前回のエントリー「国債の利払い抑制策 本質的な対応なのか? 」において、貞子ちゃんさんより、長文コメントをいただいておりますので、エントリーを立てて紹介させていただきます。
(引用開始) カンさん ご苦労様でございます。 『本質的な対処とは(カテゴリー1) 1、徹底した歳出削減、公務員削減 2、特別会計を解散して一般会計に編入 3、税制のシンプル化、増税 4、規制緩和による雇用創出 それを行うためには(カテゴリー2) ①公会計の複式簿記化 ②決算の管理強化 ③会計検査院の権限強化 が必要です。』 カテゴリー1 と カテゴリー2 を峻別する作業は 悲しいかな もう私の知る限りでは もう5年以上の小田原評定が続いております。 私自身の中では カンさんご指摘のカテゴリー1の2 は カテゴリー2の①と同じようなものですが これは好みの問題だと思います。 カテゴリー1を実施しようとすると 必ず反対意見が出る訳でありまして、すると そもそも論として カテゴリー2の誰もが危機感を認識できる共通の土俵を造ろうという要請が生まれます。議論がかみ合わないからということは カンさんもご存知だと思います。 カンさんもご存知のとおり 国債のマーケットは 財務省が『国債を買え』との暗黙の行政指導のようなもの(通達の形をとらなくても)があれば 郵貯を含める金融機関は国債を買わざるを得ないわけです。ですから 彼らも買いつづけます。 ただ 絶対に日本の金融機関が永久的に財務省に逆らわないか?(決してマーケットに国債を売りに出さないか?)・・・と いうことになれば 誰も納得していないわけですし 誰も確信は無いのです。 ですから 『非市場性国債』は会計処理の問題ではないのです。 そもそも論として 日本の国債マーケットは 市場メカニズムムが働かなくなって久しいわけです。もう既に 国債マーケットは病んでいますから、ここまで病的になれば もはや『非市場性国債導入』によって とことんマーケットを取り締まろうという発想だと思います。 『マーケットへ国債をお上に断り無く市場へ転売するような金融機関は厳しく取り締まる』という立法措置が 非市場性国債の発想だと思います。 ここからは私の推理ですが・・・・ 『マーケットへ国債をお上に断り無く市場へ転売するような金融機関は厳しく取り締まる』との法的措置を実施するなら 、 『あ、うん』の呼吸のようなもので なんとはなしに 行政府や立法府(すなわち国家から)から 金融機関へ 文書ではなく 証拠の決して残らないような口頭で 次のような説明がなされて居眼も不思議ではありません。 『国内の金融機関の方々は 国によるデフォルテは心配ないのではないでしょうか。。やがて10年で日本紙幣の価値が二分の一以下になる状況は起きるかも知れませんねぇ。ですから 国家破綻も日本国による国債のデフォルテも起きないかもしれませんねぇ。この(無策)のままでも充分 国家の債務は半減できことも考えたほうが良いと思いますねぇ。』 金融機関とて許認可行政に守られていますから 免許を剥奪されたら イッカンの終わりです。国には逆らえません。 一種の『国家依存症』みたいなものが この国を覆ってきましたし この病根はどんどん根深くなって行っているような気がします。 (引用終了) ご指摘のポイントは、以下のようだと思います。 ・国家財政の本質的な対処には反対が根強く、問題を明らかにするための土台作りもままならない ・「国による、銀行などへの、国債の押し付け」が根底にあり、国債マーケットは市場として病的な問題を抱えている ・病的な問題とは、銀行などが、許認可制や国債を通じて国と一蓮托生であることである ・非流動性国債は、会計上の操作にとどまらず、「病んだものをコントロールする手段」である ・この構造は根深く、解決の糸口は見えないので、破綻しないようにコントロールするしかない ご指摘のとおりだと思います。「非流動性国債」については、ニュースなどで聞きませんが、このような「延命手段」と考えるほうが妥当ですね。 特に、 ・「国家財政の本質的な対処には反対が根強く、問題を明らかにするための土台作りもままならない」ということは、財政破綻を回避するための実質的方法論が共有化出来ていないことを示していますので、あとは「本質的ではない方法論で、いかに先延ばしをするか」しかないということです。 ・これまでも指摘しているように、国公債の所有者は、半分以上が国・公的機関であり、その他も、国から許認可を受けているような金融機関がほとんどです。このようなマーケット構造が、良くも悪くも、1000兆円以上もの公的長期債務を可能とした背景なのです。 ・国債管理政策により、最悪の事態を回避しつつ、長期的には、「インフレと税金」で、公的債務をまかなうしかありません。 