以前の記事で、次のように書きました。
(転載開始) 「日本とアメリカ 産業構造と潜在成長力 弱い潜在成長率とマイナス実質経済成長率予測」 最近のニュースによると、日本の潜在成長力が、徐々に下がってきているということです。そもそも、実質経済成長率はマイナス予測ですが、紙幣をばら撒いて潜在需要を喚起しても、「力強い成長」には程遠い、といったところでしょう。 (潜在成長率) 07年度 1.6% 08年度 1.2% (民間予測) 09年度 0.9% (民間予測) (実質経済成長率) 08年度 -1.8% (日銀金融政策決定会合) 09年度 -2.0% (同上) 潜在成長力とは? 普通、生産設備などの資本には余剰・遊休があり、労働力にはリストラやミスマッチによる失業分があります。今現在の経済で、こういった資本の余剰や失業がなく、フル活用されたと仮定した場合に、そのGDPを「潜在GDP」、インフレ率の変化なしに達成できる実質成長率を「潜在成長率」と呼びます。 実際の実質成長率=潜在成長率+GDPギャップ 「実質」とあるのは、貨幣換算のGDPの増大(減少)を、価格上昇(下落)分と生産増大(減少)分に切り分けて、生産増大(減少)分のみを抽出した、という意味です。 --- 「戦後最大の経済危機 実質GDPマイナス12.7% 分かっていた数値悪化」 (2008年10~12月の)「実質GDP12.7%減」という見出しがショッキングですが、四半期(3ヶ月間)の数字を年率に換算した数値であり、実際の年間の実質GDPは0.7%減となります。それほど、昨年秋以降の落ち込みが激しかったということでしょう。 (中略)GDP変動率を金額に換算すると、 ・設備投資 ▲8兆円 ここ数年が過大であり、2009年もマイナスが続く ・純輸出 ▲12兆円 2009年もマイナスは続くが、2009年は半分位で収まる 計付加価値 ▲20兆円 (売上換算 ▲30兆円 (日本企業の売上高付加価値率から逆算)) (中略) 【実質GDP 四半期(季節調整値)】 ・前期(7~9月期)比 ▲3.3% (=年率換算▲12.7%) ・09年1~3月期も大幅なマイナス成長の見通し 【実質GDP 2008年通年】 ・▲0.7% ・1999年(▲0.1%)以来、9年ぶりのマイナス成長 (転載終了) 毎日新聞エコナビによると、「今回の日本の景気拡大期の実質国内総生産(GDP)伸び率に占める輸出の寄与は61%」と、過去の好景気(いざなぎ景気(同寄与率8%)、バブル景気(同12%))をはるかに超える高い輸出依存度だったことが指摘されています。 何度も書いていますが、無駄遣いのアメリカを、日本(やアジア諸国)が支えた、という「いびつな構造」の巻き戻しなのだと思います。 さて、GDP見通しについて、現在、もっと悪い数字が出てきています。経済協力開発機構(OECD)によると、2009年、日本は6.6%のマイナス成長だということです。 実質GDP成長率見通し(%) 08年 09年 10年 日本 ▼0.6 ▼6.6 ▼0.5 米国 1.1 ▼4.0 0.0 ドイツ 1.0 ▼5.3 0.2 フランス 0.7 ▼3.3 ▼0.1 イタリア ▼1.0 ▼4.3 ▼0.4 英国 0.7 ▼3.7 ▼0.2 カナダ 0.5 ▼3.0 0.3 ユーロ圏 0.7 ▼4.1 ▼0.3 OECD全体 0.9 ▼4.3 ▼0.1 以前に、 『私たちが気をつけなければならないのは、・・・「フロー面からは、雇用リスクへの備え」「ストック面からは、デフレ経済への備え」・・・なのだと思います。 特に、「信用崩壊スタート(2007~)→金融機関など資本毀損・有価証券価値暴落→企業の生産調整・雇用カット(2008~顕著に)→家計への波及(日本では今年から顕著に)→デフレスパイラル再来」のサイクルを考えた場合、家計への波及が始まることで、デフレ再突入が確実なものとなります。』 と述べた通りになってきているのだと思います。 関連した過去の記事も参照ください。 日本の動向 赤字国債発行へ 消費税5%アップ 貿易赤字とゼロ成長 再びデフレに 恐慌の香り (引用開始) OECD:「日本、GDP6.6%減」 先進7カ国中最悪--09年見通し 経済協力開発機構(OECD)は31日、10年までの加盟各国の経済見通しに関する報告書を公表した。日本の09年の実質GDP(国内総生産)は6・6%減と戦後最悪を見込み、昨年11月時点の見通し(0・1%減)から下方修正。日本経済は需要不足で物価が持続的に下落し、景気が停滞するデフレ不況に再突入するとの見方を示した。 今回の報告は世界経済が「この50年間で最も深く広範囲の景気後退にある」と指摘。なかでも輸出依存度の高い日本の成長率は09、10両年ともに金融危機の震源地の米国やドイツ、英国など欧州各国を下回り、先進7カ国で最悪となると予想。日本経済全体の需要と供給の差を示す「GDPギャップ」は09年にマイナス7・9%、10年に同9・6%と過去最大に拡大。完全失業率も10年には5・6%と、過去最悪だった02年度(5・4%)を上回るまで上昇するとした。 不況への政策対応では、日銀がデフレが完全に収束するまで政策金利をゼロ近くで維持し、流動性を増加させることを求めた。一方、財政出動については「余地が限られている」とし、低所得家計を支える「所得税の税額控除」導入など税制・社会保障制度の改革と、サービス分野の競争力強化のための構造改革が必要とした。【尾村洋介】 毎日新聞 2009年4月1日 東京朝刊 (引用終了)
by kanconsulting
| 2009-04-02 23:28
| 経済状況
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