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(引用開始) 「夕張破綻、国に責任なし」政府が答弁書 政府は15日の閣議で、北海道夕張市の財政破綻について「原因は同市の許容範囲を超えた支出、収入の大幅減への対応の遅れ、財務処理手法の問題などにあり、国に責任はない」とする答弁書を決定した。財政再建に地方債の債務免除を検討すべきだとの指摘には「(同市は)債務の全額を支払うべきだ」との見解を示した。新党日本の滝実衆院議員の質問主意書に答えた。 債務の繰り延べなど金融機関の協力を要請すべきだとの主張には「計画の具体的な内容が明らかでない」として「今後適切に対処する」と回答した。(22:00) 日本経済新聞 --- 夕張市、職員の4割が退職へ・110人、今年度末まで 財政再建団体入りを決めた北海道夕張市で、今年度末までの退職を申し出た職員が19日時点で110人に達したことがわかった。職員総数(約300人)の4割近くに達することになり、急激な職員減少で行政サービスに支障が出る可能性も出てきた。 後藤健二市長が20日の市議会の答弁で明らかにした。市は年末まで退職希望の申し出を受け付けており、さらに退職者が膨らむ見通し。19日時点の退職希望者のうち、早期退職勧奨の適用申請などが99人、定年退職が11人だった。 市は11月にまとめた財政再建計画の基本的枠組みの中で、退職金の段階的な削減を通じて職員数を2009年4月までに半減させる目標を打ち出していた。市の年度末の退職者想定数は83人。(13:51) 日本経済新聞 --- 給料は増えたが、支出も膨らんで相変わらずの借金生活-。平成19年度予算政府案(一般会計82兆9088億円)を1000万分の1に縮小し、年収829万円の「わが家の家計簿」に例えると、新たな借金を過去最大幅で減らしたといっても、なお危機的な政府の台所事情が浮かび上がる。 収入は給与(税収)が534万円、妻のパート収入(税外収入)が40万円で、景気回復により計77万円増える。それでも、かさむ支出を賄うためには、新たにローン(国債発行)を組んで254万円借りる必要がある。新規の借入額は45万円減り、収入に占める借金の割合は3割まで低下するが、依然として借金頼みの生活に変わりはない。 支出は年齢を重ねるに伴って増えてきた通院・薬代(社会保障費)が211万円、教育費(文教・科学技術振興費)も手を抜けずに52万円払う。家の修繕費(公共事業費)は69万円で2万円減らすが、実家への仕送り(地方交付税)を3万円上乗せして149万円とする。 一方、ローン返済(国債費)は収入の2割超の209万円。19年度末のローン残高(国債残高)は年収の6倍超の5470万円に膨らむ。今後の金利上昇や景気減速の可能性も踏まえると、給料が増えたからといって、財布のヒモを緩めすぎかもしれない。 12月25日8時0分配信 産経新聞 (引用終了) さて、以前の記事にて、次のように述べました。 (開始) 「夕張市20年再建計画 20年後の人口は現在の半分程度」 「日本国財政破綻Safety Net」に記事「417.あなたは財政破綻した町に住みたいですか (夕張市の場合) 」が掲載されていました。 負債は、20年かけて返済するといいます。市民への負担としては、市内で唯一の老人ホームを閉鎖するなど、なりふりかまわない対策が行われるようです。詳しい解説は、日本国財政破綻Safety Netをご覧ください。 加えて、夕張市の20年後の人口は、約6000人と現在の半分程度にまで減少すると見られています。この数字には、「破綻によるサービス低下と税負担増を嫌気した住民減」は含まれていません。いったい、誰が負債を返済するというのでしょうか。 その赤字のカネはどこに消えたのでしょうか?そして、大阪市、神戸市などは大きすぎて潰せないのでしょうか?最後にはやはり「国の負債処理」が待っているのでしょうか? --- 「実感なき景気回復 個人所得伸び率はマイナス さらなる人件費カットがありうる」 大きくバランスシートを考えると、国家、企業、家計、の中でマネーフローがあってバランスしているわけです。企業から家計へのマネーフローを絞ると、家計の二極分化が進み、納税額や社会保障も含めて考えると、国としてのトータルの経済規模は縮小します。累進所得課税から消費税増税へのシフトも同じ効果があります。 (終了) 現在、夕張市から脱出している人が増加しているようです。「次の自治体」は、今後どうなるのでしょうか。 