<   2007年 11月 ( 2 )   > この月の画像一覧

来るべき暗黒の日(2) 世界株安と円高再び フレディーマック・ファニーメイ・RMBSとナイトの不確実性

世界株式市場は、8月の信用収縮から本格的な回復を見せず、大きな2番底を形成するような展開です。

また、各通貨に対してドル安が進行し、1ドル107円台になっています。多くのFX投資家は、8月の総円高で致命傷を負った模様で、今回の大幅な円高では、もはやため息すら聞かれないといったところです。

今回の下落の原因は、アメリカのフレディマック(Freddie Mac)・ファニーメイ(Fannie Mae)の破綻懸念と言われています。政府機関に準じる巨大な規模を誇り、ローン債権を証券化したMBS(住宅ローン担保証券)の発行機関・元利金支払いの保証機関であるとともに、それらを保有する機関投資家でもあります。MBSのマーケットは大きく、約6兆ドルと言われていますが、その大半がフレデイマック・ファニーメィが発行したものと言われています。さらに、例に漏れずMBSは各種の金融商品にも組み込まれており、その影響はアメリカ国内にとどまりません。このように、もしフレディーマック・ファニーメーが破綻すればインパクトが大きいため、信用不安を引き起こしたというところです。

このような信用不安を背景に、さらなる政策金利低下が見込まれており、ドルの下落圧力となっています。

以前のエントリーで、次のように述べました。

(引用開始)

「世界同時株安と円高(4) 円高の理由と中央銀行による流動性供給の弊害 世界恐慌かスタグフレーションか」

さて、各国の中央銀行が、すさまじい量の流動性(資金)を注入して金融不安の沈静化を図ったということは、すでに過去のエントリーで述べたとおりです。
ですが、よく考えてみると、こういったマネーは、めぐりめぐって、さらなる市場の乱高下をもたらす可能性もあるのです。これまでは、ジャブジャブに刷られた日本円が、過剰な流動性の供給源でした。加えて、アメリカや欧州もそうすると言うのです。
アメリカでは、FRBが公定歩合を下げることが織り込まれています。金利が下がり、多量のマネーも供給されるのです。それにより、アメリカ株・世界株は反発することとなりますが、回復の実態を伴ったものではないので、再び暴落といった乱高下という事態が考えられます。

その過程で、株式などは信じられずキャッシュ(現金)だけが頼りだ、という世界恐慌が出現するのか、あるいは、ジャブジャブに供給された通貨が信用を失い、不景気なのにモノが異常に高いというスタグフレーションが出現するのかはわかりません。

(引用終了)


さて、ナイトの不確実性という概念があります。ナイトは、リスクと不確実性を区別し、経済活動では不確実性を排除することはできず、経営は不確実性に対処することで利潤が得られるなど、経済活動にとって不確実性が本質的だとしたことで知られています。

リスク:確率によって予測できる。値動きがランダム・ウォークで正規分布に従う。デリバティブでヘッジ可能。
不確実性:確率的事象ではない。分布関数の存在しない突発的なショック。事前に予測できない。

ブラック=ショールズが想定したような正規分布に従うリスクは、理論的には、オプションや保険などのデリバティブ(金融派生商品)でヘッジできます。しかし、不確実性は、そもそも完全なヘッジが不可能であり、社会にパニックを引き起こす性質があります。たとえば、ロシア危機・LTCM破綻では、理論と異なり、パニックになった投資家はリスクのないアメリカ国債に殺到し、全世界的な質(流動性)への逃避が起きたことはよく知られています。

今回の、サブプライム発の信用収縮においても、このような質(流動性)への逃避が起こっています。リスクのある資産(ABS、CDO、ABCP)を売って、リスクのない国債・現金を買うため、リスク資産の価格が下落し、質への逃避を加速するという悪循環になっているのでしょう。いったん底を打ったように見えても、市場参加者の疑心暗鬼が消えないため、まだまだ先の見えない状態になっています。

では、このような「不確実性」には、どのような対処が有効なのでしょうか?

