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世界同時株安と円高(2) サブプライムショック発の信用収縮はデリバティブ破産へ 世界恐慌の可能性

今回の世界同時株安に関連して、各国の中央銀行は、信用収縮に対応するために、流動性(簡単に言うとマネー)を供給しています。その額は、トータルで30兆円とも言われています。しかし、それにもかかわらず、世界株式市場は、大きく株安となっています。アメリカだけではなくイギリスの不動産バブル崩壊の可能性も指摘されており、これ以上の信用収縮には、世界経済はギブアップとなることもありえます。

過去のエントリーで、
『信用創造の縮小によって、50兆ドル(5000兆円)とも言われる巨額のデリバティブ(派生金融商品。非常に簡単に言うと、レバレッジの効いた権利取引)の焦げ付きも懸念されるところです(「「2011年金利敗戦」とサブプライムローン・デリバティブ破綻 国家破産のための保険を」)』
『このような信用創造の縮小は、過熱気味の世界景気に、ボディーブローのように効いてきます。それを先送りするかのようにジャブジャブに供給される円とドルですが、それとてもある一定の臨界点を超えると、巨額のデリバティブの焦げ付きもありうるのではないでしょうか(「アメリカ景気減速か サブプライムローン破綻 世界景気減速・世界同時株安ふたたび? 日本国破産の遠因か」)』
と書きましたが、まさに、サブプライムショック発の信用収縮が、デリバティブ爆弾に着火しようとしているように見えます。ですが、長期金利が上がっていないことから、不発に終わる可能性もあると見ています。

LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の破綻を思い出された方もおられると思います。あの時も、質への逃避が起きました。今回も、主要通貨の長期金利は上がっていません。

ただの、中規模の世界株式調整であって欲しいが、最悪の事態(デリバティブ破綻による世界恐慌)も想定しなければならない、と主張します。また、デリバティブ破綻が起こらなくても、この調整は、グズグズと数ヶ月続く可能性がある、とも指摘します。

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さて、以下は、主にニュースを貼り付けて紹介するためのものです。世界同時株安(サブプライム・ショック)の見通しについては、別途エントリーを掲載します。

(引用開始)

主要国中銀、市場安定化へ3営業日連続で資金供給2007年08月14日08時35分

[ニューヨーク/フランクフルト 13日 ロイター] 主要国の中央銀行は13日、サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン) 問題に端を発した信用収縮懸念で不安定になった市場を落ち着かせる目的で3営業日連続となる資金供給を実施した。
ただ、投資家の不安が和らぐ兆しが出てきており、13日の資金供給は、それまでの2日間より少ない規模となった。
欧州中央銀行(ECB)は、オーバーナイトのオペを実施し、476億7000万ユーロ(652億9000万ドル)を供給した。欧州の銀行がサブプライムモーゲージ(住宅ローン証券)にかなり投資していることへの不安から貸出金利が急上昇した前週9日以来、最も小規模となった。
米連邦準備理事会(FRB)は公開市場操作で20億ドルを供給した。これも2001年9月19日以来、最大規模となった10日の380億ドルを大きく下回る水準。
ECBは、市場が正常な状態に戻り始めている、とし、FRBは必要に応じて金融システムに資金を供給する用意がある、との姿勢をあらためて示した。これが、米国を含む各国の株式市場の不安を和らげた。
米投資銀行大手ゴールドマン・サックス・グループが、市場の混乱で運用が悪化している傘下のヘッジファンドに外部の投資家とともに30億ドルを注入することになったことも、株式市場を好感させた。
アナリストは、これまでのところ世界規模の信用収縮は回避できているが、米サブプライムモーゲージ市場に関連した損失がすべて判明するまで、市場の不安は続くと予想。
ライトソンICAPのチーフエコノミスト、ロウ・クランダール氏は「今回の特殊な事象は収束しつつあるようだが、収束しつつあるという兆候であって、サブプライム関連の損失がどこにあるか、われわれに分からないという根本的な問題は残っている」と指摘。「流動性に関するこの種の問題に対するシステムの不安定さは、依然続いている」と述べた。
米フェデラル・ファンド(FF)金利は13日午後の段階で5.12%と、FRBの誘導目標である5.25%を大きく下回っている。前週は、6%まで上昇したが、10日のFRBの大量資金供給後に1%割れまで低下していた。
欧州短期市場でも、9日に4.6%を付けていた翌日物金利が、13日午後の取引で3.90%まで低下し、ECBの政策金利の一つである短期買いオペ金利の4.00%を下回った。
カナダ中銀も13日に市場に引き続き資金を供給したが、規模は6億7000万カナダドル(6億3800万米ドル)と10日の16億8500万カナダドルから大幅に縮小した。
前週後半以降、主要国の中央銀行が協調して大量の資金を市場に供給してきたが、それらは翌日物が中心で、供給された資金の大半はすでに市場から吸収されている。

