バブル崩壊の見破り方(2) 吉岡元忠・関岡英之が語る1990年の株価崩壊の口火

「国富防衛」「対米自尊」の思想を最後まで説き続けた孤高の碩学であり、『マネー敗戦』で知られる、吉岡元忠の遺作「国富消尽―対米隷従の果てに/吉川元忠・関岡英之」から引用して、バブル崩壊の原因を探ります。

なお、共著者である関岡英之は、最近「アメリカの日本改造計画/関岡英之」を出版しています。

(引用開始)

証券・金融関係者の間では、1990年の日本の株価崩壊は、アメリカ系の大手証券会社が大規模なデリバティブを仕掛けたためであるということが、半ば公然の事実となっているのです。
アメリカ系証券会社が仕掛けたのは、「日経225先物」を使った「裁定取引」だったと言われています。(中略)まず値動きの速い先物を空売りする。・・・今度は現物が売られる。・・・今度は先物を売る・・・。こうした取引が最新の金融技術を使って短時間のうちに繰り返されたことが引き金になって日経平均が急落し、株価の暴落につながったと言うのです。
私も、これが実際に行われたのではないかと思います。実は・・・アメリカは日本の株式市場に値動きの速い「日経225先物」の導入を迫り、日本はこれを受け入れさせられたのです。日本側は値動きの遅いTOPIXの先物を対案として打診したけれど、容れられなかったと言われています。(中略)

ちなみに、1989年末に日経平均が最高値をつけたわけですが、・・・89年5月には日銀は金融政策を転換して、金利を引き上げましたが、これを無視して株価が上昇を続けていた・・・さらにこの年の後半には、日経平均は上昇しているのに、値上がり銘柄より値下がり銘柄数のほうが多いという状況が目立ってきます。つまり、市場の基調は弱いのに、日経平均を吊り上げるために、何らかの市場操作が行われていた可能性も考えられないではありません。

いずれにせよ、日米構造協議における株式持合い解消の要求が、長期戦略として、日本企業のM&Aを狙ったものであることは間違いありませんが、短期的には日本の株式市場に先行き不安感を醸成して、デリバティブ(による金融戦争)を仕掛けようというアメリカの証券会社やヘッジファンドの思惑もからんでいたのではないかと思います。

「国富消尽―対米隷従の果てに/吉川元忠・関岡英之」 P205-207

(引用終了)

他の文献のサポートが見つからず、「半ば公然の事実」かどうかは断定できません。ですが、『アジア通貨危機などのケースを見るにつけ、デリバティブによる売り崩しも可能性としてあったのではないか』と、直感的には思います。

なお、銘柄平均の先物を使った裁定取引については、過去の記事もご覧ください。

(開始)

「ヘッジファンドの手法 ~ベアリングズ銀行に見る円のキャリートレード・裁定取引とは」

その仕組みは、以下のとおりです。

・日本から低金利で円を調達する
・シンガポール(SIMEX)と大阪証券取引所(OSE)で、同じ日経平均先物のトレードをする
・シンガポールから、安値で本命の日経平均先物カイ注文
・同時に、大阪で、高値でウソの日経平均先物ウリ注文を出す(見せ板を作る)
・見せ板の多量のウリ注文のため、上値が重くなり、先物の値が下がってくる
・シンガポールの、本命の日経平均先物カイ注文が約定する
・同時に、大阪の日経平均先物ウリ注文を取り消す(見せ板を消す)
・上値が軽くなり、市場が反発したところで、日経平均先物カイを決済する

この手法は、多量の資金を必要とします。そのためには、「日本から低金利で円を調達する」ことが必要なのです。証拠金としてシンガポールに流れ出た円は、日本国内に還流しない限り、インフレを起こすことはありません。まさしく、以前述べたように、『だぶついた日本円を使った裁定取引が、めぐりめぐって世界の金融市場の乱高下をもたらしている』のです。

(終了)

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なお、参考に以下の文献も読まれてはいかがでしょうか。

「国富消尽―対米隷従の果てに/吉川元忠・関岡英之」
「売られ続ける日本、買い漁るアメリカ/本山美彦」
「黒字亡国―対米黒字が日本経済を殺す/三國陽夫」
「アメリカの日本改造計画 マスコミが書けない「日米論」/関岡英之」
「拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる/関岡英之」
「奪われる日本/関岡英之」
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by kanconsulting | 2007-02-01 23:49
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