リーマンショック1周年 何が明らかになり、何が変わったのか 変わらない強欲

魔の9月です。そして、あのリーマンショックから、1年が経過しました。

元リーマンブラザーズの社員は、バークレイズなどにシステム付きで再雇用され、引き続き「強欲」システムを動かしているようです。この、1秒に300回の株式取引が可能で、「毎日利益が出る、損を出す日はほとんどない」と言わしめるようなITシステムは、前回「カマボコ(中抜き、ピンハネ)のIT化 またしてもゴールドマン・サックス 断固たるNOを」で指摘した、「フラッシュオーダー」と似たようなものなのかも知れません。

それに対して、「短期的な利益を最大化するための強欲を正当化するような、金融機関の巨額ボーナスはおかしい」という意見も多数出ていますが、「資本主義で、利益に応じた対価を与えることに何の問題がある?」という真っ当な反論の前には、それほどのインパクトはないようです。

(余談ですが、民主党政権は、当初から、「アメリカ的な市場原理主義が、世界に格差と不幸をもたらした」という姿勢で、早速アメリカの反感を買っています。それはそれでかまわないですし、むしろ自民党には不可能な行動なので差別化のためにも是非やってもらいたいのですが、あまりに戦術が幼稚なので、見ていて痛いのです。たとえば、スティグリッツなどの有識者を起用して、しっかりと世界経済戦略を立ててPRすることが必要なのだと思います。そうでなければ、思いつきで何か言っているというレベルをなかなか越えられません。)

この1年間、何が明らかになり、何が謎のままで、そして、何が変わり、何が変わらなかったのでしょうか?

(明らかになったこと)
・過剰流動性が世界金融市場を膨らましていたこと
・不明なリスクを取って、それをキャッシュに換えるという錬金術は、虚構であったこと
・職や持ち家を失うという形で、一般市民が割を食ったこと

(謎のままのこと)
・世界経済奥の院は、何をどうしたいのかということ
・これからの儲けの道具となる、過剰流動性に代わる紙切れは何かということ (世界各国の国債だとは思いますが)
・いつまで「先送り」が続けられるのかということ

(変わった事)
・世界政治のエージェント
・資産価値が上がり続けるという前提
・一般市民の将来設計

(変わらないこと)
・政権が代わっても、それらを動かす奥の院は変わらないということ
・結局、ペーパーマネーを刷るしかないと言う事
・強欲さ

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関連したニュースを引用します。

(引用開始)

終わりの見えぬリーマン残務処理、顧客資産もいまだ凍結
2009年9月11日19時25分

[ロンドン/ニューヨーク 8日 ロイター]
ニューヨークのタイムライフビル。リーマン・ブラザーズ本社があったタイムズスクエアにほど近い場所で、600人に上るスタッフが膨大な資料のヤマと格闘を続けている。
リーマンが約1年前の9月15日に連邦破産法の適用を申請し、世界的な金融危機の引き金を引いて以来、残ったリーマンのスタッフや外部のコンサルタントが、複雑に絡み合ったデリバティブや不動産など無数の契約を解き明かすべく、今なお終わりの見えない作業に取り組んでいる。
リーマン破綻から1年経った今も、顧客やカウンターパーティーなどの資産は凍結され、資産や債権の返還請求も受け付けられずにいる。
残務処理に取り組んでいるスタッフらは、債権者の資産価値を最大化すべく、少なくとも彼らに自分たちの資産がどの程度の価値がつくかを示すべく、懸命の努力を続けている。
欧州におけるリーマンの共同管財人を務めるプライスウォーターハウスクーパーズのビジネス・リカバリー・サービス部門の責任者トニー・ロマス氏は、リーマンの複雑な資産や債務の関係は口では説明できないとした上で、「6000件余りあるリーマンの顧客ファンドのうち、半分以上の投資家から自分の資産がどれだけあるか申告されていない。債権者に配分できる資産は90億ドル近くあるかもしれないが、それをどれだけの債権者に渡す必要があるのかを把握しなければならない」と語る。
状況はニューヨークでも同じことだ。リーマンのデリバティブ契約を通じて債権を保有する投資家は今のところ返還請求を行うことができず、来月になっても債権に関する追加情報は得られそうにない。
リーマンの事業が日本からケイマン諸島に至るまで16カ国に渡り、破産手続きが世界中の76カ所で行われていることも問題を複雑にしている。
リーマン本体が破産申請した後、4000に上る関連会社の一部も破綻しているため、リーマンが破産処理を完結させるためには、各地の司法管轄の間で複雑な債務関係を整理したり、債権額をいつの時点で計算するかなど、数多くの問題を解決する必要がある。

