世界金融危機 リーマンブラザーズ破綻と信用崩壊(5) 公的資金を75兆円投入 米国の財政支出は100兆円

「事実上の国有化になったAIGが、公的管理の最後ではない。これはスタートに過ぎない」
「アメリカ政府がどのくらいの規模の公的資金を注入したら金融不安が沈静化するのか、誰にもわからない」
「FRBは、最後の貸し手から最後の買い手になってしまった。これから米国の財政出動がどこまで進むのかわからない」(以上、外資系証券の関係者)

「市場には、すでに米国の財政支出が1兆ドル程度になるとの試算も出ている」(信州大学・経済学部 真壁昭夫教授)

ロイターニュース

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先日の記事「世界金融危機 リーマンブラザーズ破綻と信用崩壊(4) 日米欧による「USドル」供給 基軸通貨ドルの防衛」で、日本・アメリカ(FRB)・ユーロ(ECB)・イギリス・カナダ・スイスの中央銀行が、FRBと「スワップ協定」を締結・枠拡大協調して、「USドル」を市場に供給することになった、と記載しました。

次のステージは、「(政府・公的機関による)不良債権の買取」ですが、これは、政府やFRBが、「貸し手」から「買い手」になることを意味します。何度も言っていますが、これは、リスクの移転、つまり「飛ばし」をやる、ということなのです。

冒頭でもコメントを引用しましたが、アメリカ政府(FRB)がどのくらいの規模の公的資金を注入したら、金融不安が沈静化するのか、誰にも分からず、疑心暗鬼になっているのです。USドルとアメリカ国債への信認は、CDS市場での、アメリカ国債のプレミアム*にも現れています。現在のところ、国際的なドル買い協調介入の合意があるため、かろうじて、USドルとアメリカ国債の暴落が延期されているといったところでしょう。

* 『9月17日には、米国債に対するリスクを示す指標が悪化した。債券のリスクはCDS(債券破綻保険)の価格(リスク・プレミアム。上乗せ利率)で示されるが、10年もの米国債のCDSは30ベーシスポイントにはね上がり、13ベーシスのドイツ国債、20ベーシスのフランス国債よりも高くなった。米国債は、ドイツ国債の2倍以上のリスクがあるとみなされるようになった。』田中宇の国際ニュース解説 2008年9月20日

関連したデータとしては、おなじみの、High Yield Spreads(ジャンクボンドと国債の利回りのスプレッド)と VIX(ボラティリティインデックス)を見てみましょう。スプレッドが900ベーシスポイント以上に急拡大していますが、これは、ジャンクボンドのリスクプレミアムが昨年夏以降3倍近くになっていることになります。また、ボラティリティインデックス(別名:恐怖指数)も、35と大きな値になっています。

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Merrill Lynch Index of High Yield Bonds
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VIX Volatility Index
(チャートはThinkBIGより)

各国の国債は、それぞれの国民の将来の税金を担保にしているという解釈が可能です。「劣化した金融機関の資産のアメリカ政府による買取」は、アメリカ国民の税金で支払う、ということです。本当に、すでに財政支出となった1兆ドル(約100兆円)や、連邦政府の債務上限の10兆ドル(約1000兆円)もの巨額の支払いが、将来のアメリカ国民に可能なのでしょうか?そもそも、その原資となるアメリカ国債を、誰が買うのでしょうか?

ブルームバーグ・ニューヨーク市長は、

WASHINGTON - The next issue for concern in the battered economy is whether there are going to be buyers for the nation's billions in debt, Mayor Bloomberg said yesterday.
Speaking to students at Georgetown University, Bloomberg pointed out that Wall Street convulsions are being felt around the globe.
"Who's buying our debt? It's these overseas funds, these sovereign-wealth funds, these overseas hedge funds. They are in trouble now. So it's not clear who is going to be buying" US Treasury bills, he said.

