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金(ゴールド)の価格と未来 ドルの信認とドル高 またしても過剰流動性

金地金(きんじがね、いわゆるゴールド)が過去最高値をつけています。

その背景としては、

・アメリカの超低金利政策が長期化するとの観測から、ドル安が進行
・ドル安を受けて、アメリカではインフレ懸念が台頭
・ドル建て資産の目減りを避けるため、安全資産である金に資金が流入

でしょう。そのドル安の背景ですが、

・オーストラリアでの利上げ
・超低金利のドルを売って、高金利の資源国通貨や金など商品先物に投資する「ドル・キャリー取引」
・イギリスのメディア※が「湾岸産油国と中国や日本などが、石油取引の決済をドル建てからユーロや円など複数の通貨を組み合わせた『通貨バスケット』に移行する方向で協議している」と報じたことも拍車

ということです。

(もともとドル体制への揺さぶりを考えてきた中国のみならず、日本も「通貨バスケットへの移行を検討」とは、「そうだったのかw」と思ってしまうところですが、現在の国際的常識が「ドルの信認はそれほど続かない」であること、民主党政権が「アメリカ離れ」を意図していることから、選択肢の検討段階としてはあり得なくはない、と思います。フランス・クウェートなどは公式に否定しているとのことですが、日本が公式に否定しているかどうかは不明です。)

※ The Independent had reported on Tuesday that Gulf states, together with China, Russia, Japan and France, were considering replacing the dollar as the pricing currency for oil by a so-called basket of currencies.
This would include the yen, the yuan, the euro, gold and a future common currency in the Gulf region.
However, the report has been denied by a host of countries, including France, Kuwait, Qatar and Russia.
"Despite the denials, there are probably all sorts of discussions going on about how to reduce dependence on the dollar and diversify reserves," said Hufton.
"But they are hardly likely to be confirmed given that it would only serve to cut the value of the very reserves countries are seeking to diversify out of."

"Dollar on weak footing; gold strikes new record" (AFP) – Oct 7, 2009

(余談ですが、世界同時利下げ・世界同時金融緩和の中、オーストラリアの利上げはまっとうな判断だったと思います。世界からマネーを集めて生き残るためには、利下げではなく利上げが必要なのです。しかし、アメリカや日本でそれをするのは、もはや自殺的行為となるでしょう。)

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関連した記事を引用します。

(引用開始)

NY金:過去最高値を更新 ドル先安観の目減り対策で

【ワシントン斉藤信宏】6日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の金先物相場は、オーストラリア準備銀行(中央銀行)の利上げなどをきっかけにドル安が進行したことを受けて急伸、指標となる12月渡しは電子取引で一時、1オンス=1045.00ドルまで上昇し、昨年3月につけた取引時間中の過去最高値(1033.90ドル)を更新。終値でも前日終値比21.90ドル高の1039.70ドルと9月中旬につけたばかりの過去最高値を塗り替えた。
オーストラリアでの利上げに加えて、一部の英メディアが「湾岸産油国と中国や日本などが、石油取引の決済をドル建てからユーロや円など複数の通貨を組み合わせた『通貨バスケット』に移行する方向で協議している」と報じたことでドルの先安観が強まった。ドル安を受けて、米国ではインフレ懸念が台頭、ドル建て資産の目減りを避けるため「安全資産」の金を買う動きが加速した。

毎日新聞 2009年10月7日

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金先物相場:NY 最高値更新、金市場に資金流入 安いドルから転換

金の価格が急上昇している。6日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の金先物相場は、指標となる12月渡しが一時、1トロイオンス=1045・00ドルまで上昇し、08年3月につけた取引時間中の最高値(1033・90ドル)を、約1年7カ月ぶりに更新した。ドル安の進行と表裏一体的な動きで、当面はドル安基調が続くとの見方が強いことから、金価格は一段の上値をうかがう展開も予想される。
金価格が上昇基調にあるのは、米国の超低金利政策の長期化観測からドル安=ドルの価値低下が進行し、安全資産である金に資金が流入しているためだ。金価格は08年3月、商品価格の上昇を受けて一時1000ドルを突破。金融危機でいったん下落したが、最近は超低金利のドルを売って、高金利の資源国通貨や金など商品先物に投資する「ドル・キャリー取引」が広がっているとされる。
6日は、オーストラリア準備銀行(中央銀行)が利上げしたこともドル売りに拍車をかけた。アラブ諸国などが石油取引のドル決済の中止を検討しているとの英紙報道が流れるなど、基軸通貨としてのドルの地位への懸念も強まっている。
金の宝飾品需要は世界的に低迷しており、買い主体は投資ファンドなどの投機筋が多い。このため、高値では利益確定の売りが出やすく、金価格はいったん調整局面に入る可能性が高いが、「ドル安が続けば、1100ドルをにらんだ展開になるだろう」(日興コーディアル証券の上西晃氏)との見方もある。【田畑悦郎、小倉祥徳】

