「米中関係が21世紀を形作る。この事実がパートナーシップを支える」(オバマ大統領)
「(今回のSEDで)米中関係の新たな枠組みを。米中のみで解決できる国際的問題はほぼ皆無だが、米中なしで解決できる問題もほぼ皆無」(クリントン長官・ガイトナー長官、ウォール・ストリート・ジャーナル) --- これまで、中国については次のように指摘してきました。 「世界金融危機(10) アメリカの覇権はゴールドマンとともに中国に移動 流動性の枯渇と救済」 中国は、ゴールドマンサックス(GS)と密接な関係があります。もともとBRICsを言い出したのはGSです。そしてGSとアメリカ政府のつながりも明らかです。・・・寄生虫が宿主を渡り歩くように、金融資本にも新しい体が必要です。中国は、独裁国ですし法律も未整備ですので、そこから金融支配を進めるにはちょうど良いのかもしれません。 「アメリカドルのレパトリ(本国還流)はいつまで続くのか アメリカと中国の出来レースと振り込め詐欺」 ・日本などの対米債権国が、保有するアメリカ国債(米債)を売れば、債券価格が下落するため、大量に売却できないというジレンマがある ・しかし、中国はアメリカ国債を交渉カードにしているなど、ずっと米国債を持ち続ける保証はない 私はさらに踏み込んで、「中国とアメリカは、アメリカ国債の扱いや為替レートの調整に関して、すでに何らかの合意がなされている。中国とアメリカのコメントは、出来レースだ。最後には日本の資金が使い込まれる、壮大な振り込め詐欺だ。」と指摘します。 「SDR2500億ドルのバラマキ 信用創造の悪魔 ゴールドの奪い合いか」 最近、SDRが話題になっています。たとえば、 ・SDRをアメリカドルに代わる基軸通貨にすべき (中国人民銀行 周小川総裁) ・SDRの通貨バスケットに中国人民元を加えるべき (ノーベル経済学賞 ロバート・マンデル) ・SDRの構成資産にルーブルや人民元、金などを含めるべき (ロシア政府) 「日本人2人が13兆円のアメリカ国債をスイスに密輸未遂で逮捕・押収 実は米国債は偽造 笑えない話」 ・特に最近、アメリカ国債の過剰発行が問題になっている (アメリカだけではありませんが) ・そのため、アメリカ国債とドルの下落がささやかれている ・中国、ロシアを中心として、「ドル外し」を主張したり、実行する国が増えてきている ・日本は表立ってはアメリカ国債を売ることが禁じられており(橋本龍太郎事件)、こっそりと売ろうと思ったとしてもおかしくはない --- また、アメリカについては、 ・アメリカは、若くて優秀な労働力に恵まれており、潜在成長率が高い ・しかし、対外債務国であり、継続的な資本のファイナンスが必要 ・ファイナンスが困難になった時点で、自国借金の棒引き・帳消しを迫る可能性もある ・特に、10年に一度は戦争をして景気浮揚をするような体質であり、注意が必要 などと指摘してきました。 こんなアメリカと中国は、一見、仲が悪いようにも見えますが、実は共通する利害を有する「仲良し」なのだと理解しています。例えて言うと、トムとジェリーのような感じでしょうか(どちらがトムなのでしょうか)? さて 7月末に行われた米中戦略・経済対話(SED)では、この2カ国が世界の趨勢を決定するような、2大国対話(G2)のような感じになっていると指摘されています。 ・06年に始まったSEDでは、従来、米国が中国に人民元相場の切り上げを迫る場だった ・今回、中国が米国に財政再建を迫るなど、内政問題に口を出している ・一方、米国からの中国への人民元の切り上げ要求は強調されていない ・米国から中国への配慮が目立ち、立場が逆転した形 しかしながら、何度も指摘していますが、これもポジショントークであり、すでに結論が決まっていることなのだと思います。歴史を振り返ると、戦争や覇権の移動に伴う国債の売り崩しは珍しくないですし、その過程で新興勢力が大きな資金を得たということも歴史的事実です。 