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アメリカの経済状況は引き続き低調 ストックとフローの悪化 オスプレー・ファンドのクローズと資源価格

アメリカの経済状況についてですが、次のような報告があるようです。

・経済活動は引き続き低調な状態との判断
・住宅市場の不振が長期化
・個人消費の低迷
・原油高騰や食料価格の上昇を受けたインフレ圧力の高まり

住宅価格のようなストック(資産価値)が低く、失業やインフレによるフローの悪化のダブルパンチにより、個人消費の低迷は当然のことと言えるでしょうし、そこからの回復もなかなか難しそうです。加えて、信用収縮により住宅ローンの借り入れも難しく、住宅需要はまだ回復しないと見ています。

アメリカにおける自動車の販売台数も、芳しくないようです。同じく、庶民の手持ちの資産価値が減少し、失業の増加によりキャッシュフローが減少しているのに、借り入れを起こして車を買うような余力はありません。引用記事中には「もう底のはずだ」のような記載もありますが、希望的観測(ポジショントーク)でしょうね。まだ先のように思います。

ロイターの記事にもありますが、アメリカ経済は、景気後退(リセッション)に入ったも同然です。景気支援策は短期的な刺激に過ぎないですので、本格的な回復はまだまだ先、と言えそうです。

となると、気になるのが、原油などの動向です。世界景気減速による需要減は、資源価格の低下を引き起こしました。もともとの価格形成に、仮需によるゲタがありましたので、その上げ底がなくなるとともに、オーバーシュートするであろう、といったところです。
これにより、商品に投資していたファンドの破綻(本来の意味はクローズですが、実質的には破綻でしょう。ただしクローズの場合は、資金は戻ってきます)が出てきています。たとえば、クローズを発表した「オスプレー・ファンド」は、エネルギー・鉱山・資源株の損失により大きなマイナスとなっています。
ファンドの投げが一巡することで、オーバーシュートは終わるのだと思います。

このような状況がいつまで続くのか、分かりません。ですが、世界経済の成長性を考えたときには、今からじっくり投資を考える時期なのだと思います。

(引用開始)

FRB:「経済活動は低調な状態」--米地区連銀報告

【ワシントン斉藤信宏】米連邦準備制度理事会(FRB)は3日、全米12地区の景気情勢を示す地区連銀報告を公表し、7月下旬から9月初めにかけての米国経済について「経済活動は引き続き低調な状態」との判断を示した。ほとんどの地区で住宅市場の不振が長期化しており、個人消費の低迷を指摘する地区も大半を占めた。ほぼすべての地区で原油高騰や食料価格の上昇を受けたインフレ圧力の高まりが見られた。
景気は多くの地区で「悪化している」と報告されたが、クリーブランドとセントルイスは「やや軟化」にとどまり、ボストン、ニューヨークは「安定の兆しが見られる」と報告。カンザスシティーはやや改善と報告した。

毎日新聞 2008年9月4日 東京夕刊

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大半の地区で経済活動ペースが低調=米ベージュブック
2008年 09月 4日 07:46 JST

[ワシントン 3日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)が3日発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、大半の地区で8月下旬までに経済活動のペースが低調となり、一部で商品・エネルギー価格の下落がみられた。
8月25日までの報告書は「経済活動のペースは大半の地区で低調となった」とした。
ほぼ全ての地区で、高エネルギー・食品・商品価格の物価圧力がみられたと指摘。ただ、一部の地域で、複数の鉱工業商品・エネルギー価格が下落、もしくは上昇ペースが減速したと述べた。
さらに、投入コスト高を背景に、多岐にわたる企業が販売価格を引き上げた。同時に、雇用が全般的に減速するなか、大半の地区で賃金圧力が穏やかとなった。
また、複数の地区で輸出が製造業活動を促進したことが指摘された。ただ、一部の製造業者は最近、輸出の伸びが鈍化しているとした。
報告書は、企業活動は「弱い」「軟調」もしくは「抑制されている」と指摘。
個人消費は大半の地域で軟調で、購買活動は主として生活必需品に集中している、としている。
住居用不動産の状況は全地域で弱まったか、もしくは依然軟調だった。ただ、カンザスシティー地区のみ小幅改善がみられた。
米経済は住宅市場低迷やクレジットひっ迫で景気後退入りの瀬戸際にあるが、政府の景気支援策などもあり、第2・四半期の国内総生産(GDP)改定値伸び率は年率換算で前期比3.3%となった。ただ、多くのアナリストは、景気刺激策の効果が薄れるほか、ドル上昇や世界的な需要減退で輸出が低迷することから、下半期の成長は鈍化するとの見方を示している。

