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今年はじめ(2009/01)に、以下のように書きました。
(ここから) マンションなど不動産購入のためのローン(融資)が通らない、という声をよく聞きます。それは当然だと思います。なぜなら ・銀行の自己資本の毀損、引当金確保のための貸し渋り ・マンションは、販売後に中古品となり大きく処分価値が下がってしまうため、担保価値が低く、加えて不動産価格も下がりつつある中で、大きな与信はできない ・上場企業であっても容易に倒産してしまうため、サラリーマンへの与信には慎重にならざるを得ない (中略) 関東圏、関西圏のマンション完成在庫も、一向に減りません。「今はまだ買いたくないし、そもそも買えない」のでしょう。不動産については、一昨年(2007)の秋にはすでに凋落の兆しが見えていましたが、まだまだこれから冬の時代になるのだと思います。 (ここまで) それから半年が経過しましたが、やはりというか当然というか、路線価が下落しました。 一物五価とも言われ、価格形成が複雑(に見える)土地ですが、実際の土地価格下落に遅行するといわれる「路線価」が下がったことにより、これから「土地のデフレスパイラル」が再来するようにも見えます。と言いますのは、土地は流動性が低く価格参照も難しいため、取引量が低下する局面で指標が下落すると、株式で言う「売り気配」のように、土地価格が下落することになると見ています。 具体的な要因としては、 ・勤務先・ビジネスの先行きが不透明なため、新たなローンが組めない ・住宅ローン破綻による任意整理・競売 ・相続税のための換金処分 と、買い意欲が細く、売りは減らない、などという感じでしょう。日本国財政破綻セーフティーネットさんも「714.急増する住宅ローン破綻」で「サラリーマンの昨年の冬そして、今年の夏のボーナスが激減し、住宅ローンを抱えている人は深刻な事態になっていることがうかがえます。」と書いていますが、その通りだと思います。 住宅ビジネスは、地主・デベロッパー・ゼネコン・銀行のすべてが儲かるビジネスでした。その儲け分は、購入者のローン、つまりリスク移転を行ったところから生じたものです。(日本の住宅価格は、世界標準から見ても、また国民の所得の割合から見ても、高すぎるということは、何度も述べたところですが、その分が売り手の余剰利益となっていたのでしょう。) 以前の記事「売れないマンション 貸せない銀行 デフォルト率3% さらに下落する不動産価格」でも書きましたが、『何もわからない個人に貸し付けまくって、消費を喚起する構造は、終わった』のだと思います。 何度も書いていますが、これから人口減少・国力低下が起きる国の土地価格は、投機的要因を除くファンダメンタルで見れば、長期的には下げトレンドとなるでしょう。 特に、土地の高度利用が進む中で、物件の供給が過多となっているため、物件価格(たとえばマンションの一戸あたりの価格)は下落するのが市場原理でしょう。 --- さて、このブログでは、紙幣の刷りすぎ・信認低下によるインフレを警戒せよ、と述べています。では、実物資産としての不動産も上がるのではないか?という意見があると思います。それに対する答えを一言で言いますと、 「インフレでも、価格が上がるものと、そうでないものがある」 「インフレになっても、要らないものは売れない」 ということです。立地・条件などにより、選別がある、という当たり前のことです。 読者の皆様も、土地バブル、株式バブル、先物バブルなど、異なった資産クラスで、入れ替わり立ち替わり、乱高下があったことを覚えておられることと思います。このブログで、「余剰マネーは、儲かりそうな資産クラスをめがけて殺到するため、ブームとバーストを形成する」と、何度も述べているところです。 特に、破壊的なインフレを考えた場合、ローン金利は暴騰するため、そこでレバレッジを起こして不動産を買うことは不可能になると言えるでしょう。 関連したニュースを引用します。 (引用開始) 全国の平均路線価、4年ぶり下落…東京も5年ぶり落ち込み 国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2009年分(1月1日現在)の路線価を発表した。 全国約37万地点の標準宅地1平方メートルあたりの平均路線価は、前年を5・5%下回る13万7000円となり、4年ぶりに下落に転じた。 都道府県別の平均路線価もすべて下落。近年の“ミニバブル”をけん引してきた東京でも、17・4%上昇した前年から一転、7・4%下落と大きく落ち込んだ。東京が下落に転じるのは5年ぶり。 圏域別の平均路線価は、前年まで3年連続上昇していた3大都市圏がいずれも下落。特に、前年、10%以上の高い伸びを見せた東京圏と名古屋圏は反動で6%を超える下落となった。前年は横ばいだった地方圏も3・8%下落した。 一方、都道府県庁所在地別でみると、最高路線価が上昇した都市はゼロで、下落した都市は前年の3倍以上の39都市に達した。特に、福岡、千葉、横浜の下落率は10%を超え、5~10%の下落率となった都市は札幌、大阪、仙台など11都市にのぼった。 