アメリカドルのレパトリ(本国還流)はいつまで続くのか アメリカと中国の出来レースと振り込め詐欺

レパトリ(レパトリエーション)は、リパトリ(リパトリエーション)とも呼びます。一般的には、資金・資本が自国に還流することを指します。狭義では、期末・年度末の決算にあわせて、他国の市場に投資していた資金や、他国で上げた利益を本国に呼び戻すことを指します。

日本では、3月などの決算月に、外貨建て資産を円に交換して日本に呼び戻す影響で、円高になりやすいと言われています。また、今回のドル高(対円を除く)では、アメリカドルが投資されていた国ほど、リスク回避によるドルのレパトリにより、通貨が下落していると指摘されています。

もともと、米ドルは世界経済の機軸通貨として、アメリカ国内に必要な分を大幅に超える量が刷られていました。それがヨーロッパに滞留し、『ユーロダラー』と呼ばれていたことは、過去の記事でも指摘しましたので、ご存知の方も多いと思います。最近では、ドルのM3は公表されていませんので、「ドルがどれだけ流通しているのか」を知ることは難しくなっています。

(ユーロダラーについては、過去の記事「来るべき暗黒の日(2) 世界株安と円高再び フレディーマック・ファニーメイ・RMBSとナイトの不確実性」「世界同時株安と円高(4) 円高の理由と中央銀行による流動性供給の弊害 世界恐慌かスタグフレーションか」も参照ください。)

このブログでは、
・アメリカは、若くて優秀な労働力に恵まれており、潜在成長率が高い
・しかし、対外債務国であり、継続的な資本のファイナンスが必要
・ファイナンスが困難になった時点で、自国借金の棒引き・帳消しを迫る可能性もある
・特に、10年に一度は戦争をして景気浮揚をするような体質であり、注意が必要
と指摘してきました。

さて、ロイターは、「永遠には続かぬ米資本の本国回帰、ガイトナー発言で市場に緊張」(01/28)として、

・米国資本(米企業、ファンド等)のリパトリは、昨年前半から本格化している
・つまり、米国人が在外資産を取り崩して、資本を本国回帰させている
・大幅なリパトリを進めざるを得なかったのは、海外の民間資本が米国から撤退したため、米経常収支赤字を決済するための資金が不足したため
・しかし、対外純債務国である米国のリパトリはいずれ一巡する
・その後は、リスクに敏感な民間資本の対米流入が継続できるかどうか、不透明
・日本などの対米債権国が、保有するアメリカ国債(米債)を売れば、債券価格が下落するため、大量に売却できないというジレンマがある
・しかし、中国はアメリカ国債を交渉カードにしているなど、ずっと米国債を持ち続ける保証はない
・米国のリパトリが一巡し、公的・民間資本の対米流入によって、米経常収支赤字をファイナンスできなければ、為替・金利・インフレによる、ドルの価値下落がありうる

と指摘しています。このブログで以前から指摘していたこととほぼ同じ内容なので、さもありなん、という記事となっています。

私はさらに踏み込んで、「中国とアメリカは、アメリカ国債の扱いや為替レートの調整に関して、すでに何らかの合意がなされている。中国とアメリカのコメントは、出来レースだ。最後には日本の資金が使い込まれる、壮大な振り込め詐欺だ。」と指摘します。

米国人が保有する対外資産(デリバティブを除く)
2008 2Q ▲1026.98億ドル
2008 3Q ▲ 95.05億ドル
2008 4Q ?

日本の統計による、米投資家(居住地ベース)の、本邦証券(株式及び債券)の、買い越し・売りこし(▲は売り越し)
(2005~2007年)+9.6兆円
(2008年1~11月)▲2兆1108億円

資本の流出入(▲は流出)(2008 2Q)
海外公的資本 +1400億ドル
民間資本 ▲1200億ドル

米国債保有残高(2008年11月末)
1位 中国 6819億ドル
2位 日本 5771億ドル

米国の貿易収支(▲は赤字)
2008年10月 ▲567億ドル
2008年11月 ▲404億ドル


(引用開始)

