これまでの「経済状況の発展段階説」に関連したエントリーにて、次のように述べました。
(開始) 「経済状況の発展段階説(1) ヘゲモニーサイクル 永遠に成長できる国はない 国際分散投資が必要な理由」 これを簡単に言うと、 ・国を若年期→壮年期→老齢期と推移していくと考えるとわかりやすいです。 ・若年期は他国より借金をして事業を開始・拡大し、壮年期は事業収益で借金を返済し、老齢期は他国へ資金を貸してその投資収益で暮らしていくのです。 イギリスは産業革命による工業国で、ポンドは非常に強い通貨だったのですが、徐々に衰退し、覇権はアメリカに移っていきました。その過程で、国際的な投資を行うことで、国力の衰退をソフトランディングさせることが可能だったと見ています。 永遠に単調な成長を続けることのできる国はありません。日本とて、例外ではないのです。日本国が、壮年期から老齢期に移行する国であるならば、自国経済の弱体化や自国通貨の下落は避けられません。 --- 「国際貸付ではなく国際投資を 経済状況の発展段階説(2)」 先日のブログで国際投資について述べたと思いますが、他国にカネを出す場合、貸す(債権)、投資する(株式)という形式があります。 --- 「人口統計に基づいた未来予測~自治体破綻 経済状況の発展段階説(3)」 『いまの日本の投資環境がある意味で似通っているのは100年あまり前の英国であるとも思えるからです。19世紀後半には英国は産業革命後の高度成長が止まり、世界の経済大国としての地位に陰りが見え始めていました。そんな時期の英国で生まれたのが世界で初めての投資信託。当時の新興国だった米国などに資金を大胆に振り向け、英国民の財産形成に寄与していきます。記事で詳述していますが、当時の英国と現在の日本とでは類似点に事欠きません。』 --- 「債務残高なんて問題にならない? 経済状況の発展段階説(4)」 ・キャッシュフローの話として、輸出による黒字があるから、国の財政赤字をいつまでもファイナンスできるというのは誤り ・ストックの話として、対外債権を切り崩せば、国の財政を帳消しにできるというのも誤り となります。 そもそも、民間の所得である「輸出入差益」「海外に所有する債権の利子」と、国家債務残高は、基本的には打ち消すものではありません。 (終了) 「経済状況の発展段階説」について、その概念の表を、再び掲載します。 ![]() さて、日本は、どの段階に位置するのでしょうか?経常収支、貿易・サービス収支、所得収支、外貨準備増加*、資本収支の推移をグラフにしてみました。 *ストックである「準備高」ではなく、フローである「増加」であることにご注意ください ![]() このように、日本は「未成熟債権国」に相当することが分かります。今後は、貿易・サービス収支が赤字に転じると思われます。そして、経常収支黒字の内容が、海外資産からの所得だけになれば、「成熟債権国」になるのです。 このうち、所得収支(黒字)の大半は、証券投資収益の黒字(約8~9兆円)とされています。そのほとんどは利子による黒字(約7~8兆円)であり、さらにその大半は、アメリカ国債の利子です。この数字は、日本が巨額のアメリカ国債を所有していることの裏づけとなっています。 アメリカは、1970年代から現在に至るまで「債権取崩し国」ですが、1960年代にはすでに「成熟債権国」でした。 さて、現在の日本の対外純資産残高は、180兆円とも言われています。これを他の国と比較するとどうなるでしょうか? ![]() このように、日本の対外純資産残高は、非常に大きな値となっています。ですが、アメリカの対外負債はそれ以上に巨大です。アメリカは、国全体の消費と投資を貯蓄では賄えていません。日本は債権大国であり、日本は、アメリカ国債を購入して、経常赤字・財政赤字というアメリカの2つの赤字をファイナンスしています。(ちなみに、アメリカは巨額の債務超過国ですが、所得収支は黒字です。) その証拠として、日本から海外への債券投資残高を見てみましょう。 ![]() 日本の海外投資の特徴として、「直接投資・株式投資が、総資産残高に比べて、小さい」ということがわかると思います。この水準は、GDP比で見ると、先進主要国の中では最低レベルです。 アメリカ国債は、「中長期債」と「外貨準備」に含まれます(*)。正確な数字はここからは分かりませんが、別の資料からは、3173億ドル(2002年)、と言われています。 最近の資料からは、「滅びゆくアメリカ帝国/高野孟」で、次のような指摘があるようです。 ・2003年のアメリカの経常収支赤字は5400億ドル ・2004年度で5000億ドル近い空前の財政赤字を出した ・1日あたり15億ドルずつ外国から借り入れしている ・今後10年間の財政赤字は5兆ドルに達する ・アメリカの国債残高は、過去4年間に7860億ドル増えて1兆8400億ドルに達した。 ・そのうち、4040億ドルを日本が引き受けた。 ・その結果、外国のもつアメリカ国債の4割にあたる80兆円は日本が所有している 日本がアメリカに資金を流入している(せざるを得ない)理由は、複数あります。 ・アメリカ・日本の金利差が厳然として存在する ・ドル(アメリカ国債)以外には、巨額の資金の運用先が見当たらない(本当?) ・アメリカには、ドル経済圏のシニョリッジ権限があるため、巨額の赤字は問題にならない ・アメリカは、ドルの担保として強大な軍事力を有するため、巨額の赤字は問題にならない ・アメリカは、デリバティブ・ヘッジファンドなど、富を生み出す金融技術に優れているため、巨額の赤字は問題にならない この理由については、これまで何度も触れているところですので、これ以上は割愛します。 --- では、日本(日本人)はどうすればいいのでしょうか?過去のエントリーから抜粋して掲載します。 (開始) 「経済状況の発展段階説(1) ヘゲモニーサイクル 永遠に成長できる国はない 国際分散投資が必要な理由」 そこで国際分散投資をすることで、自国の金融資産の目減りを防ぎ、衰退をマイルドにすることが可能と考えます。株式市場は、その国の成長率と相関があることは基本的には間違っていないと思います。また為替は、長期的にはファンダメンタルズ、所得収支・資本収支で決まると考えて良いと思います。 (終了) もう少し詳しく説明すると、以下のようになります。 ・日本(日本人)に必要なのは、頭に汗をかいて、資産運用の知見を身につけること ・具体的には、リスクをコントロールしながら、投資収益を極大化させること ・頭に汗をかいて対外資産を運用することは、実際に汗をかいて生産(輸出)することと同じく、重要な経済活動 ・しかし、現在の日本の資産運用は、アメリカ国債中心となっており、リスク対策ができていない ・もし、巨額の対外資産を直接投資・株式投資に振り向けるなら、大きな富を享受することができる 小職は、何度も同じことを書きます。 ・日本人は、今後の日本の経済的衰退を前に、積極的に海外投資を行うべき ・この場合、リスクをコントロールしながら、投資収益を極大化させることが必要 ・その具体的な方法は、ファイナンシャル・リテラシーを元に、自分で考えることが必要 ・今後あるかも知れない日本の財政破綻への保険と、積極的な海外投資は、皮肉ですが、一致する (最近の参考書籍) 「2011年 金利敗戦/森木亮」 財政史・森木亮の新刊です。2008年IMF占領と同じ出版社からの出版です。 「最高支配層だけが知っている日本の真実/副島隆彦」 「暴き系」副島隆彦の、論文集のようになっています。近代史の解釈が秀逸です。 「富の未来(上)(下)/アルビン・トフラー、ハイジ・トフラー」 これからの世界経済のうねりを見抜く上で、欠かせない一冊です。
by kanconsulting
| 2007-04-01 22:34
| 経済状況
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