バラマキ・ヘリマネはどのような結果をもたらすか 3年後の消費税アップ

景気対策として、減税(広義のバラマキ)やヘリマネ(ヘリコプター・マネー。直接的なキャッシュのバラマキ。以前の地域振興券(*1)もこれに相当するでしょうか)が注目されています。ですが、これは本当に意味のある対策になっているのでしょうか?少し考えてみたいと思います。

まず、確実なのは、

(バラマキをしている間は)
・フローは増えるため、所得や支出は増えるだろう
・雇用も増える(失業は減る)だろう
・ただし、バラマキが終わった後(将来の増税や景気悪化など)を懸念する人が多いと、貯蓄に回り支出は増えにくいだろう

(しかし、バラマキを止めれば)
・所得や支出は戻ってしまうだろう
・水増し分の雇用は減るだろう
・つまり、永続的な効果はないだろう

*1 1999年当時、地域振興券は6194億円、配布されました。しかし、追加の消費増加につながったのは2025億円と、GDP個人消費をわずか0.1%だけ増加させました。残りの7割は生活必需品の購入にあてられ、浮いた分は貯蓄にまわったと見られています。(2008/10/30 WBS)

つまり、バラマキは、単発の「水物」であり、本質的に景気を回復させるような「資産効果」はないということです。当然といえば当然でしょう。

加えて、今回の財源は、赤字国債増発ではなく、財政投融資特別会計の積立金など、いわゆる「霞が関の埋蔵金」ということですが、「3年後に消費税率引き上げをお願いしたい」とも述べています。

増税についてはこちらも参照ください。)

(増税をする場合に、消費税増税がいいのかどうかという問題については、ここでは触れません。おおかた、法人税増税はできない(逆に法人税減税をやりたい)ということでしょう。それにしても、国を代表するような大会社が潤うことで、国民全体が潤う、という、トリクルダウン効果(おこぼれ効果)は、少なくとも世界規模では否定されていますので、その正当性は疑わしいところです。過去の消費税に関するエントリーも参照ください)

これまで何度も述べていますように、現在の減税やバラマキは、将来の増税を織り込むなら、そのための貯蓄にまわるため、その効果はプラスマイナスゼロだ、ということです。リカード・バーローの中立命題として、知られています。今回は、消費税の増税を予定していますので、バラマキの効果は減殺されてしまうでしょう。

(引用開始)

追加経済対策決定 総事業費26兆9000億円 消費税率、3年後に引き上げ
2008/10/31

政府・与党は30日、事業総額26兆9000億円の追加経済対策を決定し、麻生太郎首相が同日夜に記者会見して発表した。国の財政支出は5兆円に上る。家計の緊急支援を目的に、2兆円規模の給付金を全世帯に支給するのが柱で、給付は「4人家族で6万円程度になる」(麻生首相)。世界金融危機で景気低迷の懸念が高まり、追加経済対策の一部を先行実施するため、給付金などは2008年度第2次補正予算案に盛り込み、開会中の臨時国会に提出される見通し。
生活対策や市場安定化、中小企業支援、地域活性化、雇用の安全網などの政策を総動員した追加経済対策の事業規模は、8月にまとめた総合経済対策の事業規模約11.7兆円の2倍以上になった。国の財政支出額も、8月の約2兆円を大幅に上回り、財政負担が拡大した。
赤字国債は増発せずに、財政投融資特別会計の積立金など、「霞が関の埋蔵金」を活用して財源を捻出(ねんしゅつ)する。その上で、社会保障の安定財源を確保する必要から、麻生首相は会見で、「3年後に消費税率引き上げをお願いしたい」と述べ、年末に税制改革の中期プログラムをまとめ、増税の道筋をはっきり示す考えを表明した。首相が消費税率の時期を明言するのは異例だ。
追加対策は、中小企業向けの融資や保証枠を21兆円規模で追加した。8月の総合経済対策で実施した9兆円と合わせ、30兆円規模に拡大し、資金繰りに万全を期す。雇用保険の料率も、現在の1.2%から、09年度に限り最大0.4ポイント引き下げる。
住宅ローン減税は最大控除額を過去最高の600万円に拡充し、延長する。道路特定財源の一般財源化に伴い、1兆円を地方の実情に応じ使える新たな仕組みを設ける。自治体が社会資本整備などに使える臨時交付金6000億円も支給する。
麻生首相は、追加経済対策の重要性を繰り返し強調しているが、どこまで消費が刺激され、景気回復につながるかが注目される。