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2007/08/10-09:14 欧米当局、流動性確保に全力=大規模資金供給で協調姿勢

【ニューヨーク9日時事】米国の住宅金融問題をきっかけに信用収縮に対する不安が強まり、金融市場で短期資金の需給が逼迫(ひっぱく)したため、欧米の金融当局は9日、緊急措置として潤沢な資金を供給するオペレーション(公開市場操作)を実施した。リスク回避で資金の出し手が現れなければ、資金繰りが悪化した金融機関が連鎖破綻(はたん)する金融危機につながる恐れもあり、当局が歩調を合わせて流動性確保に全力を挙げる姿勢を打ち出した。

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米FRB、公開市場操作を通じ必要な流動性を供給=声明2007年08月11日08時45分

[ワシントン 10日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)は10日、クレジット市場の問題拡大を阻止し投資家の懸念を和らげるため、金融市場の秩序だった機能を維持するよう流動性を供給している、との声明を発表した。
FRBがこのような声明を出すのは異例であり、現在のクレジット市場の混乱を深刻に受け止めていることを反映している。FRBが前回このような声明を発表したのは、2001年9月11日の同時多発テロ後だった。
FRBは、株式市場の通常取引開始直前に発表した声明で「FRBは、金融市場が秩序だった機能をするよう流動性を供給している」と指摘。「フェデラル・ファンド(FF)金利が市場で米連邦公開市場委員会(FOMC)が設定した誘導目標である5.25%に近い水準になるよう、公開市場操作を通じて必要な資金を供給していく」と述べた。
理由については「現在、短期金融市場やクレジット市場の混乱により、金融機関は異例の資金需要に直面している」ためとし「いつものように、FRBの割引窓口(discount window)を活用して資金を調達することができる」とした。信用の枯渇を回避するため、あらゆる措置を実施していくとも表明した。
声明発表に先立ち、通常のオペ発表より早い時間に、期間3日のオペ(公開市場操作)で190億ドルの資金を供給すると発表。その後160億ドルを追加供給した。この日の供給額は計350億ドル、1週間では845億ドルとなった。

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流動性供給の実施、ECBの市場注視を示す─トリシェ総裁=仏紙2007年08月11日08時45分

[パリ 10日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は、ウエスト・フランス紙とのインタビューで、ECBは8月初旬に金融市場を注視していくと表明しており、流動性供給の実施はそのことを示していると語った。
総裁は「8月2日に(ECB)理事会の声明読み上げで、今後も引き続き市場動向を注視していくと語った」とし「(市場を注視していることは)それ以降にわれわれが実施していることで、適切な流動性を市場に供給することを通じて行っていることだ」と語った。

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ECBとFRBの資金供給は迅速な対応=ポルトガル財務相2007年08月15日07時45分

[リスボン 14日 ロイター] 欧州連合(EU)議長国のポルトガルは14日、欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備理事会(FRB)が、資金供給を通じてクレジット市場の混乱抑制に迅速に対応したとの認識を示した。
ポルトガルのドスサントス財務相は、地元ラジオに出演し「米国、ユーロ圏の金融当局はともに必要な流動性を市場に供給することを通じて迅速に対応した」と指摘。
中銀の資金供給が、米国の不動産部門の混乱が流動性の混乱につながる事態を回避するだろうとの見方を示した。
当局は資本市場の動向に注意する必要があるとした上で、「住宅融資部門の問題に直面しながらも、資本市場には既に信用と平静が回復している兆しがある」と述べた。