永遠には続かぬ米資本の本国回帰、ガイトナー発言で市場に緊張

[東京 28日 ロイター]
米金融危機でもドルが相対的な強さを保っている背景には、米国資本が在外資産を取り崩し、資金を本国回帰(リパトリエーション)させている現象がある。
この動きは為替市場で外貨売り/ドル買いをとなり、ドルの支援材料だ。しかし、対外純債務国である米国のリパトリはいずれ一巡することが予想され、その後は、円滑な対外借り入れの継続が米国にとって死活問題となる。
他方、ガイトナー新米財務長官は対米債権国である中国の通貨政策を名指しで批判、既に不安定化している外国資本の対米流入をいっそう冷え込ませるリスクを冒しているようだ。

 <リパトリの痕跡>
米国資本(米企業、ファンド等)のリパトリは、昨年前半から本格化している。
国際収支統計によれば、米国人が保有する対外資産(デリバティブを除く)は、2008年第2・四半期に1026億9800万ドル(約9兆円)減少し、第3・四半期にも95億0500万ドル減少した。対外資産の減少は、米国人が在外資産を取り崩して、資本を本国回帰させた証しだ。
1960年の統計開始以来、米国の対外資産が四半期ベースで減少したのは10期のみで、2期連続で減少したのは昨年が初めて。第2・四半期の減少幅は過去最大となった。
日本の統計では、米投資家(居住地ベース)が2008年1―11月に本邦証券(株式及び債券)を2兆1108億円売り越したことがわかる。米投資家の対日証券投資は一昨年まで活発で、2007年までの3年間に約9.6兆円買い越している。
米国人が特に昨年第2・四半期に大幅なリパトリを進めざるを得なかったのは、海外の民間資本が米国から撤退したためだ。
同期に、海外の公的資本は1400億ドル超流入したが、民間資本は1200億ドル以上の規模で米国から流出した。このため米経常収支赤字を決済するための資金が不足し、米国人が資本を本国回帰させたという構図だ。

 <ガイトナー発言の真意>
リスクに敏感な民間資本の対米流入が今後一段と不安定になることが予想される中、米財務長官に指名されたティモシー・ガイトナー氏は、日本と並んで世界最大級の対米債権国である中国の為替政策を批判した。
ガイトナー氏は22日、強いドルは米国の利益、との見解を明らかすると共に、中国が為替を操作しているとオバマ大統領は確信している、と述べた。
「広範にわたるエコノミストの見解に基づき、オバマ大統領は中国が為替を操作していると確信している。大統領は中国の為替制度改革を求め、利用可能なあらゆる外交手段を積極的に講じる姿勢を示している」とガイトナー氏は述べた。
この発言について、東海東京証券のチーフエコノミスト・斎藤満氏は「ドル安の進行は海外資本の円滑な流入を阻害するので、債権者にも配慮し『ドル高は国益』という看板を一応は掲げている」ものの、「2兆ドル規模に拡大する見込みの連邦政府の借金の負担を軽くする為に、米国にはインフレ待望論があり、このためにドル切り下げが必要との認識が根底にはある」と分析する。
一方、中国人民銀行(中央銀行)の蘇寧・副総裁は24日、このガイトナー氏発言について、誤解を招く発言だとし「発言は事実に反するだけでなく、金融危機の原因の分析を誤った方向に導く」と反論した。
中国の反論を受け、米国サイドは一転防戦に回った。
ギブズ米大統領報道官は26日、ガイトナー発言について、オバマ大統領が選挙期間中に示した見解を繰り返したのであって、正式な結論ではないとした。
ガイトナー発言を受け、米国が4月に発表する為替報告で、中国を為替操作国に正式認定するのではとの見方が高まっているものの、ギブズ報道官は、オバマ政権がそうするかは依然、議論の余地があることを示唆した。
中国の米国債保有残高は2008年11月末時点で6819億ドルと世界最大で、2位は日本の5771億ドルとなっている。
主な対米債権国が、保有米債を売れば、債券価格が下落し、自らのポートフォリオが傷むため、債権国は自縄自縛に陥り、大量に売却できないという思惑も市場にはある。
しかし、「中国が日本のように漫然と米国債を持ち続けるという思い込みが、全く的外れなことは追々証明されるだろう」(ファンド・マネージャー)との声も聞かれる。
米国のリパトリが一巡し、公的及び民間資本の対米流入が、米経常収支赤字の決済に十分な額に達していなければ、ドルが下落するだけでなく、米国は厳しい国内調整を強いられる。
米国の貿易赤字は昨年10月に567億ドルだったが、11月には404億ドルと急減し、調整の足音が聞こえてくる。

 (ロイター日本語ニュース 森 佳子)

(引用終了)
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by kanconsulting | 2009-02-09 10:28 | 経済状況
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