路線価日本一は24年連続で東京都中央区銀座5丁目の銀座中央通り。10年ぶりの下落で1平方メートルあたり3120万円となったが、下落率は2%にとどまるなど、もともと価格水準の高い商業地の中には比較的、落ち込みが小さい地点もあった。 2009年7月1日11時51分 読売新聞 --- 路線価4年ぶりマイナス 5.5%減、全都道府県で下落 2009年7月1日11時33分 国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる09年分の路線価を公表した。全国約37万地点の標準宅地の平均路線価は1平方メートルあたり13万7千円で、前年比5.5%減。4年ぶりのマイナスで、昨年の不動産バブル崩壊を投影してすべての都道府県で下落した。前年2ケタの急伸を見せた東京、宮城、愛知はマイナス6~7%と逆に大きく下落しており、投機マネーの「逃げ足」の早さをうかがわせている。 都道府県別では、宮城県は前年の伸びは12.5%だったが今年は6.8%の下落。東京都は17.4%の伸びが7.4%のマイナスに転じ、10.8%の成長を見せた愛知県も6.3%の減少だった。北海道や福岡県も同様に反動の大きさを示している。 今回の路線価は、投機マネーの影響が色濃く反映している。不動産投資信託(Jリート)などを通じて、市場に流入した資金が、昨秋のリーマン・ショック後の金融危機で一気に縮小。金融機関も不動産融資を控えるようになり、不動産会社の倒産が相次いだ。景気の悪化も影響し、不動産の流通が滞って地価の下落につながった格好だ。 全国の最高値は24年連続で東京・銀座5丁目の鳩居堂前で、1平方メートルあたり3120万円だった。銀座4丁目の三越前、和光前も同額で3年連続1位。はがき1枚分の土地を購入するには、46万2千円が必要という計算になる。(舟橋宏太) 朝日新聞 --- 09年全国平均路線価は前年比‐5.5%、4年ぶりに下落 2009年 07月 1日 11:35 JST [東京 1日 ロイター] 国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2009年分(1月1日現在)の路線価を発表した。標準宅地の全国平均額は1平方メートル当たり前年比5.5%下落(前年は10.0%上昇)の13万7000円となり、4年ぶりに下落した。 3大都市圏は08年まで3年連続で上昇していたが、軒並み下落に転じた。東京圏は前年比6.5%下落(前年14.7%上昇)、大阪圏は同3.4%下落(前年7.4%上昇)、名古屋圏は同6.3%下落(前年10.9%上昇)となった。昨年まで2年連続で横ばいだった地方圏は同3.8%下落した。 都道府県別では、47都道府県のすべてで下落した。下落率が5%以上と大幅だったのは、北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、東京都、愛知県、高知県、福岡県の9都道県だった。 昨年は14都道府県で上昇、5都道府県で横ばい、28都道府県で下落していた。 都道府県庁所在地の最高路線価のトップは、24年連続で東京・銀座5丁目の銀座中央通り。1平方メートル当たり前年比2.0%下落の3120万円となり、ピークだった1992年の3650万円から約15%下がった。 ロイター (引用終了) #
by kanconsulting
| 2009-07-06 10:18
| 経済状況
何度も書いていますが、グローバル経済では、代替できる労働の賃金の水準は、その最低レベルに収束していきます。生産設備が人件費の安い立地を求めることはもはや当たり前ですが、IT・ソフトウェアのような属人的なビジネスでさえも、インドなどへのオフショアリングが当然となって数年が経過しました。その結果、一部のサービス業を除く大半の業界において、賃金下落圧力が発生しました。日本においても「働いても食えない」労働層が発生したことは、まだ記憶に新しいところです。
賃金低下の本質は、別にグローバル化とは直接の関係はなく、個々の経済合理的行動の帰結だとされています。 竹森俊平は、リスクと不確実性の違いを論じるに当たり、(リスクとリターンが計算できる)リスク支配のビジネスでは、自由競争により超過利益が低下する運命にある、として、その例としてタクシー業界を挙げています。 『このままタクシー台数が増え、一台あたり利益がますます減少するなら、平均賃金は、かつてアダム・スミスやリカードなどの古典派経済学者が「自然賃金」と呼んだ水準に下がってもおかしくはない』 「資本主義は嫌いですか/竹森俊平」 自然賃金:それ以下になると、生存が不可能になる賃金水準。つまり、「ぎりぎり食える」限界の賃金 不確実性の議論は日を改めるとしまして、本日は、「賃金は、生活限界水準まで低下する」ことだけを、述べたいと思います。 (このあたり、関連した過去のエントリーである「来るべき暗黒の日(2) 世界株安と円高再び フレディーマック・ファニーメイ・RMBSとナイトの不確実性」もご覧ください) --- (7/2追記) 世界の失業率比較 日本 (5月) 5.2% アメリカ (5月) 9.4% カナダ (5月) 8.4% イギリス (4月) 7.2% ドイツ (6月) 8.1% フランス (1-3月) 8.7% イタリア (1-3月) 7.3% 世界全体 (ILO予測) 6.5~7.4% #
