公的長期債務の原因

「どうすれば破綻を避けることができるのでしょうか?」について述べる前に、なぜ、ここまで公的長期債務が積み上がってしまったのかを考えたいと思います。

ある鎖国があったとします。(この例では、簡単のために、いろいろ単純化を行っています。)
毎年、100ペソ(仮に、通貨単位をペソとします)分の富が生み出され、消費されるとします。
富を生み出すのに使われたお金は、理想的には全額、働く人のポケットに入り、消費活動に使われます。つまり、供給が100ペソ分のモノで、需要は100ペソ分の通貨単位相当分です。
ここで、国民の一部が、「将来が不安だから、少し貯蓄をすることにしよう」と考えました。結果、年20ペソがタンスにしまいこまれ、貯蓄が行われました。
その結果、次の年には、需要は80ペソ分の通貨単位相当分に減りました。
すると、次のことが起こります。
①従来のモノの値段を下げて、売り切る。
②従来のモノの値段をそのままに、余ったモノは処分する。
③その中間
国民にとっては、貯金ができた上に、モノの値段が安くなるかもしれないので、うれしいはずです。しかし、新たに国民のポケットに入るのは、80ペソに減ってしまいます。このままのペースでは、国は年2割の縮小均衡になってしまいます。

国王は「このままでは国が危ない。縮小均衡を避けるためになんとかしなければ」と思いました。そこで、国民が需要を減らした分、モノを買い上げることにしました。対価は、「20ペソ分の支払いを国王が保証します」と書かれた借用証書でした。裏側には、小さい字で「将来、国民から徴収する税金で返します」とありました。モノは、国王一人では使い切れなかったので、庭に埋めたり、海に捨てたりしました。国民全体は、去年の8割の量のモノで我慢しました。

この場合は、
「民間貯蓄バランス(20ペソの貯金)+国家財政バランス(20ペソの借金)=0」
になります。

また、誰かが、こっそりと余ったモノを5ペソ分輸出して、かわりにペソと似た価値のある通貨をもらってきました。そのせいで、国王が買い上げる分は15ペソ分ですみました。国王は使い切れず、やっぱり大半を海に捨てました。しかし、これで来年も(誰も貯金をしなければ)100ペソの需要が生まれそうです。

この場合は、
「民間貯蓄バランス(20ペソの貯金)+国家財政バランス(15ペソの借金)-経常収支バランス(5ペソ分の黒字)=0」
になります。

つまり、モノの生産量が一定であるとすれば、生産価値より貯蓄した分だけ消費価値は小さくなります。したがって、国家が経済規模の縮小を嫌うなら、国民の貯蓄分を自ら消費することで、従来と同じ経済規模を保つことが可能です。

日本の話をしましょう。
現在は、民間(家計+企業)貯蓄超過は、国内総生産(GDP)の10%とされています。これは、8~9%の財政赤字と、1~2%の経常収支黒字によってファイナンスされていると言えます。この財政赤字分が、国家によって、経済規模維持のために消費されている分です。
http://www.tbs.co.jp/newsi_sp/keizai/031008.html

ここで気をつけていただきたい点があります。

(1)国王が支払いに使った「借用証書」の裏には、「担保は将来の税金です」とありました。国債も同じです。つまりは需要の先食いですので、短期的には使えても、長期的には使えない手段なのです。長期的には、全体の財政規模のパイが大きくなることしか、財政規模をキープさせる方法はありません。

(2)消費に、財政規模をキープさせるための「無駄な消費」があります。数字上は、必要な量を必要なだけ消費するのも、捨てているも同然の消費も、同じにカウントされます。公共投資で、誰も通らない道路、使わないダム、豪華すぎる箱物施設を作るのも、「捨てているも同然の消費」と言えるかもしれません。(乗数効果は考えていません。)もっと言うと、無駄遣いこそが好景気のトリガーとも言えるかもしれません。現実には資源は有限ですし、環境負荷なども考えると、釈然としないところです。

(3)国民が貯金をしたいなら、輸出分だけなら、財政規模をキープしたまま可能です。それ以上の分の貯金は、いずれ税金という形で、国に取り戻されることになります。また、上の国王の借用証書と国債が異なるのは、「国債には金利がつく」ことです。その金利分も、税金でまかなわれることになります。

かなり単純化した問題ですが、「なぜ公的長期債務が巨額になったのか」のおおまかな原因を理解していただけたかと思います。
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by kanconsulting | 2004-08-28 03:39 | 経済状況
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