世界同時株安と円高(6) 再び総円高が来たときに個人投資家は持ちこたえられるか

先日、「貞子ちゃんの連れ連れ日記」から、コメント欄に、情報提供をいただきました。

(転載開始)

Commented by 貞子ちゃん at 2007-09-06 00:10 x
(中略)
自分のブログでもアップしたかったのですが、ご参考までに、下記の数値を提供させていただきます。
野村総研の資料より、今年の8月15日から、8月17にかけて、個人のFX取引で ものすごい異変が起きておりまして、これが今回の東京為替市場の急速な円高の究極の「犯人」だったのではないかと思われます。
個人のFX経由での外貨持ち高が、8月15日から8月17日で、下記のように、ほぼ半減しております。
対ドル:1600億円(8/15)→880億円(8/17)
対ユーロ:600億円弱→220億円
対ポンド:600億円強→230億円強
対オージー:600億円弱→220億円
対ニュージーランドドル:520億円→200億円強
対カナダドル:200億円矢印80億円弱。
取り急ぎ、ご報告です。

Commented by kanconsulting at 2007-09-06 00:21 x
貞子ちゃんさん
(中略)
FXの資料ありがとうございます。8/16を中心とする2~3日が、円高のピークでしたが、個人投資家のロスカット(証拠金が維持ラインを下回ったことによる、強制的な損切り)が最終の円高の仕上げとなった、ということだと思います。
たとえばドルで見ますと、投資残高が1/2になっていますが、これは、レバレッジ10倍での5円円高に相当します。8/15の始値は117.55、8/17の最安値は112.00付近ですから、レバレッジ10倍の仮定が相場の変動とマッチします。
実際に、個人投資家のブログを見ますと、数百万円を失ったという記述を簡単に発見することができます。

(転載終了)


このデータを補強するグラフが、週間ダイヤモンドに掲載されていましたので、引用して掲載します。

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取引所(くりっく365)経由のみの数字ですが、7月になってからは、円安の進行によってかどうか、ポジションの残高(株式で言うなら信用買い残)が急増していますので、「イケイケ!ドンドン!」になっていたことが伺えます。しかしながら、トータルで5000億円程度あったポジション残高が、信用収縮に起因するアンワインドによって、一気に2000億円程度まで減らされていることがわかります。

多くの個人投資家が、この急激な変動に巻き込まれて、大損を出していることがわかります。彼らを、後になってから「リスク管理が甘かった」「だから言ったのに」と批判するのはたやすいことです。ですが、加熱した相場のさなかにあって、自分の射幸心をコントロールして冷静に相場を見ることのできる、『落ち着いた、大人の投資家(ソフィスケーテッド・インベスター)』は、どれほどいたのでしょうか?

ではどうすれば良かったのでしょうか?これも、何度も述べていることですので、過去の記事を参照してください。と書きたいところですが、それでは不親切ですので、いくつかリンクを貼りたいと思います。

(開始)

「チャイナ・ショック再び 世界同時株安 二度ある調整は三度ある 一般投資家はまた損をさせられる」

大事なことなので何度も書きますが、このブログをご覧になっている方は、

・カネは、儲かりそうな資産クラスを目掛けて、世界中を駆け巡る
・カネが集まった資産クラスは、ブームとバーストを形成する
・特に、昨今の市場では、カネ余りによる資金が流れ込むことでトレンドを形成する
・一般投資家は、そのトレンドに尻馬で乗り、結局損をさせられることが多い
・イケイケで調子に乗ってはならない。投資のルールに沿って、冷静になる必要がある

ということをご理解いただいていると思います。

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「2回目の世界同時株安にどう備えるか 「また損をさせられる一般投資家」? 二度ある調整は三度ある(2)」

「急落があれば、必ず損切りせよ」と言っているのではありません。非常に簡単に言うと、メンタル面と、資金面の、両方の余力を持って、ポジション操作をしてください、ということなのです。

そのためには、「年に1~2度は、調整があるかも」と考えて、「その時に、どの程度なら耐えられるか」を自問自答することが必要なのです。「調整には耐えられない」と思ったなら、妥当な程度までポジションを落とす(投資額を減らす)ことです。

ファイナンシャル・リテラシーがある「大人の投資家」は、高騰し過熱した相場よりも、下落して落ち着いた相場を好みます。

なぜならば、過熱した相場では
・売らないなら、どこが天井か気になるので、気が休まらない
・一般的には、お祭りになり、距離を置きたくなる
・「洗練された投資家」は、天井で売り抜けることは不可能と知っているので、適当なところで売り抜けて、あとは休憩となる

下落した相場では
・割安なバーゲン品が出るため、「投資の安全域」(ベンジャミン・グレアム)を確保できる
・恐怖心や、過度のリスクを許容できなくなった叩き売りが出る
・つまり、欲しい投資対象を安値で買える、絶好の買い場となる