by kanconsulting
| 2009-06-30 13:49
| 経済状況
その筋ではよく知られたニュースですが、日本人(?)2人が、1340億ドル(約13兆円)相当のアメリカ国債をスイスに密輸(?)しようとして、イタリア当局に拘束された、というものです。
・債券の額が日本保有のアメリカ国債総額の2割であったこと ・イタリアの国家予算に匹敵するほど巨額であったこと ・Troubled Asset Relief Program(TARP)の額とちょうど同じで、何か意味がありそうなこと ・債券の性質上国際決済が可能な銀行に持ち込むしかなく(すぐに見破られて換金できないので)偽造の意味が薄いこと ・その後の続報が遅かったこと などから、 ・そのアメリカ国債は本物か ・もし本物であれば日本がアメリカ国債を闇で売りぬけようとしたのではないか ・その日本人は日本政府(?)のエージェントではないか ・そのために続報がもみ消されたのではないか などという憶測が流れ飛びました。 ちなみに、無申告の債券持込には40%の罰金が科せられることから、債券が本物であれば、イタリアの財政は非常に潤うであろうと、歓迎する向きもあったとか、なかったとか。 (引用開始) Japan Probes Report Two Seized With Undeclared Bonds (Update2) By Shunichi Ozasa and Makiko Kitamura June 12 (Bloomberg) -- Japan is investigating reports two of its citizens were detained in Italy after allegedly attempting to take $134 billion worth of U.S. bonds over the border into Switzerland. “Italian authorities are in the midst of the investigation, and haven’t yet confirmed the details, including whether they are Japanese citizens or not,” Takeshi Akamatsu, a spokesman for the Ministry of Foreign Affairs, said by telephone today in Tokyo. “Our consulate in Milan is continuing efforts to confirm the reports.” An official at the Consulate General of Japan in Milan, who only gave his name as Ikeda, said it still hasn’t been confirmed that the individuals are Japanese. “We are in contact with the Italian Financial Police and the Italian Public Prosecutor’s Office,” Ikeda said by phone today. The Asahi newspaper reported today Italian police found bond certificates concealed in the bottom of luggage the two individuals were carrying on a train that stopped in Chiasso, near the Swiss border, on June 3. The undeclared bonds included 249 certificates worth $500 million each, the Asahi said, citing Italian authorities. The case was reported earlier in Italian newspapers Il Giornale and La Repubblica and by the Ansa news agency. If the securities are found to be genuine, the individuals could be fined 40 percent of the total value for attempting to take them out of the country without declaring them, the Asahi said. The Italian embassy in Tokyo was unable to confirm the Asahi report. (引用終了) しかし、続報によると、このアメリカ国債は大半が偽造であり、偽造債券の単純所持を処罰する法律がないため、日本人は事情聴取後に釈放された(現在は所在不明)、などということです。 