるのか未知数だ。格差是正という本来の目的を矮小(わいしよう)化しかねない。経済が正常化しつつある現在では政策の絞り込みも難しく総花的に映るのはやむを得ないが、全般的に官僚主導との印象が否めない。官から民への改革を逆行させないためにも、首相の強い指導力が求められる。

FujiSankei Business i. 2007/6/20

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社説 骨太の方針*存在問われる諮問会議(6月20日)

良くも悪くも「改革のエンジン」といわれてきた経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)は変質してしまったのか。政府の「骨太の方針二○○七」を読んでの率直な印象だ。首相が掲げる「戦後レジームからの脱却」「美しい国」という言葉ばかりが目立ち、喫緊の課題である財政再建や少子高齢化などにどう取り組むかの意欲が感じられないのだ。
たとえば歳出・歳入一体改革や社会保障改革、公務員人件費改革については、小泉純一郎前政権の方針を踏襲しているだけで、新たな方向性をほとんど示していない。
これでは諮問会議の役割を十分に果たしたとはいえず、その存在意義を問われることになる。確かに諮問会議の発足した○一年当時は、金融機関の不良債権問題など経済危機をいかに乗り切るかが最大の課題だった。郵政民営化というもうひとつの目標もあった。それに比べいまは景気拡大が続いていることもあって目標を絞りづらいのは分かる。だが、だからこそ諮問会議で何が経済運営の重点なのかを明らかにすべきだった。今回の骨太が最重要課題に掲げた「人口減少下における成長の実現」では、漠然としていてどこに力点が置かれているのかさっぱり分からない。結果的には参院選を意識して地域活性化から環境立国、教育再生まであれこれ盛り込んだのだろうが、かえって焦点がぼけてしまった。これまでの諮問会議は既得権を守ろうとする族議員や官僚などとのあつれきを乗り越え骨太を作り上げてきたが、最近はそうした話もすっかり聞かなくなった。むしろ骨太に盛り込まれれば予算要求に有利になるとばかりに、各省庁は躍起になっている。「各方面からの歳出増圧力はすさまじかった」(大田弘子経済財政担当相)という。骨太が予算のバラマキにつながるようなことがあっては困る。概算要求のたんなる前倒しではないのだ。前政権下の諮問会議の強権的ともいえる手法には異論もあるだろうし、改革そのものにも賛否はあるだろう。ただ、予算編成を官邸主導に切り替え、中期的な歳出削減の目標を設定したことは評価していい。諮問会議はこの基本姿勢を堅持し、さらに踏み込んだ対策を打ち出す必要がある。首相は骨太の正式名称を「経済財政運営と構造改革の基本方針」から「経済財政改革の基本方針」に改めた。前政権との違いをアピールしたいのかもしれない。だが、いま求められているのは名称の変更ではなく、諮問会議の議論を活発化し、日本経済の将来像を明確に示すことだ。

北海道日報

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【政治】
年金対応策も明記 骨太の方針閣議決定 構造改革は先送り

政府は十九日、経済財政諮問会議で経済財政改革の基本方針「骨太の方針2007」をまとめ、その後の臨時閣議で決定した。安倍晋三首相にとって初となる今回の方針は、経済成長力の強化や行財政改革に加え、政権が重視する環境立国戦略、教育再生を優先課題として「安倍カラー」を押し出した。年金記録不備問題の対応策も記述した。一方で、参院選を控え、消費税の議論を秋以降に持ち越したほか、公共事業費の削減幅を明記しないなど構造改革を先送りした。
安倍首相は「人口減少というこれまで経験したことのない状況の中で、経済成長を持続させるための改革に本格的に取り組む」との談話を発表した。
方針は、就労者一人が一定時間に働いて生み出す国内総生産(GDP)を示す「労働生産性」の伸び率を五年間で50%増とする目標を明記した。
個人住民税の一部を出身自治体に納めるなど「ふるさと納税」構想については具体化に向けて検討を進める方針を示した。地域の活性化策として、地方版の産業再生機構といえる「地域力再生機構」の創設をうたった。
このほか、米国、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)締結を将来課題に位置づけ、政権が重視する公務員制度改革や独立行政法人の整理合理化などを推進すると力説した。
年金記録不備問題については「加入者・受給者全員が、本来受け取ることができるはずの年金を全額間違いなく受け取ることができるようにし、信頼を確立する」と強調。相談態勢の強化や新たな年金記録管理システムの構築も挙げた。
政府は骨太方針の正式名称を「経済財政運営と構造改革の基本方針」から「経済財政改革の基本方針」に改めた。