と、あらためて指摘します。 --- 以前のエントリー「「非市場性国債(満期保有前提国債)」の発行へ」にて、次のように述べました。 (引用開始) 国債管理政策上、マーケットに(需給バランスを超えた)多量の国債が流出すると、市場が不安定になることは直感的に理解していただけると思います。 国公債を多量に保有している機関(日銀・地方公共団体・特殊法人・公的年金・郵貯・簡保などの公的機関・準公的機関、銀行・保険・証券などの機関投資家)は、今後の金利上昇によって、債券の評価損をこうむります。特に機関投資家は、ALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)でもカバーできない債券については、市場で売却することになるでしょう。 この『国公債の投売り』が、国家財政破綻の口火となることは、これまで何度も指摘している通りです。 それを回避するのには、大きく2つの方向があることがわかると思います。 ①国公債を、マーケットで売却させないこと ②国公債を、売却しない公的機関にもっと保有させること いずれも、その動きが見られます。 ①については、量的緩和解除・ゼロ金利脱出を踏まえた、破綻回避のための奇策でしょう。 主なターゲットは、すでに多量の国債を保有している準公的機関が、金利上昇による評価損を計上せずに、国債を保有し続けることが狙いのように思います。 ②については、要するに「日銀による国債引受を、積極的に行う」ということを意味します。 危険な手段だと思います。 (引用終了) --- ご参考のために、「国家破産・財政破綻」と「国債」に関連した記事から、引用してまとめたいと思います。 (引用開始) 「国家債務残高(国の借金)は2005年度末で827兆円」 これまでも指摘しているように、 ・新規発行国債が抑制傾向というのは、借換債を無視した表現 ・国債を償還するための借換債発行は、増えている ・国と地方を合わせた長期の借金は約1000兆円であり、減る見通しはない です。 --- 「「骨太方針2006」 国の資産、140兆円規模圧縮」 行政改革推進法では、今後10年間で名目GDP(国内総生産)比で半減=140兆円規模で圧縮するために、以下のような方法が挙げられています。(中略) しかし、具体策が明らかになっているのは「12兆円」だけであり、「130兆円の証券化」は削減の方法が明確ではないとの指摘もあります。また、財務省の関係者のコメントとして、『証券化できる資産はごくわずか』(日経新聞)との紹介もあります。さらに、証券化で得た資金は財投債の返済に充てられ、普通国債の残高削減には使えないとの指摘もあるようです。 「改革を監視する有識者会議の設置」とありますが、ここまで読み解くと、『やはり、ポーズじゃないのか。本当に、出来るのか』と、思えてきます。 --- 「月1兆2000億円の長期国債買い入れ 日銀法の精神は?」 日銀が長期国債を月額1兆2000億円、年間14兆円も買い続ける理由は ・買い入れ額を減らせば国債市場の需給が悪化し長期金利が急上昇する懸念がある ・長期金利の過度の変動を防ぐ ・金融市場の動揺と、景気への悪影響を抑える ということです。 大事なことなので、もう一度書きます。『(日銀による)買い入れ額を減らせば、国債市場の需給が悪化し、長期金利が急上昇する懸念がある』 あっさりと書いていますが、この意味を、良く考えてみてください。『日銀が国債を買わなければ、国債は余る。日銀に代わる、多量の国債を買える主体はいない』ということを示唆しています。 --- 「2005年度末の国債保有状況」 --- 「国家破綻を回避する方法 財政再建・インフレーション・デフォルト・政府通貨発行権・日銀の国債直接引受」 財政再建が一番まっとうな手段とは思います。ただし、・・・「プライマリバランスを達成するのには、30兆円以上の増税か歳出削減が必要」です。しかもプライマリバランスを達成しただけでは、債務が増えないというだけで、実質の債務削減にはさらに厳しい政策が必要です。 たとえば、公務員が大幅に減り(当然、失業者になります)、公共工事は大幅削減(土木関連の企業はさらに破産するでしょう)、福祉と年金は大幅カット、消費税は最低30%のラインが必要、との指摘もあります。第154回国会の予算委員会で五十嵐議員が取り上げた通りです。 --- 「国家破綻について 2つの質問 金利安定の理由となかなか破綻しない理由」 まず、考えていただきたいのは、 『日本国の債権・債務の関係が、バランスし続ける保証はどこにもない。つまり、誰かが、日本国の債務を引き受け続ける保証はどこにもない。』 