アメリカ当局の見解としては、 ・写真で見ただけで分かるほどの、粗雑な偽造 ・歴史的に存在しない国債も含まれている(1960年代の債券にスペースシャトルが描かれているなど) ・印刷されて出回っている国債の総量をはるかに上回っており、物理的にありえない などということです。 また、イタリアでは、4月にも、偽造された日本国債が押収されています。今回の事件との関連は不明ですが、組織的な偽造機関の関与を指摘する意見もあります。 そもそも、日本の保有するアメリカ国債は、紙ベースではなく、アメリカ財務省に「日本はこれだけの債券を保有しています」と電子記録されているだけです。ペーパー資産は、すでにペーパーレス、電子資産になっているのです。その裏づけは信用ですから、綺麗に印刷された美しい紙であっても、液晶モニターに写される単なる数字であっても、同じことなのです。 (引用開始) UPDATE 1-U.S. Treasury says bonds seized in Italy are fakes (Updates with details on bonds, U.S. Secret Service comment) By David Lawder WASHINGTON, June 19 (Reuters) - A purported $134 billion in U.S. government bearer bond certificates seized by police near the Italian-Swiss border are fake, the U.S. Treasury said on Friday. "Based on the photograph we've seen online, they are clearly fake. And not even good fakes," said Stephen Meyerhardt, a spokesman for the Treasury's Bureau of the Public Debt. He added that there is only $105 million in Treasury bearer bond securities outstanding, so the $134 billion amount seized far exceeds the universe of outstanding securites. The Treasury's determination confirmed the suspicions of Italy's Guardia di Finanza, or tax police, who seized the bond documents in early June from two Japanese nationals at the Chiasso rail station in northern Italy, close to the border with Switzerland. The bonds comprised 249 "Federal Reserve" bonds of $500 million nominal value each and 10 "Bond Kennedy" with a $1 billion nominal value, the tax police said June 4 in a statement. A senior tax police officer said Italian authorities also were checking whether the two travelers' Japanese documents are genuine. In the last two years, Italian authorities have seized some $800 million of U.S. bonds in the Como area in northern Italy. Meyerhardt said U.S. government investigators believe that the seized bond forgeries were made using commercial photo enhancement software to alter the image of a $100 bill to increase the amount into millions or billions and add what appear to be interest coupons. Another U.S. official said the seized