SDR2500億ドルのバラマキ 信用創造の悪魔 ゴールドの奪い合いか

2年ほど前に、SDR(IMF特別引出権)について、次のように述べました。

SDR:Special Drawing Rights (of the International Monetary Fund)
(Sony Dream Robots (QRIO)ではありません)

(転載開始)

「日本の外貨準備高は5934億SDR(9545億ドル) IMF国際通貨はすでに存在する? 日本円のプレゼンス低下」

さて、
「あれ?財務省発表の外貨準備はドル建てなのに、IMF発表の外貨準備は、SDR建てという変な単位になっているぞ。」
とお気づきでしょうか。このSDRとは、何でしょうか。

『1969年、IMFは加盟国の既存の準備資産(公的金保有、外貨、IMFのリサーブポジション)を補完するために外貨準備資産としてのSDRを創設しました。SDRの価値は主要国通貨のバスケットに基づいて決められ、IMFほか多数の国際機関における会計単位として使われています。(中略)

SDRは通貨ではなく、またIMFに対する請求権でもありません。むしろ、潜在的には加盟国の通貨を自由に使用できるという権利を持ち、保有国はSDRを外貨と交換できるようになっています。準備資産としてのSDRの価値はSDRを保有し、受け入れ、SDRシステムの運用についての様々な義務を果たすという加盟国の確約に基づいています。自由に使用できる通貨に対するSDRの請求権は以下の2つの方法によって与えられることをIMFは保証しています。強い対外収支ポジションにある加盟国を指名し、弱いポジションにある加盟国からSDRを買い取る方法、あるいは、管理された市場において参加国間での自主的な交換の取り決めにより行なう方法です。(IMFホームページより)』

「米ドル準備資産の継続的増加によって米国の国際収支が絶えず赤字となり、そのこと自体が米ドル価値への脅威となりました」とあるように、基軸通貨は、かならず経常収支赤字となり、そのこと自体が、基軸通貨への信認を失わせるというのは、皮肉なことに、IMFの想定範囲内でもありました。逆に、経常収支を改善しようとすれば、世界全体が通貨不足に陥るというジレンマもあります。アメリカという一国の財政と、世界経済をリンクさせることに、そもそも無理があったのかもしれません。

「SDRは通貨ではない」とあるものの、「個人取引での利用を促進しようという努力」という記載があるように、通貨バスケットで国際決済を行わせ、基軸通貨ドルの代替をしようとしたという形跡が見られます。機軸通貨の重責を、ほかの通貨にも背負ってもらうことで、世界経済が安定化するなら、儲けものです。

(転載終了)

本日のSDRの為替?レートはこちら

SDRの内訳(通貨バスケット)

        2006 2001 1996
米ドル    44   45   39
ユーロ    34   29   --
ドイツマルク --   --   21
仏フラン   --   --   11
日本円   11   15   18
英ポンド   11   11   11

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このように、IMFは、1969年、外貨準備資産として、SDRを創設しました。IMFや国際機関における会計単位として使われるほか、各国の外貨準備量の表記単位としても用いられることがあります。ですが、国際決済に頻繁に使われることはないようですので、「国際通貨の成り損ない」という指摘もあります。SDRの価値は、上に示したように、通貨バスケット(現在は、ドル、ユーロ、日本円、イギリスポンド)に基づいて決められており、為替レートの変動に応じて日々更新されます。バスケットの構成比そのものは、5年に一度見直しされます。

上にも述べましたが、「個人取引での利用を促進しようという努力」という記載があるように、通貨バスケットで国際決済を行わせ、基軸通貨ドルの代替をしようとしたという形跡が見られます。ということは、SDRが国際基軸通貨にならなかったのは、シニョリッジ権限を手放したくないアメリカの意向、と思って間違いではないでしょう。

(IMFそのものはアメリカの下部機関ではありませんが、世界経済奥の院にとっては、どちらも配下のようなものでしょうから、SDRが国際決済通貨になっても、あまり違いがないのかもしれませんが)

