これまでに、重すぎる債務の一般的な行く末や、日本の保有するアメリカ国債の未来について、次のように述べてきました。
アメリカ民主党と共和党 日本経済クラッシュによる米国債の棒引き 「二つのアメリカの世界戦略/深田匠」 アメリカが負う世界一の対外債務を消滅させたいというインセンティブは、概念上は、民主党のみならず共和党にも働く。したがって、経済戦争の一環として、日本経済クラッシュを仕掛ける可能性は、概念上は、民主党のみならず共和党にもありうる。 国際貸付ではなく国際投資を 経済状況の発展段階説(2) 「日本は、海外・外国政府に対するODA・貸付では、貸した金の返済を待つことしか出来ないという意味で本質的には弱者である」と思います。また、重債務国は、金利の返済に耐えかね、債務の棒引きを求めます。 世界金融危機(8) ヘッジファンドの危機とアメリカの格付け 公的支援は1.5兆ドル(15130億ドル) 時価会計の無視、空売りの禁止、モラールの無い資金投入など、『ルールを完全に無視して、急場しのぎの対策に追われる米国が、今後対外的にも何をするかわからない』のでしょう。「対外的にも何をするかわからない」というのは、自国の権益を守るためには、何でもするであろう、という意味だと思います。ということは、この後に待っているのは、 ・アメリカ債券とドル紙幣の押し売り ・海外投資家のマネーの棒引き ・ドルの減価による、不景気なのにモノが高いというスタグフレーション ・強権的ルールによる世界統制経済 ・借用証書を焼き払うための政治的暴力 のいずれかでしょうか。何度も書いていますが、「弱いものから巻き上げるのが、繰り返してきた歴史」なのです。 FRBのバランスシート アメリカの損失の飛ばし アメリカと日本の納税者にツケ ではどうするか?たとえば、次のような方法があるでしょう。 ・国際協調と称して、日本円を増発 ・FRBに差し入れて、ドルと交換 ・そのドルを市場に流さず、そのままアメリカ国債を購入 ・買ったアメリカ国債は、アメリカ財務省で塩漬けにする ・ある時点で、為替レートと金利上昇による強制調整により、実質の借金を棒引き このケースにおいては、日本の納税者が、「国際協調のため」として、アメリカの損失をかぶることになります。先ほどの急激な円高では、「債権国である日本に、資金が逃避した」とされています。このため、外貨建ての債券の価値は急落しました。加えて、この債権者(注:日本)は、アメリカ債券を思う通りに売ることができない、「債務を返してください」とお願いするしかない、弱い存在でもあるのです。何度も書いていますが、日本からカネを搾り取るための、国際協調がありうるのだ、と指摘します。 国の借金843兆円 巨額すぎる借金は、いろいろな方法で棒引きされてきたのが、歴史の常です。 --- 格付け会社の三國陽夫は、 ・日本は、アメリカに対する債権(アメリカ国債)を放棄すべき。 ・米国債の発行残高は今後も増える。米国は債務国なので、低金利では資金調達が難しい。不況下の金利上昇に見舞われかねない ・日本の債権放棄で米国債の残高が減れば、米国は金融機関の救済や景気テコ入れに心置きなく財政出動し、長期的な経済再建に必要な生産設備も十分に輸入できる ・日本の債権放棄は、米国のみならず、日本にも世界にも有益だ ・日本政府が債権放棄に踏み切れない場合、為替市場がドル安によって、米国債の評価を引き下げる。1ドル=50円-60円まで円高・ドル安が進む。残された時間はあと3カ月から5カ月。95年4月の戦後最高値(79円75銭)に並ぶ。 として、日本が債権放棄するか、円高・ドル安による強制調整か、いずれにしてもアメリカ国債の価値を保全することは不可能と指摘しています。 この人は、アメリカの意向を受けているのだと思います。アメリカそのものが「カネは返せない」と言うのではなく、他国(日本)の代理人(エージェント)に「私たちのためにもなるのだから」と言わせるところがアメリカ流なのでしょう。 最近のCMで言えば、「あなたのためだから」「あなたのためだから」「はぁ?」という感じです。 