bonds were purported to be issued during the Kennedy administration in the early 1960s, but the certificates showed a picture of a space shuttle on it -- a spacecraft that first flew in 1981. Some of the bonds were purportedly issued in a $500 billion denomination that never existed. The official, who spoke on background because he was not authorized to discuss specifics of the case, said that scam artists, rather than trying to exchange fake bearer bonds directly for cash, will sometimes try to use them as fraudulent collateral for loans. The Treasury frequently uncovers scams involving bearer and other securities issued in the 1930s and 1940s. Images of some of these counterfeit bonds appear on a Treasury website aimed at combating fraud, here . The U.S. Secret Service, which polices counterfeiting of U.S. currency, is assisting Italian authorities in tracing the source of the fake bonds, said Ed Donovan, a spokesman for the agency. The forgery determination came a day after the Treasury warned U.S. banks against the potential for increased currency counterfeiting activity and large cash transactions by North Korea in an effort to evade U.N. sanctions aimed at cutting off financing for Pyongyang's nuclear weapons and missile programs. (Editing by Dan Grebler) (引用終了) しかし、このニュースが、「そんな巨額の紙債券は偽造に決まっているじゃないか、大騒ぎするな」などと、笑って済ませられないというのも、また現実です。というのは ・特に最近、アメリカ国債の過剰発行が問題になっている (アメリカだけではありませんが) ・そのため、アメリカ国債とドルの下落がささやかれている ・中国、ロシアを中心として、「ドル外し」を主張したり、実行する国が増えてきている ・日本は表立ってはアメリカ国債を売ることが禁じられており(橋本龍太郎事件)、こっそりと売ろうと思ったとしてもおかしくはない なのです。 何度も書きますが、日本とアメリカは一蓮托生、もう行くところまで行くしかない、心中するしかないのです。逆に、日本政府には、スイスの闇市場でアメリカ国債を売りぬけ、それでゴールドのバー(金の延べ棒)でも買って、日本国民の貴重な資産を保全するというような心意気がほしいものです。 (そのためには、原子力潜水艦が必要ですね。昔から、闇取引は、ゴールドの現物を海で運んで物々交換と、相場が決まっています) #
by kanconsulting
| 2009-06-22 19:06
| 経済状況
少し前の話になりますが、昨年度の国家債務残高と、今年度の試算が明らかになりました。(特別会計含まず)
国債と借入金、政府短期証券を合わせた国の債務残高(ストック) 2008年度末 846兆4970億円(▲2兆7426億円) ・国債全体 680兆4482億円(▲3兆8796億円) ・財投債 ▲8兆7042億円 ・普通国債 +4兆4772億円 ・その他 +3474億円 ・借入金 57兆5661億円(+4072億円) ・政府短期証券 108兆4826億円(+7298億円) 2009年度末 924兆円(見通し) ・年度末の国債残高 725兆円 ・約44兆円の新規国債発行が主要因 ・追加経済対策だけで10兆円超の国債残高 >初めて900兆円を突破 ということで、昨年度は見かけ上、2~3兆円の残高削減となりましたが、それは一瞬の出来事に過ぎず、今年度末の決算では、早くも追加経済対策・大幅な財政出動の副作用が出てくることになります。 