来るべき暗黒の日(1) 世界恐慌かスタグフレーションか

記事の更新が遅くなりまして失礼しております。このエントリーは9/11前後に掲載する予定でしたが、いろいろありまして、時期を逸しております。ですので、それから2~3週間経過した現在では、妥当ではない箇所も見受けられますが、ご容赦ください。

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世界同時株安から、約1ヶ月が経過しました。今後の世界経済はどうなって行くのでしょうか?

過去の記事「世界同時株安と円高(4) 円高の理由と中央銀行による流動性供給の弊害 世界恐慌かスタグフレーションか」で、次のように述べました。

(転載開始)

さて、各国の中央銀行が、すさまじい量の流動性(資金)を注入して金融不安の沈静化を図ったということは、すでに過去のエントリーで述べたとおりです。
ですが、よく考えてみると、こういったマネーは、めぐりめぐって、さらなる市場の乱高下をもたらす可能性もあるのです。これまでは、ジャブジャブに刷られた日本円が、過剰な流動性の供給源でした。加えて、アメリカや欧州もそうすると言うのです。
アメリカでは、FRBが公定歩合を下げることが織り込まれています。金利が下がり、多量のマネーも供給されるのです。それにより、アメリカ株・世界株は反発することとなりますが、回復の実態を伴ったものではないので、再び暴落といった乱高下という事態が考えられます。

その過程で、株式などは信じられずキャッシュ(現金)だけが頼りだ、という世界恐慌が出現するのか、あるいは、ジャブジャブに供給された通貨が信用を失い、不景気なのにモノが異常に高いというスタグフレーションが出現するのかはわかりません。

(転載終了)


「世界バブル経済終わりの始まり」「アメリカ経済終わりの始まり」で知られる松藤民輔は、テクニカル分析から、「アメリカ市場の暴落があるなら、9月18日の週から10月第1週が最もクリティカル」とコメントしています。1987年の暴落(ブラックマンデー)、1998年の暴落(LTCM破綻)の再来がありうる、という警告です。

「世界バブル経済終わりの始まり」では、「バブル経済の状態では、金利を上げると株式も上がるし、金利を下げることが暴落につながる、という、常識と逆の動きをすることがある」と指摘しています。

こういった暴落を止めるためには、一般的に、誰かが犠牲になってマネーを供給せざるを得ません。信用収縮から回復するには、新規の投資資金が必要なのです。一説によると、1987年のブラックマンデーでは、日本がその一翼を担ったということです。では、今回の信用収縮では、誰がマネーを出すのでしょうか?

アメリカ市場に関連したニュースを転載します。

(引用開始)

◆市場の混乱、87年や98年の状況と酷似=グリーンスパン前議長 9月7日 ロイター

[ニューヨーク 7日 ロイター]7日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)によると、グリーンスパン前米連邦準備理事会(FRB)議長は6日夜講演し、現在の市場の混乱は、ブラックマンデーがあった1987年や、大手ヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が破たんした98年の状況と多くの点で酷似している、との認識を示した。
前議長は、学術誌ブルッキングス・ペーパーズ・オン・エコノミック・アクティビティ主催の会合で講演し「過去7週間の動きは、多くの点で98年や、87年の株価暴落と酷似している」と発言。
景気の拡大はユーフォリア(高揚感)によって、景気の縮小は恐怖によって促されるとし、「現在は恐怖が原動力になっており、恐怖がはるかに強い力を持っている」と述べた。

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◆米住宅ブーム、グリーンスパン時代の超低金利が煽った=元米財務次官 9月3日 ロイター

[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 1日 ロイター]
元米財務次官で、テーラー・ルールの提唱者である米スタンフォード大学のジョン・テーラー教授は1日、グリーンスパン前米連邦準備理事会(FRB)議長時代の超低金利政策が米住宅ブームとそれに続くバブル崩壊を煽った、と指摘した。
米サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題の影響について協議する、カンザスシティー地区連銀主催のシンポジウムで講演した。
テーラー教授は、FRBが当時フェデラルファンド(FF)金利を引き上げていた場合の住宅動向のシミュレーションを行うため自ら設計したモデルを用い、「FF金利がより高く設定されていれば、住宅ブームの大方を避けることができただろう」と説明。「またその結果としての市場の混乱の程度は抑制されていただろう」と述べた。
テーラー教授は、今回の発表について、過去を振り返って批判するのが目的でなく、今後のより良い金融政策運営のために「学んだ教訓」を示した、とロイターに述べた。
米住宅価格は、2004年第4・四半期に10%という過去最大のペースで上昇した。テーラー氏は、住宅市場の活況が、住宅ローンの返済状況の改善に直結したとみている。
 講演では「住宅価格が急ピッチで上昇するなかで、サブプライムローンでも延滞や(物件)差し押さえの割合が低下した」と指摘。
「短期金利が正常な水準に戻るに伴い、住宅需要は急速に減退し、建設や住宅価格の上昇ペースを鈍らせた。延滞や差し押さえの割合も大幅に上昇し、サブプライム市場の崩壊(meltdown)につながった」と述べた。
グリーンスパン前議長は、2004年にFRBが引き締め局面に入った後も米長期金利が低位安定した状況を「謎(conundrum)」と呼んだ。一方、バーナンキ議長は、低位安定の背景には、世界的な貯蓄過剰があり、世界中の余剰資金が米国債に流入し、米国債利回りを押し下げている、と説明した。
しかし、テーラー氏は、世界のGDPに対する貯蓄の比率が1970年代初頭に25%だったのに対し、2003─2005年の間に21%に低下したとする国際通貨基金(IMF)のデータを挙げて、過剰貯蓄は世界的な現象ではないと指摘。
むしろ、FRBの低金利政策が長期にわたったことが、金融市場にFRBのインフレへの政策対応の持続的変化と解釈させたことの結果だと主張した。
「これに関する重要な教訓は、平時の政策ルールから大きく乖離(かいり)することに市場参加者が対応するのは難しく、それ以外の経済状況への反応で予想外の変化が起こり得るということだ」と述べている。