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「米経済は引き続き鈍化」FRBが連銀景況報告

【ワシントン=矢田俊彦】米連邦準備制度理事会(FRB)は3日、7月下旬から8月下旬にかけての米景気を分析した地区連銀景況報告(ベージュブック)を発表した。
この中で、「経済活動は引き続き鈍化した」との総括判断を示し、前回報告(7月)に続いて景気減速が続いているとの認識を示した。
全米12の地区連銀別では、多くの地区が景気は「軟化」や「弱い」としたが、カンザスシティーが「わずかに改善」となったほか、ボストンとニューヨークは「安定の兆し」がみられると報告し、地域間での景況感の違いもみられた。
インフレについては、エネルギーや食料品価格の高騰で、ほぼすべての地区が「物価上昇圧力は続いている」と報告した。
消費動向は、家計の節約から買い物が生活必需品に集中し、ほぼ全地区で低調だった。特に、自動車販売の落ち込みが指摘された。住宅市場は、ほぼ全域で低調なままで、銀行融資も、住宅ローンや消費者ローンで需要が落ちた。
報告は、FRBが16日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)の参考資料となる。

(2008年9月4日10時26分 読売新聞)

(引用終了)

以下、自動車関連のニュースです。

(引用開始)

http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCJC2249.html

8月の米新車販売台数は大幅減少、底入れ近いとの声も

デトロイト(ウォール・ストリート・ジャーナル)8月の米新車販売はまたも大幅減を記録した。だが、ガソリンの値下がりや新たな景気改善の兆候から、業界は底入れが近いと期待を膨らませている。
オートデータのまとめによると、8月の米新車販売台数は約125万台と、前年同月(約148万台)に比べて15.5%減少した。注目の集まる季節調整済み、年率換算ベースの販売台数は1370万台と、前月(1255万台)を上回ったが、前年同月(1630万台)は下回った。
米フォード・モーター(NYSE:F)のエコノミスト、エレン・ヒューズクロムウィック氏は、アナリストと記者団との電話会見で「これらは情勢がやや改善しつつあることを示す初期の兆し」と語った。その上で、ガソリン価格が1ガロン当たり約40セント低下したことや、米消費者信頼感指数の改善、米政府による4-6月期の実質国内総生産(GDP)伸び率の上方修正などに言及した。
別の電話会見で、米ゼネラル・モーターズ(NYSE:GM)の幹部らは、業界が「底入れしたか、底入れに近い」ことを示す兆候がみられる、と語った。GMの首席販売アナリスト、マイケル・ディジョバンニ氏は、消費者の「信頼感が改善している」とコメントした。
市場がこれ以上悪化しないとの業界の期待とは裏腹に、幹部らは、回復の兆候が表れるまでには依然として数カ月、あるいは数四半期を要する可能性もあると指摘する。
フォードのヒューズクロムウィック氏は、住宅・信用市場が持ち直すには「あと数カ月」かかる見込み、とした。また、GMのディジョバンニ氏は「経済が危機を脱したと勝利を宣言するにはかなり時期尚早」とした。
8月のGMの新車販売台数は30万7285台と、前年同月比20.3%減少したものの、ディジョバンニ氏によると、市場シェアは今年に入り最も好調だった。
8月のフォードの新車販売台数は同26.5%減の15万5117台。米3大自動車メーカー(ビッグスリー)に比べて善戦しているトヨタ自動車(NYSE:TM)(7203.TO)とホンダ(NYSE:HMC)(7267.TO)も大幅減となった。トヨタは同9.4%減の21万1533台、ホンダは同7.3%減の14万6855台。米クライスラーは同34.5%減の11万0235台と、減少率が最も大きかった。

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米新車販売台数:15.5%減 ビッグ3は2割超減--8月・前年比

【ワシントン斉藤信宏】米調査会社オートデータが3日まとめた8月の米新車販売台数によると、業界全体の販売台数は、前年同月比15・5%減の124万9532台と10カ月連続で前年実績を下回った。ガソリン価格が落ち着きを取り戻しつつある中でも伸びず、低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題に伴う景気後退への懸念から消費者が買い控え傾向を一段と強めていることが裏付けられた。
特にスポーツタイプ多目的車(SUV)やピックアップトラックなど小型トラック部門の落ち込みが深刻で、同22・1%の大幅減となった。
首位のゼネラル・モーターズ(GM)は同20・1%減の30万5782台(欧州ブランド車を除く)、3位のフォード・モーターも同25・5%減の15万448台(同)といずれも2割超の大幅減。ビッグ3の販売減に歯止めはかかっておらず、経営不安は解消されそうにない。日本勢では、トヨタ自動車(2位)が同9・4%減の21万1533台、ホンダ(4位)も同7・3%減の14万6855台といずれも低迷した。日産自動車(6位)は同13・6%増の10万8493台と好調を維持し、5位のクライスラー(同34・5%減、11万235台)に迫った。
7月は日本車メーカー8社の販売シェアがビッグ3のシェアを初めて上回り国別の月間トップに躍り出たが、8月はビッグ3が45・3%と日本車(42%)を上回り、再逆転した。