もっと簡単に言うと、「大人の投資家は、相場が高くなると、売りたくなる。安くなると、買いたくなる」ということです。

ですが、「一般投資家は、相場が高くなると、買いたくなる。安くなると、売りたくなる」というのが、実情ではないでしょうか?その、基本的なところを、根本的に変える事が必要なのです。

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「FX(外国為替取引) ドボンしないために」

キャリートレード通貨に乗っかって、積極的に為替差益ねらいやスワップかせぎをしようとする場合は、次の点に留意する必要があります。

(共通)
・場帳、玉帳をつけて、変動感覚をやしなうこと
・余裕資金で、少しずつ買っていく(売っていく)こと
・恐怖心や射幸心をほどほどにおさえ、冷静に相場を見ること
・押し目でナンピンし、平均値を有利にすること
・一発狙いはお勧めしません

(為替差益ねらい)
・高レバレッジでもかまわないが、その場合は損きりポイントは必ず入れておくこと
・損きりポイントは、購入時より1~2円 (※値はレバレッジ10倍)
・損きりポイントは、絶対に下げないこと
・逆に、損きりポイントを上げて、利益確定ポイントに変更するのは推奨

(スワップ狙い)
・あらかじめ、過去最高の円高がありうるものとしてレバレッジを低めにすること
・多少の相場変動には動じないこと、デイトレードはしない
・計画的ナンピン推奨、利乗せはほどほどに

この中で重要なものを3つあげるとすると
「変動感覚」
「損きりポイント」
「低レバレッジ」
です。

「変動感覚」は、林輝太郎の本などにくわしく掲載されています。小職は、林輝太郎の本を読む前から、
・大きなポジションをいきなり立てるのは心理的にギャンブル性が高く、うまくいかない
・恐怖心を克服するために、小さなポジションを少しずつ立てることが、精神的に楽
・そうすることで、動揺することなく、「上がった」「下がった」を冷静に受け止めることが出来た
・だから、相場が下げても安心して長期投資が出来る
・有利な場面が来れば少しずつ買い増しが出来る
と思っていました。

皆様にも「変動感覚を身につける」ことをお勧めします。

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「世界同時株安と円高(1) FXで個人投資家破産・ロスカット多数発生 急激な円高の原因と対策は?」

冷酷なことを何度も書きますが、この程度の円高や株安で右往左往しているようでは、これから来るであろう『国家破産の大津波』と『戦時統制経済』を生き延びられるはずがありません。

(もちろん、国家破産・日本国破綻や、戦時・戦争が来ないに越したことはありません。心構え・リスク対策の話とご理解ください。)

大事なことですので、よく考えてください。

(終了)

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さて、このブログでは、以前から、アメリカドルの維持可能性を懸念して、ドルの減価がありうると警告しています。

そもそも、アメリカの経常赤字は、日本や中国の買い支えによって維持されているようなものです。具体的には、「来るべきドルの減価(1) 金価格と原油(WTI)価格 ユーロ建てとドル建て ドルにペグした円は道連れ」を参照ください。

中国や産油国が、ドル以外の外貨準備を増強すれば、ドル暴落の準備が整うことになりかねません。さらに、現在はアメリカが世界の資本(資金)を吸収する流れになっていますが、それが逆流するかも知れません。

では、なぜ、逆流が起こりうるのでしょうか?逆に言うと、アメリカへの資本流入は、永遠には続かないのでしょうか?

その答えを直接述べる代わりに、「晴耕雨読」から引用したいと思います。

これからの数年間は、金融の混乱が引き続き起こるように思います。船で言うなら波の荒い海域に入ったということでしょうし、飛行機で言うなら気流の乱れた空域に入ったということでしょう。その中で、遭難や墜落せずに、ご自身や家族の資産を保全されることは、一筋縄ではいきません。くれぐれも、ご注意ください。

(引用開始)

晴耕雨読 - 米国政府の対外債務返済能力 《米国政府の対外債務返済能力》 下

米国政府が、個々の債務証書に書かれた内容ではなく、グロスの債務について日銀やその他の経済主体に返済することはできないと断言する。米国政府は、新しい借り入れで、過去の借り入れの利払いをしたり返済することしかできない。

米国政府が返済しないというわけではなく、返済したいとしても、経済論理的に返済することができないのである。
(“危険”な表現なので根拠は後で述べるとして結論を先に書いておくと、日銀保有の債権は、米国政府から返済してもらわなくてもかまわないのである。価値を消滅させた通貨の身代わりでしかないのだから、にっこり笑って、「おかげさまで労働価値を高めることができました」と言って債務証書を返却するか焼却すればいいのである)

米国政府が6兆ドルまで積み上がった債務を返済できないという主張は、ある国民経済が長期に渡って必要な労働成果財を自前で充足的に生産できない状態(貿易収支赤字)に陥っていれば、政府部門が“正常”なかたちで対外債務を返済することはできないという経済論理に基づくものである。