(引用終了)


さらに、中国がアメリカ国債を売り始めているのではないか、という観測もあります。

具体的には、「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」によると、海外では、次のような記事が流されたということです。

(開始)

www.telegraph.co.uk

・NY連銀が発表したデータによると、「海外の中央銀行が、7月末までに、480億ドル分の米国債の持ち高を減らした」。
・中央銀行が、米国債の持ち高を減らしたのは、米国からの資金の流出を示しており、他の通貨への切り替えではなく、おそらくは金への借り換えを意味するだろう、とBNPパリバの通貨部門のチーフ、ハンス・レデッカーは話す。(彼によると、金価格は、最近1オンス=500ユーロの大台を超えた)
・IDEAグローバルのエコノミスト、デヴィッド・パウエルは、「中国は、米国債を売ったか?」というレポートを出している。
・彼は、このレポートの中で、「中国が米国債を売った理由」として、9月にも設立が発表される、中国初のSWF(国家ファンド)の設立(資金規模:3000億ドル、外貨準備は1.34兆ドル)を挙げている。
・中国は、交渉材料(バーゲニング・チップ)として、9000億ドルの外貨準備高を使うだろう。これによって、米議会で進んでいる中国に対する人民元切り上げの圧力を食い止める材料にするつもりだ。もし、無理な圧力を米議会が行なえば、中国は米国債売り崩しを行なうだろう。

(終了)


これまで何度も述べていますが、以前から、アメリカドルの維持可能性を懸念して、ドルの減価がありうると警告しています。特に、アメリカの経常赤字は、日本・中国・産油国などの買い支えによって維持されているようなものであり、中国・産油国が、ドル以外の外貨準備を増強すれば、ドル暴落の準備が整うことになると指摘しています。つまり、アメリカへの資本流入は、永遠には続かないと言っているのです。

中国のアメリカ国債売りは、交渉のカードだと思いますが、実際に本気で売りに来ることも、まったくありえない話ではありません。

以前に転載した「晴耕雨読」から、ポイントのみを抽出して、再度掲載します。

(開始)

・米国政府が、個々の債務証書に書かれた内容ではなく、グロスの債務について日銀やその他の経済主体に返済することはできないと断言する。米国政府は、新しい借り入れで、過去の借り入れの利払いをしたり返済することしかできない。米国政府が返済しないというわけではなく、返済したいとしても、経済論理的に返済することができないのである。
・米国政府が6兆ドルまで積み上がった債務を返済できないという主張は、ある国民経済が長期に渡って必要な労働成果財を自前で充足的に生産できない状態(貿易収支赤字)に陥っていれば、政府部門が“正常”なかたちで対外債務を返済することはできないという経済論理に基づくものである。ここで言う“正常”とは、債権者に債務切り捨てとは感じられない実質価値を維持しながら、記載条件で利息を支払い、償還を完了することである。
・貿易収支と所得収支がともに赤字という状態、とりわけ貿易収支の赤字が厖大な金額で長期化している国民経済は、政府部門が対外債務を返済する能力を失っていると断定できる。
・ある国民経済が対外債務を返済するためには、国民経済総体として労働成果財を余剰に生産して輸出するか、金融取引や直接投資の果実である所得収支の黒字を増やすかして、とにかく経常収支の黒字化を達成しなければならない。対外債務が「経常収支赤字-国内貯蓄」の累積であるならば、その返済は、債務額に相当する「経常収支黒字+国内貯蓄」の累積でのみ可能である。米国については、貿易収支が黒字化することはあり得ない。
・悪意があるかどうかの問題ではなく、米国の対外債務が完済されることは経済論理的に不可能なのである。貯蓄率がほぼ0%という実状に照らせば、経常収支の赤字を埋めるだけの資本収支の黒字、より具体的に言えば、政府債務の利払いと償還に新規財政赤字を合算した額以上のドルが国外から流入する限りにおいて、「米国国債サイクル」を維持することができる。

(終了)
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by kanconsulting | 2007-09-30 00:28 | 経済状況
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