為替 世界中が低金利通貨 円キャリートレードはすでに死語 ヨーロッパでの円建てローン

「超低金利を続けてきた円は、資金調達のオモチャだった。米国がゼロ金利政策を採用した時点で、円は不要になった」(外銀の資金担当者)
「円キャリートレードは、既に死語」(ファンド・マネージャー)
「円キャリートレードは、金融史上最大の賭けだったにもかかわらず、あまりにも多くの投資家があまりにも長い期間に渡って、リスク・フリーの儲け機会だと信じ込んでいた」(ブラック・スワン・キャピタル代表 ジャック・クルーク氏)


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このブログでは以前から、日本(円)の量的緩和が、世界の過剰流動性をもたらした一因だと指摘してきました。信用収縮による「過剰流動性の終焉」は、「為替差益と金利差(スワップ)との両得を得られるおいしい投資手法」である、「低金利通貨-高金利通貨のキャリートレード」を終わらせ、その逆流(アンワインド)により大きな歪(の解消)をもたらしました。

(量的緩和そのものが、「二階から目薬」的な性格があり、ダブダブに流し込んだマネーは、本当に必要とされるところ「のみ」には届かず、利にさとい越後屋の懐に入ったであろうことも、何度も指摘しています。このあたり、国際支援で半分くらい(?)のお金が途中で消えてしまうことと、似ているような気もします。)

具体的に言うと、まず、

・これまでも何度も述べているが、理論上、金利差と為替差益はバランスする (実際には、バランス線上を上下に変動する)
・金利差と為替差益の両方を永遠に受け取ることは不可能であり、マネーフローが変調すれば、必ず逆流が起こる

さらに、

・信用収縮により、塩漬けになっている外国債券や仕組み債券が、まだあるはず
・それら塩漬け債券の損きりのタイミングが、一種のレパトリとして、年度末に来る可能性がある
・各国通貨が低金利通貨となって流動性を供給しており、「円の低金利・調達しやすさ」は相対的に消滅
・何度も指摘しているが、円をめぐる世界のマネーフローは転換期に来ている

さて、大きな話題になった円のキャリートレードですが、その規模については、第91回 円キャリー取引の通説を問うによると、(2007年当時のデータですが)

狭義の円キャリー取引(仮需):5~10兆円規模 (フォワード取引で円ショートを保持も含む)
広義の円キャリー取引(実需含む):50兆円規模 (個人投資家の外貨建て投資信託購入など、自己資金・実需を含む)
海外の円建て住宅ローン(実需):規模不明だが取るに足りない規模の可能性 (東欧※、韓国、インドなど)

「ハンガリーでの円ローン」に、オースリア中銀総裁による、円建てローンについてのコメントがありましたので、転載します。その当時から、IMFは、外貨建ての住宅ローンの水準が高いとして懸念を表明していたことが分かります。その外貨とはほとんどスイスイフランであり、円建ては低水準だったということです。

(引用開始)

Dr. Klaus Liebscher, Gouverneur
Vienna, 6/17/2005
"Furthermore, the IMF expressed concerns regarding the high level of foreign currency loans taken out especially for house mortgages. The Oesterreichische Nationalbank had already raised the same concerns earlier on. In the first quarter of 2005, foreign currency loans accounted for 19.3% of all loans issued to domestic nonbanks and for about 30% of all loans to households. From the European perspective, loans granted by Austrian banks accounted for approximately 3% of all euro area loans to nonbanks while foreign currency loans accounted for 18% of all euro area foreign currency loans granted to nonbanks at end-20043). Nearly 90% of all foreign currency loans issued to nonbanks in Austriaare denominated in Swiss francs while the importance of the Japanese yen currently stagnates at a low level, equaling the volume of loans denominated in U.S. dollars."

(引用終了)

(「歴史的に見て、金利差と円相場の相関はあまり高くない。金利差が円安・ドル高を後押しするのは、米景気サイクルにそって金利がある程度上昇してから高止まっている間の局面的現象である。米景気が変節を迎え、ドル安サイクルが始まれば、金利差が広いままでも円高になるだろう。」などという指摘もあります)

ということです。自己資金の外貨投資や実需まで円キャリーに入れることには違和感を感じますが、下記(1)の仕組債券の話にもあるように、自己資金であっても、よくわからないままにデリバティブで仮需を膨らませているケースもあるのだと思います。

