まずは、以下のニュースをご覧ください。これまでも指摘しているように、「国などの体力が残っている間は、結局は税金で地方自治体を救済することになる」となるようです。ただし、直接的な責任は道が負担し、国としては「道が支援するなら国もそれを間接的に支援しないわけではない」と、少し距離をおいたスタンスとなっています。
(引用開始) 北海道に特別交付税を検討 政府は22日、今年4月から財政再建団体に移行する予定の北海道夕張市の支援策について、市に低利融資などを実施する北海道に対し、2007年度以降、臨時的な財政需要を賄う特別交付税を交付する方向で検討に入った。 交付額は、再建計画や道の支援策の詳細が決まり次第、詰める。雇用対策や産業振興など各省庁の補助事業で夕張市が活用できるものがあれば、優先して補助金の対象とすることも検討する。 北海道は同市が現在、金融機関から借りている一時借入金の金利1・5%を下回る0・5%程度で赤字額の約360億円を融資する方針。だが、道も新たに資金を調達する必要があり、国に金利差負担の軽減策を求めていた。 高橋はるみ道知事から同日、要請を受けた菅義偉総務相は「道がそういう方向でやりたいということなら、国としても協力したい」と述べ、前向きな姿勢を示した。 補助事業については、市が補助金以外の自己負担分を支出できるかどうかの見極めを含め、市や道と協議する。 日刊スポーツ 2007/01/22 (引用終了) ここで、地方財政における「貸付金」について、再度触れておかなければなりません。 貸付金とは、一般的に、誰かに貸している金のことを指します。このブログでは、国の財政問題を念頭において、国が公的機関に貸し付けている金のことを指します。たとえば ・財政投融資資金による地方自治体への貸付金(約73兆円、2003年度) ・住宅金融公庫への貸付金(約57兆円、2003年度) ・日本政策投資銀行など政府系金融機関への貸付金 そして、国の資産としての貸付金の合計は、289兆円(2004年度)とされています。 --- さて、これまで見てきたように、地方自治体はおおむね財政状況が厳しく、昔から3割自治と言われるように、自主財源だけでは運営できない状況が続いています。その中で、地方自治体への貸付金は、実質的な補助金であり、ロールオーバー有りの無期限貸付と考えることができます。なぜならば、国と地方自治体は、日本国全体で見れば連結ベースで親会社と子会社のようなものであり、交付税と貸付金はその中でのキャッチボールのようなものでしかないためです。 夕張市のような事例を見るにつけ、「貸付金が不良債権となっている割合が大きいのではないか?」という疑問に、「夕張市は特殊事例であり、そのほかの地方自治体はすべて健全経営であり、貸付金の焦げ付きは100%存在しない」と答えられる人はいないのではないでしょうか? そして、国が貸付金を回収しようと思えば、帳簿上で地方交付税と相殺すればよく、実質的にあまり意味をなさないということも指摘しておきたいと思います。もう一度書きますが、「地方自治体への貸付金は、実質的な補助金であり、ロールオーバー有りの無期限貸付と考えることができる」なのです。 以下に、貸付金に関する記事を掲載します。 (開始) 「「日本は財政危機ではない/菊池英博」の検証 財政投融資は不良債権、国有資産は換金できない」 では、「政府の資産」とは何でしょうか?「日本国のバランスシート(平成13年度末)」をご覧になってください。 小職は、以下のように指摘します。 ・確かに、負債に見合った資産は存在する。しかし・・・ ・政府保有の「金融資産」は、そのほとんどが「(財政投融資の)貸付金」だが、ご存知のように不良債権化が進んでいると推定 ・「固定資産」は、減価償却が十分に行われておらず、額面どおりの価値はない上に、売却することが困難と推定 ・究極的には、政府の資産は「国民に対する徴税権」であるが、国民に負担を強いることに変わりは無い --- 「国の連結資産と一般会計の債務超過」 国の資産の内訳を見ると、一般会計では、庁舎などの国有財産や国道など公共用財産を含む有形固定資産(約161兆円)が最も多い。しかし、連結ベースになると貸付金(約300兆円)が最多だ。中でも財政投融資資金による地方自治体への貸付金(約73兆円)や、住宅金融公庫への貸付金(約57兆円)のほか、日本政策投資銀行など政府系金融機関への貸付金の額が多い。 --- 「「骨太方針2006」 国の資産、140兆円規模圧縮」 国の資産は、約707兆円(2005年度末の推計)。具体的には、以下のようになっています。 ●独立行政法人などへの出資金 ●有価証券など ●公務員宿舎・庁舎などの国有財産 ●貸付金(政府系金融機関・地方公共団体向け) ○運用寄託金(公的年金預かり金の一部) ○外為特会保有外貨資産 ○公共用財産(河川・道路) ○その他物品 ●:圧縮対象の資産 約390兆円 このうち約140兆円を削減 ○:非対象 行政改革推進法では、今後10年間で名目GDP(国内総生産)比で半減=140兆円規模で圧縮するために、以下のような方法が挙げられています。 ・公務員宿舎・庁舎・未利用国有地などの、国有財産の売却など:約12兆円 ・財政投融資資金の貸付金の証券化・財投改革:130兆円 しかし、具体策が明らかになっているのは「12兆円」だけであり、「130兆円の証券化」は削減の方法が明確ではないとの指摘もあります。また、財務省の関係者のコメントとして、『証券化できる資産はごくわずか』(日経新聞)との紹介もあります。さらに、証券化で得た資金は財投債の返済に充てられ、普通国債の残高削減には使えないとの指摘もあるようです。 --- 「国債の利払い抑制策 本質的な対応なのか?」 国の債務超過265兆円――財務省、04年度貸借対照表を発表 財務省は25日、2004年度の国の資産と負債の状況を示した貸借対照表を発表した。一般会計と特別会計に加えて、国との関係が深い独立行政法人や特殊法人など226法人を連結すると、負債が資産を265兆円上回る「債務超過」だった。公債発行に歯止めがかからず負債が膨らんだためで、危機的な財政状況が改めて浮き彫りになった。 連結ベースの資産は839兆円で03年度より5兆2000億円増加。負債は1104兆円と17兆9000億円も増えており、差し引きの債務超過額は12兆7000億円、約5%増えた。将来世代に残す資産より借金の方が増加ペースが速く、財政の悪化が続いている。 資産の内訳を見ると、貸付金の289兆円、有形固定資産の267兆円が大きな割合を占める。有形固定資産には道路や河川など売却して現金化するのが難しい公共財産が多く、実質的な債務超過額はさらに膨らむとみられる。 (終了)
by kanconsulting
| 2007-02-18 10:19
| 経済状況
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