<上向き始めた債権価格>
ロマス氏のカウンターパートとして債務関係の整理に当たっているコンサルタント会社アルバレス&マーサルのアン・ケアンズ氏によると、同社は2010年末までに、リーマンの債務処理作業の大半を終えたいと考えている。
リーマンの資産は1年前に比べ大幅に増加している。アルバレスによると、破綻時点ではわずか35億ドルの現金しか保有していなかったのに対し、今年6月末時点では120億ドルを上回る水準まで回復した。ローンポートフォリオの時価も回復している。
債権者の間にも、債権回収の成果を上げるため組織を作ろうとする動きが出ている。ポールソン、エリオット・マネジメント、キングストリート・キャピタル・マネジメントなどの投資ファンドは「リーマン・ブラザーズ債権者グループ」を結成し、6月以降、リーマンに対する125億ドルに上る債権請求額を集めた。
破綻会社の債権者向けに債権を取引する市場を運営しているセカンドマーケット社によると、リーマンに対する債権の市場価格は最近になって急上昇。リーマンの持ち株会社が破綻した際には額面の10%でしか取引されなかった債権は、現在では20%近い水準で取引されている。
セカンドマーケットによると、リーマンのデリバティブの多くを保有するリーマン・ブラザーズ・スペシャル・ファイナンシングや、リーマンの商品取引契約の多くを保有するリーマン・ブラザーズ・コモディティ・サービシスの債権価格も、額面の40%前後で推移している。
だが、欧州ではリーマンの顧客ファンドの多くが複雑な商品を含んでいるため、ほとんど価値がないとみなされているものも多い。

<リーマン破綻処理が1つの産業に>
ロマス氏は先月、英サンデー・タイムズ紙に対し、リーマン処理は「それ自体で1つの産業」になるとコメントし、全世界で破綻処理に関わる2000人のスタッフに支払われる手数料が40億ドルを上回ると明らかにした。
ロマス氏やケアンズ氏によると、規制当局は「第2のリーマン」が現れるのを防ぐ手段を編み出すため、リーマンの破綻処理を見守っている。
その一つとして検討されているのは、銀行に破綻した場合の処理を記した「生前遺言」の提出を義務づける案だという。
しかし、リーマンや元従業員にとってそれ以上の関心事は、リーマンを破綻に追い込んだ「犯人」を特定できるかどうかという点だ。
裁判所から審査官として指名されたアントン・バルカス氏は、数多くの銀行やリーマンの元幹部を対象に、誰が嘘をつき、誰が会社運営を誤り、誰が詐欺行為を働いたかを特定する作業を進めている。彼の報告は来年初めにも提出される見込みだ。
リーマン自身も、決済銀行や預託信託機関、連邦準備理事会(FRB)の行動を提訴できないかどうか調査するグループを結成している。
リーマン破綻を受けてブローカー部門を17億5000万ドルで取得し、早々に42億ドルの利益を得たバークレイズに対しても、当時の行為が「良心にかなった」ものだったかどうか調査する承認を受けている。

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投信残高はリーマン破たん以前に戻らず、個人は依然慎重
2009年9月11日20時5分

[東京 11日 ロイター]
リーマン破たんから1年が経過し、個人投資家マネーの有力な受け皿に成長してきた「投資信託」の残高が、破たん以前の水準を回復していない。
足元の資金フロー(ETFを除く)は6カ月連続の純流入となっているが、06年から07年にかけて毎月1兆円を超える資金が流入していた当時とは投資環境も様変わり。「個人マネーは戻りつつあるように見えるが、投資家の気持ちが以前のように投資に向かうには、さらに時間がかかるのではないか」(大手投信)との声もある。