現在は、最終ステージの入り口に来たのだと思います。

(1)少し前の話ですが、豪ドル/円を大きく下落させたのは、仕組み債券の多量処分ということです。

(仕組み債券とは、普通の債券ではなく、デリバティブの一種です。為替レートが一定範囲なら高金利が約束される債券や、日経平均が10000円を割り込まない限り高金利が約束される債券などがあるでしょう。一時期(悪い意味で)話題になった、シティバンクの仕組み外貨預金も、広い意味では同じカテゴリーに入るでしょう。)

・海外ファンドの売りをきっかけに、豪ドルが下落
・ある国内法人が保有する複数年契約の仕組み債が、契約の下限レートを下抜けたため、投げ売り
・売りの規模が大きく膨らみ、豪ドル/円の売りはその日だけで、10億豪ドル規模(市場筋の推計)
・ドル/円、ユーロ/円などの為替相場にも影響
・このような仕組み債券は、法人向けの投資商品として多量に保有されており、3月末の決算を控えて、損失確定の投売りとなる可能性もある

(2)円をめぐる世界のお金の動きが、変わってきたという状況証拠があります。一言で言うと、「外国資本のマネーフローが、一斉に流れを変えた」ということです。

・そもそも、(日本)円は、運用通貨ではなく、調達通貨として認識されてきた
・外銀は円を調達する一方でドル資金を邦銀に融通してきた
・世界同時低金利の出現で、円は、調達通貨としての旨みがなくなった
・しかし、解消が遅々として進まない円売りポジションが、まだ世界中に残留している
・金融危機で資産圧縮を迫られる外銀が、円の保有を削ぎ落としている
>邦銀が外銀への円資金貸出を一斉に控えたため、外銀・ファンド等が、円のファイナンスに行き詰まり、円建て保有資産の処分売りに
・外銀の円需要減退により、邦銀へのドル建て与信が減少し、邦銀のドル調達コストが上昇
・ドルの供給が細り、海外融資など邦銀の外貨建て業務が難しくなる可能性
・円コール市場・株の裁定取引残高低下・証券レポ取引縮小など、日本の金融証券市場が縮小均衡に

つまり、円キャリーが終われば、円の立場はなくなり、短中期的には、ドルが、再び世界中で必要とされるようになる、ということでしょう。世界第二位の外貨保有高を誇る日本が、ドル不足に悩まされる日が来るのでしょうか?少なくとも、民間ではその可能性があるでしょう。

最後の円高を境に、外貨が足りない、そして日本のマーケットが見捨てられる、という悪夢がありえるのかも知れません。

具体的には

(日本で営業する外国銀行の総資産残高)
・2008年末 40.3兆円 昨年比▲10.4兆円(▲20.6%)
>同残高ピーク 64.0兆円(1998年11月)

(同、コール市場から調達した円資金(負債残高))
・2008年末 2.7兆円 昨年10.1兆円
・現時点では1兆を下回っている可能性が高い

(外国人投資家(非居住者)の円資産(本邦株式、中長期債、短期債合わせて) 買い/売り越し)
・2007年 △24兆9226億円 (△は買い越し)
・2008年 ▲10兆3414億円 (▲は売り越し)

(邦銀のドルの資金調達コスト)
・ドル/円ベーシス・スワップ
1月中旬 12bp
2月月初 50bp
2月中旬 40bp

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(引用開始)

