日本・アメリカ(FRB)・ユーロ(ECB)・イギリス・カナダ・スイスの中央銀行が、協調して「USドル」を市場に供給することが決まりました。日本銀行が、円ではなくドルを供給するのは、初めてのことだということです。
・FRBは各国中銀と、通貨を交換し合う形でドルを一時的に貸し出す「スワップ協定」を、締結・枠拡大 ・スワップ協定(既存含む)の総額は、2470億ドル(約25兆8000億円) ・FRBが、5中銀のために用意したドルは合計1800億ドル(約18兆8000億円) ・協調策は2009年1月30日までの措置 ・日銀は、総額600億ドル(約6兆3000億円)分の円とドルの交換協定を締結 ・このうち最大500億(約5兆円)ドルを市場に供給 ・ECBは、短期金融市場に400億ドル(約4兆1800億円)を緊急供給 ・FRBは、1050億ドル(約11兆円)の資金を供給 (図は読売新聞より引用) (スワップ協定で、アメリカに預けられた巨額の「円」は、どうなるのでしょうね) 先日の記事でも述べましたが、短期金融市場での翌日物ドル金利が一時8%になるなど、どの金融機関もキャッシュを離したがらず、ドルでの資金調達が難しくなってきているようです。特に、(日本から見て)外資系金融機関は、自己資本が毀損していると見られており(事実だと思いますが)、短期であっても貸し手がないというような感じなのでしょう。 ただ、この協調供給の本質を一言で言いますと、基軸通貨USドルを防衛する、ということだと思います。いみじくも、伊吹文明財務相が、「アメリカ(FRB)の要請による、米ドルの信認低下を防ぐ措置」と言っているとおりです。 ここまで巨額の、文字通りジャブジャブの状態になるまでマネーを注ぎ込んでも、本質的な危機の解決にはならないことは、すでに述べているとおりです。あくまで延命措置、ということを忘れてはなりません。これで、リスクはアメリカ政府・FRBに「飛ばされた」ということになります。 これで解決にはなりません。供給した過剰のドルが、ドルそのものの信認を損なうことになるからです。延命措置のタイムリミットは、半年といったところでしょう。 (引用開始) 日米欧協調 ドル供給 18兆円規模 金融機関支援 【ワシントン=矢田俊彦】米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行、欧州中央銀行(ECB)など日米欧の中央銀行6行は18日、金融市場に総額18兆円規模に上るドル資金を供給する協調策をまとめて発表した。具体的には、FRBが日銀などと、通貨を交換し合う形でドルを一時的に貸し出す「スワップ協定」を結んだ。金融不安の拡大で、民間の金融機関がドル資金を借り入れることが難しくなっているため、世界の主要中央銀行が同時にドル資金の供給に乗り出すことで、効果的に市場の安定化を図るのが狙いだ。 日銀は、FRBから借りたドルを原資に、東京市場で金融機関にドル資金を貸し付ける。日銀が市場に自国通貨の円でなく、ドルを供給するのは初めてだ。 協調策は2009年1月30日までの措置。FRBが他の5中銀に貸し出すため用意したドルは合計1800億ドル(約18兆8000億円)で、日本銀行とは600億ドル(約6兆3000億円)の枠を設けた。5中銀のうちECB、スイス国民銀行(SNB)とすでに結んでいた協定の分を含めると、総額は2470億ドル(約25兆8000億円)となる。 米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)などで、欧米の金融機関の間では、互いの経営内容についての不信感が高まり、ドル資金の貸し借りがしにくくなっている。 このため、これまでも市場にドルを供給してきたFRBやECBに加え、日銀も含めた主要な中央銀行がそろって、「最後の貸し手」として金融機関にドルを貸し出すことにした。 米欧まず15兆円 欧州中央銀行は18日、短期金融市場にドル資金400億ドル(約4兆1800億円)を緊急供給した。 一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は同日、ニューヨーク連邦準備銀行を通じて市場に1050億ドル(約11兆円)の資金を供給した。(フランス中部ディジョン 是枝智、ニューヨーク 山本正実) (2008年9月19日 読売新聞) --- FRB、11兆円供給 米政府も緊急対応強化へ 2008年9月19日3時20分 【ワシントン=西崎香】米連邦準備制度理事会(FRB)は18日、金融機関の資金繰りを助けるため、総額1050億ドル(約11兆円)の資金を市場に供給した。FRBなど米金融当局と政府・議会は、金融システムを安定させる緊急対応を強化する。危機が深刻化すれば、利下げや景気刺激策、ドル安定策など「すべての持ち駒」(当局関係者)を検討する姿勢だ。 FRBは資金供給で昨夏以来、最大級の流動性を供給した。ブッシュ大統領も同日、アラバマ州などでの日程を取りやめ、ワシントンで金融当局と協議することを決定。ホワイトハウスで「金融市場を強め、安定させる対策を続ける」との声明を読み上げた。 FRBは16日の定期会合では利下げを見送ったが、関係者は「金融システムの機能が危険なほど損なわれれば、緊急利下げも検討せざるをえない」と語る。 「ドル防衛」の姿勢も強めている。現時点ではドル相場は急落していないが、米金融機関への不安からドル離れが再び加速しかねない。 日米欧の中央銀行が今回のスワップ協定を締結した際も米当局者はドル安定の市場介入も視野に入れて「監視を続ける」との認識を示したという。