「誰が、アメリカ国債を買うというのか。これまで国債を買っていた、外国のSWF(政府投資基金)やヘッジファンドは、損失を抱えているのだから、米国債を買わないだろう。米国債を買ってくれる投資家がいるかどうか、疑問だ。」(9月18日の講演)田中宇の国際ニュース解説
と述べています。

また、金価格は、いったん下げた後、急上昇しています。いったんの下げは、金融機関とファンドの換金売りでしょう。
その後の上げは、1日の上げ幅としては、1980年1月の85ドルを上回る、過去最大の88.55ドルとなりました。上げの要因としては、安全資産である金への逃避と同時に、アメリカ国債の信認低下というセンチメントもあるようです。

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チャートはbullionvaultより

このブログでは、開始後まもなくから、アメリカとドルの信認は安泰ではない、円とドルは一蓮托生だ、と訴え続けてきました。その当時は、「ドルは強い。そんな心配よりも、日本(円)の心配をするべき」などと言われてきましたが、今となっては、どちらが正しかったなどは、どうでもいいように思えます。なぜならば、ドルの破綻は、文字通り、現在の貨幣経済システムの死刑執行であり、システムに組み込まれているすべての人が路頭に迷うことになるからです。

すべての証拠を吹き飛ばし、借用証書を焼き払うための、戦争の予感がします。

(引用開始)

米政府、不良資産買い取りに公的資金75兆円投入を提案
2008年 09月 21日 10:33 JST

[ワシントン 20日 ロイター] 米政府は20日、金融機関が抱える住宅ローン関連の不良資産について、最大7000億ドル(約75兆円)の公的資金で買い取る計画を議会に提案した。大恐慌以来最悪の金融危機に対応するため。
上下両院は数日以内の法案化を目指しており、共和・民主両党議員の補佐官らが週末にかけて同提案内容についての詳細な検討を行う見通し。
計画では銀行など金融機関のバランスシートから回収困難な住宅ローン関連負債を切り離し、政府の管理下に組み入れることとなっており、米財務省には異例の権限が与えられることにもなる。ロイターが入した財務省草案によると、不良資産買い取りに関する財務長官の判断は裁判所の審査を一切受けない
また、同計画に対応するため、連邦政府の債務上限は現行の10兆6150億ドルから、11兆3150億ドルに引き上げられることになる。

ロイター

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米国:金融対策、公的資金を最大75兆円 信用不安、懸念消えず 財政悪化も必至

【ワシントン斉藤信宏】米政府が金融危機対策の柱として検討している不良資産の買い取り組織に、最大75兆円規模の公的資金投入を検討していることが20日明らかになった。米株式市場は19日、危機対策の発表を受けて株価が前日に続き急伸。ダウ平均は2日間で770ドル超も上昇し、ほぼ前週末の水準を回復した。危機対策は、ペロシ下院議長(民主党)が「迅速に超党派で行動する」と述べるなど米議会も関連法案の早期成立に協力する姿勢を見せている。
米経済の先行きを見通すと、米政府が実施した所得税還付減税は、今月以降、急速に効果が剥落(はくらく)すると見られる。年末商戦に向け活発に動き出すはずの家計の痛みが深刻なだけに、例年通りの個人消費の盛り上がりは期待できそうにない。しかも、住宅や金融業界を中心にリストラが本格化しており、雇用の一段の悪化は避けられない情勢だ。
米政府が検討している不良資産の買い取り組織は、89年に設立された整理信託公社(RTC)がモデル。最大75兆円という巨額の買い取り額が検討されているが、「実際の買い取り価格が低ければ、金融機関は多額の損失処理を迫られることになる」(米エコノミスト)との不安の声もある。また、これにより米政府の財政が悪化し、他の政策運営への影響も指摘される
米政府は金融株の空売り禁止など政策を駆使して金融危機を乗り切る構えだが、信用不安再燃の恐れはなお残されている。

