これまでに、次のように指摘してきました。
・マネーの本質は信用創造にある ・歴史を振り返れば、通貨価値の減価こそが通貨の歴史であった ・マネーの膨張(信用拡大)と縮小(信用収縮)は、さまざまなタイムスパンで繰り返されてきた ・マネーは、儲かる投資先を求めて大きな奔流となり、その時々で異なった資産クラスに流入することで、ブーム(いわゆるバブル)とバースト(いわゆるバブル崩壊)を繰り返してきた ・めざとくブームに乗ったり、人為的にブーム(とバースト)を形成させることで、富を築いた者もいたが、その反面、持ち金を根こそぎ収奪される国民のほうが多いというのが歴史的事実であった ・国は、戦争・無駄遣い(景気対策)で借金漬けとなり、徴税権を担保に取られ、利用価値がなくなればデフォルトさせられてきた歴史的事実がある ・借金に関しては、棒引き(デフォルト=踏み倒し・徳政令)か、カネを持っている者・弱いものから奪うことが歴史の常であった ・このように、信用創造の悪魔に翻弄されてきたのが、経済的に見た人類の歴史とも言える この基本スタンスに立てば、「世界経済奥の院」の意図が分からなくても、「だいたいこういう感じで決着するのでは?」というビジョンが見えてきます。 最近のコメント欄の私の記載を転載し、補足という形で今後の予想を述べたいと思います。 1.ユーロについて (転載開始) Commented by kanconsulting at 2010-03-05 20:14 x (略)ご指摘のように、ユーロ各国の国債にはスプレッド(リスクプレミアム)が発生しているのに、通貨政策は各国ごとのカスタマイズができないのは、なかなか苦しいと思います。ですが、それを乗り越えることが出来なければ、EUは景気の良いときだけ可能な幻想であり「ある意味で終わり」なのでしょう。病める時も健やかなる時も運命を共にすることが出来るかどうか。 ヘッジファンドは「EUは持たない」と言っているフシがありますが、それもポジショントークなのでしょう。ほとんどの人が「EUはもうダメだ」と思ったときから、ユーロは回復するのだと思います。 Commented by kanconsulting at 2010-03-06 17:17 x ユーロ紙幣は消えてなくなりはしないと考えています。結局は身内を救済せざるを得ない、そんなオチなのです。 一種の通貨ペグ制度のようなもので、その歪み(の解消)に着目した投機から身を守れなければ、ユーロも「その程度の共同幻想」に過ぎなかった、ということになるでしょう。しかし、私は、先日も述べたように、ほとんどの人が「EUはもうダメだ」と思ったときから、ユーロは回復するのだと思います。 (転載終了) 何度も述べていますが、 ・ユーロは準基軸通貨として扱われていたが、ユーロ高は、過剰流動性による一種のブームであった ・今般のユーロ危機は、信用拡大期には見えなかった脆弱性が、信用縮小期に顕わになっただけ ・結論から言うと、ユーロは消滅しない。ユーロ圏内は運命共同体として、身内を守らざるを得ない ・しかしながら、その対価は高くつき、カネを持っているEU加盟国は、戦争コスト並みの損失負担を強いられる ということになります。「本当に、EUはダメなのではないか?」というところまで売り込まれ、文字通り底値からの再出発ということになるかと思います。 なぜ「底値」なのでしょうか?その秘密は「実需の損切と、仮需のオプション」にあります。 実需の損切りについては、あまり多くを語る必要はないでしょう。たとえば、事前に設定しておいた「緊急避難ライン(損失確定の指値)」に到達することで、さらに売りが膨れて暴落に繋がるというケースも良く見ます。また、最近では、これまでに何度も指摘したグロソブ(グローバル・ソブリン・オープン)において、ギリシャの格付けが設定を下回ったことにより、自動的に換金売りとなったというようなケースもあるでしょう(記事)。 デリバティブについては、これまで多数のエントリーにて、オプションを使った投資商品について述べてきました。たとえば、(悪名高い)仕組み債券、(これも悪名高い)仕組み預金などがあるでしょう。また、オプションとは違いますが、旧長銀(新生銀行)の瑕疵担保条項、MSCB(転換価格修正条項付転換社債)などもあるでしょう。 一昔前に流行ったマーフィーの法則のように言えば、「仕組み債券は必ずノックインする。」になるでしょう。 ユーロの話に戻ると、これまでに「ユーロがそこまで下落することはありえない」として売られてきた「ユーロの底値で発動するオプションを組み込んだ投資商品」が一定量あると見ています。そして、このイベントを機に、「ユーロの底値で発動するオプション爆弾」が、いっせいに起爆するところまで売り込まれるのだと思います。 日本人の外貨投資(FX)による、ユーロロング(買い持ち)ポジションが多量に残っているとも言われており、厳密に言うとオプションではありませんが、一定水準までユーロが売り込まれると証拠金を飛ばして強制ロスカットになることから、これも一種のオプションに似たものと言えるかも知れません。 全てとは言いませんが、実需と仮需の両方があいまって底値まで売り込まれた後、「ユーロの不良債権処理は目処が付いた」として回復するのだと思います。その実は、「吸える汁は全て吸った。祭り(ユーロイベント)は終わりだ。」ということになろうかと思います。 (どこかで聞いたような話ですね。歴史は繰り返すのですが、それには理由があったのです。) --- この続きとなります「2.日本国の財政維持可能性(=国家財政破綻可能性)について」は、文字数が多くなりましたので、分けて掲載します。
by kanconsulting
| 2010-03-15 17:50
| 経済状況
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