豪ドル/円を国内勢が巨額の売り、仕組み債を処分
2009年2月12日

[東京 12日 ロイター] 為替市場では、国内勢のまとまった豪ドル売り/円買いが話題となっている。高金利通貨として人気を集めた豪ドルは個人投資家のみでなく、企業など多くの法人が積極的に投資していたが、相場の下落をきっかけに3月決算期末を前に手じまい売りが出ている。
市場関係者を驚かせたのは、前週2日の値動きだった。日本時間夕方、豪ドル/円が日中の高値58円半ばから55円半ばへ一気に下落、昨年10月以来の史上最安値に急接近した。急激な円高は他通貨にも波及し、それまで89円台後半でもみあっていたドル/円は88円後半へ1円弱下落、ユーロ/円も113円前半まで3円近い円高となるなど、円は一時全面高となった。
複数の関係者によると、豪ドル/円を大きく下落させたのは国内のある法人の売り。海外ファンドの売りをきっかけ豪ドルが下落し、その国内法人が保有する複数年契約の仕組み債が契約の下限レートを下抜けたため「投げざるを得ない状況となった」(市場筋)という。複数年契約で複雑なオプションを絡めた仕組み債は規模が大きく膨らみ、その日の市場で売却された豪ドル/円は、市場筋の推計でおよそ10億豪ドル規模。クロス円の取引量としては異例の大きさだった。
巨額取引が行われた2日は値が大きく振れたため、多くの市場関係者の注目を集めたが、こうした国内勢の「解消売り」は小規模のものも含めると、今回が初めてではないという。高金利通貨として一時、個人投資家の人気を博した豪ドルは「法人向けに数多くの投資商品が作られた。オプションを絡めたものも多い」(外銀関係者)といい、同様の仕組み債を持つ法人は少なくないとされる。
上場する大手企業では昨年、イタリアンレストランのサイゼリヤ<7581.T>が豪ドル建ての仕組み債で150億円超の損失を計上したが、前週の急落を経た市場では、「損失を抱えた非上場の法人が決算を控え、損失確定に動く可能性があるのではないか」(都銀の外為市場関係者)との思惑が広がり始めている。
前週の巨額取引が参加者に与えた衝撃は大きく、今週に入っても仕組み債に絡んだまとまった円買いに敏感になっている。9日の取引で豪ドル/円が1カ月ぶり高値62円後半から夕方に60円前半まで急落すると、その過程では「豪ドルに仕組み債絡みの大規模な売りがまた出た」との観測が出回ったほか、10日、12日の取引でも「豪ドル/円に数億豪ドル単位で国内勢の売りが出たらしい」とのうわさが流れている。
円相場全般は米国の金融安定化・景気刺激策の行方と株価反応をにらみ一進一退。ドル/円もテクニカル的に上昇基調と下落トレンドの分かれ目とされる90円をめぐる攻防が続くなど、今度の値動きを左右しかねない分岐点に差し掛かっている。3月末にかけて豪ドル/円で同様の売りが相次げば、円相場全般に与える影響は決して小さくない。

 (ロイター日本語ニュース 基太村真司記者 編集 橋本浩)

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http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200902170053.html

焦点:外銀の資産圧縮で円が御用済み、邦銀のドル資金繰りも窮地に
2009年2月17日

[東京 17日 ロイター] 日本で営業する外国銀行の総資産が急減している。金融危機で資産圧縮を迫られる外銀が、世界同時低金利の出現で調達通貨としての旨みがなくなった円の保有を削ぎ落としているからだ。
これまで外銀は円を調達する一方でドル資金を邦銀に融通してきたが、円資産圧縮でドルの蛇口が細ったことで、海外融資など邦銀の外貨建て業務が窮地に追い込まれそうだ。
デスティネーション・カレンシー(運用通貨)ではなく、ファンディング・カレンシー(調達通貨)に成り下がった円が国際金融市場で地位を回復するには、金融、産業を含めた長期戦略が必要だ。

 <オモチャの円>
日本で営業する外国銀行の総資産残高は昨年1年間で10.4兆円(20.6%)減少し12月末に40.3兆円まで落ち込んだ。同残高は1998年11月に過去最高の64.0兆円だったので、ピーク時からは37%の減少となる。外銀が円ビジネスから撤退する背景は、金融危機の影響で資産圧縮を迫られているためだが、理由は他にもある。
「超低金利を続けてきた円はファンディング(資金調達)のオモチャだった。米国がゼロ金利政策を採用した時点で、円は不要になった」と外銀の資金担当者は言う。
円はファンディング・カレンシーとして、90年代半ばから欧米投資銀行やその他の金融機関に大いに利用されてきた。低金利の円を借り、その円を売って高金利の通貨(資産)を買う「円キャリートレード」は長らく国際金融市場を席巻した。円キャリートレードは90年代後半の米国のドル高政策の推進力となり、多くの金融商品のボラティリティの源にもなった。
しかし、米国発の金融危機で、米国がゼロ金利政策を採用し、他の主要国もゼロ金利に向けてまい進する中、円の比較優位は失われ、市場では「円キャリートレードは既に死語」(ファンド・マネージャー)とも言われている。円キャリートレードでレバレッジを高め、ハイリスク・ハイリターンの商品に大量投資するというビジネスは破たんし、外銀の円調達意欲も急速に冷え込んだ。
在日外銀の資産の内訳をみると、最も落ち込みが激しいのは、外国銀行がコール市場から調達した円資金の規模だ。外国銀行在日支店のコールマネー(負債)残高は昨年12月末時点で2.7兆円となり、2007年末の10.1兆円から激減した。「現時点では1兆を下回っている可能性が高い」(外銀)との観測も聞かれる。