また、価値が下がると分かっている場合は、ヘッジをするのが普通でしょう(これほどの巨額の国債をヘッジする現実的方法があるかどうかは不明ですが)。ヘッジをしない場合には、「アメリカをまるごと買ってやろう」などといった、大きな意図があると思います。 これからの金利上昇を迎え、ドルの強制減価(切り下げ)、新ドル切り替え、ゴールド部分兌換通貨発行、アメリカの切り売り、などの奇手が用意されているのかも知れません。 繰り返しますが、『中国とアメリカは、アメリカ国債の扱いや為替レートの調整に関して、すでに何らかの合意がなされている。最後には日本の資金が使い込まれる、壮大な振り込め詐欺だ』と指摘します。 (引用開始) 攻守逆転 債権握る中国が米に注文、米は気配り 朝日新聞 2009年7月28日11時31分 【ワシントン=尾形聡彦】27日始まった米中戦略・経済対話(SED)で、米国に財政再建を迫る中国側の攻勢が目立っている。従来のSEDは、米国が中国に人民元相場の切り上げを迫る場だったが、今回は中国への配慮が目立ち、「攻守」が逆転した形だ。米国側は、オバマ大統領をはじめ主要閣僚が勢ぞろいし、2大国対話(G2)の様相もみせている。 「米国側とマクロ経済の問題について深い議論をした。米国の財政赤字が今後年々縮小していくことを希望している」 27日の経済対話の内容を、中国政府の幹部はこう説明した。具体的なやりとりは明かさないものの、米国に財政の改善を求めたことを示唆するものだ。米国の内政問題に中国が口を出すのは、米国が財政赤字を埋めるために発行している米国債の保有で、中国が昨年秋に日本を抜いて世界一になったためだ。米国の09会計年度(08年10月~09年9月)の財政赤字は過去最大に上る見込みだ。米財政の悪化が続けば、米国債の価値が下がって中国に損が出かねない。 中国側の27日午後の記者会見でも、中国メディアの記者から「米国債を大量保有して大丈夫なのか」という質問が続出。中国政府幹部は「オバマ大統領は経済が安定すれば、財政赤字減らしに注力する意向だ」と強調した。 一方で、06年に始まったSEDで定番だった米国側からの中国への人民元の切り上げ要求は影をひそめている。別の中国政府幹部は27日夜の会見で「今回は、米国は人民元相場については強調していない」と満足げに話した。 米国側からは、オバマ大統領が冒頭の演説で「米中の2国間関係が21世紀を形作る」と発言するなど、中国への配慮がにじむ。オバマ氏は「山の小道は、使えばすぐに道になるが、使わなければ、やはりすぐに雑草に覆われてしまう」と孟子の言葉まで引用してみせ、2国間の対話の継続を訴えた。今回の対話にはガイトナー財務長官、バーナンキ連邦準備制度理事会議長、サマーズ国家経済会議議長、カーク通商代表ら主要閣僚が顔をそろえ、力の入れようが目立っている。 -- e株リポート:特集 米国債暴落 毎日新聞 ◇史上最大の米国債大量発行 ◇マーケットは「危うい」と見始めた 米国の長期金利が急上昇している。財政悪化への「懸念」は根強く、積極財政による景気刺激と低金利政策による住宅市場回復を目論むオバマ政権にとって、長期金利上昇は命取りとなりかねない。政府とFRBの綱渡りの政策運営が続く。【週刊エコノミスト編集部・濱條元保】 「米国債の洪水をFRB(米連邦準備制度理事会)は、オフセット(埋め合わせ)できない」 米ダラス連銀のフィッシャー総裁は6月15日、地元メディアのインタビューで国債大量発行が足元の長期金利上昇の要因になっている可能性に懸念を示した。 ◇赤字の「垂れ流し」 米国の赤字垂れ流し--。世界の金融市場がここに注目し始めた。 オバマ政権はブッシュ前政権が総額7000億ドル(約66兆円)で作った不良資産救済プログラム(TARP)と政権発足直後に決めた総額7800億ドル(約74兆円)の景気対策をフル活用している。アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)やシティグループなど大手金融機関への公的資金注入で金融システム安定化に努め、さらには経営破綻したゼネラル・モーターズ(GM)を事実上国有化し、政府丸抱えで再建に取り組む。減税や住宅ローンの借り換えなど個人向け支援策も打ち出した。 大盤振る舞いの原資は国債だ。米政府は不況に伴う税収減も加わり、2009会計年度(08年10~09年9月)に1・8兆ドル、対国内総生産(GDP)比13%という戦後最大の財政赤字となる。財政赤字は10年度も1・3兆ドル、11年度も0・9兆ドルと高水準で続く見通しだ(表)。 巨額財政赤字に対する市場の疑念が国債価格下落(長期金利上昇)の背景にある。2%台前半に低下していた長期金利は5月以降3%台半ばをつけ、6月10日には一時4%を超えた。「09年度1・8兆ドルという史上最大の財政赤字ファイナンスをどうするか」(高島修・三菱東京UFJ銀行チーフアナリスト)が、問われているのだ。 リーマン・ショックに至るまでの米国は、まったく違う経済状況にあった。01年のITバブル崩壊後、短期金利のフェデラルファンド(FF)レートを1%まで引き下げたFRBは、04年6月から06年6月までに5・25%まで段階的に引き上げたにもかかわらず、長期金利がこれにまったく反応しない状況が続いた。グリーンスパンFRB議長(当時)は05年2月の議会証言で、これを「Conundrum(謎)」と語った。中国やロシアなどの新興国の経済発展、そして原油高で潤う中東産油国が、貿易黒字で積み上がる外貨準備で米国債を購入することが原因だと、謎の解説がなされた。 しかし、当時と現在では決定的に米国債の発行額が異なる。グリーンスパンの「謎」発言のあった05年度の米国債発行総額(ネット)は2387億ドル。それに対して、09年度は5月までに約5倍の1兆2182億ドルに達する(図1)。 そして、足元の国債発行額(ネット)は、08年第3四半期(7~9月)に5395億ドル、第4四半期に5616億ドルと急増、09年に入っても第1四半期に4684億ドルに達した。通常、所得税など税収増に伴い、ネットベースではマイナスになる第2四半期も5月までで1881億ドルと高水準の発行が続いている(図2)。 ◇米国債の「サブプライム化」 米国債は、日本国債とは対照的に高い流動性とドル資産という基軸通貨国の特権を武器に世界に売りさばかれてきた。民間から流入する資金とともに、それが過剰消費に伴う巨額の経常赤字を補い、米国は高い経済成長を謳歌してきた。経済成長のための原資だったのだ。 ところが、昨年以降は違う。サブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題で大きな損失を被り、自力では立ち行かなくなった大手金融機関や大企業、そして過剰債務で破綻状態の個人を救済するための原資と化した。 三菱UFJ証券の水野和夫チーフエコノミストは、投資の失敗のよるキャピタルロス(損失)の穴埋めという視点から、「米国債のサブプライムローン化が始まった」と指摘する。米国債への投資は、成長のためではなくキャピタルロスの穴埋めに過ぎず、従来のような成長は期待できない。それは米国債の減価を余儀なくさせるというのだ。 米国債は、サブプライムローン担保証券と違って、税収で償還される。しかし、「米国民の約3割が生活資金を借金に頼っている状況で、増税はおろか現状の税金すら徴収することが難しくなっている。米国債の償還は一層、厳しくなる」(水野氏)。 米国債のロスは、ドルの減価で調整せざるを得なくなる。つまり、米国債下落分をドル安という為替調整で穴埋めするということだ。ここにドル安不安もある。 ◇BRICsがIMF債購入 投資家は、すでに米国債下落リスク回避に向けて行動している。 