東京日報2007年6月20日 朝刊

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【社説】
年金で増税も消える? 週のはじめに考える

国会が事実上閉幕しました。骨太の方針をみても、政策課題は山積みですが、国民の関心は年金問題に集中しています。財政再建論議にも影響は避けられません。「これは、国による振り込め詐欺だよ」。友人が“消えた年金”について、憤まんやるかたない表情で訴えます。なるほど、その通り。
つい、この間まで「国民年金の保険料をきちんと納めて」と大宣伝していたのに、肝心の年金を払う段になったら「あなたの記録はありません」とか「領収書を見せてください」とか言うんですから。国民が怒るのも当たり前です。単に、役所の不始末と言うには、あまりにコトが重大すぎる。表立っては言わないがこれが、どれほど深刻か。
政策課題が重要であればあるほど、年金記録不備問題の解決なしには、もはや議論は一歩も前に進まないのではないか、と思えるほどです。たとえば、財政再建も。
政府も与野党も、巨額債務を抱えた財政の危機を訴え、再建論議を重ねてきました。政府・与党は昨年、二〇一一年度までの五年間に一一・四兆円から最大一四・三兆円の歳出を削減する方針を決めて、ことしの骨太方針も追認しています。
基本的には、無駄や非効率をなくして歳出を最大限に切り詰めていく。それでも残る不足分については増税を検討する、という考え方です。政府はこの秋から、消費税の増税を視野に入れて、抜本的な税制改革論議を始める予定でした。
国民を直撃した年金問題の衝撃は計り知れず、そんな「増税シナリオ」を吹き飛ばしてしまいそうな勢いです。財務省はもとより、永田町や霞が関のだれも表立っては言いませんが「いまや、とても増税を言い出せるような情勢ではない」というのが、政策立案者のほぼ一致した見方です。それはそうでしょう。

未払いでは納得しない
「私が払った保険料さえ、きちんと記録をつけられないのに、なにが増税だ。とんでもない」。多くの国民が、そう感じるはずです。
増税するには、国民が納得できる理由がなければならない。そこで「増税分は年金財源に充てる」という考えが有力視されていました。
基礎年金の国庫負担割合は〇九年度までに、三分の一から二分の一に引き上げる方針が決まっています。その財源に消費税の増税を、という皮算用だったのです。
自民党の津島雄二税制調査会長をはじめ有力者の多くは、消費税の使途を社会保障に限る「消費税目的税化」にも賛意を示していました。
しかし、年金記録がいいかげんなままでは、そんな議論に説得力はありません。給付金の未払いが多数、残っているのに「年金財源に増税を」と訴えても、だれも納得するはずがないからです。
「発覚前」と「発覚後」では、まさに議論の前提が根底から崩れてしまった。政府に対する信頼が大きく揺らいでいるのです。
では、どうするのか。残念ながら、妙策はありません。何千万件あるのか知りませんが、不明分を調査するのはもちろん、年金加入者全員に記録を通知して照合する。社会保険庁の労働組合はボーナス返上に応じるようですが、夏休みも返上して、取り組んでもらいたい。
さて、年金問題を一段落させたとして、ほかの課題はどうなのか。先の骨太方針をみると、成長力強化や二十一世紀型行財政システムの構築、持続的で安心できる社会の実現といった章立ての下、環境立国や教育再生、少子化対策などの項目が並んでいます。
どれも重要には違いないのですが、総花的すぎる。あえて、課題を絞ってみます。まず、経済成長をしっかりと実現する。景気が上向き、企業は雇用を増やし始めました。一方で、物価はまだ下落しています。日銀は利上げを急がず、デフレ脱却に全力を挙げる必要があります。
改革は「隗(かい)より始めよ」。政府自身が公務員の身分格差をなくし、中央省庁の局長など幹部に民間人を登用する。有能な人材を公募し、特別スタッフ職として優遇する。政治任用も大幅拡大してはどうか。
地方自治体を含めて、行政サービスの電子化を徹底する。情報技術(IT)の利用者と最大のサービス産業は政府自身です。行政の生産性を高める工夫に取り組むべきです。
ただし、注意点が一つ。コンピューター業界にぼろもうけさせる必要はありません。一部には年金記録の検証を「絶好の特需」とみて、うごめく向きもあるようです。効率化はカネをかければいい、というものではないはず。