日本だけではなく、世界各国の政府も、多量の国債を発行し、残高を積み上げていることは、これまでも述べてきたとおりです。 さて、 長期金利が上がってきたとはいえ、まだ2%未満の水準です。なぜ多量の国債を発行しているにもかかわらず、低金利なのでしょうか?何度も書いていますが、 ・中央銀行が低金利政策を維持している ・国債の購入者の大半が日本国内の金融機関等で、低金利でも引き受けられる ・為替のリスクがあり、より高い金利である外国の影響を受けにくい ・金利が上がれば、保有する国債の評価損となるため、自縄自縛となっている もちろん、いくつか問題点があります。 ・長期間低金利が続くという保証はありません ・資金が有限である以上、「中央銀行(日本銀行)が国債を引き受ける」ことがなければ、いずれ、資金繰りがつかなくなることは目に見えています 「ペーパーマネーを増刷して、それをばら撒けば良いではないか?不景気では、産業部門も家計部門も通貨を退蔵するばかりなので、金利は上がらないし、インフレにもならない。一万円札をタンスにしまう人がいるなら、その分を補填しなければ、経済が回らない」という意見があります。何度も書きますが、実体経済を無視した意見でしょう。実体経済が回復することなく、数字のみが回復したとしても、単なる数字遊びであり、あまり意味がありません。たとえば、景気回復側面で、退蔵した通貨がいっせいに消費などに向かえばインフレになるでしょうし、投資に向かえば資産バブルとなるでしょう。長い目で見たバランス、つまり持続可能性があるとは言えません。 日本国民全員が一人当たり100万円(合計約120兆円)もらっても、それが退蔵されていいるうちは100万円の価値がありますが、トータルで120兆円のマネーがいっせいに市場に出回れば、あたりまえのように減価するでしょう。 このあたり、ビルゲイツが5兆円分の資産を持っていたとしても、その大半が株式ですので、5兆円分の現金を手にすることは出来ないことと同じです。なぜなら、5兆円分の株式(マイクロソフト創業者株)をいっせいに市場で売れば、暴落することは目に見えているからです。株式時価総額は、ある意味、絵に描いた餅と言えなくもありません。 (以前にも書きましたが、株式には、たとえば引受権などで希薄化が発生すると、それが株価に反映される仕組みが出来ています。しかし、通貨は、為替である程度調整されるとはいえ、株式ほどの透明性はないようです) そもそも、信用とはそのような側面があるものではないでしょうか? --- 何度も書いていますが、「バラマキ(給付的な財政支出)は水物であり、その効果は一時的」なのです。そもそもの生産性などを改善するわけではなく、新たな需要を呼び起こすわけでもなく、長く続く効果はありません。定額給付金、エコポイント、自動車減税、などなど、だいたいそういった側面があります。 (財政支出が生産性の向上につながれば、その分、雇用の縮小をもたらし、代替的雇用が発生しなければ、失業をもたらすことも、指摘しておかなければなりません。また、雇用の創出といっても、容易ではないことも明らかでしょう) 10兆円規模の財政支出も、「やらないよりはマシ」なのでしょうが、「それだけの貴重なお金と時間を使う意味がどれほどあるのか」「単なる期待を越えた、投資効果が、どれほどあるのか」については、疑問です。そして、その後のリバランス、つまり増税、が持ち上がってきます。(もちろんこれは日本だけの話題ではなく、アメリカ、ユーロ諸国+イギリス・スイス、など、も同じです。) そして、単なるバラマキが終われば、刈り取りの季節がやってきます。もちろん、刈り取られるのは国民のお金(税金)です。国民は、うすうすではあっても、そのことに気づいています。ですので、リカードが指摘したように、バラマキは追加需要を生み出さないというのは、ごく当たり前のことなのです。 --- チャートで書きますと、かなり雑ですが、以下のようになるでしょう。 世界金融危機 → 各国の景気対策 → 国債多量発行 → 未達 → 金利上昇 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 将来の増税 中央銀行引受 → インフレ ↓ ↓ ↓ バラマキ → 持続的需要向上せず → 実体経済回復せず ↓ 流動性の引き締まり → 実体経済縮小(本来の姿に) → 生産設備過剰・人員過剰 → 景気さらに悪化 #
by kanconsulting
| 2009-06-16 15:00
| 経済状況
実質GDP成長率(見通し)