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カナダ中銀、流動性拡大に向け6.7億カナダドル供給

【オタワ 13日 ロイター】 カナダ銀行(中銀)は13日、6億7000万カナダドル(6億3800万米ドル)を市場操作を通じて供給したことを明らかにした。翌日物金利を目標水準に低下させ、流動性を拡大するため実施した。
カナダ中銀は前週9日、米サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅ローン)市場の問題で流動性が懸念される事態が生じたことを受け、各国中銀と連絡をとっているとのコメントを発表、必要に応じて資金供給を実施するとしていた。
9日には16億4000万カナダドル、10日には2回の供給で計16億8500万カナダドルの資金供給を実施した。

(引用終了)

関連した記事を引用します。

(引用開始)

低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローンがらみの信用不安による資金繰り難から、ヘッジファンドなどに資金を提供していた金融会社や米住宅金融会社が、投資家への配当の凍結や先送りをすると相次いで表明。信用不安問題への懸念がさらに強まった。さらに大型小売店ウォルマート・ストアーズの決算が市場予測に届かなかったことも、米景気を支えてきた個人消費の先行き懸念につながった。

東京新聞2007年8月15日 夕刊

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国際金融市場では米国の非優良住宅担保融資(サブプライムモーゲージ)の不正に触発された金融危機を打開するために各国中央銀行が資金を無制限供給すると打って出た。問題はサブプライムモーゲージの不正とそれによる信用の梗塞が、実は2003年以後、世界的に進行された過剰流動性の結果だという点だ。流動性を増やしすぎたあまり、不正の危険が大きな不動産融資にまでお金が回り、融資を返すことができない事態が起こったのだ。すると金利が跳ね上がって、融資元利金を返すのはさらに難しくなる悪循環がもたらされている。お金がたくさん回った結果、市中の金脈が乾いてしまったのだ。中央銀行などは過剰流動性の問題を解決するために流動性をもっと増やすほかない逆説的状況に処してしまった。

中央日報

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2001年以降に始まった世界的な利下げ、金融緩和。米国は2004年後半から、ユーロ圏は2005年末から緩やかな金利引き上げに転じましたが、世界的なカネ余り状況が続き、過剰流動性が資産価格を上昇させ続けていました。とくに、ゼロ金利を長期間続けた日本はいまでも超低金利により、過剰流動性の供給源になっていると批判されています。

米国は景気浮揚のための住宅政策をとってきたこともあり、住宅価格の値上がり→買い替えを前提にした住宅融資が続けられてきました。しかし、これがもはや限界に達し、昨年からとくに、低所得者層、いわゆるサブプライム層をターゲットにした融資で貸倒率が急速に高まり、住宅ローン専業業者が相次いで破綻しています。サブプライム融資を可能にしたのが、多くの投資家の参加を可能にする住宅ローンの証券化であり、さらに、証券化商品であるMBSから派生するCDO(債務担保証券)。6月後半になって、米大手証券会社ベア・スターンズの2つのヘッジファンドがサブプライムMBS投資で大きな損失を出したことが報じられ(7月に入りほとんど無価値となったことが判明)、欧米の大手金融機関の損失やさらには年金基金の損失がどこまで拡大するのか懸念されています。

サブプライム問題の金融・証券市場への影響としては、大きく2つのルートによる波及が考えられます。1つは、住宅市場を冷え込ませることによる米国景気への影響。もう1つがMBS、さらにはCDO市場での大手金融機関や機関投資家の損失により、リスク商品からの資金引き上げ、いわゆる“質への逃避”が起きる形での影響です。後者については、影響は大きいとする見方と限定的とする見方が拮抗していますが、前者については悲観的な見方が広がっています。

会社四季報

(引用終了)
by kanconsulting | 2007-08-17 01:50 | 経済状況
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