 <円資産からの撤退>
昨年9月のリーマンショックは、基軸通貨ドルの流動性リスクを印象付けたが、これまで最も安く、最も大量に調達できたはずの円の流動性リスクも際立たせた。
リーマンショックを契機に、邦銀は外銀への円資金貸出を一斉に控えた。この結果、円の流動性に窮した外銀や外銀を介して円資産を保有してきたファンド等は、円のファイナンスに行き詰まり、円建て債券、株式など、保有資産の処分売りに動いた。この流れは今でも続いている。
「国際的な資産運用という意味では、安い通貨で調達して、強い通貨で運用するのが望ましいはずだが、(外資系金融機関は)アセットそのものを持っていられなくなったということだろう。彼らの資産圧縮は今後も確実に続く」(証券系エコノミスト)という。
外国人投資家(非居住者)は2008年中に本邦株式、中長期債、短期債合わせて10兆3414億円と大幅に円資産を売り越している。2007年は24兆9226億円の買い越しだったので、35兆円を超える外国資本のスイングがあったことになる。
外国資本が一斉に流れる方向を変えたことで、円コール市場のほか、株の裁定取引残高低下や証券レポ取引の縮小など、本邦金融証券市場も縮小均衡の道を歩み始めた。

 <ドルが足りない>
外銀はこれまで国内の金融機関から円資金を調達する一方、主に裁定市場で円転取引を通じて邦銀に外貨建て短期貸付を行う役割を担ってきた。円転取引とは外貨資金を円に換えて運用する行為。
しかし、外銀の円需要減退と歩調を合わせて、邦銀へのドル建て与信も減少し、邦銀のドル調達コストが上昇してきた。このため海外融資や外国債券投資など、外貨ビジネスのコストが上昇し、採算性が低下している。
他方、海外で事業展開する大手日本企業は、邦銀を通じたドル資金調達や証券発行などでドル確保を進めている。
ソニー<6758.T>は12月末、三菱東京UFJ銀行など邦銀3行と15億ドルのドル借入枠を契約した。ソニーは外銀に約43億ドルの借入枠があるが4月1日に契約期限を迎える。ドル借入枠の設定について「金融情勢に鑑みて、何かあった時に備えるためのもので、現在は借入枠を使用していない」(ソニー広報)という。
「ドルの蛇口が細っているなかで、企業のドル需要もあり、資金繰りは厳しい。海外貸付など外貨建て資産を膨らませることは難しい」(邦銀資金担当者)との声も聞かれる。
邦銀のドルの資金調達コストを表すドル/円ベーシス・スワップのマイナス幅は、1月中旬に約12ベーシスポイント(bp)に縮小したが、2月月初に急拡大して50bpとなった。現在は40bp付近だが、市場参加者によれば、邦銀が外貨資産の圧縮を行わなければ、ドル資金調達コストが再上昇する可能性が高いという。

 <円の地位回復は長期戦略次第>
円キャリートレードが風前の灯になったとは言え、アイスランドでの円建て住宅ローンをはじめ、個人向けや企業向けの円貸付で、解消が遅々として進まない円売りポジションは世界中に残留し、今後円相場のボラティリティを高めるマグマとなっている。
「(円キャリートレードは)金融史上最大の賭けだったにもかかわらず、あまりにも多くの投資家があまりにも長い期間に渡って、リスク・フリーの儲け機会だと信じ込んでいた」とブラック・スワン・キャピタル代表のジャック・クルーク氏は言う。
財務省は円の国際化の議論を長年リードしてきたが、その議論は使い勝手の向上という側面に偏ったものだった。使い勝手の向上を追求するなかで、円はファンディング・カレンシーとして「負の国際化」の道を歩んだが、通貨の番人としての財務省・日銀はなぜこれを放置したのか。官民とも長期戦略の練り直しが必要な時がおとずれている。
「運用通貨と調達通貨の違いを明瞭に認識して行動してこなかった」と政府関係筋はこれまでの通貨戦略を振り返る。
一方、邦銀の外貨ビジネスについて、三菱UFJ証券・チーフエコノミストの水野和夫氏は「欧米重点戦略から今後はアジアを中心とした戦略に移行すべきだろう。多くのアジア諸国の経済水準は近代化の流れが加速した日本の1960年代に相当し、高成長と通貨価値の上昇が見込める。邦銀は弱いドルで資金調達し、アジア通貨建ての貸付をするという選択肢を考えるべき」だという。「ユーロがローマ条約から40年かけて成立したことを考えれば、日本もアジアの共通通貨を作るという方向で長期戦略を練る必要があろう」と水野氏はいう。
産業政策では、「輸出を柱としたこれまでの経済成長から、内需中心の経済を目指さざるを得ない。まだ移行が出来ていないことで、GDPが大幅に落ち込んでいるが、今後は徐々に変化していくだろう」と前出の政府関係筋は言う。

 (ロイター日本語ニュース 森佳子 編集 橋本浩)

(引用終了)
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by kanconsulting | 2009-02-23 10:47 | 経済状況
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