さて、最近、SDRが話題になっています。たとえば、

・SDRをアメリカドルに代わる基軸通貨にすべき (中国人民銀行 周小川総裁)
・SDRの通貨バスケットに中国人民元を加えるべき (ノーベル経済学賞 ロバート・マンデル)
・SDRの構成資産にルーブルや人民元、金などを含めるべき (ロシア政府)

などです。(しかし、ロシア以外のG20各国首脳は、当面はドルが基軸通貨であり続けるとの立場です。)

人民元のSDR参入問題に関しては、

・まだ市場で自由に交換できない
・完全なフロート(変動相場制)でもない

として、あまり現実味がありませんが、そのような提案を行った中国政府の意図として

・コインの裏表である、米国の弱さと、中国の強さを、切り分けたかったのではないか
・機軸通貨発行国である米国経済の悪化と、世界金融の悪化を、切り分けたかったのではないか

という見方があります。

さて、先般行われたG20金融サミット(20カ国・地域の首脳会合)で、「IMFの融資枠を拡大する一環として、SDRを新たに2500億ドル配分する」ことが決定されました。

もともと信用創造とは、自分の靴の紐を上に引っ張ることで自分が空を飛ぼうとする「ブートストラップ」に似たところがあります。キリスト教になぞらえると、無から有を創造することは、信用創造主の御技と言えるかも知れません。ですが、信用創造が、神の御技ではなく、欲望にかられた悪魔の技でしかないとしたら、どうでしょうか?

もっと簡単に言いますと、SDR2500億ドル分の配分は、あまり裏づけがありません。そもそもIMFには、それほどの資産がありません。
イメージとして言うなら、資金繰りに困った中小企業の社長同士が、おたがいに同額の小切手を発行し交換するようなものです。ですので、

・借金でまかなうというのなら、問題の先送り
・そうではなく、各国通貨の信用に転嫁するというのなら、「壮大な飛ばし」
・いずれにしても、通貨全部を巻き込んだ信用瓦解になりかねない

さらに、「G20はIMFに対し、最貧国向け融資資金の調達や保有する金の売却を加速するよう求めています」とありますが、注意しなければならないのは、「IMFにはすでにゴールドが残っていないのではないか」ということです。IMFの公表する金地金保有量として、

・IMF 3217トン
・(参考)アメリカ 8143トン

とされていますが、その数字を信じるとしても、ゴールド3000トンは約10兆円(約1000億ドル)ですから、全然足りません。さらに、このゴールドさえも、これまでの通貨危機などで使ってしまったのではないでしょうか?

現物資産の奪い合いという、隠れた面が見え隠れします。

関連したニュースを転載します。

(引用開始)

中国人民元を来年SDR通貨バスケットに加えるべき=マンデル氏
2009年4月7日23時55分

[香港 7日 ロイター] ノーベル経済学賞の受賞者で「ユーロの父」と呼ばれるロバート・マンデル氏は7日、世界的な準備通貨の創設に向け来年、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の通貨バスケットに中国人民元を加えるべき、との考えを示した。
当地での記者会見で、変動の大きい為替相場が昨年9月以降の世界的な金融危機の一因になったと指摘。「今こそ変革の時である。人民元は現在、世界で3番目に重要な通貨といわれ、見方にもよるが日本円より重要といえる。2010年に人民元をSDRに加えるべきだと確信する」と語った。
バスケットの構成は5年ごとに見直され、次の見直しは来年後半。SDRの構成について、同氏は、1)ドルの比率を現在の45%から40%に引き下げ、2)ユーロの比率を29%に据え置き、3)円の比率を15%に据え置き、4)英ポンドを除外もしくは比率を現在の11%から5%に引き下げ、5)残りを人民元とすべき──としている。

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金融サミット、財政支出の数値目標には合意できず=渡辺前財務官
2009年3月27日18時55分