毎日新聞 2009年10月8日

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最高値更新する金相場、中国ファクターでさらなる上値も
2009年 10月 8日

[北京/上海 7日 ロイター
ほとんどの人々にとって、金は不況時には無くても構わない単なるぜいたく品かもしれない。しかし慎重な中国の投資家にとっては、金は必需品となりつつある。
金価格が最高値を更新するなか、中国でも貴金属の売り上げが打撃を受ける可能性があるものの、景気の先行きには不透明さが残っており、投資先としては金を選好する動きが根強いという。
また、外貨準備の安全な投資先を探している中国政府も、現在1054トンとされる金準備を積み増す可能性が高い。ロングゴールド・アセット・マネジメントのYao Haiqiao社長は「中国での金消費量はインフレ期待を背景に伸びると予想され、政府も金準備を増やすとみられる」と述べた。
中国黄金協会のSun Zhaoxue会長によると、同国の外貨準備のうち金は全体の約1.6%に過ぎず、その比率は今後増えることが見込まれている。
金相場は足元、世界経済の先行き懸念と米ドル安を受けて最高値を更新。一部で調整を警戒する声もあるが、中国の投資家は引き続き金投資を積極的に行うと予想される。
上海中期期貨経紀のアナリスト、Zoe Wang氏は「消費者は価格に敏感であり、金価格の上昇はインドや中国での金購入に間違いなく打撃を与える。今年前半にインドの貴金属消費量が急激に落ち込んでおり、同様のことが中国でも起きるかもしれない」と指摘。その上で「しかし投資に関して言えば、金をヘッジのツールとして使う人が増えており、金の購入は拡大している。こうした動きは中国では明らかに増えている」と述べた。
中国はすでに世界最大の金生産国であり、2009年前半には貴金属の消費量でもインドを抜いて世界1位になった。ただ、中国でも宝飾品の売り上げは落ち込むとみられ、金相場を今後も押し上げるのは投資目的の金購入となる。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の極東担当マネージングディレクター、Albert Cheng氏によると、中国で投資としての金購入は2008年に過去最高の70トンに達した。
ロングゴールドのYao氏は「インドでは多くの人が宝飾品を買う一方、中国では銀行に金の延べ棒を預ける人が増えている」と述べた。

<一段の上値を追う可能性>
1オンス=1000ドルの水準は長続きしないと警戒する投資家もいる一方、中国では多くの人が金相場の先行きに楽観的な見方を示す。
中国黄金協会の副会長、Hou Huimin氏は「価格が上がったからというだけで人々が急に売り始めることはないだろう。中国では投資行動に大きな変化は出ていない」と述べた。
また、スタンダード銀行(香港)のEllison Chu氏は、需要が引き続き供給を大幅に上回っており、さらなる上値の余地があると指摘。「この価格水準が市場にどう影響するか注視していくが、個人的にはさらに上昇する可能性があると思う。市場がこの水準に慣れれば、上振れの可能性があるだろう」と語った。
さらに「過去数カ月間の株式市場を見てみると、乱高下や色々なうわさがあった。人々はより安定的な投資先を探している。投資家は金に継続的な成長を期待できる」としている。
「中国の投資市場では群集心理が大きな役割を果たす」と指摘するロングゴールドのYao氏は、金以外に魅力的な代替投資先がない以上、投資家は「途中下車」したがらないとの見方を示す。
Yao氏は、中国政府がいずれ金準備を増やすとみられ、それが金相場のさらなる支援材料になる可能性があるとしている。

(引用終了)

さて、気になるのは、

・ゴールドが高いのは、実質なのか?それともバブル的なものなのか?
・世界不況の中、需要が減退しているのに、ゴールド高が、中長期にわたって続くのか?
・ゴールド高の裏表となる、ドルはどうなるのか?