大量発行されている国債の中身に注目すると、長期国債よりも短期国債を投資家が志向していることがわかる。米財務省の資料によると、08年4月までの1年間は、短期国債発行額1106億ドルに対して長期国債は3092億ドルと長期が短期の約3倍となっていた。それが09年4月までの1年間では、短期国債4535億ドルと長期国債2689億ドルの1・7倍と逆転した(図3)。 「外貨準備で運用している各国政府が下落リスクを避けようと、米国債投資を短期化させたのが原因」(嶌峰義清・第一生命経済研究所主席エコノミスト)という。その“首謀者”と推測されているのが中国だ。 中国は欧米向け製品輸出の急増で、積み上がった外貨準備は3月末で世界最大の1兆9537億ドル。米国債保有額も4月末で7635億ドルとトップである。ガイトナー米財務長官は5月末に訪中し、最大の「お得意先」に、今後の購入について協力を求めた。 しかし、ガイトナー長官が面談した中国人民銀行元政策委員の余永定氏からは「中国は米国債を当然のように購入し続けるわけではない」とクギを刺された。実は毎月、米国債保有額を増加させていた中国が、4月は前月比44億ドル減少していた(図4)。 さらに6月5日には、中国が外貨準備でIMF債を最大で500億ドル購入することが明らかとなった。債券は準備資産であるSDR(IMF特別引き出し権)建ての発行になるとみられている。ドルに偏重した外貨準備の運用を多様化させる狙いと市場は受け止めた。 こうした中国の対応にロシアとブラジルが間髪を入れずに呼応する。 ロシア中央銀行のウリュカエフ副総裁が6月10日、保有する米国債を売却してドル資産での運用を引き下げる方針を示すと同時に、IMF債100億ドルを引き受けると発表。同じ日、ブラジルのマテンガ財務相がIMF債100億ドルを引き受ける意向を明らかにした。インドも近くこれに追随する模様で、BRICs4カ国で総額700億ドル超のIMF債を購入することになる。 ◇市場からのしっぺ返し 検討されているSDR建てについても、現状はドル、ユーロ、ポンド、円の4通貨構成だが、中国事情に詳しいエコノミストの田代秀敏氏は「中国は現状のGDPでの構成比の見直しを求め、世界第2位目前の中国人民元をSDRに加えるように迫るだろう」と予想する。 政府の積極財政で需要を作る一方で、低金利継続で住宅市場を回復させ、米国経済を復活させる--。オバマ政権の景気対策の大前提は、低金利にある。3月以降、その大前提が狂い始めた。そこでFRBが力ずくでこれを抑え込もうと異例の行動に出た。3月18日、9月までに国債購入枠3000億ドルを設定したのだ。6月中旬までに約1600億ドル分を購入。東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、「資産担保証券(MBS)まではやむを得なかったが、米国債購入は危うい」とみる。 直後こそ長期金利は低下したが、その後はそれ以上に上昇している。「FRB自らが(国債を買って金利を押し下げるという)歪みを作ったのだから、市場はその是正に動くのは当然」(加藤氏)。 バブル崩壊後の長く、出口のないデフレ不況に苦しみ抜いた日本を反面教師にする米国。住宅バブル崩壊後、デフレ回避にリフレ政策をとる以上、一定のインフレリスクは織り込み済みのはずだが、「とにかく国債発行額が多過ぎて、本当にこなせるのか」(第一生命経済研究所の嶌峰氏)と市場は身構える。3月はFRBが国債買い取り枠設定で乗り切ったが、中央銀行が買い続けることはできない。財政規律が失われると市場が読み出したら、危険だ。 (引用終了)
by kanconsulting
| 2009-08-04 12:37
| 経済状況
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