                   ◇

【予報図】
 ■見えない未来の成長ビジョン
「今、世界は『100年に1度』とも呼ばれる金融危機の中にあります」-30日朝発信された麻生太郎首相の官邸メールマガジンは、こんな出だしで始まった。
そして、「家計のやりくりにご苦労されている家庭の皆さん、さらに、不安定な雇用にお悩みの皆さん、子育てにご苦労されているお父さんお母さん、住宅資金にお困りの方々にきめ細かく対応します」と、意気込んだ。
この言葉の通り、追加対策のメニューには、住宅ローン減税や高速道路料金の引き下げなど、暮らしに直結した政策がずらりと並ぶ。「生活対策」と位置付けただけあって、家計の財布を暖めるのは事実だ。企業業績の悪化で賃金抑制に拍車がかかろうとする中、国からの「定額給付金」はまさに“ボーナス”だ。
とはいえ、そこには、麻生内閣が目指す経済成長シナリオはみえない。原油価格の高止まりに対応した総合経済対策と今回の追加対策をあわせても、景気への影響は限定的とみるエコノミストは多い。
みずほ証券金融市場調査部の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「金融危機を日本の政策対応で抜本的に変えるのは困難だ」と指摘し、「社会政策と割り切って、中低所得者層など必要な人に集中して使ったほうがいいのでは」と語る。
野村證券金融経済研究所の野木森稔エコノミストは、GDP(国内総生産)の押し上げ度合いを「0.4ポイント前後」とみる。効果が疑問視される中、対策が手をさしのべようとする先は誰なのか。それは、所得の目減りに不安を感じる家庭や中小・零細企業、活力に乏しい地方にほかならない。与党の大きな支持基盤とも重なる。
そもそも追加対策は、年内解散を想定し、与党のマニフェスト(公約)への盛り込みを視野に入れつつ、自民、公明両党の幹部が中心にとりまとめを進めた経緯がある。解散・総選挙のタイミングをうががう選挙対策色が透ける。「『お金をくれる』、『有料道路を走ったら安かった』というのはやっぱり(有権者に)効くだろう。国民に直結するとなるとどうしてもバラマキになっちゃう」。与党のある地方組織幹部はこう吐露した。
「全治3年」(麻生首相)という景気後退からいかに抜け出すのか。中期的な財政再建の後に描く、構造改革の姿とは-。「金融危機」の旗のもとで作られた追加対策には未来の成長ビジョンはない。足元の不安を緩和する一方で、財政負担のツケを増税でまかなうシナリオだけが先行している。(比嘉一隆)

フジサンケイビジネスアイ

(引用終了)

さて、

日本に限らず、アメリカも、ユーロ圏も、景気対策としてバラマキをやることになるでしょう。加えて、金融危機対策のための「低金利」と「量的緩和」もセットです。

(実は、バラマキをやるにしても、金融危機対策で資本注入をやるにしても、それほど原資がないのです。この問題は、別のエントリーで述べます。)

その結果、何が起きるでしょうか?インフレ(景気悪化と併発すればスタグフレーション)です。具体的には、次のような事態が予想されます。

・借金が目減りする(国が一番トクをしますね!)
・インフレを織り込んで、長期金利が上がる
>金利が上がらなければ、マネーが国外に避難する
>金利が上がった場合は、マネーが流れ込み、通貨高になる
>複数の通貨がいずれもインフレになれば、ゴールドなど現物資産に避難が起きる
・インフレになっても、おそらく、給与は伸びない

常識で考えると、「あなただけの儲かる話」や「ノーリスクで儲かる話」はないのです。これを、資本主義社会ではフリーランチはない、と言います。加えて、現代史的な考察からは、バラマキはその時は良くても、競争力を損なってきたという事実があります。社会福祉ではない、単なるバラマキは、社会の発展に寄与しない、と言ってもよさそうです。

この程度のことは、政府や官僚も知っているでしょう。バラマキを言いだしたのは、景気対策以上に、選挙のことを念頭に置いているに違いありません。

短期的なバラマキの効果は否定しません。どうしてもバラマキをやりたいなら、少なくとも、
不効率なところ(ムダな公共事業、天下り、既得権益など)にバラマキをしてはならない
・特に、バラマキによる企業救済は、本来の目的に反する
・必要なところ(貧困層、リストラ失職、子供や介護など弱者など)に厚く配分する
・将来の成長性を高めるための投資に配分する

バラマキ(財政出動)と増税・歳出節減のバランスにおいては、次の事項に注意しなければなりません。

・バラマキは、ムダな領域に厚く配分されるリスクがある
・増税は、国民生活から、ムダな領域への所得移転となるリスクがある
・歳出節減は、ムダな領域が温存され、国民にとって必要な領域からカットされるリスクがある

以上
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by kanconsulting | 2008-10-31 09:23 | 経済状況
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