(引用開始)

このように不確実性に対する人々の反応は定型化されているので、対策も明らかだ。第一に、流動性を供給して銀行の破綻を防ぎ、30年代のような取り付け騒ぎを起こさないことである。この点では、世界の中央銀行が協調行動をただちにとった。そして問題は、疑心暗鬼が広がって特定の金融機関の危機が金融市場全体の「システム的危機」と混同されることなので、破綻した金融機関はすみやかに破綻処理(もちろん預金者は保護)し、損失は正直に計上させる。この点では、メリルリンチやシティが巨額の損失を計上したことは、ある意味でいいニュースだ。

池田信夫 blog

---

今度のサブプライム騒動への対応をみると、欧米の当局はナイトの不確実性に対応する危機管理の手法を身につけたように思われる。何が起こったかわからないときは、とりあえず流動性を大量に供給して「失血死」を防いで時間を稼ぎ、その間に問題の元凶を破綻処理するという手法だ。

池田信夫 blog

(引用終了)


簡単に言うと、「政府・中央銀行がすさまじい量の流動性(資金)を注入することが、唯一の対症療法だ」ということです。

ですが、アジア通貨危機・ロシア危機で注入された過剰流動性はどこに消えたのでしょうか?よく考える必要があります。たとえば、竹森俊平は、著書「1997年 世界を変えた金融危機」の中で、「(そういった流動性の供給は、)アジア諸国の過剰な外貨準備・世界的な貯蓄過剰をもたらし、その反面としてアメリカの経常赤字は拡大し、その流れでサブプライム危機が起きた」と指摘しています。

そもそも、1990年代のアメリカは、ドル高政策によって、世界から投資資金を呼び込みました。株高と過剰消費によって好景気となった反面、膨大な経常収支の赤字が累積し、いびつな構造となってきた背景があります。その帰結として、基軸通貨ドルを発行する世界覇権国アメリカは、3兆ドルの対外純債務と、8000億ドルの経常収支赤字を抱えるまでになってしまいました。ドルの信認がなくなれば、ドル安・債権安(長期金利高)となり、世界経済の危機に直結するので、「恐怖の担保効果」によって、世界(日本や中国)はドル買い・アメリカ国債買いを行ってドルを買い支えているとされています。ドルの垂れ流しは、アメリカによる世界需要の喚起と読み替えることも可能です。経常収支赤字がどこまで可能なのかは不明ですが、ドルの買い手がいる以上、アメリカの国際収支はバランスします。ドルの信認がなくなり、価値の大幅な調整があれば、世界の投資家が大きな為替差損をこうむり、各国のドル建ての外貨準備は大きく目減りします。日本の外貨準備は9089億ドル(2007年3月)ですが、含み損は数十兆円あるとも指摘されており、売るに売れない状態です。(参考:「図説数字がものを言う本!/相沢幸悦」

アメリカ国外で流通する過剰なドルは、古くからユーロダラー(アメリカを離れて取引される無国籍ドル)として知られていますが、現在では各国の年金基金・オイルマネー・それらの受け皿となる投資信託が、無国籍の過剰流動性の主役です。

(引用開始)

ユーロダラー

ユーロと付くところから、欧州における取引を連想させるが、現在は必ずしも欧州とは限らない。これは、当初西ヨーロッパ諸国で運用されていた外国通貨を、このように呼んだ名残である。
1971年のニクソンショックまでにおいてはドルは金とリンクしており、発行には限界が存在した。しかし、国内の完全雇用と財政政策を支えるための、金融政策緩和を望んだ当時の政権により、ドルは発行の制約から解き放たれ膨張することになった。
こうしてユーロダラーが生まれたが、ドルは、本来アメリカ国内の貨幣であり、米国内の貨幣需要を十分満たすドルが米国内に存在する。ユーロダラーはそれと別に存在し、世界金融市場を移動し続けているため、特定の国に著しい過剰流動性をもたらし、金融市場の混乱を招く元になっている。

(引用終了)


流動性を供給しなければ即座に信用不安で取り付け騒ぎ。流動性を供給すればバブルやインフレ、最終的には信任の限界でドル暴落が来るという、抜き差しならぬ状況が近づいています。

くれぐれも、ご注意ください。
[PR]
by kanconsulting | 2007-11-28 00:23 | 経済状況

長期休暇のご連絡とお詫び

健康上の都合により、心身ともに疲労困憊となり、しばらくお休みをいただいておりましたことをご連絡申し上げ、読者様へのお詫びとさせていただきます。
このような事情のため、頻繁な更新はお約束できませんが、楽しみにした抱いている読者様のために、このブログそのものと関連ページは続けますので、よろしくのご理解とご支援をお願いいたします。

---

私は、「国家破綻への対策は、実質上、2006年末が目処。2008年から2012年にかけて、大きな経済上の混乱が起こる可能性があり、2007年は序章となるだろう。」と思っておりました。実際には、2007年には、サブプライムショックに現れた信用収縮と、それを覆い隠すための過剰流動性の供給により、さらなる混乱を示唆する1年となりました。

今後の世界はどうなるのでしょうか?そして、私たち一般国民はどうすれば生き延びることができるのでしょうか?今後のエントリーにて、考えてみたいと思います。
[PR]
by kanconsulting | 2007-11-24 09:53 | 業務連絡