役所仕事に監視の目を地方分権と行政のスリム化は、最重要課題です。福祉や教育、環境、農業、まちづくりなど広範な分野で、国と都道府県、市町村の二重行政が指摘されています。「お役所仕事」の無駄と非効率を改める。
しっかり監視しないと、役人はいかにでたらめをするか。私たちも「失敗の教訓」を学ばねば…。

中日新聞2007年7月1日

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「構造改革」消えた 骨太の方針、閣議決定

政府は19日、経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)が取りまとめた国の経済財政政策の基本計画である「骨太の方針2007」を閣議決定した。今回が7回目で、安倍政権では初の方針となる。併せて、安倍首相は、同方針の正式名称を従来の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」から、「経済財政改革の基本方針~『美しい国』へのシナリオ~」に変更すると発表した。

■成長に軸足
小泉純一郎前政権の“看板”であった「構造改革」の文言を無くす一方で、昨年9月の自民党総裁選際に安倍首相が政権公約として掲げた「美しい国」を副題として掲げた。
諮問会議後に会見した大田弘子経済財政担当相は「安倍内閣の課題は、人口が減る中で成長を実現することや官主導の行財政システムを根本から変えることにある。具体的課題を盛り込むことができた」と、方針の狙いを説明した。
方針には、(1)「成長力加速プログラム」による労働生産性の伸び率の50%向上(2)世界的な競争に打ち勝つための日本経済のオープン化推進(3)歳出・歳入一体改革プログラムの確実な実行による財政健全化(4)社会保障のサービスの質向上と効率化-などを柱に盛り込んだ。
今回の方針は安倍政権が掲げた成長重視路線を鮮明に打ち出したのが最大の特徴。一方で、財政改革では踏み込み不足や後退が目立った。
08年度予算編成については「最大限の歳出削減を行う」としながらも、諮問会議の民間議員が主張した公共事業の「3%削減」の明記が見送られるなど、具体的な削減策は明確に打ち出せなかった。
税制改革に関しても2年ぶりに言及したが、「秋以降に消費税を含む本格的な議論を行う」との表現にとどまり、具体的な方向性を示すことを避けた。
一方で、年金不信に対応し急遽(きゆうきよ)、「加入者、受給者全員が本来受け取れるはずの年金を全額間違いなく受け取る」と明記した。

■参院選を意識
7月参院選が目前に迫るなか、痛みを伴う改革を先送りする一方で、選挙対策的な項目を多数盛り込むなど、“票”を強く意識した内容となった。
これに対し、大田担当相は、多数の項目が並び“総花的”との批判に対し、「教育な
ら教育でどこに重点を置くのか、メリハリをしっかりと効かせた」と反論。また、選挙を意識し財政改革に踏み込めなかったとの指摘に対しても、「歳出増の圧力は非常にあったが、首相の発言や指示でしっかりと押さえ込むことができた」と強調した。

                   ◇

≪骨太の方針2007に盛り込まれた主な項目≫

【歳出】
・08年度予算は最大限の歳出削減を行う

【税制】
・秋以降、消費税を含む税制改革の本格的な議論を行う

【地方】
・ふるさとへの貢献が可能となる税制(ふるさと納税)の実現
・地域の企業再生を支援する「地域力再生機構」の創設

【労働】
・フリーターや新卒者への就労支援
・職業訓練の履修や資格を記録し求職に役立てる「ジョブカード」の交付
・最低賃金の引き上げ

【国際化】

・羽田空港の国際チャーター便拡大。大都市圏国際空港の24時間利用推進
・株式や商品先物を扱う「総合取引所」を検討
・米欧とのEPA(経済連携協定)交渉の取り組み強化

【環境】
・温室効果ガス排出量を2050年までに半減
・サマータイムの早期実施を検討

【行政改革】
・すべての独立行政法人を民営化や廃止に向けて見直し

【教育】
・国立大学法人への運営交付金の配分を見直し

FujiSankei Business i. 2007/6/20
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by kanconsulting | 2007-07-11 02:47 | 経済状況
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