ここで言う“正常”とは、債権者に債務切り捨てとは感じられない実質価値を維持しながら、記載条件で利息を支払い、償還を完了することである。

(中略)

(米国の2001年末の「対外純債務残高」は、前年比45.9%増の2兆3091億ドル(約265兆円)であるが、民間部門は債権-債務がプラスだから、それに加えて2兆ドル弱(民間の純対外純債権額相当)の4兆ドル(約460兆円)程度が政府部門の対外債務額と推測できる)

貿易収支と所得収支がともに赤字という状態、とりわけ貿易収支の赤字が厖大な金額で長期化している国民経済は、政府部門が対外債務を返済する能力を失っていると断定できる。
(これも断言するが、戦後国際金融を担ってきた米国政権は、この経済論理的現実を嫌と言うほど認識している。わかりやすく言えば、米国政権は、対外債務を返済できないことをしっかり自覚しているということである)

(中略)

より冷静になれば、米国の対外債務返済能力欠如が目に見えるかたちになり国際的な疑念を生むことは、戦後世界経済構造の終焉を意味するものであることがわかるはずだ。

日本をはじめとした対米輸出依存国民経済(日本のアジア向け輸出も迂回的ではあるが米国依存)は、産業構造を大きく変容させなければならない。(新興産業国民経済である中国は日本とは比較にならないほど深刻な打撃を受けることになる。中国が暴発しないことを切に祈る)

日本の「デフレ不況」や今後予測される「世界同時デフレ不況」も、笑い話になってしまうような世界レベルでの経済的激変である。

米国の過剰対外債務問題をどう処理するかは、余剰通貨問題と並んで、世界が議論(もちろん秘密裏に)しなけれならない緊急かつ最重要の課題なのである。


ある国民経済が対外債務を返済するためには、国民経済総体として労働成果財を余剰に生産して輸出するか、金融取引や直接投資の果実である所得収支の黒字を増やすかして、とにかく経常収支の黒字化を達成しなければならない。

対外債務が「経常収支赤字-国内貯蓄」の累積であるならば、その返済は、債務額に相当する「経常収支黒字+国内貯蓄」の累積でのみ可能である。

米国については、貿易収支が黒字化することはあり得ない。

(中略)

悪意があるかどうかの問題ではなく、米国の対外債務が完済されることは経済論理的に不可能なのである。
貯蓄率がほぼ0%という実状に照らせば、経常収支の赤字を埋めるだけの資本収支の黒字、より具体的に言えば、政府債務の利払いと償還に新規財政赤字を合算した額以上のドルが国外から流入する限りにおいて、「米国国債サイクル」を維持することができる。

クリントン政権後期に連邦財政は3年ほど連続で黒字に転換したが、それでも過去の債務の重みで連邦政府債務は増加し続けたように、利払いだけで3千億円に達している状況では、債務を現状維持するためでも3千億ドル(約35兆円)の財政黒字を達成しなければならない。
クリントン政権の財政黒字は、今となってはバブルであることが明確になった株式市場の活況と高額所得者増税に拠るものである。しかも、「対テロ戦争」体制ではなく、冷戦後の「平和の配当」志向政策が採られていた時期でもある。

ブッシュ政権が減税と戦争体制で一気に1,500億ドル(約17兆円)の財政赤字に転換させたことや株式市場の現状を見れば、そのような財政黒字は夢のまた夢であることがわかる。

このような説明に対しては、FRBが通貨を増発して返済していけばいいという反論も予測される。
まず、米国政府及びFRBは、85年の「プラザ合意」や現在のような「ドル安容認」で、対外債務の軽減化を測ってきたと考えている。
しかし、その結果は、さらなる経常収支の悪化であり政府債務の増加である。

産業資本が活動力を衰退させた国民経済は、自国通貨安になっても、国際競争力を回復させることはできず、国民の生活水準を維持しようとすれば高くなった輸入財を買わざるを得ないため、より貿易収支赤字が増加することになる。これは、より政府債務を増加させることでもある。
米国のインフレがそれでも抑えられたのは、日本などがドル安分をそのまま財の価格に上乗せしなかったからである。後からその分の「労働価値」を上昇させていった。
米国の産業資本は、一部を除けば、政府調達で維持されているとも言える。

そして、FRBが対外債務を履行するためにドル紙幣を増発すれば、ドルが国際商品の価格表示機能を持っていることから国際的にインフレが昂進することになる。(対外支払いなので、米国のインフレは後追い的に進む。これまでも、米ドルが米国以外に滞留していることで米国のインフレ率は低く抑えられていた)
これは、無条件に主要通貨に対するドル安進行につながっていく。ということは、経常収支のさらなる悪化と政府債務のさらなる増加を意味するとともに、金融経済主体が保有しているドル資産が減価することでもある。

(引用終了)

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by kanconsulting | 2007-09-07 00:53 | 外国為替(FX)
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