Xデーはいつか 長期金利の行く末 壮大な自転車操業か

「財源の話になると、増税か歳出減かの二者択一になる。なぜ、国債発行を財源の選択肢に入れないのか。日本全体で見れば借金はない。国債は有力な財源だ。国債の長期金利は今、1・45%で決して高くない。これから20兆、30兆円を追加発行しても、10年債で2%は超えないだろう。日本には国債を追加発行する余力がある。1000兆円程度まで行っても、そこで止まれば問題ない」(榊原英資)

「国債の発行は、将来の増税だ。景気がいい時に増税せず、悪い時に財政出動したら、常に増税できない。その結果が、今の800兆円の財政赤字だ。インフレの度合いや金利政策にもよるが、景気が良くなれば、利払いにも影響する。長期金利は1%上がれば、利払いが1・6兆円増える。景気が好転すれば増税しないで済むという理屈は破綻している。」(石弘光)

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日本国財政破綻Safety Netさんの、「728.Xデーに備える(その1)」にて、次のような提議をいただいております。

(遅くなりすみません)

(ここから)

私はAさんに以下のようなメールの返事をお送りいたしました。

財政破綻は今年、後半にも起こっても不思議はない、と考えます。マンのヘッジファンドについては、現金化した場合、税金対策がネックです。信頼できる代理店をとおして購入していても税金対策までは面倒みてくれないと思います。マンのファンドを長期保有する、マタギ氏のところには税務署から照会の手紙が来て、あわてて税理士を探していました。ご参考になさって下さい。

預金封鎖は一番厄介だと思います。従って、国内の金融機関に円で保有するのは、生活にさしさわりのない必要最小限でよろしいのではないでしょうか。あとは、インフレを想定した対策を考えておく必要があると思いますので、金の保有はインフレ対策には有効と思います。

個人の財産権を侵すような露骨なことはさすがの財政当局もやらない可能性もあります。外貨預金よりは外貨MMFがベターです。ある程度のリスクヘッジにはなると思いますが、いったん円高になった際に減価するので、集中投資は危険ではないでしょうか。


さて、kanコンサルティングのかんさんは、Xデーの時期と現時点での対応策について、どのようにお考えになりますか?

(ここまで)

「Xデー」とは、いろいろな受け止めがあると思いますが、取り急ぎ、国債の需給バランスが悪化したり、国債の信任が低下し、その結果として長期金利が急上昇する局面、と解釈したいと思います。

2009年度 国債発行額 (WBS調べ)

日本 約150兆円 前年度比1.2倍
アメリカ 約180兆円 同2.5倍
イギリス 約 35兆円  同2.8倍
ドイツ 約 47兆円  同1.6倍

長期金利 (8月上旬ころ)

日本 1.445%
アメリカ 3.631%
イギリス 3.876%

本日(8/13)の長期金利は、1.415%となっています。このところ、1.4%~1.5%のレンジで推移しているように見えます。

この長期金利ですが、需給バランスの悪化で、そのうち上昇するのではないかと見られています。代表的なものは、「今後の国債を持続的に消化するのは難しいため、長期金利が上昇するリスクがある」ですが、政策金利については、「日本の財政規律が崩れているため、日銀は金利を上げるに上げられない」と、真逆の方向となります。

しかし、日本も含め各国とも、多量のマネー(流動性)を供給しているため、それが債券消化に向かう限りにおいては、それほど心配ないのでは、とする意見もあります。

私は、「国がマネーをばら撒いて国債を消化させるのは、結局は壮大な飛ばしであり、何の解決にもならない。そのうちに行き詰まる」と、何度も指摘しています。

たとえば、

(引用開始)

「不透明な民主党マクロ政策、日銀出口戦略に影響も」

政策実現や高齢化の進展に伴う社会保障費の増大などを考えれば、当面は国債増発が継続する可能性が高く、長期金利上昇懸念が強まると予想される。そうした中での日銀による国債買い入れをめぐって「政治からの圧力が強まることは確実」(菅野氏)とみられている。
熊野氏は「今後、市場が次々と発行される国債を持続的に消化するのは難しいのではないか」とし、「長期金利の上昇懸念は引き続き強く、その面からも景気への不安がある」と指摘している。

他方、政権交代の可能性や実体経済の弱さに引きずられ、過剰流動性の供給が長期化することを懸念する声も多い。日銀短観からもうかがえるように、大企業を中心に資金繰りや借り入れ環境は改善傾向にあり、日本国内における金融システムの状況は、危機を脱したとの見方が政策当局から出ている。
野村総研の井上氏は「現在は世界中の中央銀行が大量の資金を供給している状況。超金融緩和からの出口が遅れ、過去の教訓が生かされないという懸念もある」と指摘する。
熊野氏も「金余り」の状況は徐々に強まっていると述べ、「過剰流動性供給が続く一方で、経済活動には結びつきにくい状況。企業の資金需要は弱含み傾向が続くため、金融機関は運用難に直面している」として「バブルの予兆」に警鐘を鳴らしている。
国内では、だぶついたマネーは再び債券市場に向かっているように見える。国債増発シーズンを迎えても長期金利が抑制されており、「一種の国債バブルが始まっている」(菅野氏)との見方もある。
海外では、米国やEU(欧州連合)などを中心に、中央銀行が非伝統的手段を駆使して大量の流動性を供給しており、原油や商品市場などに再びマネーが流入しやすい環境にある。水面下でマネーのゆがみが進行している可能性に対し、市場の警戒感が足元で急速に強まっている。 