毎日新聞 2008年9月4日 東京夕刊

(引用終了)

以下、オスプレーのヘッジファンド閉鎖に関連したニュースです。

(引用開始)

http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200809040051.html

オスプレーのファンド閉鎖は序幕、さらなるファンドが続く公算も
2008年9月4日

[ロンドン 3日 ロイター] 米資産運用会社オスプレー・マネジメントによる旗艦ヘッジファンドの閉鎖は、今後、同種のファンドの閉鎖が続く可能性を示唆するものだ。商品相場の下落と金融関連株の急伸は、非流動性ポジションを持つファンドを窮地に陥れている。
5年間続いた商品相場の高騰は、投資機会を探っていた投資家の資産と多くのヘッジファンドを勢い付かせた。
しかし、経済成長ペースの減速に伴い資源需要の減少懸念が強まるなか、商品相場とエネルギー価格が下落に転じ、多くのファンドマネジャーは相当の打撃を被った。
投資家は可能な限り早期の資金の引き揚げを模索しており、非流動性ポジションを保有するマネジャーらは多大な困難に直面している。
あるファンド・オブ・ヘッジファンドのマネジャーは「さらなる困難に見舞われるだろう」とし、「非流動性ポジションを持つヘッジファンドは、四半期の償還が問題だ」と述べた。
オスプレーは2日、資産の20%は非流動性であり、投資家に分配するまで最長3年を要する可能性があると述べた。
RABキャピタルのヘッジファンド、RABスペシャル・シチュエーションズは、すでにパフォーマンスに問題があらわれている。このファンドの投資対象である小型資源株は、大型株に比べて売却が難しい。
同ファンドの価値は年初から8月21日までに38.1%下落した。
商品相場の下落が中長期的なものになれば、問題は深刻化する公算が大きい。
スタンダード&プアーズ(S&P)ファンド・サービシズのファンド調査ディレクター、ランダル・ゴールドスミス氏は「前年下期は一方向への賭けだった」とし、「商品相場は現在、急速に修正している。これにより、相当なダメージが及ぶ可能性がある」と述べた。
その上で「商品にまとまったポジションを持つヘッジファンドが存在する。実際に弱気相場になれば、多くのヘッジファンドが困難に陥るだろう」と述べた。 
とりわけ、商品相場の上昇と金融関連株の下落の双方に賭けていたヘッジファンドのダメージは大きい。
この数年間、大幅に上昇していたFTSEの鉱山株指数は6月末から9月1日までに21.7%下落した。一方、銀行株指数は投資家の安値拾いが入り、12.4%上昇している。 

(Laurence Fletcher記者;翻訳 山口 肇)

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http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPnTK018187020080903

〔クロスマーケットアイ〕原油急落で資金フローに変化か、ファンド破たんでポジション繰りに影響
2008年 09月 3日 14:47 JST

[東京 3日 ロイター] 3日の東京市場は株式、債券ともに様子見気分が強い中で目立った動きはみられない。市場では、昨日、大きな値動きをみせた原油価格CLc1と米ダウ平均株価.DJIについて、新たな材料が出たわけではなく短期筋のポジション繰りが一因との見方が出ており、参加者は予想外の値動きに身構えている。商品に投資していたファンドが破たんしたことで、さらなるファンド破たんによるポジション閉鎖が予期しない相場の動きを演出しかねない、との警戒感も広がっている。原油下落がマネーフローに与える影響に目を凝らす展開がしばらく続きそうだ。