加えて言うなら、地方自治体財政よりも日本国財政のほうがはるかに厳しい状況です。 国は、今後どうなるのでしょうか?以前のコメント欄に記入した内容を再構成して記したいと思います。 (1)夕張市は、破綻処理に耐えて再生できるのか? 以前の記事でも述べたように、人口6000人(自然減のみ、負担増を嫌気した脱出はカウントせず)では、実質的に市として成立しません。町が市に昇格するのには、3万人(以前は5万人)に加えて、その他の要件があります。ですが、いったん市になれば、人口が減少したからといって町村に逆戻りするケースはないようです。本来であれば、成立要件がなくなれば、身の丈にあった地方自治のスタイルに戻すのが正論です。 参考 「「市」になる要件について-地方自治法・都道府県の条例から-」 税金の補助があるような全ての項目、たとえば公営の保育料などは、補助をカットせざるを得ない『高負担社会』になるのでしょうね。これでは、住民が逃げ出しても仕方ないですね。特に、逃げ出すことの出来るのは、仕事のある、つまり担税力のある年齢層です。悪循環としか言いようがないでしょう。 したがって、増税と住民負担増だけでは、破綻処理に耐えて再生することは、普通で考えて極めて厳しいです。 (2)そもそも、地方の見通しについて 将来の地方は、インフラを維持するコストを負担できません。地方は体力のあるうちに、インフラを廃棄しなければ、持続可能性はありません。下水道もそうですが、ハコモノ設備、土木設備は最たるものでしょう。こうやって、日本が700兆円をかけたインフラは、お荷物として、またカネをかけて処分しなければならないのです。後に残るのは借金だけです。まさに悪夢といえるでしょう。 インフラを整備して割に合うのは、一定以上の人口が集中する都市だけです。維持限界密度を下回った街には、強制的にインフラをカット必要もありそうです。日本全体で地方のインフラの維持コストを負担する体力はありません。人口が減少した都市には、強制的に町村に格下げし、同時にその成立要件となっていたハコモノ設備を売却処分する制度も必要でしょう。 (3)では誰が負担するのか 夕張市の借金は、踏み倒すことはできないと思いますが、北海道には支える体力がありません。国は責任を持たないと言っていますが、結局は、実質的な国税投入になるのでしょうね。地方のNTTの赤字を、携帯電話も含めた全電話加入者で負担することになったように、何か仕組みを考えているのかも知れません。 地方債のデフォルトは考えにくく、最終的には税金かインフレで負担することになると思います。 「破綻すると人が逃げるから補足して金を取れ」という意見があります。「俺たち(夕張市以外の国民)にまでツケを回すな」と言っているようにも聞こえますが、「夕張の破綻の責任は、究極的には夕張市民にあるから、彼らに責任を取らせろ」というのも暴論です。民主主義である以上、最終責任は市民(国民)ですが、それ以前の問題として、歴代の責任者に責任を取ってもらうのが本筋です。たとえ焼け石に水に過ぎなくても、モラールを維持する面で必要だと思います。 会社であれば、以前の社長であっても、放漫経営の責任を株主代表訴訟で訴えて私財でまかなわせることが可能です。 さて、そこまでやっても、「地方の危機を国全体で負担するか/できるか」という問題は残ります。 (4)国はどうなるのか 「国の危機のほうが根深い中で、地方だけが財政規律について考えることはむなしい」というご意見があります。もちろん、地方の放漫経営は許されるべきことではないのですが、額的には、地方の債務よりも国の債務のほうがはるかに大きく、毒(国の債務)を食らわば皿(地方の債務)とも言えるでしょう。 また、地方が破綻したからとって必ずしも日本全体もそうなるとは言い切れないのですが、それは「地方の破綻を債権放棄で処理してもらう」か「日本全体として地方の負債を処理する体力がある」場合です。 「地方の破綻を債権放棄で処理できず」「日本全体として地方の負債を処理する体力もない」場合には、地方を引き金とした、国家的な危機があっても仕方ありません。 韓国は10年ほど前に実質的に破綻直前の状態になり、IMFの再生プログラムを受け入れましたが、そのため国の将来を悲観した韓国人(学生など)の国外脱出はすごかったようです。
by kanconsulting
| 2006-12-28 12:06
| 経済状況
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