◇米の金融危機対策
・不良資産を公的資金で買い取る組織を設立。買い取り規模は最大75兆円
・金融機関の株式の空売りを禁止
・元本割れが相次いだ投資信託MMFの払い戻しを保証。5兆4000億円の基金を払い戻しに充てる
・政府管理下の住宅金融会社による住宅ローン担保証券の買い取り枠拡大

■ことば
◇整理信託公社(RTC)
80年代後半に米国で貯蓄貸付組合の不良債権処理に活用された。89年に設立され、公的資金を原資に95年末の業務終了までに4600億ドル(約50兆円)の不良債権を買い取った。だが、不良債権の売却時に損失が出て、約1200億ドルの財政資金が投入され、大半が国民負担になった。

毎日新聞 2008年9月21日 東京朝刊

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米国:不良債権処理機関の設立検討 資産劣化防止狙う

【ワシントン斉藤信宏】米政府は18日、経営破綻(はたん)した金融機関から不良債権を買い取って処理する整理信託公社(RTC)型の公的機関を設立する方向で検討に入った。複数の米メディアが議会関係者の話として伝えた。
報道によると、ポールソン米財務長官と米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、既にブッシュ大統領との協議を終えている模様。同日夜にも、米議会幹部に組織の設立に向けた構想を説明する見通しという。
RTCは80~90年代に相次いで破綻した貯蓄貸付組合(S&L)の不良債権処理のため、89年に時限的に設立された。市場動向を見ながら時間をかけて不良債権を売却したため、経営状態の健全な金融機関の資産が劣化するのを防ぐ上で効力を発揮した。日本の不良債権処理の参考にもなった組織で、90年代の不動産バブル崩壊後に設立された整理回収機構のモデル。
RTC型の組織についてはこれまで、議会の一部で設立を求める声が上がっていたほか、米紙ウォールストリート・ジャーナルが社説で必要性を主張するなど設立の機運が盛り上がっていた。

毎日新聞

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米政府、金融救済へ新機関検討 不良債権買い取り案も
2008年9月19日11時48分

【ワシントン=西崎香】米政府は、銀行や証券会社などの不良資産問題を解決する総合対策の検討に入った。政府が公的資金を投じ、不良債権を買い取る救済策などが有力だ。専門の機関設立も視野にある。政府の肩代わりという劇薬で金融機関の財務基盤を強化し、世界を揺るがす金融危機を鎮める狙いだ。
ポールソン財務長官と連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が18日夜、議会指導者らと緊急会談した。終了後、長官は「金融機関の貸借対照表(バランスシート)に計上されている現金化が難しい資産の問題で、総合的な処理策について協議した」と述べた。
大きく値下がりした資産を買い取ったり、経営危機の銀行に特別融資したりする案が検討される見通しだ。そのための新機関の設置案も浮上しているが、即効性を重視して政府・金融当局に買い取り権限を与える可能性もある。
ペロシ下院議長(民主党)は「早急に対応したい」と、超党派で取り組む姿勢を表明。公的資金の投入には、関連法案の成立が必要なため、議会側と今週末に向けて最終調整する。難航も予想されるが、決着すれば来週にも採決が期待されるという。
国民負担が膨れあがる危険性があるが、米国内では金融システムの機能回復と景気の下支えに必要なコストとの指摘が出始めている。米国は、80年代後半~90年代前半の貯蓄貸付組合(S&L)危機のときに不良資産を買い取る整理信託公社(RTC)を設立。国民負担は総額約1300億ドル(約14兆円)にのぼったといわれる
米国の金融機関は、サブプライム危機の表面化で保有する住宅ローン担保証券(MBS)などが暴落。四半期決算の度に巨額の損失を出し、資金調達も難しくなっている。不良資産を新機関に売れば、売却損が確定するため、将来の不安が減り、身軽になった分、融資などが出来るようになるとみられる。
また、十分な対策なしで金融機関が破綻(はたん)した場合に、資産が一気に売却されて値下がりに拍車をかける可能性がある。新機関が買い取った証券を時間をかけて売却することにすれば、証券価格も安定し、他の金融機関も資産価値が分かって財務不安が和らぐ効果が期待される。
総合対策では、国債などで運用する投資商品「マネー・マーケット・ファンド(MMF)」にも、連邦政府が一定限度で払い戻しする保険の導入を検討する。銀行破綻時に10万ドルまで保証される普通預金と同様の扱いをする案だ。市場混乱でMMFの運用会社も経営危機が懸念されるようになり、一般投資家にも不安がでていた。
市場の混乱が収まるまで、株式の「空売り」を全面的に禁止する案も浮上。金融機関の経営難をめぐる風説の取り締まりも強化する