 <ドルと円を一斉に買い戻し>
為替市場では午後に入って、ユーロや豪ドル、NZドルなどが一斉に売られた。ドルや円を買い戻す流れが強まった。
ユーロ/ドルは一時1.4426ドルまで下落、7カ月ぶりの安値を更新した。米原油先物価格が一段安となっていることや、ドルの全面高の流れを受けた。英ポンドやNZドルにも売りがでたことから、対ユーロでもドルの強さが際立ったという。ドル指数.DXYは78.310を上回り、10カ月ぶりの高水準となった。ユーロ/円は3月期末の終値水準だった157円前半を下回ってきたことで一段と売りが強まる可能性を指摘する声が出ている。期末安値を下回ると国内投資家などを中心に「一段の円高対策としてヘッジをかける動きが出やすくなり、結果として売り圧力がさらに強まる」(外銀)という。
豪ドルも一時0.8251ドルまで下落し約1年ぶりの安値を更新した。短期筋とみられる参加者から豪ドルにまとまった売りが出たとの観測がある。対円では一時89.71円まで下落し、約半年ぶりの安値をつけた。
午後になって動きが激しくなったが、特段、新規材料は出ていないという。市場参加者によると、昨日、値幅が大きかった原油やダウ平均などと同様、短期筋がポジションを閉じる動きを強めたことが背景、という。

 <見えないポジション繰りへの不安>
ポジションクローズのきっかけとして、市場で話題になっていたのは商品に投資していたファンドの破たんだ。資産運用会社オスプレー・マネジメントは2日、傘下の「オスプレー・ファンド」の閉鎖計画を明らかにした。同ファンドの8月の運用成績は、エネルギーや鉱山、資源株に損失が発生したことでマイナス27%となった。同ファンドにはリーマン・ブラザーズ(LEH.N: 株価, 企業情報, レポート)が出資していたことも話題を呼んだ。
ある関係者によると、同ファンドの8月1日時点の投資額は28億ドル。オスプレー・マネジメントは同ファンドの他にも特別目的ファンドなど総額40億ドル以上の資産を運用している、という。
ペイデン&ライジェルの株式ストラテジー責任者、クリス・オーンドーフ氏は「多くのヘッジファンドの今年の運用成績がマイナスだ。これを皮切りにファンドの閉鎖が続くだろう」と話している。

 <国内株、ミューチュアルファンドの解約懸念も>
株式市場では日経平均.N225が小反発。相変わらず様子見気分が強いが、ドル/円が108円台後半の円安水準に振れたことや、原油価格の下落を好感した買いが入った。原油安メリットを受ける紙・パルプ、電力などのセクターの上昇が目立っている。
「海外勢の一部からは9月中間期末の配当取りを狙う資金も入っているが、10月以降はミューチュアルファンドの解約懸念などもあり、海外勢の買いが本格的に膨らむ環境ではない」(東海東京証券エクイティ部長の倉持宏朗氏)という。
ハリケーン「グスタフ」によるエネルギー産業への被害が限定的との見方から、原油価格は5カ月ぶりの水準に下落したが、ハリケーンの影響に関する懸念が後退するにつれ、景気減速によるエネルギー需要の減退という原油安の別の側面が意識されている。「目先は米雇用環境に不安が残る。5日の米雇用統計発表を控え、週後半にかけて手控えムードが強まりそうだ」(大手証券)との声もある。
大和住銀投信投資顧問チーフストラテジストの門司総一郎氏は「国内の政局に関心が集まってはいるが、市場を左右するのは引き続き海外要因だ。9月半ばからのリーマンやゴールドマン・サックスの決算については、すでにアナリストによる下方修正が相次いでいる。これらの決算を受けて悪材料出尽くし感から反発するのか、弱気センチメントが10月のメリルリンチやシティの決算発表まで続くのか注視したい」と話す。

 <円債市場では戸惑いも>
円債市場も小じっかり。前日の10年債入札を無難に終えた安心感や米債高の流れを受け、朝方は買いが先行。先物は138円46銭まで上昇した。しかし一段の買いを手がけるには材料不足で、上値が重いとみる向きの戻り売りもあり徐々に上昇幅を縮めた。
現物市場は長期ゾーンを中心にしっかり。国債大量償還や下期の残高積み増しに向けた買いを支えに、10年最長期国債利回り(長期金利)は4.0bp低い1.450%まで低下したが、その後はもみあい。
国内証券筋は「株高と債券高が同時に起こったり、日米の金利差が縮まっているのになかなかドル/円が円高に振れないなど、これまでとは違う資金のフローとなっている。債券市場でも株価動向や金利差、またはインフレといったテーマから目線が離れてきているが、一方で何をメーンテーマにしたらいいのかをつかめず、参加者としてはなかなかポジションを傾けられない状況だ」と話す。

 (ロイター日本語ニュース 橋本 浩記者 編集:宮崎 大)

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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-33588020080904

原油下落でも株に資金流入せず、世界的な景気後退に焦点
2008年 09月 4日 15:59 JST

[東京 4日 ロイター] 原油価格が下落している中で、世界の主要市場で株価がさえない。原油価格下落による経済へのメリットよりも、世界経済の後退危機にマーケットの関心が集まってきているからだ。
対照的にマネーが流入している債券市場は堅調。その中で4日の円債市場だけが商品投資顧問業者(CTA)の国債先物売りに影響され、長期金利が1.5%台へと上昇している。