[東京 27日 ロイター]
(中略)
中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁の最近の論文が発端となり、中国政府内で国際通貨基金(IMF)の準備資産であるSDR(特別引き出し権)をドルに代わる基軸通貨にすべきだとの構想が浮上している。中国の主張の背景について渡辺氏は「正直わからない」としながらも、「中国はまだ10年くらい米国にとって最大の貿易相手国であることは間違いない。そのため常に米国の弱さ批判は、必ず中国の強さ批判となって跳ね返ってくるところがある。そこは切り分けたかったのではないか。米国(経済)が悪くなるかどうかという話と、世界全体の金融が悪くなるかどうかと言う話を遮断したほうが中国にとっては良いという判断が発言につながったのではないか」と推測した。
SDRは外貨不足の国が余裕のある国から外貨を受け取る権利のこと。IMFが金やドルなどを補完する2次的な準備資産として1969年に創設した。
現在はドル・ユーロ・円・英ポンドの4通貨で構成されているが、中国にはこれに人民元を加えたいとの狙いがあるとの見方に対しては「人民元はまだコンバーティブルではなく市場で自由に交換できない。完全なフロートでもない」とし、中国が人民元をSDRに入れるべきだと強調すればするほどこの2つの問題が表面化するため「中国は多分それに乗れない」とみて「そこまで中国が考えているわけではない」と分析した。

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ロシア大統領、新たな基軸通貨の創設を重ねて支持=英BBC
2009年3月30日10時15分

[モスクワ 29日 ロイター] ロシアのメドベージェフ大統領は29日に放映された英BBCとのインタビューで、新たな基軸通貨を創設する案に対して重ねて支持を表明した。
同大統領は「この問題について、ブラウン英首相をはじめ他の首脳とも意見を交わしたばかりだ。われわれは当然現実的であり、自分自身の立場、および中国首脳の立場も現実的であることを願っている」と述べた。
その上で「現在の通貨体制が、現在起こっている問題に対処しきれていないことは明らかだ。ドル、ユーロ、ポンドなど、さまざまな通貨があるのは幸いだ。ただ将来的には、国際通貨体制は、他の地域で準備通貨として使われている通貨をも含む多通貨バスケット制に基づくものにならなくてはならない」と述べた。
「この点で合意が得られれば、いわゆるスーパー通貨の創設について、将来的に議論を開始できる可能性がある」と述べた。 
ロシア政府は3月16日に発表した20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)に向けた提言の中で、国際的な金融機関が発行する新たな通貨の創設を提案している。G20首脳会合は4月2日、ロンドンで開催される。
その後中国がG20を前に、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)を基軸通貨とする国際通貨体制への移行を提案し、議論を呼んでいる。
ロシア以外のG20各国首脳は概ね、当面はドルが基軸通貨であり続けるとの立場を明確にしている。
この件に関して、通信社各社は、ロシア大統領府幹部が28日、ロシアはIMFのSDR使用拡大を支持するものの、今回のG20会合で新たな準備通貨の創設が合意される可能性はないとみている、と発言したと伝えている。

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ロシア、SDRにルーブル・人民元・金を含めることを支持
2009年3月30日12時35分

[モスクワ 28日 ロイター] 通信各社によると、ロシアは国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成資産にルーブルや人民元、金などを含めることを支持している。ただ、4月2日の20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)で新たな準備通貨が受け入れられる可能性はないとみている。ロシア政府高官が28日に語ったとして各社が報じた。
ロシア通信(RIA)によると、アルカジー・ドボルコビッチ大統領補佐官は「(SDRを構成する)通貨を拡大することは論理にかなっている。ルーブルや人民元、恐らくその他の通貨も含めることが可能だ」と語った。
金融サミットで新たな準備通貨が受け入れられる可能性はないとしたものの、同氏の発言はこの問題をめぐる議論が金融サミットで注目を集めることを示唆している。
また、タス通信によると、同氏は、ロシアとしてはルーブルと人民元を準備通貨として幅広く用いることを支持すると述べた。


(引用終了)
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by kanconsulting | 2009-04-13 11:00 | 経済状況
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