2008年度(実績) ▲3.1% (前回発表▲0.8%から下方修正) 2009年度(試算) ▲3.3% (戦後最悪)(前回発表0.0%から下方修正) 名目GDP成長率(見通し) 2008年度(実績) ▲3.2% 2009年度(試算) ▲3.0% 完全失業率(見通し) 2008年度(実績) 4.1% 2009年度(試算) 5.2% 内閣府発表より --- 2009年成長率 ▲6・2% (過去最低) IMF発表より --- 暗い話題ばかりです。製造業の声を聞いていますと、ユーロ圏の需要はまだまだ低調で、回復は遠いという実感です。しかし、アジアは需要増の影響があり、一部の製造業には明るい兆しも見えてきているとの、現場の声です。 ですが、それは「一時的な/見せ掛けの回復」だと見ています。アジア特需は、信用収縮が底を打った自立反発ではありません。実体経済の2倍に膨れ上がった金融経済の収縮が根本原因だとするなら、減った分を国の借金でまかなうと後は一安心、とするほど、甘くはないのだと思います。 (もちろん、本当に順調に回復するなら、それに越したことはないのですが) さて、何度も指摘していますが、 「需給ギャップが大きいのだから、国が国債と税金を使って、大いに無駄遣いをするべき」 「このような状況では、国がいくら国債を刷っても、破産することはない」 「どんどん国債を刷って、中央銀行に引き受けさせ、バラ撒くべき」 などとする意見が、本当にたくさん見られます。短期的にはそれも良いでしょう。ですが、持続可能性の範囲内で本当に意味のある対策が可能なのでしょうか? 特に、多くのエコノミストが、ケインズの亡霊に取付かれた様に、有効需要の創出を主張しています。本当にそれは「やらないよりマシ」以上の意味があるのでしょうか? 世界不況の後には、いったんすべてをリセットする必要があるのです。それは、 ・金持ちからの金融資産の収奪(通貨の切り下げ、強制徴用) ・インフラと過剰生産設備の破壊 ・人口ピラミッドの再構築(合法的人減らし) があるでしょう。一言で言うと、戦争をするしかないのです。私は、そのような目的の戦争を、断じて肯定しません。しかし、歴史を振り返ってみれば、人類の知恵が同じ轍を踏まないほど進歩したとは思えないのも事実です。 私には、「終わりの始まり」は、まだまだ序盤の可能性がある、と指摘します。 (もちろん、そんな不吉な予感は外れるほうが良いのですが) 関連したテーマの書籍 「戦争の経済学/ポール・ポースト」 (引用開始) 成長率:09年度見通しマイナス3.3%、戦後最悪に 与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は27日の閣議で、09年度の実質GDP(国内総生産)成長率を戦後最悪のマイナス3.3%とする経済見通し(内閣府試算)を報告した。昨年12月に発表した0.0%のゼロ成長からの下方修正で、経済の想定を超えた悪化を受け、年度当初の異例の見直しとなった。08年度実績の見通しも前回のマイナス0.8%から同3.1%に下方修正した。 物価変動の影響を織り込み、家計や企業の実感に近い名目成長率は、08年度マイナス3.2%、09年度マイナス3.0%を見込んでいる。与謝野担当相は会見で「経済動向には不透明感が強く、下押し圧力がある」と述べ、今後、さらに見直す可能性を示唆した。 世界経済は昨秋から急減速。日本の実質GDP成長率は08年10~12月期にマイナス12.1%(年率換算)の大幅減となっていたが、内閣府は09年1~3月期もオイルショック時の74年1~3月期(13.1%減)を上回る14%超の落ち込みになると想定。09年度の追加経済対策のGDP押し上げ効果は1.9%を見込むが、効果が表れるのは今年後半以降で、09年度の大幅なマイナス成長は避けられないと判断した。 一方、09年度の完全失業率は08年度の4.1%から5.2%まで上昇する見通しで、02年度(5.4%)に次ぐ高水準となる。消費者物価指数はマイナス1.3%と過去最大の下落幅となる見通し。【上田宏明】 毎日新聞 2009年4月27日 日本経済の本格回復、来年遅く IMF、輸出減で需要低迷 【ワシントン5日共同】国際通貨基金(IMF)は5日発表したアジア太平洋地域の経済見通しで、日本経済が「強力な景気対策で今年後半にプラス成長に戻る」としたものの「持続可能な成長」に本格的に回復するのは2010年の遅い時期との見方を示した。 IMFは4月、日本の09年成長率が過去最低の前年比マイナス6・2%に落ち込むと予測。今回の見通しでは「深刻な景気後退」に陥ると明記、大規模な財政出動があっても、輸出の急減で民間需要が低下し「(対策効果を除く)実質的な成長は依然弱い」とした。 また、中国やインドを除く「多くの地域がマイナス成長を記録する」とし、09年のアジア太平洋地域全体の成長率は1・3%と、08年(5・1%)から大きく鈍化すると予測した。 金融危機の震源地から遠いアジアが「深刻な打撃を受けるのは予想外」と指摘。理由として「ハイテク工業製品の輸出依存度が高い」ため、世界的な需要崩壊が直撃したと指摘。「過去の例では、金融危機を伴う景気後退の場合は投資の回復が遅れる」とも述べた。 その上でIMFは、アジア各国に景気刺激策の継続と内需主導への転換を提言した。 47ニュース 1~3月期GDP予測、戦後初の4四半期連続マイナスに 09年1~3月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は過去最悪のマイナス――。民間シンクタンク12社がまとめた予測で、景気の厳しい状況が鮮明になった。輸出急減で企業が生産を大幅に減らし、国内の消費も低迷しているためで、戦後初の4四半期連続のマイナス成長は確実だ。 