それを簡単に言いますと、

・今の世界は、超低金利のマネーが、量的緩和によって潤沢にある
・しかし、それに見合う実需的な投融資(事業資金、設備投資)がない
・投機資金となり、実物資産マーケットに流れ込んだ
・その流れに、年金基金などが相乗りした
 
その後の流れは自明です。

・キャリートレードは、必ず巻き返す
・商品は、かならず一度は下落する
・皆がドル安と思っていたが、実はドル高になる
・アメリカ国債の信認や持続可能性は別問題

関連した記事を引用します。

(引用開始)

インフレリスク過小評価すべきでない=米セントルイス地区連銀総裁
2009年 10月 12日

[セントルイス 11日 ロイター
米セントルイス地区連銀のブラード総裁は11日、米経済の緩みは多くの人が予想するほど大きくないかもしれず、これにより中期的なインフレリスクが高まる可能性があるとの見解を示した。
同総裁は、経済会議でのプレゼンテーションで、需給ギャップを正確に測ることは困難と指摘。
「需給ギャップについてよく使われる説明に関して懸念している。それはリセッション(景気後退)がこれほど深刻なのだから需給ギャップは大きいに違いなく、従って中期的なインフレリスクは異例の金融緩和政策の中でさえ無視し得る規模だというものだ」と述べ、「このような説明は需給ギャップについて誇張し過ぎていると思う」との見解を示した。
さらに、需給ギャップの測定を目的とした計算は資産価値のバブルを考慮しないとし、現在の生産の落ち込みの大半が住宅バブルの崩壊に関連しているとすれば「現在の需給ギャップは見掛けよりも小さいだろう」と指摘。これはインフレリスクが高まることを意味すると述べた。
同総裁はまた、1991年と2001年に終わった過去2回のリセッション時には、FRBはリセッション終了後2年半から3年経つまで利上げしなかったと指摘。今回このパターンを踏襲するとすれば、最初の利上げは2012年になると述べた。
そのうえで、この10年間の始めの時期にFRBが長い間金利を低過ぎる水準に維持した結果、住宅市場のにわか景気と不況につながったという議論が、今度の連邦公開市場委員会(FOMC)に重くのしかかる可能性があると語った。

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次にバブルが崩壊するのは米国債市場=ジム・ロジャーズ氏
2009年 10月 9日

[ニューヨーク 8日 ロイター
米著名投資家のジム・ロジャーズ氏は8日、借り入れ規模が持続不可能な水準に及んでいるとして、次にバブルが崩壊するのは米国債市場との見方を示すとともに、農作物、貴金属に投資妙味があると指摘した。
また株式市場に関しては、最近の大幅上昇を受けて調整局面を迎えるとの見方を示した。
同氏はロイター・テレビジョンとのインタビューで「調整への機は十分熟している。6カ月間に及ぶほぼ一本調子の上昇局面の後、値固めがあっても驚きではない」と指摘。株式市場は今後、長期にわたって上昇する可能性があるとの見方を示した。
同氏はまた、ロイターとのインタビューの後開催されたETFセキュリティーズ主催のセミナーで「次にバブルが形成されているのは、米国債市場だ。金利3─6%で米政府に30年間もお金を貸す人がいるなんて理解できない」と指摘。「いずれバブルははじける。米国債を保有している人がいたらひどく心配する。私なら手放すことを検討する」と述べた。
商品(コモディティ)への強気な投資で知られる同氏だが、コモディティに関しては、農作物・貴金属・原油が依然として同氏の好む投資対象だと明言。「農作物の在庫水準は過去数十年間で最も低い水準にある」として、特に最近28年半ぶりの高値を付けた砂糖は、向こう10年間で一段の上昇余地があるとの見方を示した。
貴金属については、割安感からパラジウムと銀が魅力的と指摘。ただ、長期では歴史的にも実物資産とされる金を投資対象に挙げた。
また原油相場に関しては、枯渇懸念から強気相場の流れで、バレル当たり最大200ドルまで上昇する可能性があるとの見方を示した。

(引用終了)
by kanconsulting | 2009-10-28 12:43 | 経済状況
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