<投信残高ピークは07年10月、ボトムは09年1月>
追加型投信の残高は、サブプライム問題の深刻さが表面化して以降、2007年10月をピークにすでに減少トレンドに入っていた。リーマンの破たんからさらに約1年さかのぼった時点だ。
背景には、サブプライム問題を発端とした株式相場下落と為替要因があった。残高全体のほぼ4分の3が海外資産に投資するファンド(海外証券型ファンド)であるため、為替の影響は無視できない。07年10月から08年8月までに円は対ドルで約6%、対ユーロで約4%、対豪ドルで約13%の円高が進んだ。
リーマンが破たんした08年9月、米市場の下落を発端として世界の株式市場の大幅下落が始まるが、国内投信市場の残高がボトムとなるのは09年1月。残高はピーク(07年10月)時から約44%減少。リーマン破たん前の08年8月時点との対比では約35%落ち込んだ。足元の09年8月末残高は、戻ってきたもののピーク時から約3割減の状態。リーマン破たん前と比べると、約2割減の水準だ。
一方、外為市場の動向を見ると、投信残高がボトムとなった09年1月の水準と、ピークだった07年10月時点を比較すると、円は対ドルで約22%、対ユーロで31%、対豪ドルで約47%の円高が進行。世界的な株式相場の下落に、円高進行が拍車をかけて投信残高にマイナス圧力をかけたことがわかる。反対に残高がボトムとなった09年1月から足元の8月までは円安傾向にある。円は対ドルで3%、対ユーロで約16%、対豪ドルで約38%とそれぞれ円安方向に振れた。

<リーマン破綻後1年の総決算は1兆1875億円の純流入>
トムソン・ロイター傘下の投信情報会社リッパーによると、国内追加型株式投資信託(ETFを除く)の純流出入額(設定額から解約額と償還額を引いたもの)は、同社がデータ提供を開始した2003年1月から米リーマン破たん直前の08年8月まで、5年8カ月間にわたって流入超が続いた。
しかし、リーマン破たんの08年9月以降、09年2月までの6カ月間に計4カ月で資金流出となり、その額は合わせて7758億円に上った。ただ、08年9月から09年8月までの直近1年間をみると、8カ月間は流入超で純流入額は計1兆9633億円。リーマン破たん後1年の総決算としては、1兆1875億円の純流入となった。
しかし、リーマン破たん前の1年間(07年9月から08年8月まで)の純流入額は計4兆8834億円に達し、07年1─12月の純流入額は14兆4024億円に上っていた。足元の資金動向が6カ月連続で流入超になっているとはいえ、純流入額は1兆8646億円。「数字だけをみるなら回復基調ともとれるが、あくまで推測の域を出ない。地方をまわると個人は生活防衛にまわっている感じをうける」(国内投信)との声もある。
運用会社で銀行担当の販売支援部隊からは「投資家も販売員もサブプライムでは震度2程度だったが、リーマンショックでは震度6か7の大打撃だったのではないか。残高減のダメージだけでなく、目に見えない心理的な部分への打撃が大きかった」との声もある。銀行経由の投資家が以前のような投資行動に戻るにはかなり時間を要するとの声も出ている。
足元ではREITファンドやハイ・イールド債券や新興国債券などの高利回り債券に投資し、為替によるヘッジプレミアム(金利差収入)も期待できる高額分配投信が、投信市場をけん引しているが、こうした投信の主な投資家は、大方が証券系の投資家といわれている。銀行経由の投資家のマネーが本格的に再参入してこない限り、リーマン破たん以前の活況に戻るのは難しそうだ。

(ロイター日本語ニュース 岩崎 成子記者;編集 田巻 一彦)

(引用終了)
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by kanconsulting | 2009-09-17 13:01 | 経済状況
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