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犯罪収益流通防止法・依頼者密告制度・ゲートキーパー制度(1) 弁護士の守秘義務は崩されていく

皆様ご存知と思いますが、弁護士(その他の法律専門職も)には、守秘義務が課せられています。それによって、憲法に定める「公正な裁判を受ける権利」や、その他の被告人(被疑者)の権利が担保されている一面があるのです。

さて、そのような弁護士が、依頼者の秘密を国に密告しなければならない法律ができたとしたらどうでしょうか?そのような「守秘事項」が、国に筒抜けになってしまうなら、弁護士といえども、信用して依頼ができにくい事態になり、必ずしも権利が守られない事態になるのではないでしょうか?

それが、「依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)」なのです。

どういうことでしょうか?もう少し詳しく見てみましょう。

犯罪収益流通防止法とは、犯罪収益の流通(619の犯罪を予定)や、テロ資金として利用されるという『疑いがある』というだけで、弁護士は警察に密告しなければならない、という法(案)です。その中で定められようとしているのが、「弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)」です。依頼者密告制度とは(ゲートキーパー制度とは)、マネーロンダリング対策やテロ資金対策のために、弁護士・公認会計士などの専門職を、金融取引の門番(ゲートキーパー)にしようとする制度のことです。

より具体的には、経済協力開発機構(OECD)加盟国でつくる「金融活動作業部会」(FATF)が2003年6月、短期間に高額な現金の出し入れを繰り返す「疑わしい取引」の届け出義務を、金融機関から、不動産業者・貴金属商・弁護士・会計士などに拡大することを勧告したといういきさつがあります。この勧告を受けて、警察庁は、来年の通常国会への法案提出を目指しています。弁護士に対しても、疑わしい取引の届け出のほか、依頼人の本人確認や取引記録の保存を義務付ける内容でした。

依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)のそもそもの起源は、1994年のイギリスです。「依頼者の疑わしい活動についての、政府金融監督機関への報告義務の懈怠」などが、5年以下の懲役刑の対象とされました。そのため、ソリシター(事務弁護士。行政書士に相当)が、依頼者の些細な事項についても報告を行うようになり、年間の報告は1万件を超えるということです。現在、ほとんどのEU諸国で、同様の報告制度の国内法化が実施されているということです。

参考サイト:日本弁護士連合会(日弁連)のチラシ

(引用開始)

1989年のアルシュ・サミット経済宣言に基づき、OECD諸国などによる政府間会議として「金融活動作業部会」(略称「FATF」)が設置された。FATFは1990年にマネー・ロンダリング(資金洗浄)対策のための40項目の提言(略称「40の勧告」)を採択した。その中では「疑わしい取引」についての金融機関の届出義務などが定められ、1996年の改訂で前提犯罪の拡大などが盛り込まれた。これを受けて、日本は組織的犯罪対策法の中に金融機関の義務を法制化した。
さらに、アメリカの9・11同時多発テロで盛り上がったテロ防止対策強化の国際世論を背景に、2003年6月、40の勧告は大改訂された(新勧告)。
新勧告は、資金洗浄防止のための各種義務をテロ資金供与防止目的にも拡げる一方で、規制対象先を金融機関だけではなく、弁護士等の専門職(金融取引の門番=ゲートキーパー)にも拡大し、各国に対して速やかな国内法整備を求めるに至った。
新勧告によれば、弁護士が依頼者のために次の各取引を準備または実施する場合(特定業務)、公的資料に基づく本人確認及び記録の保存義務が課せられる。また、その際に取引の資金が犯罪収益またはテロ関連であると疑ったか疑うべき合理的な根拠があるときは、これを金融監督機関に報告する義務を負うことになる。
(特定業務)
(1)不動産の売買
(2)依頼者の金銭・有価証券・その他の資産の管理
(3)銀行預金口座・貯蓄預金口座・証券口座の管理
(4)会社の設立・運転または経営のための出資金のとりまとめ
(5)法人または法的機構の設立・運転または経営・並びに事業組織の売買
その一方で、新勧告は「守秘義務の対象となる状況に関連する情報」を報告義務の対象外としているが、具体的場面での判断は、「疑わしい取引」に当たるかどうかとともに、必ずしも容易なことではない。

(引用終了:福岡県弁護士会 主張・提言「ゲートキーパー問題を考える」

・・・

もちろん、「弁護士が、依頼者の犯罪を手助けする」ことはあってはなりません。ですが、それと「弁護士が、依頼者の秘密事項を密告する」ことは、雲泥の差があります。

弁護士の守秘義務が犯されるとき、国民は自己防衛することができません。徴税庁・警察庁と、弁護士が手を組んで国民に監視の目を向けるとき、誰がそれに対抗できると言うのでしょうか。

(引用開始)

弁護士は「あの経営者は実際には脱税をしている。私は法律家で正しく法を適用しなければならないから、許すわけにはいかない」という考えから、法廷で脱税の証拠を提示し事実を公表してしまった。被告人にしてみれば検事が2人いるようなものである。当然これに対しては国家賠償が請求され、その弁護士は懲戒処分を受けた。
弁護士は、法律家として法律を正しく適用しなければならないのは事実である。しかし弁護士法第1条は「基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命とする」と規定している。したがって、このようなケースにおける弁護士のとるべき態度は、脱税事実を知り得つつも法律規定を遵守し、かつ憲法あるいは刑事訴訟法において供述拒否権が与えられていることを被告人に伝え、その擁護に精一杯努めるのである。あえて弁護士が脱税の事実を提示し被告人をして罪人にさせる行為は、絶対に許されないのである。

(引用終了:「法律家としての税理士への道」

・・・

「悪いことをしていないから、問題ないのだ。」「このような法案に反対する人は、何か後ろめたいことがあるからではないのか。」という人もいるでしょう。ですが、日本を含む世界の歴史を振り返ったときに、それは大いなる間違いなのです。

国家には、国民を監視・コントロールし、組織を持続・肥大化させたいという側面があります。いわゆる、『ビッグ・ブラザー』です。そして、そういった監視・管理の強化は、最初は大義名分があり、こっそりと進行するものです。

大義名分:マネーロンダリング対策・テロ資金対策
こっそりと:この件についてご存知の方がどれほどおいででしたか?
ビッグ・ブラザー:ジョージ・オーウェルの小説「1984」に登場する支配者の名前。転じて、「国・世界レベルでの大規模な監視を行う人物・機関」を指す

大事なことなので、もう一度繰り返します。

「弁護士の守秘義務が犯されるという依頼者密告制度は、国民に対する監視・管理の強化という、一連の流れのうちの一つに過ぎない」のです。

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この記事には、続きがあります。その驚愕の事実は、「犯罪収益流通防止法・依頼者密告制度・ゲートキーパー制度(2) 国内での資産保全スキームは事実上崩壊する」として、後日掲載します。

(勘の良い方には、言わずとも察していただけることと思います)

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by kanconsulting | 2006-10-21 22:21 | 資産保全一般
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