ということです。また、日本政府のB/Sは、すでに債務超過しており、国民金融資産と同程度の巨額になっているという計算も可能です。 --- 「誰が国債を保有しているのか 政府関連+日銀+郵貯・簡保で、国債の半分を保有」 国債が順調に売れるのは、公的部門と国内の機関投資家が買い支えているからです。政府関連+日銀+郵貯・簡保で、国債の半分を保有しています。国債を国が直接買うか、国内の機関投資家に買い支えさせている、といえるでしょう。 国債・地方債の担保は将来の税金です。つまりは需要(税金)の先食いですので、短期的には使えても、長期的には使えない手段なのです。長期的に国公債に頼ってしまうと、全体の財政規模のパイが大きくなることでしか、財政規模をキープさせる方法はありません。 --- 「戦前の国債 日本国債のリスクプレミアム」 外貨建ての日本国債は、日本の高い外貨準備を反映し、高い格付けのようです。しかしながら、「日本の持続可能な財政運営」から見ると、「日本のようなちょっと危ない国の債券は、それなりのリスクプレミアムを付けてくれるか、変動金利債でないと、買えないな」と思うのではないでしょうか。 --- 「「日本は財政危機ではない/菊池英博」の検証 財政投融資は不良債権に、国有資産は換金できない」 ・政府保有の「金融資産」は、そのほとんどが「(財政投融資の)貸付金」だが、ご存知のように不良債権化が進んでいると推定 ・「固定資産」は、減価償却が十分に行われておらず、額面どおりの価値はない上に、売却することが困難と推定 ・究極的には、政府の資産は「国民に対する徴税権」であるが、国民に負担を強いることに変わりは無い --- 「戦争は最後の不況対策」 日清・日露戦争から第一次大戦そして第二次大戦に至る戦費の調達、つまり戦時国債の購入に郵貯・簡保の資金が総動員された。政府が全戦費を税金でまかなおうとしたら、いかに軍国主義的に教育された国民でも怒る。大戦争では、全所得を徴収しても足りないからである。戦費は、「借り倒し」を前提とした借金でまかなうしかない。 --- 「臨界点(クリティカルポイント)近し 国家・地方の長期債務1000兆円に」 国家財政の負債についても、どれくらいまでなら「引き返しが可能なのか」という「臨界点」については、それ以外にも、担税力、GDP成長率、インフレ率、長短金利、などを総合的に勘案する必要があるとのことで、まだ結論を見ていません。ですが、「国家財政の負債がGDPの3倍を超えたことは歴史上ない」という事実から、「いくら何でもGDPの3倍が限度だろう」とする論調が、それなりに受け入れられているようです。とはいっても、「GDPの2倍である1000兆円なら、持続可能性が高い」とする根拠が乏しいのも事実です。 --- 「国債の発行額は税収の3倍 国債市場からの逃避」 ・国債の発行額は06年度には税収の3倍の138兆円に達する。 ・税収の3倍もの国債が発行されるので、利払費の増加が税の自然増を上回る。 ・経済成長は、逆に財政収支の悪化をもたらす可能性もある。 --- 「金利上昇 制御不可能な巨大怪獣が暴れだす日」 「金利が上昇しても、その分インフレに誘導して、税収を増やしたり、実質金利を抑えることは可能だろう?だから問題ないのだ。」と思われる方もいるかもしれません。 ですが、税収の3倍の国債を発行していることから、 (借換え債などの利子)>>(インフレなどによる税収の伸び) となるであろうことは、それほど間違っていないと思います。 (引用終了) 繰り返しになりますが、このブログで何度も主張しているように、 ・国債と、その処理方法については、避けて通ることが出来ない ・国力が弱くなるなら、経済成長による自然償却は期待できない ・通貨発行権と徴税権でまかなうしかない とまとめます。 その対策として、歳出削減(公共投資削減・公務員削減を含む)による財政健全化を提案します。具体的には、 ・大きな政府を維持する選択肢は、事実上ありえない ・海外の財政再建事例を見習い、増税よりも、歳出削減を重視 ・具体的には、公共事業削減に加え、社会保障・公務員給与をGDP比で引き下げる ・特別会計の全面的見直しと一般会計編入・解散 と提案します。 他方、われわれにも可能なリスク対策としては、 ・外貨資産の保有 ・これから成長する余地の大きい国・地域への株式・ETF投資 ・インフレヘッジが可能な現物資産への投資 ・これら投資のポートフォリオを適切に設計する と考えます。
by kanconsulting
| 2006-09-18 20:56
| 経済状況
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