ギリシャ問題で、EU加盟国のうち特にドイツが財政支援を行うかどうかについて、二転三転しています。これには、いくつもの理由があると思います。
1.最初に挙げたいのが、ドイツ国民の感情的な問題です。ドイツ国民の世論としては、「自分たちの血税を、放漫な財政運営をしてきたギリシャのために使わないで欲しい」ということでしょう。これは気持ちとしては理解できるところです。 たとえば ロイター 14日付の独紙ビルト日曜版に掲載された世論調査によると、(略)、67%が、ドイツなどEU加盟国によるギリシャ支援に反対すると回答した。 ブルームバーグ ドイツの世論調査によると、ギリシャの債務問題によって欧州単一通貨ユーロの安定が脅かされる場合には、同国にユーロ圏離脱を迫るべきだと考えるドイツ人の割合は53%。独紙ビルト(オンライン版)が報じており、世論調査機関エムニドが同紙の委託で行った調査では、ドイツや他のEU加盟国がギリシャに対して金融支援を行うべきではないとの回答が503人中67%に達した。 というところです。 2.次に、「大き過ぎて潰せない(too big to fail)」問題は、すでに金融機関レベルではなく、国レベルに移行した、ということです。 繰り返しになりますが、これまで何度も、「目の前の金融危機は端的に言うと『壮大な借金の飛ばし』であり、そのレベルはすでに銀行ではなく、国レベルの話である」と指摘してきました。であるとするならば、その借金は誰かが涙を飲んで損をかぶらなければなりません。そして、それは「カネを持っている、弱い存在」であることは、歴史を見ても明らかです。 つまり ・国民の納める税金は、世界のためと称して、使われてしまう ・それを拒んだ場合には、金融資産の減価(増税、インフレ、通貨安、株安・債券安)として、強制的に使われてしまう ということです。 懸命な読者はすでにお気づきと思いますが、これは、「アメリカ国民が、税金による金融機関救済に反対した」ことと同じような構図です。アメリカの場合は、金融システムを保護するという、反対できにくい大義名分のもと、国民の税金を注入しました。足かせを外して自由になったとたん業績が急回復をとげた金融機関もあり、逆に破綻させられた金融機関の影響によりアメリカ国民に大きな負担を強いて「やっぱり救済したほうが良かったでしょ?」と恐怖で説得するというオマケ付でした。 ギリシャのような独立国は、リーマン・ブラザーズやAIGのような金融機関のように、明確に破綻させることは出来ませんが、その資産を処分させられたり、また将来にわたる負担を約束させられることが普通です。加えて、ジョージソロスがポンドを売り崩したように、金融攻撃の対象にもなります。 これまで、「国家破綻に関しては、国際的な法制がなく、誰かが破綻させることも出ないため、成り行きに任せるしかない」と指摘して来ましたが、まさにその通りだと思います。 そのような問題意識の中で、ドイツの多くの有権者が「問題なのはギリシャだけではない。次から次へと債務国を救済しなければならないとしたら、ドイツの国も共倒れとなり滅びてしまう。第一次大戦の巨額賠償の痛みと、その後の第二次大戦の焦土の苦しみを繰り返してはならない」と思うのも、無理ないことと思います。 3.最後に、このビッグイベントを、投機筋が見逃すはずがない、というところです。 これまでに何度も、ヘッジファンドの投機にイベントドリブンという手法があり、ある一定のシナリオに沿って金融イベントを演出し、そのイベントに加速度をつけて儲けに変換するということと、加えてマッチポンプ=自作自演の側面があることは否定できない、と何度も指摘しているところです。 先ほど述べたクオンタムファンドによるイギリスポンドの売り崩しが有名ですが、アジア通貨危機などその他のイベントにおいても「投機筋による通貨売り崩し」は何度も見られます。(その通貨危機により、各国は基軸通貨ドルの準備高を増やさざるを得ず、それがアメリカの延命と、今回の金融危機の遠因となったことは皮肉なことですが) 今回も、ヘッジファンドが影の主役なのでしょう。そして、ドイツとしては、「彼らに意図を読まれては負けだ。救済するにしろしないにしろ、彼らに付け入られるスキを見せてはならない」として、意図的に情報をコントロールしているのではないでしょうか。 (引用開始) 米司法省、ヘッジファンドにユーロ取引記録の保存を指示-関係者 3月2日(ブルームバーグ) 米司法省はヘッジファンドに対し、ユーロに関する取引記録を破棄しないよう通達した。通達を見た関係者1人が明らかにした。 同関係者が匿名を条件に語ったところでは、ニューヨークに本拠を置く調査・証券会社モネス・クレスピ・ハルトが2月8日に主催した夕食会に幹部を出席させたヘッジファンドの一部には少なくとも通達が送られていたという。 ブルームバーグ・ニュースが入手した夕食会での議題一覧によると、23の議題の一つはユーロの対ドルでの下落を見込んだ取引だった。この夕食会にはSACキャピタル・アドバイザーズの幹部、アーロン・カウエン氏やグリーンライト・キャピタルのデービッド・アインホーン社長、ブリゲード・キャピタル・マネジングを経営するドン・モーガン氏のほか、ソロス・ファンド・マネジメントの代表らも出席していたと米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は2月25日に報じている。 アイオワ大学で反トラスト法(独禁法)を専門とするハーバート・ホベンカンプ教授は「大きな問題は、この夕食会が情報のやり取りを目的としたものだったかどうかだ」とし、「参加者が特定の価格での売買やユーロを下落させようと集中した売りを浴びせることに合意するものであるなら違法だ」と指摘した。 これらのヘッジファンドの広報担当者に電話取材を試みたが、回答は得られていない。モネス・クレスピのニール・クレスピ社長にも連絡が取れていない。司法省のジーナ・タラモナ報道官はコメントを控えた。