朝日新聞

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【米金融危機】不良債権処理の包括案 処理機構設立が柱 財務長官ら提案 
2008.9.19 10:22

【ワシントン=渡辺浩生】ポールソン米財務長官とバーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長は18日夜(日本時間19日午前)、議会でペロシ下院議長ら議会指導者と米国発の金融危機の解決策をめぐって協議し、金融機関が抱える不良債権を処理する包括的な枠組みを提案した。不良債権処理機関の設立が柱になるとみられる。
会談後、ポールソン長官は記者団に対して、「金融市場の混乱とシステミックリスク(連鎖破(は)綻(たん)の危険)に対処するため、立法措置が伴う包括的なアプローチを話し合った」と述べたうえで、不動産価格の下落などで劣化している金融機関の住宅関連資産などを処理する方策を提案したことを明らかにした。
バーナンキ議長は「危機の解決に向けて議会と一緒に取り組むことを待ち望んでいる」と述べ、ペロシ議長も「われわれには解決策が必要」と述べ、政府と協調する姿勢を示した。
政府側の提案の詳細は不明だが、1980~90年代の貯蓄貸付組合(S&L)危機の際には、整理信託公社(RTC)が設立され、S&Lから不良債権を買い取って処理した実績がある。米メディアによると、RTCをモデルにした不良債権処理機関の設立が柱となるとみられる。
低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発したこの金融危機では、住宅ローンの焦げ付きが多発し、サブプライム関連の金融商品の信用が劣化。市場での売却ができなくなり、金融機関の損失が拡大した。米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻など金融システム不安を招く原因にもなった。
ボルガー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長ら有識者からも、RTC現代版の設立を求める声が上がっており、同構想の政府検討の報道を好感して18日の米株式市場は反発した。

産経新聞

(引用終了)

安全確実と見られていたMMF(マネーマケットファンド)の元本割れで、対策も打ち出されているようです。問題は、ABCPでした。

(引用開始)

米FRB、MMF保有のABCP買い取り資金を金融機関に融資へ
2008年 09月 20日 08:17 JST

[ワシントン 19日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)は19日、市場安定化に向けた新たな措置を発表した。マネー・マーケット・ファンド(MMF)から資産担保コマーシャルペーパー(ABCP)を購入するための資金を金融機関向けに貸し出す。
FRBは声明で「イニシアチブの一つは、公定歩合でノンリコースローンを米預金取扱機関や銀行持ち株会社に拡大し、MMFから質の高いABCPを買い取るための資金を提供するものだ」と述べた。
「これにより、こうしたCPを保有するMMFが投資家の解約要求に応じることを支援し、ABCP市場や短期金融市場全般の流動性を促進する」と説明した。
FRBはまた、「市場の機能をさらに支援するために、プライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)から連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)(FNM.N: 株価, 企業情報, レポート)や連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)(FRE.N: 株価, 企業情報, レポート)、連邦住宅貸付銀行(FHLB)が発行した短期債を購入する計画だ」と表明した。
あるFRB高官は、MMFが保有するABCPは2340億ドルと推定され、資産全体の約12%に相当するとの見方を示した。MMFによる米政府系住宅金融機関(GSE)関連債券の保有額は690億ドルと推定した。
FRBは融資の規模については明らかにしていない。

ロイター

(引用終了)
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by kanconsulting | 2008-09-21 20:51 | 経済状況
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