これまでのエントリーで、次のように述べました。
(転載開始) FRBのバランスシート アメリカの損失の飛ばし アメリカと日本の納税者にツケ これまで何度も述べていますが、「劣化した金融機関の資産のアメリカ政府による買取」は、アメリカ国民の税金と、その原資となるアメリカ国債を買った投資家に、ツケがまわされるということなのです。 損失補てんは、当然のことながら、今明らかになっている100兆円ではすまないでしょう。その2倍(200兆円)、3倍(300兆円)、ひょっとして5倍(500兆円)も、ありうる話です。ところが、それだけの資金の出し手が、ないのです。日本や中国の国家外貨準備は、すでにアメリカ国債などになっているため、新規の投資資金にはなり得ません。ではどうするか?たとえば、次のような方法があるでしょう。 ・国際協調と称して、日本円を増発 ・FRBに差し入れて、ドルと交換 ・そのドルを市場に流さず、そのままアメリカ国債を購入 ・買ったアメリカ国債は、アメリカ財務省で塩漬けにする ・ある時点で、為替レートと金利上昇による強制調整により、実質の借金を棒引き このケースにおいては、日本の納税者が、「国際協調のため」として、アメリカの損失をかぶることになります。 先ほどの急激な円高では、「債権国である日本に、資金が逃避した」とされています。このため、外貨建ての債券の価値は急落しました。加えて、この債権者は、アメリカ債券を思う通りに売ることができない、「債務を返してください」とお願いするしかない、弱い存在でもあるのです。 何度も書いていますが、日本からカネを搾り取るための、国際協調がありうるのだ、と指摘します。 (転載終了) (それにしても、債権国に資金が避難すると、債務国通貨建ての債権が為替調整により減価するため、債権国が損をする、というのは、うまく出来た話だと思います) このエントリーに限らず、これまでに、次のように述べてきました。 ・信用収縮から回復するためには、新規の投資資金が必要 ・しかし、アメリカをはじめとする債務国には、その余力がない ・債権国である日本・中国・産油国などが、カネを出すしかない ・債権国が救済出資しなければ、強制的な債務放棄(デフォルト)もありうる さて、その中国についても、これまでに次のように述べてきました。 ・中国は、外貨準備として、アメリカ国債などを多量に保有している ・それを外交カードにしており、アメリカ国債の売り圧力をかけることもありうる ・反面、日本は、アメリカ国債を自由に売ることができないのは明らか 中国は、57兆円の緊急経済対策を発表しました。インフラ整備が主だと言う事です。その財源は、中国の外貨準備から、57兆円相当の米国債やGSE債を売るとされています。しかし、それほどの多額のアメリカ国債を売ることは、市場の混乱(金利は上昇)をもたらします。ですので、「中国の57兆円は本当か?」という疑問も、当然ありうるでしょう。 --- 「日本からカネを搾り取るための国際協調」に関連して、日本の外貨準備を、IMFへの融資に充てる、というアイデアは、そこまでIMFに義理立てしなくても良いのでは、とも思います。 (義理立てしているのは、IMFにではなく、アメリカに、なのだと思います。元をただせば、同じなのですが) ニュースを引用します。注意すべき点として、 (1)国際通貨基金(IMF)に対し、外国為替資金特別会計から、最大1000億ドル(約10兆円)の資金融通 (2)日本はドル基軸通貨体制を支える (3)基軸通貨国アメリカを支えるためには、世界中から資本流入させ、アメリカの赤字をファイナンスしなければならない (4)IMFは約2000億ドルの余剰資金を抱え、ただちに資金難に陥る恐れはない (5)日本の外貨準備高は10月末現在で9777億ドル程度、中国に次いで世界第2位 まず、 (1)に関して、外為特会の積立金は、元をただせば、国民の税金であることを忘れてはならないと思います。バラマキの可否は置くとして、バラマキの金額は2兆円と比べると、その大きさが良く分かると思います。 「融通だから、そのうちカネは帰ってくるのではないか」と思われる方がいたとしたら、「そもそも、アメリカに貸したカネも、満足に帰ってきていないではありませんか」と指摘します。何度も書きますが、返してもらえない借用証書は、ただの紙切れなのです。 (外為特会の資金は、国内に回したほうが、結局は良いのではないかとも思います) (そもそも、バラマキの財源である『埋蔵金』で、国債の償還をしたほうが、結果としては良いようにも思います) (2)に関しては、過去のエントリーで散々述べていますので、繰り返しません。(重要ではないから繰り返さないのではありません) 同じく、(3)についても、世界中を巻き添えにして、アメリカと心中するという意思表明にも聞こえます。 (4)に関しても、「それは本当か?」と思います。 まず、余剰資金は本当に「余剰」な余裕資金なのでしょうか?すでに何かの債券になっているということはないのでしょうか。もし自由資金であったとしても、2000億ドル(20兆円)では、中型の危機が来れば一発で使い切ってしまい、大型の危機には焼け石に水であることは明白です。 (5)については、何度も書きますが、外貨準備はほとんどがアメリカ国債のため、額の大きさにはあまり意味がありません。 外貨準備第一位である中国の緊急経済対策は、57兆円分、農村、鉄道・高速道路、港湾整備などのインフラ整備ということです。「国内で使い切りたいので、IMFに回す分はありません」と言っているようにも聞こえます。 こういったことは、過去のエントリーで何度か述べています。 (引用開始) [東京 14日 ロイター] 政府は、14日からワシントンで開催される緊急首脳会議(金融サミット)で、麻生太郎首相が提言する金融危機克服に向けた提案の概容を発表した。 国際通貨基金(IMF)に対し、外国為替資金特別会計から最大1000億ドルの資金融通を行う用意があることを正式表明し、IMFの新興国向け融資を側面支援する。金融危機防止策として、IMFの市場監視機能や早期警戒機能を向上させる必要性も提言する。 一方、市場の一部で懸念されるドル基軸通貨体制維持に対して、ドル基軸通貨体制を支える努力を払うべきと強調。今回の金融危機の根底にグローバルな不均衡の問題があることをあらためて喚起し、ドル基軸通貨体制を支える努力として、各国が構造改善を推進する必要があると訴える。 <危機の根底にはグローバルな不均衡問題> 麻生首相は提言で、まず今回の金融危機の根底に「グローバルなインバランスの問題があり、基軸通貨国アメリカへの世界中からの資本流入という形でアメリカの赤字がファイナンスされているという根本があることを忘れてはならない」と指摘。資本移動が瞬時に起こり得る現状では、金融危機防止のためには、「各国の様々な政策努力を収れんさせ、いかに協調した行動をとるかが不可避の課題だ」と世界的な政策協調を訴える。 <外準活用の新興国支援策では、他の追随も呼びかけ> そのうえで短期・中期・長期に分けて政策を提言。短期の金融市場安定化策では、90年代に日本が金融危機を乗り越えた教訓を踏まえ、資本注入策や企業再生の取り組みの重要性などを示す。 金融危機防止のための中期的課題として、まずマクロ経済運営で「過剰消費・借入依存の国における過剰消費抑制策と、外需依存度の大きな国における自律的な内需主導型成長モデルへの転換」を主張。各国が世界経済の減速に対応する重要性を強調すると同時に、日本では10月30日に追加経済対策をまとめ取り組みを進めていることを表明する。 また、金融危機を未然に防ぐとともに支援体制を強化する狙いから、国際金融システムの機能強化を提言。具体的には、(1)IMFの市場モニタリング機能や早期警戒機能の向上、(2)世界の成長のけん引役を期待される新興国に対しIMFが必要な支援を行うための増資の必要性──などIMFの機能強化を求める。 IMFは約2000億ドルの余剰資金を抱え、ただちに資金難に陥る恐れはない。しかし、政治的な駆け引きがからむ増資には時間がかかることから、麻生首相は増資が実現するまでの当面の対応として、新興国支援などでIMFが資金不足に陥った場合、IMFからの要請を前提に、外貨準備から最大1000億ドルの融資を行う方針を表明する。 日本の外貨準備高は10月末現在で9777億ドル程度で、中国に次ぐ世界第2位の規模。関係者によると、他の潤沢な外貨準備の国にも追随を呼びかける。 また、金融危機の影響で民間資金の流入が細る一方で資金需要が高まった結果、融資余力が少なくなったアジア開発銀行に関して、早急な一般増資を提言する。 <FSFの機能強化> 今回の金融危機発生には、新たな金融商品の登場に対して各国の監督・規制が追いつかなかった問題を踏まえ、会議では、各国の金融監督や格付け、会計基準のあり方も議題になる見通し。これに対して麻生首相は金融監督では、「各国の金融監督局、財政当局、中央銀行の合議体である金融安定化フォーラム(FSF)」を、銀行、証券、保険監督をつなぐ上位組織として位置づけ、IMFとの協働を通じて機能を強化すべきと提言する。さらに、加盟国に偏りがあることから、「新興国をメンバーに加え再構成」する必要性も示す。 会計基準のあり方では、国際会計基準審議会に行政当局や企業、投資家の参画を提言し、時価会計主義偏重からバランスのとれた議論を模索する。また、格付けの問題では、証券監督者国際機構(IOSCO)を中心に格付け機関の自主ルールが強化されてきたが、法的権限をもたせる方向の議論も提案する。 <長期的な通貨体制、ドル基軸通貨体制を支える努力> 市場では、世界最大の債務国である米国のドル基軸通貨体制が今後とも安定的に持続するか懸念が存在する。この懸念に対して麻生首相は「ドル基軸通貨体制を支える努力を払うべき」と提言し、各国に構造改善努力を訴える。 麻生首相提言は金融危機克服に向けた日本政府のスタンスを総括するものだが、金融サミットでは時間の制約から全てを提示出来ない場合も想定されている。 ロイター (引用終了)
by kanconsulting
| 2008-11-17 21:13
| 経済状況
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