通達は米経済ニュース専門局CNBCが2日に報じていた。 ユーロはギリシャの債務不安を背景に昨年11月25日以来11%下落している。ニューヨーク時間2日午後6時25分(日本時間3日午前8時25分)現在は、1ユーロ=1.3610ドル。 更新日時: 2010/03/03 11:13 JST 米司法省、ヘッジファンドのユーロ売りポジションの調査開始-関係筋 2010年 3月 3日 17:39 JST 米司法省は、通貨ユーロの引き下げを目的にヘッジファンドが結束していた可能性について調査を開始した。関係筋が明らかにした。 司法省は先月26日、SACキャピタル・アドバイザーズやグリーンライト・キャピタル、ソロス・ファンド・マネジメント、ポールソンといったヘッジファンドに対し、ユーロに関する取引記録や電子メールを保管するよう要請する書簡を送付した。 この日は大手ヘッジファンドが過去数週間に大量にユーロを売り建てたとする記事をウォール・ストリート・ジャーナルが1面に掲載した日だ。本紙は、ファンドのこうした動きは、金融危機の最中にリーマン・ブラザーズなど経営が行き詰まった企業に対して取られた行動に類似している、と指摘した。 大量のユーロ売りは、SACやグリーンライト、ソロスなど多くのファンドが参加した「アイデア・ディナー」を含む一連の会合で浮上した、と本紙は報道した。こうした会合で、あるトレーダーは、ユーロの対ドル相場が1ドルの「等価」にまで下落する可能性がある、との見方を示した。現在は1.3609ドル前後で取引されている。 当局が調査する問題の1つは、こうした情報共有が「共謀」の構成要件に該当するかどうかだ、と関係筋は指摘する。ただ、大手金融機関が共謀で起訴されるケースは稀だ。共同で売買を行うことを協議し、実行したと証明するのが困難なためだ。 記者: Susan Pulliam and Kate Kelly 米司法省、ヘッジファンドのユーロ売りで調査開始 2010年 03月 4日 10:56 JST [ワシントン 3日 ロイター] 米司法省は、ヘッジファンドが集団で共謀してユーロを売り仕掛けたかどうかをめぐり調査を開始した。関係筋が3日、明らかにした。 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が関係筋の話として報じたところによると、司法省はSACキャピタル・アドバイザーズLP、グリーンライト・キャピタル、ソロス・ファンド・マネジメントLLC、ポールソン・アンド・カンパニーなどのヘッジファンドに対し、ユーロに関する取引記録や電子メールなどすべての書類を保管するよう求めた。 ユーロはギリシャの債務問題を背景に売り圧力に見舞われ、昨年11月以降、10%超下落している。WSJ紙は、ユーロについて話し合われたヘッジファンド関係者の会合に関する同紙の記事と司法省の書類保管要請の時期が一致していると指摘している。 同紙は2月25日、一部の大手ヘッジファンドがギリシャの債務危機を理由にユーロ売りのポジションを膨らませていると報じた。報道によると、SAC、ソロスなどの大手ヘッジファンドの関係者が2月8日にニューヨークで開かれた夕食会に参加し、その際、一部の参加者は、ユーロが1ユーロ=1ドルまで下落する可能性が高いとの見方を示したという。 WSJは関係筋の話として、司法省反トラスト局は送付した書簡で「ユーロの取引契約をめぐる複数のヘッジファンド間の合意に関する調査を開始した」と通達した、と伝えている。 関係筋によると、その書簡は「すべての書類を保管」するとともに、ユーロや通貨取引に関する合意をめぐるやり取りの電子記録などをすべて保存するよう指示する内容だった。 反トラスト法を専門とするハーバード大学のアンドリュー・ギャビル教授は、関係筋が語った書簡の内容は、書類の保管を求める司法省の文言に一致しており、司法省はこれらの書類から、ヘッジファンドが共謀してユーロを売り仕掛ける計画があったのか、もしくは実際に売り仕掛けたのかを判断するとの見方を示し、「どちらにしても非常に不利で、刑事告発に発展する可能性がある」と述べた。 米著名投資家ジョージ・ソロス氏が率いるソロス・ファンド・マネジメントの広報担当は、いかなる不正行為も行っていないと否定。「為替相場が話題になるたびにジョージ・ソロスに関心が集るのは当然のことになっている。報道により注目が集っているユーロ取引やそれに関する政府の関心も認識している」とした上で、「報道で示唆されているような、ソロス・ファンドが不正行為を行ったとする指摘は根拠を欠く。政府の要請に全面的に協力する所存だ」と言明した。 SAC、グリーンライト、ポールソンはコメントを拒否。また司法省も同様にコメントを拒否した。 (引用終了) 仮需筋が動いただけであれば、騒動が終われば相場は元に戻るのが普通です。しかしながら、今回の騒動でユーロの持っていた脆弱性が顕わになったと理解するならば、実需筋は「撤退」を判断することでしょう。 ヘッジファンドは、なによりも価値のある商品「情報」をカネに変える商売です。そのため、彼ら自身が呼び水となって、リアルマネーの流れを変えてしまうということも、また事実だと思います。 --- 読者の皆様は ・これではまるで、有無を言わせない一種の全体主義(金融ファシズム)だ というご感想とともに、 ・マネーはどこにいったのか?勝ち逃げは誰か? という疑問をお持ちのことと思います。 この疑問に一言で答えるとすると、「失われたマネーは、大きなマネーフローの奔流、すなわち、金融経済と実体経済の比、そのギャップの狭間に消えた」ということになります。これも、過去のエントリーで、何度も、何度も指摘していることです。
by kanconsulting
| 2010-03-05 11:06
| 経済状況
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