(引用終了)

などの指摘です。

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「言っていることは分かるが、単に国債消化に懸念があったり、需給バランスがミスマッチで長期金利が多少上がったりすることと、国債デフォルト(それに準じるような国債信任の低下)や、いわゆる『Xデー』とは、かなり距離があるのではないか?」

という指摘もあると思います。それに応えるためには、

(1)世界のマネーストック、世界の中でのマネーフロー
(2)日本の国債消化余力

について考える必要があります。これまでは、「経済状態の段階的発展説」や「世界同時国債多発」などの内容で(1)について考えてきました。本日は、(2)について整理したいと思います。

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本日はデータ不足のため、おおざっぱな話になってしまいます。

現在、長期金利は安定しているように見えます。国債の需給バランスにも特に危険な兆候は見られません。たとえば、「債券相場は堅調、20年債入札無難の見方(ブルームバーグ)」などです。

では、日本全体のマネーはどうなっているのでしょうか?

7月のM3(現金・預貯金の合計) 1057兆円 (前年同月比+1.9%)

数字では、潤沢に見えます。倒産が減らず、雇用も圧縮を続けており、現実に食うに困っている人が何百万人単位で存在する今日、ミスマッチなほどの巨額のマネーに見えます。一言で言うと、マネーが鬱血しているのでしょう。

M3が増加を続けている理由として、「金融市場が不安定化したのに伴い、個人が資金を定期預金に預ける傾向が引き続き強まっているのに加え、企業も手元資金を預金に積み増す傾向を強めているため。定期預金などの「準通貨」は同3.0%増と99年1月以来の高い伸びを示した(毎日新聞)」などとされています。
それ以外にも、政府から供給される救済的資金もあり、水ぶくれ状態になっているのだと推察します。その資金の財源も、国債なのでしょうから、巨大なネズミ講のようで、なんだか意味が分かりません。

経済成長(による将来の自然税収増)は、不確かな希望的観測だと思います。少子高齢化が進む国で、経済成長が安易に期待できないことは、これまでに何度も指摘しています。

逆に、国の思い通りになるマネーとして、たとえば郵貯があげられます。過去の記事「郵便貯金と郵貯からの預託金 年金からの預託金 ともに減少 財投債で支える構造に」では、それまでの財政投融資資金の財源であった、郵貯からの預託金は、確実に減少し続けていると書きましたが、現時点で、すでに底をついている可能性がある、と考えています。

民間、機関投資家は、株式などのリスクマネーから、国内債券に振り向ける動きが顕著でした。そのため、「景気が悪い時期ほど、債券消化は順調で、金利は上がらない」ということになっていたのでしょう。債券消化が順調であれば、国はマネーを流し続けることが出来るので、自転車操業は延命、となります。

何度も指摘していることですが、「国債など債券を多量に保有している機関投資家は、国債を売り逃げることが出来ない。国と一蓮托生だ。」ということになります。

また、支出面では、何度も指摘しているように、
・高齢化などのため、社会保障費は年に約1兆円ずつ増加

つまり、

・景気の悪いうちは、各国(日本含む)政府による、潤沢な資金供給は続く
・それを財源としたり、リスクマネーの債券振り向けにより、当面は国債消化は順調
・しかし、それが自縄自縛となり、機関投資家は国債投資から大規模な資金を引き上げることが出来ない
・そのため、クラウディングアウト的な投資資金枯渇により、景気回復は遠ざかる
・「将来の先食い」である国債発行だが、その「(景気・利益水準・担税力が回復した)将来」が来ないため、現在発行された国債が償還されるべきタイミングで、破綻をきたす
・国民の資産(預貯金の価値減少であるインフレ、債券の価値減少である金利上昇、国際的な日本円の価値減少である円安、年金を受け取る権利の削減、レガシーコストの圧縮など含む)の毀損で、国債償還の財源充てるしかない

のように考えます。しかし、それがいつか、という議論については、定量的なデータが不足しているため、結論を出すことが出来ません。

ただ、冒頭の発言引用で、「日本には国債を追加発行する余力がある。1500兆とか2000兆とか、どんどん増えたら問題だが、1000兆円程度まで行っても、そこで止まれば問題ない」とありますが、国公債あわせて1000兆円はすでに突破しており、年金債務をあわせると1500兆円は超えているはずですので、すでに危険ゾーンには来ているのだと思います。

(なぜ1000兆円は大丈夫で、1500兆円は危険なのでしょうね?)

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まとめると、

・現在、国債需給バランスは悪くなく、長期金利の動向は安定しているように見える
・直感的には、少子高齢化・国力低下のため、国債消化は自転車操業で、壮大な飛ばし
・その結果、国債を消化すればするほど、マネー面からの景気回復は遠ざる
・Xデーがいつかという結論は、このデータだけでは出ない、継続調査する

ということになります。
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by kanconsulting | 2009-08-27 10:12 | 経済状況
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