<米欧株安、日本にも波及>
米原油先物は4日、ハリケーン「アイク」がカテゴリー4へと勢力を強めたことで1バレル=109ドル後半に上昇しているものの、最高値の148.13ドルから約25%も下落した水準で推移している。原油高によるコスト上昇に悩まされた先進各国にとって、原油価格の下落は「朗報」のはずだが、マーケットの反応は単純ではなかった。
3日の米株式市場は、ダウだけは前日比15.96ドル上昇の1万1532.88ドルと上がったものの、ナスダックは同15.51ポイント安の2333.73ポイント、S&P総合指数も同2.60ポイント安の1274.98ポイントへと下げた。
4日の日経平均も反落し、午後は1万2600円台を割り込んだ水準で取引されている。

 <原油安は新興国の景気後退が要因との声>
市場では、内外の景気動向や米金融システムなど懸念材料が多い中で「商社、鉄鋼などに大口のバスケット売りが出た。商品市況の下落などを受けて資金繰りが悪化した海外ファンド勢がポジション調整売りを出している」(大手証券エクイティ部)との見方が出ていた。一部には米系年金の売りも出ているとの声もあった。
「多少含み益を持っていた実需筋の投資家が、先物の仕掛け的な売りをきっかけにロスカットの売りを加速させている可能性がある。市場は原油など商品価格の下落に対し、新興国を中心とした世界的な景気悪化が要因になっているととらえているようだ」(明和証券・シニア・マーケットアナリストの矢野正義氏)との指摘もある。
ある外資系証券の関係者は「本来なら原油安は格好の株買い材料だが、マーケットはしばらく前から世界的な景気後退リスクに目が向き始めた。原油安はこの先の世界的な景気後退の先触れとの見方が広がっている」と話す。
邦銀関係者の1人は「原油安で株にマネーが来ると見ていた向きは、あてが外れた格好だ。しばらく海外勢のマネーも日本株には入ってこないだろう」とみている。

 <米金融への不安感も株売りに>
海外勢の売り一巡後は急速に下げ渋ったが、今月半ばから始まるリーマン・ブラザーズ(LEH.N: 株価, 企業情報, レポート)、ゴールドマン・サックス(GS.N: 株価, 企業情報, レポート)、モルガン・スタンレー(MS.N: 株価, 企業情報, レポート)など米投資銀行の決算を控えて警戒感は強い。
4日の株式市場では、英タイムズ紙が三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T: 株価, ニュース, レポート)傘下の三菱東京UFJ銀行について、米証券大手リーマン・ブラザーズ(LEH.N: 株価, 企業情報, レポート)への出資に関心を示していると伝えたこともネガティブ材料にされた。「長期的にみれば海外展開への足がかりをつかむいい投資機会だが、目先はリーマンの財務状況がつかみにくく不安心理につながりやすい」(中堅証券)との声が出ている。

 <CTAの投げ、日本国債現物・先物とも急落> 
一方、世界的にマネーは国債にシフトする傾向をみせ、3日の米債市場では10年米国債利回りは3.7027%と4カ月ぶりの水準に低下した。そうした中で、4日の円債市場だけが大幅な国債利回りの上昇に直面した。国債先物9月限は一時、前日比1円を超す下落となって137円33銭まで急落。長期金利も一時、1.515%まで上昇した。
市場では、国内普通社債(SB)や地方債、財投機関債などの起債が相次いだことから需給に対する不安感が浮上。「スワップ市場で銀行などからヘッジ(損失回避)目的の払いが出たことがきっかけ」(邦銀)になったとの見方が出ている。
また「現物中期ゾーンに銀行勢からまとまった売りが出たのではないか」(国内証券)との声も聞かれた。
複数の市場筋によると、9月10日の売買最終日を控えて割高な状況が続いていた国債先物に対し、ロングポジションを積み増してきた商品投資顧問業者(CTA)がポジション解消を急いでいたという。
別の邦銀関係者は「円債市場の動きは、CTAのポジションに絡んだ特殊な振れだ。世界的には原油やその他の商品売り/ドル買い、株売り/債券買いの動きがこの先も続きそうだ。豪州の景気後退や利下げは、そうした見方が正しかったとマーケットでは受け止められている」と述べている。 

(ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 内田 慎一)

(引用終了)

以上
by kanconsulting | 2008-09-04 22:02 | 経済状況
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