国民金融資産の行方

日本の国民金融資産は、1400兆円と言われています。しかし、国民金融資産は、すでに使われてなくなっています。700兆円と言われる預金(内、郵貯+簡保+年金で570兆円)をはじめとする日本の個人金融資産は、既に多くが、銀行預金や郵便貯金を経由して国債・財政投融資・地方債に形を変えています。そして、残りが民間企業への貸付や住宅ローンに向けられているのです。ここまではメインページで記述したとおりです。

そして、預貯金、国公債、株式、債券は、「本当の資産」ではありません。

どういうことか?まず、預貯金、株式、債券などの「金融資産」は、実は「資産」ではありません。まず、GDPなどの国民経済計算においては、金融資産は計上されません。本当の資産として計上されるのは、「実物資産」だけです。

2人だけの国があったとします。資産といえるのは、Aさんの持っている金塊1万円分だけだったとします。Bさんは文無しです。Aさんは、Bさんに金塊を貸しました。その代わり、1万円分の借用証書を書いてもらいました。(債権証書=債券)
この国の資産は、金塊1万円分+Aさんの金融資産1万円分=合計2万円でしょうか?
違いますね。それは幻想というものです。Aさんの債権は、Bさんの債務と本来は帳消しになりますので、この国の資産は、やはり、金塊1万円分だけです。ここでいう金塊が、土地であっても、工業機械であっても同じです。Bさんが銀行であっても、同じです。
B/Sの資産と負債は、本来相殺するものなのです。

では、私たちの1400兆円がどこにいったのか見てみましょう。

副島隆彦氏作成の表「いま日本の金融資産はいくらあるのか?」を見てみましょう。
(「預金封鎖/副島隆彦」参照、2003/3月)

      資産      負債      正味     (兆円)
家計  1378      385      993
企業   669     1251     ▲582  金融を除く
政府   454      801     ▲347  ※
金融  2501     2565     ▲64   日銀・郵貯を含む
合計  5002     5002        0

※計算方法が異なるため、メインページ記載の日本国B/Sの数字と合致しません

国民金融資産から家計の負債(ローン)を引いた残高は、約1000兆円です。その残高で、政府と企業の負債をファイナンスしています。
政府の負債とは、国公債を代表とする公的債務のことです。道路などの社会資本を形成するために使われました。
企業の債務とは、株式であり、社債です。株式は返済義務のない負債です。株式や社債は、会社の資産(保有土地、生産機械など)で裏付けられています。
つまり、国民金融資産は、それをもとに作られた実物資産に変わっています。

それに、劣化する実物資産には、会計上の仮定である「減価償却」が必要です。減価償却をしないと、実際には減価し価値のない資産が、過大に計上されてしまいます。資産を売却して借金を返してよ!と言われたときに、ない袖は振れない、ということになります。資産が減価する分、新たな富を生み出してキャッシュとして回収する必要があるのです。つまり、資本への投資は、それがどれだけ新たなキャッシュフローを生み出すかをよく判断する必要があるのです。公的資本形成には公共的な面がありますので、経済性のみでは判断できませんが、だれも通らない道路や、利用されないダム、豪華すぎる箱物施設はそれに見合った新たなフローを生み出しません。しかも、国の場合は、道路やダムを処分して売る相手もいないのです。つまり、国に「資産を売却して国公債(借金)を返してよ!」と言っても、「それはできません。ついては増税しますので、その税金で返します。」となります。公的資本は減価しても資産が残るだけまだマシですが、効率悪・無駄な行政サービスに至っては、後に何も残さないのです。

株式は、事業を続けてその資本に見合って利益を出していく限り、価値があります。では、国民金融資産の大半がつぎ込まれている、国公債の価値はどうでしょうか?

さらに問題なことには、国債の最終原資である国民の貯蓄率が低下してきています。貯蓄を崩して消費するのは正当なことで本来何の問題もないはずなのですが、今後、貯蓄額そのものが減少する段階に入ると、政府の赤字をファイナンスできなくなります。この問題については、日を改めて記述します。
[PR]
by kanconsulting | 2004-08-04 00:31 | 経済状況
<< どこまでも、しぶとく。 紙幣の中身 >>