ですが、発言の内容そのものは大きくは間違ってはいないのが、残念なところです。 --- 関連した過去の記事を再構成して、まとめとしたいと思います。 アメリカは、1970年代に、金利上昇とそれを上回るインフレにより、国債投資家に大損をさせたという前科があります。アメリカは実質破綻寸前であり、国債の減価によりかろうじて乗り切った、ということだったのかも知れません。何度も書いていますが、「弱いものから巻き上げるのが、繰り返してきた歴史」なのです。 そして、歴史は繰り返すというのも、ご存知のことと思います。 何度も書いていますが、アメリカ国債が売れなくなる日は、そこまで来ています。そして、物価(インフレ)、金利、為替、のいずれか、あるいは全部、によって、「ドルの減価」がありうるのだと思います。 このブログでは、開始後まもなくから、アメリカとドルの信認は安泰ではない、円とドルは一蓮托生だ、と訴え続けてきました。その当時は、「ドルは強い。そんな心配よりも、日本(円)の心配をするべき」などと言われてきましたが、今となっては、どちらが正しかったなどは、どうでもいいように思えます。なぜならば、ドルの破綻は、文字通り、現在の貨幣経済システムの死刑執行であり、システムに組み込まれているすべての人が路頭に迷うことになるからです。 (日本は、)アメリカの延命のために、これまではアメリカ国債を多量に買ってきました。これからは、アメリカの軍事産業を潤し、インフレを起こし、その赤字を減らすために、つまり、やはりアメリカの延命のために、日本は血を流せと言われているのです。 すべての証拠を吹き飛ばし、借用証書を焼き払うための、戦争の予感がします。 (引用開始) 日本政府は米国債の放棄を、無策なら1ドル=50円も-三國陽夫氏 12月24日(ブルームバーグ):日本政府は外貨準備で保有している米国債の一部を放棄し、米国経済の再建を支援すべきだ-。格付け会社、三國事務所の三國陽夫代表は18日のインタビューで、日本が来年春頃までに思い切った債権放棄に踏み切らない場合、1ドル=50円程度まで円高・ドル安が進みかねないとの見解を示した。 三國氏(69)は、「世界の歴史に照らせば、2国間に発生した巨額の債権・債務は決済されない」と述べた。債務国が消費抑制と輸出振興で返済の元手を稼ごうとすると、債権国は輸出が減って稼働率が低下するため、両国とも持続可能性が危ぶまれるほど景気が悪化する恐れがあると解説。「両国にとって、決済するメリットはない。日本は結局、債権放棄するしかない」と語った。 世界的な金融危機を背景に、米国内総生産(GDP)の実質成長率は7-9月期に前期比年率0.5%減少した。世界経済をけん引してきた個人消費は 3.8%減と、1980年以来の大幅な減少。日本の対米輸出は11月まで、15カ月連続で前年実績を下回った。ブルームバーグがまとめた市場予想によると、米実質成長率は10-12月期には4.35%減に悪化。2009年4-6月期まで、マイナス成長が続く見通しだ。 三國氏は、住宅市場を中心とした米国の経済成長メカニズムが、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題に端を発する金融危機で「焼け落ちてしまった」と話した。米家計が抱える住宅ローン残高の過剰分が「3兆ドル、GDP対比で約22%」あり、「5-6年で解消するとしても、名目GDPを3-4ポイント押し下げる」と推計。「金利が下がっても、元本返済の重圧がのしかかる」ため、米経済が「急回復することはない」と予想した。 住宅価格の上昇を背景とした「消費主導型の経済成長ができなくなった米国は、生産・輸出を増やして企業収益を稼ぎ、雇用・所得・消費増につなげる新しいメカニズムを築く必要がある」が、「米国には生産設備が不足しているため、日本や欧州から購入しなくてはならない」と指摘する。 米国債増発、金利上昇も しかも、米財政赤字は急拡大している。米財務省が15日発表した年次報告書によると、ブッシュ米政権による金融業界支援や景気対策の結果、07年10月-08年9月の歳出は歳入を1兆100億ドル上回った。