1日までに各社が算出した予測を集計した。内閣府は20日に四半期GDPの1次速報を公表する予定だ。 各社の予測では、実質GDPの前期比増減率は、年率換算でマイナス19.7%から同13.6%と幅はあるが、いずれも過去最悪だった74年1~3月期の13.1%を超えるマイナス幅だ。 08年10~12月期は輸出の急減でマイナス12.1%(年率換算)だった。09年1~3月期は輸出減を受けた生産減少が急速に進み、マイナス幅が拡大。輸出はさらに減り、企業の設備投資や個人消費、住宅投資といった内需にも景気悪化の影響が広がっている。 3月には企業の生産や輸出に下げ止まりの兆しが出ており、09年4~6月期のプラス成長を見込むシンクタンクもある。ただ、09年1~3月期まで大幅マイナスが続き、ようやく景気の底が見えた状況にすぎず、本格的な景気回復はまだ遠そうだ。 朝日新聞 2009年5月1日 日銀:成長率予測を大幅下方修正へ 金融政策決定会合 日銀は30日、金融政策決定会合を開き、日本経済の09~10年度の見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をめぐって議論した。急速な景気後退を踏まえ、09年度の国内総生産(GDP)の実質成長率は、1月時点の予測(マイナス2.0%)を大幅に下方修正し、マイナス3~4%程度とする見通しだ。 09年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率も、1月時点の予測(マイナス1.1%)から引き下げるとみられ、デフレ不況の深まりを示す内容となりそうだ。政策金利(無担保コール翌日物)は現行の年0.1%で据え置く公算が大きい。 10年度の実質成長率は、1月時点でプラス1.5%と予測していたが、これも下方修正する見通し。ただ、プラス成長への回復は維持するとみられる。 1月時点の09年度の成長率予測は、戦後最悪だった98年度(マイナス1.5%)を大きく下回っていたが、さらに引き下げられることになる。政府も27日、09年度の成長率見通しを従来の0.0%からマイナス3.3%に下方修正している。 展望リポートは4、10月の年2回策定され、その後の経済情勢を踏まえて、3カ月後に中間評価する。日銀の金融政策を占う材料となる。【清水憲司】 毎日新聞 2009年4月30日 (引用終了) 関連した経済指標を記載します。世の中のカネが萎縮して、各所で鬱血壊死が起こっていることがよく分かります。 そもそも、貧富の格差が開くと社会全体が不安定になります。民主主義は、そのような中では、満足に機能するのでしょうか? (引用開始) 食事など切り詰め13か月続く、3月の消費支出0・4%減 総務省が1日発表した3月の家計調査(速報)によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出額は31万680円だった。 物価変動の影響を除いた実質で前年同月と比べて0・4%減と、13か月連続でマイナスとなった。 消費支出を構成する10項目のうち「食料」「光熱・水道」「被服及び履物」など4項目でマイナスとなった。昨秋以降、世界的に景気が低迷し、消費者心理の冷え込みが続いており、外食や国内旅行を控える動きが目立った。 2009年5月1日 読売新聞 非正社員の失職、20万人超す見込み 厚労省調査 厚生労働省は1日、昨年10月から今年6月までに失職する非正社員が20万7381人にのぼる見込みだと発表した。正社員についても、30人以上が失職すると3月中に届け出があった事業所の集計だけで2万1732人となっている。国が休業手当を助成する「雇用調整助成金」の申請数も急増している。 非正社員の失職者数は、全国の労働局やハローワークを通じ、4月17日現在で集計した。3月時点での集計よりも1万5320人増え、初めて20万人を超えた。雇用形態別では派遣が13万2458人と最も多く、期間従業員などの契約社員4万4250人、請負1万6189人と続いた。 月ごとに見ると、年度末の3月に失職した人は4万4786人で、昨年12月の4万8545人に次ぐ多さとなっている。ただ、それ以降は4月が8234人、5、6月はそれぞれ1千人台と減少傾向で、大量失職のピークはいったん越えたとみられる。 正社員の失職については今回から、1カ月で30人以上の離職者を出す事業主に対し、事前の提出が義務づけられている「大量雇用変動届」の集計を始めた。3月中に届け出があったのは972事業所で、離職者数は4万9082人。このうち2万1732人が正社員だった。 企業の減産に伴う従業員解雇を防ぐため、国が休業手当を助成する雇用調整助成金の利用を3月に申請したのは4万8226事業所で、対象者数は237万9069人だった。前月より約51万人増え、初めて200万人を超えた。(林恒樹、江渕崇) 朝日新聞 (引用終了) #
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| 2009-05-15 09:42
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