東南アジア諸国などの通貨不安も注視している。 一方、米議会は総額500億ドル(約5兆円)の第2次景気刺激策の法案を審議する準備を開始した。既に実施された所得税減税の効果が薄れ、年末に向け実質国内総生産(GDP)成長率がマイナスに転じる恐れがあるからだ。 朝日新聞 --- 財務相「ある種のドル防衛策」 6中央銀行の協調行動で 伊吹文明財務相は18日、日銀など6カ国・地域の中央銀行が合意したドル資金供給の協調行動について「国際通貨であるドルに対し、全世界的にある種の防衛策を講じたということだ」と述べ、金融機関の破たん・再編で揺らいでいる米ドルの信認低下を防ぐ措置だとの認識を示した。財務省内で記者団に語った。 財務相は、今回の協調行動が米連邦準備制度理事会(FRB)からの要請に基づく措置だとした上で「(為替)市場に介入するためのお金とは全く違う」として、介入目的の対策ではないと明言。ドル資金の供給態勢が整えば「信用収縮を防ぐために歓迎すべきことだ」と語った。 与謝野馨経済財政担当相も同日、記者団に対し「タイムリーで正しい決断だ」述べ、歓迎する考えを示した。 2008/09/18 18:30 【共同通信】 --- 日米欧の6中央銀行 大量のドル供給は危機感の表れ 2008.9.19 00:03 日米欧の6中央銀行が18日に打ち出した大量のドル資金供給は、市場参加者の疑心暗鬼でお金の出し手がいなくなる「信用収縮」に歯止めをかけなければ、破綻(はたん)の連鎖を招きかねないという強い危機感の表れだ。ただ、資金供給は傷ついた金融機関に“輸血”するだけの対症療法にすぎない。多額の損失処理に伴う自己資本不足を解消する抜本的な対策が急務だ。 日銀の白川方明総裁は同日の会見で「邦銀の外貨資金繰りに懸念を持っていない」と語り、ドル資金供給には、欧米金融機関を支援する狙いがあることを示唆した。 昨年12月以降、米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)、スイス中央銀行がドル資金供給で協調したことがあるが、6中銀が特定の通貨の供給で足並みをそろえるのは異例だ。 金融システムは「信用(クレジット)」によって成り立っている。参加者が誰も信用できなくなり、お金を出さなくなれば、「信用収縮(クレジット・クランチ)」が起き、システムは機能不全に陥る。 日本では平成9、10年に信用収縮が深刻化し、山一証券や北海道拓殖銀行などが資金繰りに行き詰まり、次々に破綻した。破綻の連鎖を回避するには、中央銀行が「信用」を補完し大量の資金を出すしかない。 ただ、「最後の貸し手」による救いの手は、民間金融機関の甘えを呼び、「モラルハザード(倫理の欠如)」を招くリスクがある。かつての日銀が行った大量の資金供給を続ける量的緩和も、その効果を疑問視する声が多かった。 欧米金融機関は損失処理で資本が棄損し、貸し渋りを強めている。白川総裁も「最終的には金融機関の自己資本への対応がない限り、問題解決はない」と指摘する。資本不足を解消するための公的資金投入に踏み切るかが、今後の焦点となる。(本田誠) 産経新聞 --- 日米欧6中銀がドルを協調供給 2008.9.18 20:21 米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)、日銀など6カ国・地域の中央銀行は18日、米国発の金融危機に対応し、金融機関が資金をやり取りをする各国の短期金融市場に大量のドル資金を供給する協調行動を行うと発表した。市場では、米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)などによる信用不安から資金の出し手が不在となり、欧米金融機関が必要なドル資金を調達できなくなっている。“最後の貸し手”である中央銀行が資金を供給し、資金繰りの行き詰まりによる連鎖破綻を回避するのが狙いだ。 FRBは日銀、英、カナダとの間で、ドル資金を提供するため、相互の通貨を交換するスワップ協定を締結。すでに協定を結んでいるECB、スイスとは交換枠を拡大した。 日銀は総額600億ドル(約6兆3000億円)分の円とドルの交換協定を締結。このうち最大500億(約5兆円)ドルを市場に供給する。日銀がドル資金を供給するのは初めて。 供給先としては国内金融機関のほか、外資系金融機関55社を想定。低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)関連の損失で資金繰りが悪化している欧米金融機関が、日本市場でドル資金を調達できるようにする。 ECBなどの他の中央銀行も自国市場でドル資金を供給する。各行は、母国通貨で資金を供給しているが、危機の沈静化には調達が難しくなっているドル資金を協調して供給する必要があると判断した。 18日に緊急会見した日銀の白川方明(まさあき)総裁は「ドルの短期金融市場では資金調達の不安感が高まっている。ドル市場の緊張感の高まりは各国通貨建ての市場にも影響を及ぼしている」と述べ、協調活動の狙いを説明した。 世界の金融市場では、リーマンが破綻する一方、保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が救済されたが、「次に破綻するのはどこ」という疑心暗鬼が広がり、資金の出し手がいなくなる「信用収縮」が深刻化している。 産経新聞 (引用終了)
by kanconsulting
| 2008-09-19 22:27
| 経済状況
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