前年は2760億ドル。財政赤字は「当面、高水準にとどまる公算が大きい」という。オバマ次期米大統領は2年間で300万人の雇用を創出する方針。来年、8500億ドル規模の景気刺激策を議会に提案する可能性がある。 米連邦準備制度理事会(FRB)は16日、政策金利を0%-0.25%に引き下げるとともに、「異例な」低金利を「一定期間」続ける方針を示唆。長期国債の買い入れ検討も明らかにした。米10年物国債利回りは19日に一時、53年以降で最低の2.0352%を記録。米財務省短期証券(Tビル)3カ月物の利回りはマイナス0.05%に低下。2年債利回りは17日、データ集計開始以来で最低の 0.6044%をつけた。 しかし、三國氏は「米国債の発行残高は今後も増える。米国は債務国なので、低金利では資金調達が難しい。不況下の金利上昇に見舞われかねない」と予想。日本の債権放棄で米国債の残高が減れば、米国は「金融機関の救済や景気テコ入れに心置きなく財政出動し、長期的な経済再建に必要な生産設備も十分に輸入できる」とし、「米国のみならず、日本にも世界にも有益だ」と語った。 対外債権、630兆円 対米債権の放棄では、「世界最大の債権国である日本が先鞭をつけ、多国間協議への道をひらくべきだ」と、三國氏は話す。日本の外貨準備高は約1兆ドルと、首位の中国(約1兆9000億ドル)を下回る。ただ、民間部門の対外資産が多いため、官民合わせた対外債権は、中国より「はるかに多い」約630兆円に及ぶと推計。政府が保有する米国債の一部放棄は可能だと主張した。 三國氏は、経済情勢が混乱した時の債権放棄は「歴史上、巨大な債権国の宿命でもある」と指摘した。第2次大戦後には米国が、戦禍に見舞われた西欧の復興をマーシャル・プランで支援し、債務免除と生産設備の供与を実施。日本の再建にも取り組んだ。英国が19世紀のナポレオン戦争後、欧州を安定させるため、巨額の債権放棄を受け入れた例も挙げた。 タイムリミット 日本政府が債権放棄に踏み切れない場合、三國氏は「為替市場がドル安によって、米国債の評価を引き下げる」と読む。政策対応がなければ、「1ドル=50円-60円まで円高・ドル安が進む」と試算。残された時間は「あと3カ月から5カ月。95年4月に記録した戦後最高値(79円75銭)に並ぶまで」と予想した。債権放棄は「ドラスティックな政策だが、受け入れざるを得ない」と語った。 円の対ドル相場は17日に一時1ドル=87円14銭と、95年7月以来の高値をつけた。年初来の上昇率は約20%と、87年以来21年ぶりの大きさだ。日本銀行は19日、10月末に続く利下げと長期国債の買い切り増額、企業の資金繰りを支援するコマーシャルペーパー(CP)買い切りを決め、他のリスク資産の買い入れも検討すると発表した。 三國氏は「強い円は、緩やかに進むなら経済にプラスだ。日本は円高の経済学を理解する必要がある」と述べた。「明治時代から外需に依存。円高を恐れ、稼いだ外貨を国内に戻さないから内需が伸びず、成長を実感できない」と指摘。今後は「稼いだ外貨は円に換え、国内で投資・消費に使って内需を盛り上げる。円高で輸入コストを下げ、購買力を高めるべきだ」と主張した。 輸出品目は「技術面などで差別化でき、価格設定力のある分野に絞る必要がある」が、日本人が持つ「繊細さや簡潔性に基づく製品は競争優位を保てる」と指摘。日本経済は「円高を克服して成長できる力強い段階に入っている」との見方を示した。 三國氏は1939年生まれ。63年に東京大学を卒業し、野村証券に入社。69 年には日本人で初めて、CFA協会認定の証券アナリストとなった。75年に退社。社債などの格付けを主業務とする三國事務所を設立し、代表取締役に就任した。2002年4月から04年3月まで、経済同友会の副代表幹事をつとめた。 (引用終了)
by kanconsulting
| 2009-01-15 10:29
| 経済状況
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